武器としての人口減社会 国際比較統計でわかる日本の強さ (光文社新書)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334039370

感想・レビュー・書評

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  • 上智大学>スタンフォード大学院>国連勤務>ハーバードMBA>ゴールドマンサックスと輝かしい経歴の著者が優しく統計をベースに、これからの日本の人口減社会というピンチをどのようにチャンスとしていくかという事が書かれている。

    女性の能力を使いこなせていない、他国と比べても個々の学力は高い、生産性は低い、中高年もなかなかレベルが高い等々をデータを基に説きつつ、労働力が減る中、社会的な反対を受けずにオートメーション化等を進められるだろうというのが基本的な流れか。

    ただし、性差別ではない能力による人の活用であったり、イノベーションを起こし易くするための社会インフラであったり、起業しやすくすべしと誰かがどこかで何年も何年も言い続けてきたような結論になっている。確かにおっしゃることは非常に合理的ではあるが、男女機会均等法といった法的枠組みが出来ても、大半の人々は均等であることを拒絶し続けてきた社会の集合知の低さを完全に無視してしまっている。

    これらが感覚的に理解できて能力がある人には日本に止まってまで社会的非合理と闘う理由も見つからないし、理解できない人にとっては今のままであるべきと捉えていると思うので、やはりどうしようもない・・そんな気になってしまう本ではあった。

    P.34
    オランダも過去40年間、ほぼ一貫して労働生産性上位5カ国に入っています。オランダの場合は、正規雇用と非正規雇用の壁を取り除いて労働市場の流動性を高めたことが、生産性の改善につながりました。一つの企業に1年以上勤務すると、勤務時間を短縮できるパートタイム社員になることが権利として補償されているのです。そのためオランダでは、パートタイムの管理職も珍しくありません。オランダの女性就業率が高い理由として、このような労働市場の仕組みが挙げられます。

  • 経済協力開発機構(OECD)の東京センター長らしい。日本では平均的に労働スキルは高いのに活かしきれてないとの論調。欧米では働く女性は子供をベビーシッターに預けてフルタイムで働く。日本では保育園待ち問題でフルタイムは困難。各種のデータでいかにも説得力ありそうだが、何か重要なところが抜け落ちているようにも思える。

  • 国際比較統計ということで大局的すぎて具体的に何がどうということが腹落ちしないまま読み終えてしまった。日本人は能力はあるのだから、特に女性や高齢者やニート層などの埋もれた人材を活用し、日本の技術を生かすシステム、政策を取り入れていけばそれが強みになるということだったのかな。埋もれた人材の活用は大いに賛成。仙台市でも人口1パーセントが生活保護を受給していて、多額の税金を垂れ流している現状。今や通勤しなくてパソコン一つアイデア一つで仕事ができる時代。こうした人材を活用して社会に役立てていくことは必要。女性については、子育て世代を支援する仕組みが必要。保育士の所得向上と保育園の教育システム構築が望ましいかな。小学校の学童保育も在り方を考えて欲しい。無償化よりも質の向上と子供の受け入れに柔軟な対応ができる仕組み作りを望むかなぁ。本書は人口減少が武器になるというよりは、人口減少でも悲観しなくていいよというレベルの本だったように思う。何かワクワクするような視点の転換が起きるような本ではなかったことが少し残念だった。

  • 低成長(無限に拡大し続けることはできない)や少子化(無理やり子供を生ませることはできない)なんかは、如何ともしがたいこと。受け入れて、適応して、やっていくしかないこと。
    けれど、労働力「不足」…? 非論理的で前近代的な理由にもならない「理由」をつけて、人口の半分を飼い殺しにしてきた国が、何の冗談をほざいているんですかしらね。
    あらゆる意味で問題山積の移民(言語風習のレベルから教え込まねばならない。そもそも、ここで「しか」通じない超マイナー・超難解な言語を学んでまで、もはやナンバーワンでない日本で社畜になってやろうという奇特な外国人がどれほど存在するんでしょうかね)? すでに充分お疲れで、ちっと骨休めしたい高齢者?? いやいや、そんなものより、若くて優秀で意欲にあふれた人材が人口の半分、思いっきり臨戦態勢で待機しているんですが。それを活用しないって、何の冗談なんですかね???
    子供たちがかわいそう? なら、パパも育児すればいいじゃないですか。そもそも性別役割分業って「外貨稼ぎ」と「家事」の分担であって、育児は父母両性の仕事なんですが? キャッチボールとか、離婚後の面会交流とか、都合のイイ時だけ「子供には母だけではダメ、父も必要!(キリッ」とか、これまた何の冗談ですか? 必要だってんなら、普段から育児しろやゴルァ!

    こぞって能力の高いネイティヴ労働者で、少数精鋭、高い付加価値をつけて成果を挙げる。著者の言うとおり、日本はまさにそれにうってつけの国である。理由も理屈もなく、ただ女性を踏みつけ続けていたい連中が、アホで非論理的な言い訳をこねてダラダラと改革を先延ばしにしない限りは。
    本書に「具体的な提言がない」という批判が散見されるが、そりゃそうだろう。この男性天国・ニッポンで、「アホな爺さんオッサンの性根を入れ替える。それが無理なら、連中を首ごとすげ替える」って、ホントのことを書くことは許されませんから、ネ☆

    2017/6/6読了

  • 背ラベル:366.2-ム

  • 2017/04/27 初登録

  • 2016.08.21 新書巡回にて

  • 【由来】


    【期待したもの】

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】
    ・著者の主張には賛成できる部分もあるが、その主張の裏付けに説得力の乏しいものがあるだけではなく、牽強付会としか思えないほど強引なものもあり、そのせいで「主張」自体が色褪せてしまっている。

    ・著者の属人性を割り引いて読もうとも思ったが、ここかしこで、私がどうした、私の時はと例示するので、それもできなかった。

    ・週刊ダイヤモンドの新年号で2016年に出た経済書のベスト10プラスアルファがあり、本書は17位に選ばれているが、これで17位とは、昨年の出版事情がお寒かったのか評者連が大したことないのか。

    【目次】
    第1章 人口減少が武器になるとき
    ICT・AI革命が仕事のあり方を変える
    必要とされるのは定型化できない仕事
    低い失業率がオートメーション化を後押しする
    日本人のスキルはトップレベル
    「人口ボーナスの時代」から「人口ペナルティーの時代」へ
    小国からの教訓
    【コラム】OECDの教育、技能調査について

    第2章 眠れる「人材」大国・日本
    埋もれた人材を掘り起こすとき
    日本の中高年齢層は優等生
    企業の世代間交流が多様性を生む
    日本のニートは高学歴
    出る杭を伸ばす
    「人材」を「人財」に変えられるか
    30代で幹部になる
    アップ・オア・アウトのキャリアシステム
    アマゾンの働き方騒動
    ハイブリッド人事への道
    労働市場の二重構造の解消

    第3章 女性は日本社会の"Best Kept Secret"
    古くて新しいウーマノミクス
    女性がGDPを押し上げる
    男女の賃金、昇進格差の解消が急務
    女性活用とイノベーション
    日本の女性の実力と意欲
    リケ女を増やすには
    M字カーブに見る日本の損失
    生涯賃金で考えるキャリア断絶のコスト
    賃金格差が貧困を生む
    賃金格差が解消すれば結婚したくなる?
    One More Babyの壁
    インフラ以上に重要な周囲の理解
    機会均等実現には「ムチ」の議論が必要
    ロールモデルの重要性
    ルールモデルは女性とは限らない
    日本の女性は"Best Kept Power"

    第4章 働き方革命のススメ
    Time is Money !
    時間は有効資源
    優秀なボスの条件
    「もうビジネスディナーはしない」
    人生の波を乗り切る働き方革命
    高齢化社会で求められる多様な働き方

    第5章 日本のイノベーション力を活かせ!

  • OECD東京センター長による、さまざまなデータを国際比較しまとめたもの。長年ゴールドマン・サックスで活躍し、スタンフォード、ハーバードの修士を持ち、国連勤務経験もあるといった著者の経歴は驚きである。OECDに勤務しているだけあって、豊富で正確なデータをもとに極めて説得力ある論理を展開しており、参考になった。わかりやすい。日本は、AI、ICTなどの最新技術を駆使して省人化を図っていくことが優位をもたらす、唯一の国家であるとの意見は面白い。
    「(デューク大学 キャッシーデビッドソン)現在の小学1年生が大人になる頃には、彼らの65%が今存在していない新しい仕事に就く」p13
    「(OECD)最も高水準スキルを有する人々が従事している仕事は大幅に増加傾向にあり、スキルレベルの低い人たちが従事している仕事は横ばい。それに対して、中程度のスキルの人たちの仕事は大きく減少していることがわかります」p16
    「低水準のスキルで済む単純肉体労働のような職種は、意外にも、IT化の流れにあまり影響を受けていません。例えば清掃作業では、最新の掃除機を導入しても、人間がそれを手動で操作するため、清掃には今後も労働力が必要とされることが推測できます」p18
    「年功序列は主に中途採用者に不利になるため、年功序列を採用している企業が多ければ多いほど転職が難しく、労働市場は硬直化することになります。企業は成果を上げない社員であっても辞めさせることはできませんし、社員の方も転職すると給与が下がったり、キャリアダウンすることが多いので、会社に留まる方を選びます」p66
    「生涯年収は、平均2億6196円。女性で育児ブランクがあり以後非正規だと、7600万円程度。一時的に保育園、ベビーシッター費用に多額を要しても、長期的には十分に見返りがある」p96
    「保育園は、未就学児の託児サービスとしては優れたシステムですが、教育プログラムは導入されていません。教育的な環境を求めるのであれば、幼稚園に通わせる必要があります。しかし幼稚園は、専業主婦の母親を前提とした教育システムで、延長保育はなく、日中に母親が参加しなければならない行事が多いなど、フルタイムで働く母親にとってはほぼ利用不可能です。さらに毎日お弁当を作ること、バッグやだっこ人形からモップ、雑巾まで、子供の持ち物を母親が手作りすることなども期待されます」p107
    「アメリカでは、人種や性別に基づく差別行為が証明された場合、非常に厳しい罰が企業に課されます。私はニューヨークで働いている間に2人の子供を出産しました。妊娠を上司に報告すると、妊娠中に仕事を継続するために必要な会社側からのサポート体制、産休中のバックアップ体制などを、出産後の職場復帰を前提として話してもらえました」p111
    「OECD本部はパリにありますが、職員は職責に関わらずほぼ全員が、7月から8月の間にほぼ1ヶ月のバカンスを取ります。普段は海外を飛び回り、オフィスの席が温まらないくらい忙しい同僚たちでも、夏とクリスマス休暇はしっかり取ります」p126
    「日本の開業率、廃業率は5%以下、米英はいずれも10%程度です。その結果、日本の小規模企業の大半を古い企業が占めるという、ダイナミズムに欠けた状況が生まれているのです」p164
    「政府の中小企業への手厚い保護とは対照的に、スタートアップ企業に対する民間投資は、欧米と比較すると低い額にとどまっています」p169
    「経済のグローバル化や市場の新陳代謝がイノベーション拡散に必要なのは、それが健全な競争を促進するからです。競争があることで、企業はイノベーションを行い、新たな市場を開拓し、競争相手に対する優位性を獲得しようとします。製品市場規制が少ない程、市場への新規参入が増え、国内外からの知識の普及が効果的に進み、イノベーションへの民間投資も増えるというメリットがあります」p170
    「日本にとって深刻な問題は、非製造業のTFPが1991年以降伸びていないことです。これはサービス部門における自由競争が十分でなく、研究開発などの企業の投資が(大幅に)少ないことも反映されています」p177
    「国際比較すると、日本のサービス部門の輸出寄与度はOECD平均よりかなり低い状態です。日本はサービス市場、特に運輸交通、通信部門の競争を拡大する改革を優先することで、イノベーションを喚起し、経済の効率を大幅に改善できる余地を残しているのです」p179
    「企業がアメリカの若者に人気があるのは、イノベーションのアイデアを持つ人が多いだけでなく、それを商品化し事業として発展させるための社会インフラが整っている上、安定よりもリスクを選んで挑戦することに対して社会的賞賛が大きいことが挙げられます」p188
    「テクノロジーが人間の仕事を奪うことを歓迎できるのは、ほぼ完全雇用状態である日本に、深刻な労働力不足という追い風が吹いているからです」p191

  • ネタとしては2016年の書籍だけど、人口現象は解決しないと言う前提にたって、国民の論理的または数学的思考が世界トップレベルにあり、完全雇用が実現している今だからこそ、世界に先駆けて、AIの導入やイノベーションができると筆者は解く。
    テレビで子供の教育力の低下や企業の不祥事などを見ているとその様な数値が信用できなくなってしまうけど、人口減少を止められないのであれば、その前提に沿ったシステムを、限りないヒューマンリソースを有効に使わないといけないと言うのは納得できる気がします。

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著者プロフィール

京都大学

「2023年 『中国新石器時代文明の探求』 で使われていた紹介文から引用しています。」

村上由美子の作品

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