君の働き方に未来はあるか? 労働法の限界と、これからの雇用社会 (光文社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334037796

感想・レビュー・書評

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  • 労働者側から見れば、企業で雇用されることで①あらゆる会社で必要最低限必要なスキル②専門的スキル③雇用されている企業でしか通用しない特殊なスキルが身につく。企業側から見ると、各企業の業績において差が付くのはスキル③をもつ労働者をどこまで育て上げるかにかかっていたため、従来の人事育成ではスキル③の習得を重視していたことにより、同じ会社に長期間在席していること=スキルが高いという状態が維持され、長期間雇用を継続する年功序列制度がうまく回っていた。企業も長く努めることでスキル③を習得してもらえるよう、正社員に対して法律に規定されている以上のメリットを提供していた。しかし、近年の労働法改正や雇用政策が推し進めているような各種格差是正や定年延長は、実質的に企業が正社員として扱わなければならない社員の増加=人件費というコスト増になるため、これまで企業が自主的に提供してきた正社員に対するメリットを削減せざるを得ない方向(ex.成果主義による基本給の引き下げ、整理解雇ルールの緩和化、企業による労働関連法の無視)に進む。そこで、労働関連法の改正や新設による労働者保護を推し進めるのではなく、労働者側が市場に求められるスキル(スキル①②)を身につけ、自らのスキルの価値を提示し、得る相手を変える(転職)ことができるようになることを勧める。そのような方向は、労働の成果を得る請負や自営業に近い働き方となり、今後の社会の変化を考えるとエンジニア等がそのような転職力を手に入れることになることを示唆し、遊んでばかりいる大学生に対して戦略を持って専門スキルを身につける努力をすべきと説く。現在の社会は筆者が予言するような方向に社会は動いているため、現在学生である場合や若手労働者にとって自己啓発的な意味はあるが、そもそも生きていくために仕事を選ばずに働かなければならない人がいるという現実があることが捨象されている「強者の考え」の感が否めない。また、後半になるにつれて、男女で脳の仕組みや適性が異なると指摘していたり男性差別禁止法が今後制定される未来が来ると予言する等、2014年出版で有ることを考慮してもジェンダー意識が希薄すぎて読むに絶えない記述が多い。

  • 個人と関係構築がやばい つまりこの本の内容は空論だよ

  • 正社員は労働法に守られている。
    これからは労働法もどうなるかわからない。正社員の数も減っていく。
    めざすべきことは、やりたくない仕事はしなくてもよい、自分になること。
    正社員は、守れれている代わりに、いつでも、どこでも、何でも、しなければならない。
    雇用は他人の指示に従って働く、=指揮命令、指揮監督。
    請負は仕事の結果がすべて。他人に頼んでもよい。
    雇用は仕事を教えてもらえる。
    日本では、長く働いたほうが得になる給料システムを設計している。教育訓練にかけるお金を考慮している。
    非正規社員は長く働くことを想定していないので教育訓練はあまりない=長く働いても技能は向上しない。
    残業代込みの基本給、は間違っている。残業代を放棄できない。
    正社員とは、企業が長期的に抱え込み幹部に育てようとしている社員。そうでなければ、正社員の形でも使い捨てにされている、という表現をされる。ブラック企業もそのひとつ。
    ブラック企業をやめてしまうと他に転職の道がない場合が一番困る=転職力を持つこと。

    解雇を制限する法律は2003年にできた。労働契約法。それまでは判例で規制。
    天職市場が未整備であれば、解雇に伴う不利益が大きい。解雇を制限するルールが必要だった。
    解雇の代わりに補償金を払うルールを導入すべき、という議論。=割増退職金と同じ。
    専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制。
    イタリアでは、企業側の人間と労働者側の人間に分かれる。
    日本は労働生産性がイタリアより低い。イタリアではメリハリをつけて働いている。
    イタリアでは労働組合が産業別になっている。
    イタリア人のモチベーションは、何でもやることで出世を目指すのではなく、業界のプロとして技能を高めること。
    日本の労働組合は、企業の中の一組織。
    イタリアは、ジョブ型雇用といえる。
    何でもやる社員、は転職力にとってはネック。

    スキルには3つある。
    最低限仕事をするスキル、その会社で通用するスキル、専門的なスキル。これを磨くのが転職力を高めること。

    ILOの宣言で、「労働は商品ではない」=奴隷のように売り買いしてはいけない。は、事実か?
    訓練への投資の経済的インセンティブ=MBAを取得する費用は、会社が貸し付けたことにして一定期間勤務すれば免除する。
    かつては、アメリカでは労働食い合いは独占禁止法に反するものとして違法とされていた。
    労働時間規制の限界=指揮命令下に置かれている時間。カウントができない時間が増えている。

    労働法はパターナリズム。家父長主義。強者が弱者に配慮するという行動規範。弱者はいつまでたっても弱者。強者になるには転職力をつけること。

  • 「働き方」を労働法の観点から解説している良書。東レ総合研究所宮原部長お薦め。

    P89ー90 ブラック企業家どうかの判断には、企業と個人の相性の面がある。個々の企業がブラックかどうかを判定するよりも、働く側にとって企業を選ぶ際の情報開示をしっかりとして、企業をブラックと呼ぶかどうかの判断は個人に委ねるべきである。例えば、勤務時間が長くてメンタルで問題がある社員がいるけど、育成をしっかりとしてくれてやりがいがある仕事をどんどん任せてくれる企業があるとして、WLBを重視している人にとってはブラックでも、働きがいを強く求めている人にはブラックでは無い。
    p150 イタリア的な働き方の本質;イタリアでは、産業別に労働協約がある。労働条件の交渉は産業別に経営者団体と労働組合の間で行われる。企業別の協約は産業別の協約を補完する意味合いしかない。従って、イタリアでは大企業に就職しないと高い給料を得ることができないということはなく、自分が専門とする仕事についてどれだけ難易度が高い仕事が出来るかが重要となる。
    P172 日本企業にとって正社員とは「いつでも」「どこでも」「なんでも」やることを前提に非正社員よりも恵まれた環境を与えられているという側面がある。ブラック企業の犠牲にならないために、自分のスキルが商品であるという意識を持って「転職力」を高めておく必要がある。

  • 働き方を、労働法の観点から問題提起する良書。これからの時代の働き方はどうあるべきか。
    残業削減の議論だけではなく、一人一人がプロとして生きていくべきだという主張に賛同。

  • 若い人が読んでも参考になるが、今、働いている人も参考になる本である。これからは、ただ正社員を目指すのでなく、転職力を持った正社員でなければならない。

  • 「人生の戦略として大切なのは①自分の適性と今後の産業界の動きをしっかり見据えながら、自分の目指すべき方向を掴んでいくこと。②同じような意識をもって人生の戦いに挑んでいく人たちとの横のネットワークを作っていくこと」

    働くのがもう嫌だと思っていたけど、本を読んで、能力が向上しない自分への苛立ちが発端であることに気付いた。
    自分のことを見つめ直したいと思う。

  • 正社員という優位な立場で働く人たち。
    ただし、会社に従属するという関係のデメリットは負う。
    しかしながら、このような従属するという関係性も今後はうすれつつある。
    時代の流れとともに、会社に従属せずにプロ化する必要性が迫ってくるだろう。
    なんでもできる人材は要らず、むしろ秀でたものがある人材のみが生き残れる時代が来る可能性がある。

  • タイトル通り。悩まなきゃ。

  • 派遣労働や60歳再雇用などを手厚くした結果、正社員の待遇が引き下げられ続けているという指摘はいままで気がつかなかった。正社員になることは従属関係(奴隷状態)を意味するが、それのデメリットとメリットを比較するという考え方。イタリアでの現状比較のうえで、仕事のプロとは何か、仕事のプロを目指す必要性を説く。読み手(ホワイトカラーを想定)に対して、常に読み手の利益を考えた本の構成に著者の思いやりを感じた。

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著者プロフィール

1963年生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了(博士[法学])。神戸大学法学部助教授を経て,現在,神戸大学大学院法学研究科教授。主な著書に,『君は雇用社会を生き延びられるか』(明石書店),『人事労働法』『AI時代の働き方と法』『雇用社会の25の疑問』(以上,弘文堂),『デジタル変革後の「労働」と「法」』(日本法令),『労働時間制度改革』『非正社員改革』(以上,中央経済社),『労働法で人事に新風を』(商事法務),『経営者のための労働組合法教室』(経団連出版会),『会社員が消える』(文藝春秋),『君の働き方に未来はあるか』(光文社)等。

「2021年 『誰のためのテレワーク?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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