バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334039899

感想・レビュー・書評

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  • R2.1.9 読了。

     とにかく面白くて一気読みしました。
     ファーブルに憧れて、昆虫学者の道へ。サバクトビバッタの生態調査、防除技術の開発のために西アフリカのモーリタニアへ。モーリタニアと言えば某食品メーカーのCMで「モーリタニア産のマダコ」で名前は知っていたが、どの大陸の国かまでは知らなかった。
     海外生活でも言葉の壁、文化の違い、仕事のやり方、自然の猛威などにそのタフさで乗り越えていく前野氏。バッタにかけた生涯。この本を通して、モーリタニアについて、言語や昼夜の殺人的な気温差、人柄、ヤギ好き、アルコールが自由に飲めない環境等々も知ることができて良かった。
     モーリタニアで前野氏が出会ったババ所長とティジャニも素晴らしい人柄にも感動しました。
    そして前野氏が異国のサバクトビバッタの防除技術の開発に貢献されることにも期待したい。続編が出たら読みたい。

    ・「救いの手を差し伸べてくれる人がいるから、物乞いができるのだ。日本の道端で物乞いをしたって、最近は物騒なので見ず知らずの他人に誰が恵んでくれようか。私は物乞いを気の毒なイメージでしかとらえていなかったが、取り巻く環境を見ると、そこには多くの優しさがあった。」
    ・「バッタは漢字で『飛蝗』と書き、虫の皇帝と称される。」
    ・「異文化では、物事を正確に伝える必要がある。私の『普通』など、世界では所詮『例外』なのだ。」
    ・「自分たちがどんなに大変な目に遭っていても、自分よりも困っている人がいたら、自分の身を削ってでも助けようとする。このモーリタニアの献身的な精神は、いついかなるときでもぶれない。厳しい砂漠を生き抜くために、争い奪い合うのではなく、分け与え支え合う道を選んできた。この国民性が、サハラ砂漠という厳しい環境でも生きることを可能にしてきたのだろう。」
    ・「それにしても、目標とは生きていく上でなんと重要なのだろう。あるとなしとでは毎日の充実感が大違いだ。」
    ・「つらいときは自分よりも恵まれている人を見るな。みじめな思いをするだけだ。つらいときこそ自分よりも恵まれていない人を見て、自分がいかに恵まれているかに感謝するんだ。嫉妬は人を狂わす。」・・・ババ所長の言葉。
    ・「苦しいときは弱音が滲み、嘆きが漏れ、取り繕っている化けの皮がはがされて本音が丸裸になる。今回の苦境こそ、一糸まとわぬ本音を見極める絶好の機会になるはずだ。」
    ・「世界を我が身のごとく捉えていなければ、こんな感謝ができるはずはない。」
    ・「ご自身が大きな視野を持ち、数多くの困難を経験していなければ、このような大きな感性は身につかないはずだ。」
    ・「無収入を通じ、貧しさの痛みを知った。つらいときに手を差し伸べてくれる人の優しさを知った。そして、本気でバッタ研究に人生を捧げようとする自分の本音を知った。バッタを研究したいという想いは、苦境の中でもぶれることはなかった。もう迷うことはない。」
    ・「叶う、叶わないは置いてといて、夢を持つと、喜びや楽しみが増えて、気分よく努力ができる。」
    ・「何ゆえ過酷な状況にその身を追い込むのか。答えを求めて自分も彼らに倣ってたった3日間ではあるが、ラマダンをしてみた。…(中略)明らかに幸せのハードルが下がっており、ほんの些細なことにでも幸せを感じる体質になっていた。おかげで日常生活には幸せがたくさん詰まっていることに気づき、日々の暮らしが楽に感じられた。ラマダンとは、物や人に頼らずとも幸せを感じるために編み出された、知恵の結晶なのではなかろうか。」

  • グラスホッパー!
    あの「殺し屋」シリーズやなく、まさしく真面目なバッタの話。
    本のカバーからでは、想像できんけどね〜
    でも、そのカバーが面白くて、手元にあるのも確かなんやけど(^◇^;)

    小さい頃からの夢
    「バッタに食べられたい」
    何と、素晴らしい夢や…(^◇^;)
    こんな事を夢見る人しかアフリカにまで行って、無収入になりながらも、バッタを追いかけて…
    には、ならんのかもしれん。

    結局、バッタの何が分かってん?という問いかけには、論文出してないから秘密って事になってる。
    (早よ!論文出し〜な!)
    この話の中では、まだ、任期付きみたいやけど、きっと凄い論文書いて!任期無しになってな!

    ずっと、諦めずに夢を追う…
    なかなか出来んこと。頑張って!

  • 『事実は小説よりも奇なり』
    まさに、この物語のことだと思った。
    日本の昆虫学者が、農作物を喰い荒らすバッタを研究しにアフリカへ向かうノンフィクションの物語。
    ユーモアに溢れて読みやすく、夢中になった。

    著者は言語も文化も異なるアフリカで、自然の厳しさに直面し、お金も尽きて苦労するが、バッタ研究という夢を追いかける中で、人と出会い、人に救われて、夢を実現していく。
    夢や目標をもつことの大切さとそのために人生の勝負を賭ける勇気がいることを学べた。

    読後は、大冒険したような高揚感があり、明るく前向きな気持ちになれました。

    • しずくさん
      なべさんおはようございます。
      フォローをありがとうございました! 自己啓発本は苦手な私ですが、前向きになれる物はジャンルを問わず好きです。...
      なべさんおはようございます。
      フォローをありがとうございました! 自己啓発本は苦手な私ですが、前向きになれる物はジャンルを問わず好きです。『バッタを倒しにアフリカへ』もそんな本で愉しく読んだ記憶があります。
      2022/07/25
    • なべさん
      しずくさん、こんにちは。
      コメントとフォローありがとうございます。
      前向きになれる本は、読後が気持ちいいですよね!
      よろしくお願いします。
      しずくさん、こんにちは。
      コメントとフォローありがとうございます。
      前向きになれる本は、読後が気持ちいいですよね!
      よろしくお願いします。
      2022/07/25
  • 2018年新書大賞受賞作品
    自分の知らない世界が見えて来てめちゃくちゃ面白かった。
    冒険譚を読む時のようなワクワク感がたまらない。
    コミカルタッチで読者を惹きつける筆力はさすが今どきの博士先生だ。
    カラー写真がふんだんに使われているのもポイント。
    せめて本書の印税がポスドク先生の生活と研究の足しになりますようにと願わずにはいられない。

    読み手を意識して、軽妙に描かれているためスルーしがちだが研究にかける著者の信念や覚悟に感動した。

    ウルド先生が今どうされているのかが無性に気になる(笑)

  • 自分は博士課程を修了し、その後3年間のポスドク生活で修業生活を経験しました。そして2年間の素晴らしい海外留学!今となってはいい経験だった。論文もたくさん書いたし、ヨーロッパを満喫!でも2年後の就職のことはずーっと頭の片隅に。。運よく2年後に教員として採用してくれた大学に感謝。そこからも怒涛の引っ越し生活。研究者は必要としてくれる場所に行くべきなんだろうね!バッタ博士のパッションは心地よい!自分にはその勢いはあっただろうか?あの留学中の研究からさらに発展している。研究者のパッション、若い研究者に伝えよう!⑤

  • フォローしている方達の本棚に散見され、どのレビューも面白い!と太鼓判だったので、読んでみた。

    新書の割には厚みがあるような気がするが、著者のライトな筆致がグイグイ読ませる。
    運転手兼相棒ティジャニ氏とのやり取りも、モーリタニア(タコの輸入国くらいしかイメージなかった)という国を身近に感じさせてくれる。

    アフリカで大量発生する、砂漠トビバッタ。
    日本でもたまに、ニュースになり、今年2020年は、ケニアで70年ぶりの大発生。空を覆う真っ黒な大群の映像に鳥肌が立った。その光景は「神の罰」とも言われるそうだ。
    コロナで世界が大打撃を受けている上に、アフリカではバッタによる食害で、食糧危機が懸念されている。


    著者の前野ウルド浩太郎さんは、そんな砂漠トビバッタを生涯の研究テーマに据え、大学院博士課程を終了し、2年の研究期間を終えた後、西アフリカのモーリタニアで3年間苦労を重ねて研究を続けられた。

    いわゆるポスドクと言われる、就職先が決まらない博士号を持つ人たち。
    論文を発表し続け、なんとか就職に繋げようと努力しているが、なかなか空きポストはない。

    前野さんも、活路を見いだそうと退路を絶ってモーリタニアのバッタ研究所へ。
    ババ所長(現地の方)以外は、外国人が何しに来たんだ?という白い目を向けてくる。さらにサハラ砂漠の厳しい気候と、異文化に苦労の連続だ。
    しかし、持ち前の観察眼と人の良さ、モチベーションで、研究所の面々を味方につける。
    ようやく足元が固まったのに、まさかの大干魃で、バッタが出現せず、これといったバッタの論文も書けず、研究費が出る二年間が終わってしまう…つまり無収入になってしまうのだ。
    このまま日本へ帰国して地道に就活をするか、無収入でも貯金を食いつぶしてモーリタニアで粘るか…。

    無収入に陥ってからの、前野さんの自分プロデュース作戦がスゴイ。
    彼の人柄に惚れた人たちとの交流から得た柔軟な発想とバッタへの愛と執着の賜物だろう。

    一時はメディアへの露出も目立ったが、今は研究に邁進されているようだ。


    ポスドクは、社会問題にもなっているが、そんな彼らの厳しい現状を伝える役割も果たしているのではないだろうか。
    2020.5.18

    • マリモさん
      ロニコさんこんにちは!
      私もこの本面白くてとても印象に残っています。最近も、バッタ大発生のニュースを見るたびに前野さんを思い出しているところ...
      ロニコさんこんにちは!
      私もこの本面白くてとても印象に残っています。最近も、バッタ大発生のニュースを見るたびに前野さんを思い出しているところです(^^;
      バッタが大丈夫でしたら、前野さんの第一作の『孤独なバッタが群れるとき』もぜひ。こちらはモーリタニア赴任前のバッタの研究が中心で、バッタ度がさらに高いです(笑)
      2020/05/19
  • 面白い!
    お人柄がポジティブで、チャレンジャーで、柔軟性があって魅力的。
    また研究者という未知の世界を覗かせてもらえた。
    自分の知らない世界が広がっていて好奇心も満たされる。
    大満足の1冊。

  • 発売されてからずっと気になっていた本書。
    書店で見かけるたび、表紙のバッタ人間はリアルなイラストだと思い込んでいたのですが、ちゃんと手に取ってよくよく見てみたら著者ご本人の写真だったのですね…!
    著者のユーモアと並々ならぬバッタへの熱意がみなぎっているカバーです。

    大発生すると農業に大きな被害をもたらすサバクトビバッタ。
    このバッタの生の姿をフィールドで研究すべく、単身モーリタニアへ飛び込んだ著者の奮闘が、たくさんの笑いを交えながら綴られています。
    期待に反してなかなかバッタの群れに恵まれなくても、無収入の憂き目にあっても、くじけずバッタを追い求める著者の姿にパワーをもらいました。

    著者は自分をPRするセンスが抜群だと思いました。
    彼の人柄とユーモア、それに努力と度胸が多くの人の心を捕らえたのだな、と思います。
    そして応援してくれる人たちを裏切らない活躍を発信していけるところもすごい!
    「自分はやれる!」という強い信念は実現させることができるのだと、大きな勇気を与えてくれる1冊でした。

    余談ですが…
    モーリタニアでの食事に惹かれてしまいました。
    豪快に調理されるヤギ肉、特に割った骨の髄液を混ぜ込んで炊いたごはんがたまらなく美味しそう…じゅるる。

  • 子供の頃からの夢「バッタに食べられたい」を叶えるために研究者となり、モーリタニアでのフィールドワークの様子を面白おかしく紹介した本。
    語り口も面白く、あっという間に読了。

    安定した職とはいえないポスドクの厳しさや焦りと、それでも研究をしたいという気持ちの葛藤なども描かれている。研究を続ける上で、社会に発信し、応援してくれる人を増やすことの重要さを再認識した。

  • 中学生・高校生の必読書に是非したい1冊。
    ・好きなことを追いかけることの大切さ
    ・それを現場で体感することの面白さ
    が楽しく、一気読みできます。

    モーリタニアのバッタ研究所のババ所長が素晴らしい。
    以下気に入った言葉。
     いいか、コータロー。つらいときは自分よりも
     恵まれている人を見るな。みじめな思いをするだけだ。
     つらいときこそ自分よりも恵まれていない人を見て、
     自分がいかに恵まれているかに感謝するんだ。
     嫉妬は人を狂わす。
     お前は無収入になっても何も心配する必要はない。
     研究所は引き続きサポートするし、
     私は必ずお前が成功すると確信している。
     ただちょっと時間がかかっているだけだ。

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著者プロフィール

1980年生まれ。神戸大学大学院自然科学研究科博士課程修了。農学博士。
日本学術振興会海外特別研究員としてモーリタニア国立サバクトビバッタ研究所に赴任。

「2012年 『孤独なバッタが群れるとき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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