教育という病 子どもと先生を苦しめる「教育リスク」 (光文社新書)

  • 388人登録
  • 3.78評価
    • (19)
    • (36)
    • (30)
    • (3)
    • (1)
  • 32レビュー
著者 : 内田良
  • 光文社 (2015年6月17日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334038632

教育という病 子どもと先生を苦しめる「教育リスク」 (光文社新書)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 「善きもの」はほんとうに怖い
    学校、会社、国
    そして

    「善きもの」を振りかざし
    そこら辺のものをなぎ倒し
    傲慢になっていることに
    当人は 先ず 気が付かない

    「正しいことを言っている者には 気を付けろ」
    いつも思うことである
    「正義を振りかざす者には 気を付けろ」
    いつも思うことである

  • 私が内田良先生を知ったのは、部活動問題について真剣に考えたいと考えていた時期、たまたま、NHKで組体操の特集をやっていたとき。日本の学校での「教育リスク」。おかしいと思っていても、それがすでに日常となっているから声に出すのが憚られる。私たち若手教員となれば対外的にも(公務員は厚遇されていると考えられがち)対内的にも(上下関係が厳しい)声には出せる環境ではない。でもこれだけデータが提示されたことで、私たちは強力な後ろ盾を得た。この本で言及されている学校現場の常識、冷静に考えればおかしいことだらけだ。

    まず、中学部活動の調査。長時間・土日の部活動は生徒も教員も望んでいないとされているけれど、もう少し言うと「望んでいるのは少数派」とも言える。少数派である声の大きい教員、保護者、そして生徒の声で、その他大勢の声が掻き消されている状況ではないかと思う。その在り様が“正しく”そして“理想的”だから、理性的な反論ができない。

    そして柔道事故の章で述べられていた、死亡率の高い中1と高1。いきなり別世界に放り出された1年生は、加減を知らない。「こういうものなんだ」と思ってしまう。上級生も、下級生が「加減を知らない」ということがわかっていない。

    先輩である同僚の体育科教員は「大切なのは、怪我をしないこと!」といつも生徒に言い聞かせているらしい。個人的な実感としては、学校へのクレームが増えていると言われている今、体育科の教員だからこそ、そのリスクをきちんと認識できている人が多いのではないかと思う。だとすれば逆に、体育科以外で顧問をしている教員は?競技未経験の教員は?初任者研修も受けることが出来ず、教員採用試験の勉強をしながら毎日顧問をすることとなった講師の教員は、専門家である体育科教員ですら恐ろしいと思っているようなそんなリスクを背負っている…そういうことになる。

    繰り返される部活動事故。誰かが死なないとわからないのか…と言うどころか、怒りから敢えて乱暴な言い方をしてしまえば、「死んでも」わからないようだ。この「感動」で、命をどれだけ粗末にすれば気が済むのだろう。どれだけその姿勢を再生産し続けるのだろう。担任を何年か経験すれば、生徒が入院した、救急車で搬送された…ということは起こるもの。それだけでも大変な不安なのに、部活動で重大な事故が起こったらその先に何があるか、想像する余裕すらないのだろうか。教育現場の危険は、あまりに日常的すぎる。その想像を少しでもせねばならないと、改めて思った。

    現場に立ついち教員としてこの問題にどう向き合うか考えていたが、この本を読み終えて思ったことは、学校側の勇気が試されているということ。もし、保護者が…生徒が…と言って生徒を傷つけるような、あるいは危険な活動を続けてしまうというのなら、毅然とした態度で「これは生徒にとってこのようなリスクがあるので、やめます」と言えるようになれればいい。教員の労働環境も同じ。校長とそのさらに上が、そのバックアップをしてくれたらいい。あとは教員のリスクに関する知識だけだが、それはこの本があれば大丈夫。険しい道だけれど、道がないわけじゃない。

    若手には辛い状況だけれど、でも次に子どもを教育現場に預けることになる子育て世代として、私はこの状況を改善したい。なにより、この状況を「教員を目指します!」と言って卒業していった教え子の代までに持ち越すということを、私はしたくない。この問題に直面して自分のキャリアを考え直すより先に、まずはこの問題に当事者として関われることを喜んでみるのもいいかもしれない、と思った。

  • 柔道での死亡事故が多いという話が何年か前に話題になったことがあった。しかし、ここ数年、死亡事故は起こっていない。海外では前からない。リスクをしっかり意識するかどうかではっきりと結果は違ってきている。「スポーツにけがはつきもの」などと言って、少々ふらふらしていても練習を続けてしまう。試合のときなどは、それが美談になりもする。しかし、脳震盪を起こしたあと、ゆっくり休めば問題なかったものを続けたために死亡へ至るということが今までに何度も繰り返されてきた。そういった事実(エビデンス=科学的根拠)を著者は提示し、問題提起をしてくれている。運動会・体育大会の組体操もしかり。感動、クラスの一体感などを持ち出して、どんどん高いタワーへとエスカレートしていく。重傷を負う子どもがいても、次の年も同じように行われている。これには、学校側だけではなく、保護者や地域からの要望もあるようだ。体罰で生徒を死に至らしめた教員の罪を軽減してほしいとの署名をするという生徒・保護者がいる。人の命があまりにも軽んじられていないか。たまたまですまされていないか。周りの意識が少し変わっただけで、助けることのできる命ではなかったのか。これは、教員だけではなく保護者・学校に関わるすべての人に読んでほしい本だ。ところで、ツイッターで著者の写真を拝見しました。茶髪か…見た目で判断してはいけない。若い!(奥付に生年月日がない)

  • ブラック部活動に続く問題提起。だいぶ世間の注目を集める結果になったなあと思います。教員=聖職者かと。昼夜関係なく生徒のために生きる仕事ではないはずで、周囲の人々も疑問視することが大事だと思いました。

  • 部活は本当に見たくない

  • 2017/10/02

  • 学校におけるリスクを直視する重要性が説かれていた。紹介されているリスクは本当に「教育」によって見えなくなっている。見たくないものは見ないようにするのはやめてしっかり見なければ解決には繋がらないと思った。

  • S370.4-コウ-760
    300435195

    教員の体罰問題は指摘され続けています。なぜ体罰は起こってしまうのでしょうか。また最近では、部活動担当者の加重負担の問題がクローズアップされてきています。そもそも部活動を教員のみが担当することは合理的なことなのでしょうか。さらに組体操の危険が新聞等で報じられています。学習指導要領のどこにも規定されていない組体操を、なぜ体育祭や運動会で行うのでしょうか等々。本書はこれまで見過ごされてきた「教育リスク」を易しく解説してあり、学校現場を理解するための一助となる本です。

  • 自分自身は教育に興味がないというか,教育学部の学生がそのイメージと異なりかなり勉強しない実情や,現職教員であっても認定講習などを受講する姿勢を子どもたちが見たらがっかりするような実情を知ってしまっている立場からすると,教育リスクは「子どもに見せる背中を持っていない教師が多い」ことに起因するのではないかという印象があります。背中がないから保護者の目を気にし,迎合するのではないか,と。

    それはそれとして,著者は社会学者なので本のタイトルから明らかなように「ペシミスティック」な議論になるのは仕方がない。教育に存在するリスクはあるとしても,ただ,論理的な議論かどうかが大事だと思います。『考えてみると,「つきもの論」は,「どれだけ怪我をしてもよい」「どれだけ不満があってもよい」と同義である。』(p.19) は本当なのでしょうか? つきもの論は本当に思考停止状態なのでしょうか? 思考停止だと決めつける「思考停止」になっていないでしょうか?

    教育リスクについて訴えることは非常に意味があるという点については心底同意しますが,ペシミスティックな仮説をそのまま結論に結びつけてしまう危険性に注意した議論が必要だと思います。

    もう1つ,認識論的には「エビデンス」はデータと同義ではないので,たとえ「数量的データ」であっても,客観的なのは数値であって,それに対する解釈は客観的ではないことも忘れてはいけません。「論より証拠」ということわざは認識論的には間違いで,エビデンスを金科玉条にする思考停止に陥る危険性があることも踏まえて,読み進めるべきです。




    *****
    これまでにも多くの書が,教育問題という負の側面に関心を寄せてきた。だが,それらの問いかけのなかで欠けてきたのは,教育のさまざまな問題が,教育の「正の側面」を追求するからこそ起きているという視点だった。教育という「善きもの」は善きがゆえに歯止めがかからず,暴走していく。「感動」や「子どものため」という眩い教育目標は,そこに潜む多大なリスクを見えなくさせる。(pp.3-4)

  • 教育社会学の本の中で最もアクチュアルかつまともな提言

全32件中 1 - 10件を表示

内田良の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
三浦 しをん
有効な右矢印 無効な右矢印

教育という病 子どもと先生を苦しめる「教育リスク」 (光文社新書)はこんな本です

教育という病 子どもと先生を苦しめる「教育リスク」 (光文社新書)を本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

教育という病 子どもと先生を苦しめる「教育リスク」 (光文社新書)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

教育という病 子どもと先生を苦しめる「教育リスク」 (光文社新書)を本棚に「積読」で登録しているひと

教育という病 子どもと先生を苦しめる「教育リスク」 (光文社新書)のKindle版

ツイートする