物流ビジネス最前線 (光文社新書)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (214ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334039318

感想・レビュー・書評

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  • 著者は齋藤実氏。日通総合研究所を経て、現在は神奈川大学の教授。

    感想。最前線感はある。物流業界や物流業務、イメージ通りだけど、結論に至る過程を腹落ちさせてくれた。

    備忘録。
    ・米国/ウェブバン社。1996年頃からグロサリーのネット通販を始めたベンチャー起業で、2001年には破綻。当時は広いアメリカで都市部だけでなく郊外も含めてネット通販を展開、自社物流網の運営コストとペイせず。アマゾンはウェブバン破綻後に同社のキーマンを招き、失敗の原因を徹底に分析。
    ・ネット通販のラストマイル機能。最終工程、家庭や企業に届ける最後の配送。
    ・ネット通販の物流センター機能。字の如く。物流センターとラストマイルの組み合わせ。
    ・ネット通販の物流ビジネス化。
    ・ネット通販向けの3PLを展開しているのは、日通、日立物流、NTTロジスコ、スクロール。
    ・アマゾンの物流の仕事を、佐川急便は撤退し、ヤマトが受託。費用対効果が悪いのか、其の後佐川急便は増益、ヤマトは減益。
    ・米国の物流三社、UPS、fedex、アメリカ郵政公社。
    ・日本の物流事業は、規制緩和→過当競争→コスト競争→人件費削減→ドライバー不足て疲弊。
    ・米国/インスカートという面白いネット通販会社。既存店舗の商品をネットで販売。配送はショッパーと呼ばれる個人登録者が、代わりに店舗でピッキングして届ける。ウーバーに似た手法。

  • 物流というと範囲が広大だが、成長著しいネット通販を支える宅配便と、それに関連するサード・パーティー・ロジスティクスを中心とした業界の歴史、現状、海外との比較、課題、展望といった宅配便まわりを網羅する一冊。去年読んだ「仁義なき宅配」(横田増生)とも少し内容がかぶるが、面白かった。ただ、ドライバー不足という物流業界の問題点を運送会社の過当競争に帰し、更にそれを物流二法の改正という規制緩和を原因とする見方や、高齢者等が近隣で食料・日用品を買えないという買物難民の問題についても、やはり大店法改正という規制緩和を原因とするのは、ストーリーを分かりやすくして新書という紙数の限られた中で説明するには便利かもしれないが、短絡的なように思う。

  • 止まらないネット通販(BtoC向けのみならずCtoC、BtoBも含め)の流れの中で、競争優位の大きな源泉となり得る物流に的を絞り、そこで起きている課題やテクノロジー・最新サービスの事例などを、物流研究者として知られる著者がまとめた一冊。

    個々の内容はある程度の物流に関する予備知識がある人であれば大体聞いたような内容であり、さほど新しいとは言えないと思うが、その網羅性や専門家ならではの豊富な参考文献/リファレンスは有用。

    物流に関してはサプライチェーン全体を跨いだIoTによる需要予測・配送効率の最適化や、ロボティクスによる自働化、ラストワンマイルの配送工程におけるシェアリング型サービスなど、色々な動きが同時多発的に出てきており、どれも引き続き注視していく必要がある。

  • 昨今のネット通販の隆盛により、激変する物流業界の今を簡潔に理解することができる。
    前半はAmazonをメインターゲットととした物流モデルについてで、アメリカの例も出しながら業界の変遷を辿る。
    後半はネットスーパーをテーマとして、物流の将来像を考察するも、新書という紙面の都合上、物足りない記述なのが少し残念。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/685541

  • ある程度内容は古くなっていますが
    物流の歴史を知る意味では非常に良い本です。

    今でこそ当たり前に翌日に届き、
    当たり前のように通販は使われますが
    その背景を見るにつけ、まだそこに従事する
    人たちの改善はされていません。

    それと少しだけある時代の某運送会社のお話に
    触れられていましたが、バブリーな時代に稼げてたのは
    本当のお話だったようです。
    (知り合いの人がまさにその運送会社の人でした)

    終章のネットスーパーは…
    情報は少し古いかな。
    今は結構メインで使われているので。

  • ネットショッピングを例にとると、日本の消費者は物流面において恵まれすぎている。送料無料や翌日配送、日付指定や再配達が無料なのはどう考えてもおかしい。特に再配達は宅配便の配送車両の走行距離の25%を占めるという。
    実際にはそういったサービスも加味された商品価格になっているはずで、そういったサービスを使わない人たちも実質的に費用を負担していることになる。また、日本の消費者のほうがアメリカよりも迅速性を求めているという。物流会社やそこで働く人たちの負担が大きすぎる現状は改善されるべきであると思う。

  • 教科書っぽい。ラストマイル。日米の三社独占状態が良く似てるって話がふーんと思った。

  • ・アマゾンフレッシュの原型であるグロサリーのネット通販の起源は1996年にウェブバン社が始めて、物流に一番力を入れた。
    ・最終的に全米の26都市での事業展開を構想し、各都市に大規模な物流センターを作るべく、10億ドルもの建設費を投じる計画だった。また、配送用トラックもトラックドライバーも大量に雇用した。
    ・が、2000年にITバブル崩壊で、次々とセンターは閉じて、2001年に経営破綻した。
    ・アマゾンも同時期に経営危機に直面した。が、大規模なコスト削減とリストラにより、経営危機を乗り切った。

    ・ウェブバンの失敗は物流センター内の作業効率の悪さと商品の配送圏域設定。

    ・アマゾンはウェブバンの元経営幹部4人を新たに雇用し、グロサリーの成功ポイントを調査した。結果、スモールスタートと顧客への配送効率と物流センター効率化が挙げられた。
    ・その後、アマゾンフレッシュはサンフランシスコとロサンゼルスに限定して、2013年に開始し、2014年にサンディエゴ・ニューヨーク・フィラデルフィアと、徐々に拡大していた。
    ・ウェブバンで物流ロボットの開発をしていた技術者もアマゾンに取り込む。(キバシステム)

    ・アマゾンは自社物流センターを「フルフィルメント・センター」と呼んでいる。
    ・受注管理や在庫管理、ピッキング、パッキング、発送、代金請求、決済処理、返品処理、苦情処理などをイッテに引き受けている。
    ・「フルフィルメント・センター」は111,500平米~130,100平米で、1000人程度の作業員。(日本には、小田原に200,000平米という巨大なセンター)

    ・アマゾンではドローンによる配送実験を明らかにしている。また、千葉市でも2019年にドローン配達の実用化を目指している。

    ・ネット通販を成功させるには、「ラストマイル」と「物流センター」を有機的に結びつけ、機能を高めていく必要がある。
    ・また、在庫管理も重要。在庫が増加すれば、企業の収益性に悪影響を及ぼし、経営が不安定になる。

    ・アスクルは埼玉県に「アスクルLogiPARK首都圏」という72,000平米で7万アイテムを取り扱う大規模な物流センターがある。

    ・楽天は、モールに参加する企業が個々で管理/保管/ピッキング/パッキングを行い、宅配便で配送していた。が、物流のサービスレベルがまちまちで、欠品や到着遅れなどが頻繁に発生していた。
    ・そのため、2010年に楽天物流を設立し、「楽天スーパーロジスティクスサービス」という物流支援サービスを提供している。
    ・楽天のフルフィルメント・センターは関東に2個、関西に1個。正確な作業を迅速に行い、かつコストが安い物流サービスを提供する。

    ・ラストマイルでは、郵便局と宅配便がある。もともと国営の郵便局が担当していたが、民間に宅配便事業者が成長し、民間がトップになっている。(日本もアメリカも中国も)
    ・配送時の商品の破損や配送遅延、誤配送等をアンケート取ると、日本は格段に不満が低い。日本の輸送サービスは高い品質がある。逆に中国はとても低い。
    ・中国では、貨物はゴミのように扱われ、乱雑に高く積まれる。オートバイで集荷した貨物は道路脇の地べたにそのまま放置される。
    ・アメリカも、精密機械のカメラを玄関の入口から中に放り投げる配達や、液晶テレビも玄関の塀から放り投げる配達が普通。

    ・ネット通販では返品が多い。返品は売上にならないし、処理に余計なコストがかかる。
    ・再配達問題が悩みのタネ。再配達となる貨物は20%。さらに3%は2度以上の再配達となる。ラストマイルの工数不足につながる。国土交通省の調査では、ドライバーが9万人足りていない。

    ・ヤマト運輸の宅配便は、初日の取扱数は11個。現在の宅配便の年間取扱量は36億個。
    ・宅配便のシェアは、ヤマト45%、佐川33%、日本郵便13%、西濃3%、福山3%。
    ・運賃は、佐川が平均530円/個だったが、2013年には460円/個に値下げ。ヤマトも666円/個から2014年には574円/個に値下げしている。佐川がアマゾンに値上げ交渉したところ、アマゾンから縁を切られた。
    ・アメリカは実はもっと高い。日本は貨物の大きさと輸送距離で値付けするが、アメリカは、石油価格上昇追加料金、一般家庭向け配送追加料金、効率悪い地域への配送手数料金など、追加コストが大きい。

    ・宅配便はハブ・アンド・スポーク型のネットワーク。ヤマト運輸は「ゲートウェイ構想」として、東京/名古屋/大阪の3大都市圏で当日配送を実現しようとしている。「厚木ゲートウェイ」が首都圏では稼働し、ハブ間の大型トラックによる幹線輸送を実施している。
    ・幹線とは別に「羽田クロノゲート」という一般の見学が可能な物流施設もある。

    ・トラックドライバーが不足している。2014年3月末には実際に不足しすぎて輸送が滞る深刻な事態になった。トラック輸送は日本の貨物輸送の91%を担う。
    ・トラック業界の下請けは七次下請まで存在する。荷主が払う手数料は下請け分引かれるため、最後の下請けが受け取る運賃は…
    ・環境問題に対する規制強化など、石油価格の高騰等も影響するし、安全性を高めるためにより高価なトラックも必要になる。
    ・ドライバーの賃金も低下し、ドライバーの長時間労働は加速する。ドライバー自身も賃金が減少する中で収入を確保しようとして、労働時間は増えた。
    ・製造業と比較しても、2001年は90%、2014年には81%の賃金であり、月間労働時間も製造業の180時間に対して、トラック運送業は210時間に達する。
    ・全産業に占める女性労働者の割合は43%だが、トラックドライバーの女性労働者の割合はなんと2.4%。

    ・このまま進むと、地方や僻地で買い物難民が発生すると予想されている。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/685541

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