- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334038588
感想・レビュー・書評
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組織には二つの側面がある。ハードな側面とソフトな側面がそれ。ハードな側面は部門・部署、制度・規律、職務内容と手順などの明文化されたもの。一方、ソフトな側面は、意識・モチベーション、コミュニケーション、信頼関係・影響関係など可視化されていない心理的側面。
ハードな側面のほうはバブル崩壊後に大規模な変革が行われて今に至るそう。一方、ソフトな側面のほうは軽視している経営者が多いのではないか、とある。でも、このソフトな側面は重要なのです、というのが本書の出だしなのでした。
組織開発とは、大きく、このハード面とソフト面を変革して、より合理的に利益を得ていけるようにすることと、働く人たちがより無駄なストレスなく活き活きと働くことができるようにすることを推し進めていくものです。
組織開発はアメリカで1950年代終盤に生まれた概念で、1960年代には日本にも入ってきています。ただ、日本では人事異動の際に組織開発に携わっていた人たちが、うまく次の担当者へと引き継ぎができない構造になっていて、そのノウハウは早くも70年代には失われていったそうです。しかしながら、近年再注目されてきていて、本家アメリカでは70年間の歴史の中で受け継がれ発展してきた分野でありますから、アメリカに学ぶ形でまた日本も再導入しようという先駆けのひとりなのが、著者なのでした。著者はアメリカでプログラムを受けており、その知見をこうしてもたらしてくれているのです。
マネジメント観には「X理論」と「Y理論」と呼ばれるものがあるといいます。「X理論」を持つマネージャーは、人は生まれつき仕事が嫌いで、したがって人には監督と命令が必要とします。そして、目標に達成無い場合は罰則を与えるべきだとします。一方、「Y理論」を持つマネージャーは、人は自ら実現したい目標のために自己統制を発揮し、個人と企業の目標が一致すれば、人は自発的に自分の能力を高め、創意工夫をし、自発的に行動すると考えます。
「X理論」のマネージャーは指示命令的で、その結果、部下は受動的になりやすくなります。「Y理論」のマネージャーは部下に適切な目標と責任を与え、部下の力を引き出すような関わりをし、その結果、部下は主体的になっていきます。
著者は、現代日本が抱える問題として、本書刊行当時(2015年)に50代以上の上司が上意下達で育ってきた人たちであるため、「X理論」の考え方を持つ人が多いことを挙げています。現在の現場の社員などは、主体的に考えて動くことが必要とされているのに、上司は自らの「X理論」に基づいてふるまうことで、若い社員の主体性が育むことを阻んでいることを指摘しているのでした。
どんなチームや職場、組織を作っていきたいかといったことには、経営層や上司のマネジメント観が密接に関係してきますから、若い社員の成長や働きがいなどのためには、上層部の意識の変化が必須ということになります。
昨今さまざまな本が出ている「コーチング」や「ファシリテーション」といった手法にしてみても、組織を活発にするものなのは間違いないものだととしたって、その手法を行使する者のマネジメント観が「X理論」であるならば、あまり意味をなさなくなるというようなことも書いてありましたし、なるほどそうなだろうな、と納得がいきました。
「コンテント」と「プロセス」という言葉が出てきます。「コンテント」とは、WHATの側面で、つまりは何が話されていて、何が取り組まれているかという、話題・課題・仕事の内容的な側面になります。一方、「プロセス」はHOWの側面で、関係的過程、つまり「いま、どのような気持ちか」「どのように参加しているか」「どうのようにコミュニケーションがなされているか」「どのように課題や仕事が進められているか」「どのように決められているか」「お互いの間にどのような影響があるか」といったところを見ていきます。「プロセス」は人間関係的な部分に踏み込む視点だと言えると思います。だからこそ、企業の風土や現場の空気のマイナス面に光を当てることができ、言語化し意識化を進めることでそれまでマイナスだったところをゼロに戻す努力をしていくことができるようになる。
他方、ゼロからプラスに転じていく手法もあります。AI(アプリシェイティブ・インクワイアリー:真価の探求)がそれにあたるもので、組織や個人の潜在力・強みに着目し、それらがさらに発揮される未来を描いてアプローチしていく、という道筋をたどります。
他にもさまざまな手法を、紙幅の関係かとは思いますが、その骨子とでもいうべきところを手短に説明していくような体裁で、組織開発というジャンルに触れられる仕組みになっています。これって、職場のハラスメントを無くすための根本的アプローチになっているので、経営層のみならず人事担当者などもまずこれらを知っておき、それから自分の内にインストールするかのようになじませていくと、その企業・会社の発展ひいては社員や職員の活気やパフォーマンス向上に繋がっていくのだと思います。そしてそれらを経て、企業イメージ向上があとからついてくるものだと思われます。
最後に、「マネジアル・グリッド」という言葉と考え方を付記します。グリッドというくらいですから座標でその職場環境の様子をあらわします。「1.9型 社交クライブ型(人や関係性を重視する)」「9.1型 専制型(業績最優先で人の関係性は考えない)」「1.1型 伝達型/消極型(業績も人との関係も最低限)」「5.5型 妥協・中間型(業績と人との関係の両立は無理なので両者のバランスをとるあり方)」。また、「9.9型 理想型(業績と人の両立。組織目標と個人目標の統合)」という本当にかつては理想とされたタイプがあるのですが、まず組織開発で組織のソフトな側面を改革していくことによって、達成が見えてくるものだと思われます。本書でも、この理想型を目指すことの大切さが説かれています。
というところですが、たとえば実践してみたとすると、非協力的な従業員などが絶対にでてきますよね。目に浮かびますからねえ。でもそこに負けずに、ぐいぐいと、働きやすくて働きがいのある職場にするために、この組織開発、それもソフトな側面についての開発は、どこの組織や会社でもやっていってほしいなあと願うところなのでした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
どちらかというと組織の育成(発展)よりも、
個人の育成に興味のある自分ですが、
全く無関係ではないという点と
アメリカでこういった系統の授業をあまり履修しなかったので、
まず全体像をざっと知るために読んでみました。
コンパクトに全体像が知れるという点では、とても良い本だと思います。
あだ、これ読んだからと言って何か実務に実践できるか?と聞かれれば、
ほとんど何もできない、という回答になってしまうかもしれません。
(タイトルにある通り、「入門」ですので、仕方なし。)
なので、この本で自分の興味のあるキーワードを拾ってきて、
自分なりに深堀していく必要があります。
そういった用途で使う分には、結構お手軽でよい本かと思います。 -
組織開発の考え方をわかりやすく開設した本。スコラの風土改革と相通ずるものがたくさんある。以下特に気になった部分を抜粋。
組織開発は性善説に基づき、如何にして個人が当事者意識を持って能力を発揮する環境を創るかを型にはまらず模索する考え方。
マネジメントの参考になる考え方が散見された。
◯組織の6つのマネジメント課題
<ハード>
・目的、戦略
何のための組織か、将来どうなっていくか
・構造(組織設計)
仕事の分担、人員配置
・業務の手順、技術
効率化、IT化、プロセス改善
・制度
モチベーションを高めキャリアを開発するため
評価、報酬、目標管理、メンタルヘルス、昇進
<ソフト>
・人
個人の能力、スキル、リーダーシップ、モチベーション、満足度
・関係性
チームワーク、コミュニケーションの仕方、組織風土、文化
◯モチベーション
・内発的動機づけ
やること自体の動機づけ
⇨サービス業向け、お客社会のため
・外発的動機づけ
報酬や罰など
⇨上司の顔を見て働くようになるリスクもある、
⇨個人戦で勝てる強い人たち向き
・内発的動機を高めるためには、仕事の意味を理解し腹落ちすることが必要条件の一つ
◯組織開発
組織の当事者が自ら組織を良くしようとする活動を支援すること。
組織開発での究極な問いは、
「あなたはどのような(関係性が育まれている職場や組織を作りたいか?」
神戸大学 金井氏
Doable 何ができるか
↓
Deliverable 何をもたらせるか
◯性悪説、性善説
X理論
人間は本来怠け者で、仕事をしたがらないという人間観
Y理論
人間は自己実現のために行動し主体的に仕事をするという人間観
◯マネジリアル・グリッド
マネージャーや組織の評価軸として、業績目標達成に対する関心、
人の幸福とお互いの関係性に対する関心を設ける
9:9型が組織に理想
◯ジョハリの窓
二者間のプロセスを4象限に分けて分類。
相手が知っていて自分が知らない”盲点”の領域をお互いが知る”開放”の領域に広げることが大事。
個業化が進んでいる中、コミュニケーションが不足し、開放領域が狭くなりがち。
お互いがわかっていないと、個々人が悪い方に推測してさらに関係が悪化しがち。
◯部門間の対立を解決する
・対立解決セッションは組織開発の伝統的な手法:バーク著「組織開発教科書」
1. ①自分たちは自分たちをどう見ているか ②自分たちは相手をどう見ているか ③相手は自分たちをどう見ていると思うか を整理する
2. ①⇢③の順でお互いのグループの認識を話す。 どちらが正しいかということは議論しない。
3. 各グループでお互いの問題点をリスト化する
4. お互いのグループで問題点のリストを照合する。 重要度の順にランク付けする。
5. それぞれの問題点にグループを分け、解決策と具体的なアクションプランを策定する。
◯AI(Appreciative Inquiry):対話型組織開発の1つのアプローチ
強みや潜在力に光をあて、それを引き出すことを目指すアプローチ
AIの5つの原理(クーパーライダー)
1. 構成主義の原理:Worlds creates world. 語られる言葉が組織の風土や文化を形作っていく。 仕事がきついきついと言えば、そうなっていくし、 強力して元気よくやろう!という職場はそうなっていく。
2. 同時性の原理 問いかけることと変革は同時に進む。 値にを問いかけるかによって結果も変わる。 何がだめだったか⇢何が良かったか、を問うと良い部分に焦点があたる
3. 詩的(開かれた本)の原理 組織の過去、現在、未来は開かれている詩のようなもので、 どのように解釈するか選択できる
4. 予期成就の原理 未来へのイメージが現在の行動を導く。 未来への期待が現在の前向きな行動を生み出し、 その実現が可能になる。
5. ポジティブの原理 ポジティブな感情や関係性が変革の潜在力の発揮を可能とする。 ポジティブな問いかけが変革を持続させる。
◯OD実践者
人事部に組織開発の機能を持たせ、HOD(Human & Organization Development)として機能させる。
最初は外部コンサルを使ったとしても、継続的に組織開発を行う部門を社内に設ける必要がある。
経営企画やその他の部門が担うのもあり。 -
『マンガでやさしくわかる組織開発』で参考文献として挙げられ、新書版で読みやすいだろうと思い続けて読んでみました。後で気が付きましたが、著者が同じなんですね。
こちらは『マンガでやさしくわかる~』よりももう少し詳細について記述があります。使われている言葉も(もちろんそれぞれに説明はありますが)「X理論・Y理論」「学習する組織」「マネジリアルグリッド」といった、ビジネス書では出てくる専門的な言葉が使われています。
ただ、当然ながら「当事者自らが主体的に自分の組織を良くすることを目指す」といった組織開発の根本的な部分は同じですので、すっと入っていけるように思います。
チームを率いる人や、メンバーに主体的に仕事をしてほしい、といったことを考えているマネージャーやリーダーは得られるものが多い本になるでしょう。 -
組織開発についてちゃんとした本を読んだことがなく、学びの多い時間になりました。
チームビルディングとか1on1とはサーベイフィードバックなどは組織開発を推進するための手法の一つに過ぎない。手法ありきで導入するのではなく、組織開発に最善の手法を選ぶことが大事。 -
読点が多くて、カタカナやアルファベットの略称などが注釈無しでたくさん出てきて、読みにくかった。
なんとか最後まで読んだけれど、結局自分のような下っ端レベルから取り組めそうなことを吸収することはできなくて、がっかりしてしまった…。 -
仕事で組織レベルの改善について考える必要があったため、最近のノウハウではなく基礎を知りたいと思い購入しました。戦略や制度といったハードの側面はさまざまな事例があるけど、人や関係性といったソフトの側面はあまり学ぶ機会がない。特に日本では研究も少ない。本書を通じて、1960年代アメリカでの組織開発の起こりから現代までの歴史から紐解かれています。OD(Organization Development)実践者が組織に対してとりうるモードを分類し、体系として解説されており、まさに入門といったかんじです。そもそもOD実践者というロールを意識したことがなかったので、その立場から組織を捉えてみようと思いました。また、やはりGEでの事例が取り上げられており、組織開発の好例として別の本を読んでみようと思いました。内容は消化しきれていないので、いまの組織に当てはめながら他の本も参照して理解を深めたいです。
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組織開発における基礎知識が体型立てて学べる。
一番の学びは、
目に見える「コンテント」ではなく、
「プロセス」を捉え働きかける必要があること。
また、「何をするか(Doable)」ではなく、
「どうあるか(Being)」に注目すべきということ。 -
組織開発の基本知識がコンパクトにまとまっています。タイトルの「入門」に偽りなし、です