論理的に考え、書く力 (光文社新書)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (197ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334037710

感想・レビュー・書評

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  • 文書作成スキルについて書かれているような題名だが、教育現場に携わっている筆者の視点で数学的な物事の捉え方の重要性が書かれている。

  • 数学的なものの見方は生きていくために必要
    書くことについてのアドバイスが集約されているのかと思いきや、ゆとり教育によって損なわれた論理的に考える力がどのようにして衰えていき、それに対応するにはどうしたらよいかが書かれていた!
    数字も文字なのだから数学の問題を解くときにも国語力が必要!
    マークシート式では論理的に考えるべき問題が出題できないから、学生が論理的に考えて勉強する習慣がつかない!
    ゆとり教育を受けてきた教師には論理的思考を鍛える勉強が必要!
    特に証明問題を解くことが重要!
    もちろん最後の章には数学的な視点から文を書くヒントもある!

  • 「論理的に考え、書く力の危機」について数学教育の立場から記した本。

    筆者は数学者の立場から、論述力の低下に着眼している。そして大学生の口から恐るべきことが語られる。
    彼らは数学の授業において、公式は教わったが、その証明については充分な時間が割かれなかったという。
    その理由は、ゆとり教育のため時間が無い、から、先生自身もよくわかってない、に移ってきているのだろうと思うとそら恐ろしい。

    論述力低下のスパイラルから抜け出すために何ができるのか、答えの主要な部分に大学入試改革があるのは間違いなく、こういうニュースにも注意を持ってないといけないと理解した。

    1章では大学の現場から見た大学や学生の問題点が「考えて論述する」という視点から詳しく述べられています。

    2章では1章で紹介した個々の要因の一つと考えられるマークシート式問題の問題点を、国語の問題二題を著者が作って述べているように、「単に数学だけの問題ではない!」という主張。

    3章では、「ゆとり教育」は格差拡大の教育と総括している点が、他の「ゆとり教育」反対者とは趣が異なる点で、社会の格差やデータから述べている点に注目します。また教員採用の地方と大都市圏の異なった状況を、採用試験の難易度ばかりでなく論述式・マークシート式という視点から捉えている点に注目します。

    4章では、「数学的思考法」出版後の社会問題である消費税増税、本年の参議院選挙、AKBじゃんけん大会などの身近な題材を用いて数学的な考え方を説明しています。


    ◎ 目 次
    まえがき
    【第1章】 ゆとり教育の「負の遺産」
    1-1 1991年というターニングポイント
    1-2 「お客さま扱い」に慣れた大学生
    1-3 行き着く先は「替え玉受験」
    1-4 地図の説明ができない大学生
    1-5 「定義」と「規則」を軽視した結末
    1-6 大学生は、なぜ「比」と「割合」の概念が苦手になったのか

    【第2章】 マークシート式問題の本質的な弊害
    2-1 国語のマークシート式問題を考える
    2-2 答えをあてる技術がものをいい、良心的答案は不利になる
    2-3 裏技だらけのマークシート式問題
    2-4 マークシート問題では出題できない問題に良問あり
    2-5 大学入試でマークシート式問題は止められないのか

    【第3章】
    3-1 「ゆとり教育」の本質は教育の格差拡大
    3-2 すべては国語教育の充実から始まる
    3-3 大学入試を抜本的に見直せ
    3-4 教員免許の国家試験化を目指せ

    【第4章】 論理的に考え、書く力を磨くために意識したいこと
    4-1 グローバル化時代で大切なのは論述力
    4-2 論理的に考えることの仕組み
    4-3 論理的に考えるためのヒント
    4-4 数学がもつ様々な視点
    あとがき

  • 思ってたのと違ったな。大学・入試・教育批判の本。
    今の数理・データサイエンスゴリ押しの風潮はどのように評価されているんだろう。
    日本の未来のために教育に力をいれるべき、かつての日本の水準は…という論調が多いが、政治家の出る家系らしい。道理で。
    社会に出てから苦労するだけなので、勉強は無料のとこでしっかりやってほしいよね~。

  • 論理的思考の手引きと、それをアウトプットする方法について書かれた本かと思ったが、数学者が現代の大学受験の様相を皮切りに小中高の数学教育について語る本だった。
    そうだと思って読めば、マークシート型試験では論理的思考が身についているか判別できない、証明問題で国語力を含めた自らの頭で考え、物事を根本から理解しようとする力を育むべきだとしてた内容については納得できた。

  • 今は名前が変わったセンター試験。なんのことかよくわかっていなかったAO入試。揺り戻しが来ているように感じるゆとり教育。これらについて、ある数学者、教育者が考えていること。
    大学が増え、少子化が進んでお客様になった大学生。入試はどのような学生を求めているのかを大学が示すメッセージだが、センター試験のようなマークシート式試験で読み取る能力、論理的に考えを述べる能力が弱くなっている。三慧という視点があり、聞慧、思慧、修慧の団塊があるが、これでは修慧の段階まで辿り着かない。ゆとり世代の教員を採用したら当然それが再生産される。インドのIITの入試問題は全て論述式の高度な証明問題であり、二桁の九九がインドの知の底力にあるわけではない。
    数学にしても国語にしても、マークシートのクイズのような問題を解くのではなく、いかに説得力をもった論述ができるかということの重要性を感じた。

  • 「試行錯誤を繰り返し、物事を考える学生が年々増えている」
    その原因を、数学者である著者がおおよそ数学的な目線から、今日の大学入試のやり方を批判し、教育と入試のあるべき姿について論じられた本。

    まず筆者が最も今日の教育の弊害と訴えていたものは入試の「マークシート方式」である。
    本来、「答えを導く」ことが重要な数学が、マークシート方式によって「答えを当てる」教科になってしまっている。
    「何が成り立ち、何が成り立たないのか」を証明する学問であるにも関わらず、大学入試のマークシート方式によってこのプロセスが軽視されてしまっている。
    入試問題は答えを導く記述式の問題が適切である、というのが著者の意見である。

    また、数学の証明問題の重要性について論じられていた。
    証明問題は論理の通った文章を書く訓練であるにも関わらず、大学入試によって証明問題が軽視されているため、教育の場での証明問題を解く機会が減っている。
    今日のグローバル社会では、文化や風習の異なる相手が納得できるように、論理的に考えて自らの立場を筋道立てて説明する力が重要になっている。
    しかし、「正しい答え」を求めることが大事にされている現在の教育ではそのような力を伸ばすことができない。

    現在の教育は「自らの頭で考え」「根本から理解する」力を育む教育からは程遠いところにあるのだ。

    また、個人的に興味深かったことが、著者が教育の弊害の一つとしてあげていた「少科目入試」である。
    確かに最近の私立大学の入試では、どんどん科目数が減っているような気がする。
    これは、大学の偏差値を上げるためであるらしい。
    入試の科目数を減らすときに一番狙われやすいのは「数学」である。

    入試というものは高校までの学びに直接的に関係してくる。
    高校のときを思い返すと、自分も含めた周りの人たちは大学に入るため、大学に必要な科目だけを熱心に勉強していた覚えがある。入試に必要でない科目は軽視されがちである。
    そのため、私立文系狙いの高校生はほとんど数学を勉強しなくなるのだ。

    これからのグローバル社会で生き残るために必要な「試行錯誤して考えることや論理的に表現する学び」を復活させるには、大学入試の体制を抜本的に変える必要があるであろう。

  •  数学、算数は論理的に考える力をつけるとよく言う。そしてその論理的とはどんな人にもわかりやすく説明ができることだともいう。

     だが、自分には数学の照明を理路整然に解読することができない。この到って単純な矛盾を感じてしまうと数学という本性が分からないまま先には進まない。

     この疑問を解決できる先生に今だたどり着けないでいる。
     ただ、著者の書く本は好きだ。

  • 2018/12/20 Amazonより届く。
    2020/7/8〜7/11

     先日読んだ「%が分からない大学生」に続き、芳沢先生の本を読む。数学力の低下がさまざまな問題を引き起こす、というのは同意。もっとも、そんなに高等な数学でなくても、数学的思考のようなものはもっと磨くべきであろう。タイトルに「書く力」とあったが、ちょっと言い過ぎか?「考える」は良いと思うけど。

  • 新聞の読書欄で佐藤優が取り上げていたので手にした一冊。
    国語の重要性を説く数学者という意味では、藤原正彦と同じスタンス。藤原正彦の主張の多くに共感しているワタシとしては、本書の主張についてもウンウンと頷きながら読み進めることができた。マークシートの問題点を、国語・数学の例を挙げながら解説し、答えを「考える」のではなく、「当てにいく」姿勢になってしまうことを問題視する。マークシート式問題はよくないだろうと漠然と思っていたが、その理由を論理的に説明していてスッキリした。
    ただ、どうしても引っかかるのが、本書のタイトル。最近の新書にはありがちだが、本書の内容と必ずしも合っていない。四章構成のはじめの三章は、ゆとり教育とマークシートの問題や入試に関する提言。ようやく最後の章になって、タイトルの内容になる。が、内容は濃いとは言えず、紙数も40ページほど。このタイトルに期待して読んではいけない。

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著者プロフィール

芳沢 光雄(よしざわ・みつお):1953年東京都生まれ。東京理科大学理学部教授、桜美林大学リベラルアーツ学群教授などを歴任し、現在は桜美林大学名誉教授。理学博士。国家公務員採用I種試験専門委員(判断・数的推理分野)、日本数学会評議員、日本数学教育学会理事も歴任。著書に『新体系・大学数学入門の教科書』『新体系・高校数学の教科書』『新体系・中学数学の教科書』(各上下)(講談社ブルーバックス)『中学生から大人まで楽しめる 算数・数学間違い探し』(講談社+α新書)『AI時代に生きる数学力の鍛え方』(東洋経済新報社)など多数。

「2024年 『数学の苦手が好きに変わるとき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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