漢和辞典の謎 漢字の小宇宙で遊ぶ (光文社新書)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334039110

感想・レビュー・書評

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  • 151頁:少し補足すれば……呉音が「仏教で多く用いられる」理由は,仏教が百済から伝えられているので,仏教にかかわる語は(必然的に)呉音で伝えられたということである。
    ・筆者は日本語史の専門家だから,たぶん自明のことで説明不要なのだろう。(156頁の文をまねれば「百済では呉音で発音されていたことぐらいみんな知ってるでしょ,ということなのだろうか」。)ここには,なぜ百済人は漢字を漢音(中国北方音)ではなく,呉音(中国南方言)で発音したのかの理由説明がない。それがないので,なぜ「必然的」なのかわたくしには理解できない。百済の歴史をまなべば,対立する半島北部の諸国を通らず(通れず),大陸とは海上交通によって交流していたというようなことが書いてあるのかも知れないが。ともかく,この補足は,筆者の引用する『旺文社漢字典』の「古代の日本人は……中国の南朝と貿易していたので」という説明より,わたくしにはわかりにくい。
    152頁:同じ「行」という字に呉音「ギョウ」,漢音「ゲン」,唐音「アン」……
    ⇒漢音「コウ」
    156頁:(『漢字源』改訂第五版の「この辞典の使い方」の「漢字の成り立ち」の条には)「六書(りくしょ)」についての説明がないようにみえるのです。
    ・この本は持っていないが,これも漢和辞典なのだから,親字「六」に項目として「六書」はあると思う。そこを読んで,それから象形・指事……と芋づる式に読んでほしかったのではないでしょうか,辞書の編纂者は。
    159頁:「意味を表わす文字」は……「意符(義符)」と呼ばれ,「発音を示す文字」は「音符」と呼ばれる。
    ・「意符(義符)」としたのなら,対にして「音符(声符)」としたほうがよかったのではないか。「声符」は日本語学では使われないのだろうか。
    201頁:図26『雜字類編』
    ・まず,余談。本書で引用される書籍名に使われる漢字の原則がわからない。ここでは「雜」字が使われている。図21は『異体字弁』。『異体字研究資料集成』所収本は見ていないが,書名には「体」と「弁」という異体字が使われているのだろうか。以下本題。想像だが,この図26は,実際の書冊をコピー機で複写したものではないか。そのためだと思うが,右端(本ののどに近い部分)が黒ずんでしまい,言及されている肝腎の「斤」字のふりがなが見えなくなってしまっている。ここは,コピー機ではなく写真撮影するか,早稲田大学図書館の古典籍総合データベースにある画像(p0040.jpg)を借りるなりして,ふりがなが見えるようにしてほしかった。
    336頁:学研新漢和大辞典
    ⇒学研新漢和大字典

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著者プロフィール

1958年、鎌倉市に生まれる。早稲田大学大学院博士課程後期退学、高知大学助教授を経て、清泉女子大学文学部教授。専攻は日本語学。
著書に、『仮名表記論攷』(清文堂出版、2001年、第三十回金田一京助博士記念賞受賞)、『文献から読み解く日本語の歴史』(笠間書院、2005年)、『消された漱石』(笠間書院、2008年)、『文献日本語学』(港の人、2009年)、『振仮名の歴史』(集英社新書、2009年)、『大山祇神社連歌の国語学的研究』(清文堂出版、2009年)、『日本語学講座』(清文堂出版、全10巻、2010-2015年)、『漢語辞書論攷』(港の人、2011年)、『ボール表紙本と明治の日本語』(港の人、2012年)、『百年前の日本語』(岩波新書、2012年)、『正書法のない日本語[そうだったんだ!日本語]』(岩波書店、2013年)、『漢字からみた日本語の歴史』(ちくまプリマー新書、2013年)、『常識では読めない漢字』(すばる舎、2013年)、『『言海』と明治の日本語』(港の人、2013年)、『辞書からみた日本語の歴史』(ちくまプリマー新書、2014年)、『辞書をよむ』(平凡社新書、2014年)、『かなづかいの歴史』(中公新書、2014年)、『日本語のミッシング・リンク』(新潮選書、2014年)、『日本語の近代』(ちくま新書、2014年)、『日本語の考古学』(岩波新書、2014年)、『「言海」を読む』(角川選書、2014年)、『図説日本語の歴史[ふくろうの本]』(河出書房新社、2015年)、『戦国の日本語』(河出ブックス、2015年)、『超明解!国語辞典』(文春新書、2015年)、『盗作の言語学』(集英社新書、2015年)、『常用漢字の歴史』(中公新書、2015年)、『仮名遣書論攷』(和泉書院、2016年)、『漢和辞典の謎』(光文社新書、2016年)、『リメイクの日本文学史』(平凡社新書、2016年)、『ことばあそびの歴史』(河出ブックス、2016年)、『学校では教えてくれないゆかいな日本語[14歳の世渡り術]』(河出書房新社、2016年)、『北原白秋』(岩波新書、2017年)などがある。

「2017年 『かなづかい研究の軌跡』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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