炭水化物が人類を滅ぼす【最終解答編】 植物vs.ヒトの全人類史 (光文社新書)

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  • / ISBN・EAN: 9784334043179

感想・レビュー・書評

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  • 糖質制限とかロカボとか、よく耳にするけれど、いまひとつ何のことか理解していなかった。火傷をきっかけに著者の本を手に取り、立て続けに読んで、人間の身体のことについて、いろいろと考えるに至った。自然環境も社会環境が、これほど短期間で激変する時代が来るとは、誰が想像しただろうか。狩猟採集から定住、そしてその先にあったのは労働と搾取。皮肉にも富は糖質を多く摂取することと似て非なるものになってしまった。そして、今貧困層が口にできるものが「糖質」の塊みたいな食事に成り果ててしまったという歴史を踏まえて、私たちが気をつけなければならないことが、わかりやすく端的に書かれている。

  • この本はタイトルにある通り「最終解答編」となっている通り、前作は私の読書記録によれば、2013年10月頃に読んだことになっています。今から四年程前、脂肪やカロリー過多が肥満の原因になると思っていた私は大いに衝撃を受けたことを記憶しています。特に私の大好きな、麺類・パン・果物に糖質が含まれていて、摂取制限リストに入っていたのは、その情報が正しいと頭では理解できたにも拘わらず大いにショックを受けました。

    それ以来、それらをキッパリと止めていれば、今頃スリムな体型に変身できたのかもしれませんが、相変わらず、パスタ・近所の美味しいパン屋さんのパン・月一で楽しみにしているフルーツは続けています。これらを続けるために私に課したことは、1)パスタ・蕎麦は食べるが、ラーメン・うどんや止める、特に習慣になっていた「締めラーメン」はやめました、2)ハイボール、ワイン、焼酎は続けるが、ビールは乾杯のみ、日本酒は特別な日本食を食べるときのみ、3)煎餅屋さんでの「煎餅」は食べるが、それ以外のスナック類は全てやめる、です。

    体重は週末、整骨院に通いながらテニスを続けているおかげで、増量を抑えています。こんな私が、先週本屋さんで、この本を見つけました。最終解答編、というタイトルに惹かれました。この本の特徴は、大きく二部構成になっていることです。

    前半では、前作の要点のおさらいと、前作での未解決問題、と筆者と定義している内容、後半が、私が最も興味を持って読みましたが、原始時代からの人類史を俯瞰して、なぜ人類が穀物を摂取するようになったのか、また、なぜ私たちの種が人類として繁殖することができたのか、とても興味ある内容でした。ただ、表現等、それをそのまま公開するのは個人的に躊躇する部分がありますので、その部分については、いつも行っている「気になったポイント」に書き出すのを省略しました。

    以下は気になったポイントです。

    ・糖質とは、炭水化物の一部であり、炭水化物のうちの食物繊維以外のものと定義されている、糖質としては、単糖(ブドウ糖、果糖、ガラクトース等)、オリゴ糖(二糖類:ショ糖=ブドウ糖+果糖、乳糖=ブドウ糖+ガラクトース、麦芽糖=ブドウ糖+ブドウ糖等および、三糖類)、多糖(デンプンなど)、糖アルコールがある。単糖および二糖類を、糖類と呼ぶ(p19)

    ・血糖値とは、血液中に溶け込んでいるブドウ糖の濃度のこと、問題なのは、どの炭水化物が血糖を上げるかである、高血糖状態が続くと、全身の血管内皮を傷つけて様々な障害を引き起こす(p21、22)

    ・制限すべきターゲットは、炭水化物全般ではなく、糖類(単糖:ブドウ糖、果糖、ガラクトース、および、二糖類:ショ糖=ブドウ糖+果糖、乳糖=ブドウ糖+ガラクトース、麦芽糖=ブドウ糖+ブドウ糖)と加熱デンプンのみ、食物繊維は大いに摂取すべき(p23)

    ・糖質制限の考え方として、三大栄養素のうち、たんぱく質と脂肪は、基本的に好きなだけ食べてよい。具体的には、肉類・魚類・脂質類(バター、ラード、オリーブオイルは摂取すべき、マーガリン・サラダ油・マヨネーズ等はダメ)(p25)

    ・野菜類(葉物野菜、ブロッコリー、大豆、もやし、キノコ全般、海藻類全般)は制限なし、果物類はアボガド、ナッツ(アーモンド、クルミ、ビスタチオ、ピーナッツ)は問題なし、蒸留酒(ウィスキー、ブランデー、ウオッカ、ラム、芋・米焼酎、白酒)フルボディの赤ワイン、辛口白ワインは制限なし(p28)

    ・穀物(コメ:白米、玄米、餅、あられ・お煎餅、小麦:パン、麺類、ピザ、餃子、お菓子、お好み焼き、たこ焼き、トウモロコシ、ソバ、野菜類:根菜類、玉ねぎ、トマト、芋は摂取を抑える、砂糖は絶対に避けるべき、お菓子全部・清涼飲料水、スポーツドリンク、栄養ドリンク全て)(p31)

    ・お酒で避けるべきなのは、ビール・日本酒・紹興酒・甘いカクテル、甘い白ワイン、フルボディ以外の赤ワイン、コメや芋から作った醸造酒は、100℃以下で沸騰させることでエチルアルコールのみを分離でき(糖質入りの水の沸点は100℃以上)糖質は含まれなくなるから、糖質が含まれない(p35)

    ・奈良時代の農民の食事は、非常に豊か、さまざまな種類の穀類、野菜・野草、多種類の獣肉(牛、馬、鹿、イノシシ)を食べていたので、一日一食でも十分であったが、仏教思想の普及、肉食禁止令のため、コメ・雑穀の比率が高まったので、江戸時代には一汁一菜(コメ、汁物、おかず1品と漬物)や、一汁二采となった(p53)

    ・人間が集団やグループを構成した場合、自然発生的に、2:6:2(上位二割:積極性、中位6割:平均的、下位二割:消極的)に分かれる。これはパレートの法則(8020の法則)から派生したものと言われている、中位6割はその時々の状況によって、上位グループ、下位グループの優勢な側につく(p58)

    ・血糖調節(降下)に関連するホルモンだけが、この原則から外れていて、バックアップシステムが存在ししない(p65)

    ・インスリンは確かに血糖を下げることはできるが、それは本来の機能ではない。その機能(中性脂肪に転換できる物質=ブドウ糖があれば、中性脂肪に転換して脂肪細胞に取り込ませる、を果たした結果、それに付随して血糖が低下する(=ブドウ糖が中性脂肪に変化する)ので、分泌から血糖が下がるまでに2時間のタイムラグがある、先史時代の人は、動物や植物を食べて血糖が上がることはなく、他の動物もそうであったため、血糖を下げるための専用ホルモンが不要であった(p67、70、72)

    ・ヒトは20世紀後半から多量の果糖を摂取している、それが果糖ブドウ糖液糖、トウモロコシ・芋のデンプンを酵素でブドウ糖に分解し、それに別の酵素を作用させるとブドウ糖と果糖の混合液ができる、果糖の割合が50-90%未満のものを、そう呼ぶ。50%未満を、ブドウ糖果糖液糖とよぶ(p83)

    ・一汁三菜はコメを食べるために工夫された食べ方である、食材には芋類や根菜類など、糖質を多く含むものが多用される上に、味付けの基本は、さしすせそ(砂糖、塩、酢、醤油、味噌)である(p87)

    ・第二次世界大戦後、日本人男性の平均寿命は、1948年:55歳、1951年:60歳、1959年:65歳、1971年:70歳、1986年:75歳、2011年:80歳と延びてきている(p89)

    ・日本は和食を食べているから長寿国というのは、単なる疑似相関にすぎない、無関係なもの同士にあたかも関連があるように見せかけるトリック、日本には新幹線が走っているから長寿国、日本人は大人が電車でマンガを読んでいるから長寿国という結論も同じ(p91)

    ・1925年から36年間、990か所の町村を自らの足で歩いて訪れて調査した結果によると、1)食材はその土地でとれるものに限定、バラエティ乏しい、2)毎日同じ物をたべていて、料理法も乏しい、3)隣り合った村でも食事が異なっていることが多い、4)コメを食べる地域も食べない地域もある、5)コメを多食する村は短命村、野菜・海藻を多食する村は全て長寿村、6)食べる食べないは風習による(p92)

    ・日本人が和食の基本と思っている「一汁三菜」が全国に普及するのは、昭和50年以降である、本来は懐石料理の形式の一つで、多種類を並べる古い懐石料理を千利休がシンプル化したことに始まる(p93)

    ・テレビで見た料理を作ることはできなかったが、この状況を変えたのが、スーパーマーケットである、日本最初の本格的スーパーマーケットであるダイエー1号店が神戸市三宮にできたのが、1958年である(p99)

    ・脂肪を摂取しても太らない理由、食品中の脂肪は皮下脂肪にも内蔵脂肪にもならない、脂身たっぷりの豚バラ肉を食べても、オリーブ油を飲んでも、皮下脂肪にはならない。肥満とは、脂肪細胞の中に中性脂肪が増え、脂肪細胞が肥大することにより起こる現象、その蓄積を促すホルモンが「インスリン」である。これを促す糖質が肥満の唯一の原因である(p101)

    ・脂質と糖質の同時摂取をすると、糖質によるインスリン分泌、血中遊離脂肪酸濃度低下、腸管からの脂肪吸収が再開、インスリン作用で脂肪細胞に中性脂肪蓄積となり、肥満の原因となる(p102)

    ・私たちが食べた食物は、一部は活動のためのエネルギー源となるが、残りは、体を作るための材料となっていた。つまり機関車を走らせる石炭であるとともに、機関車補修材料でもあった、エネルギー源でもあるが、体を作る部品の供給源である(p106、107)

    ・2014年の自給率をカロリーベースで計算すると39%だが、生産額ベースでは64%、カロリーの低い穀物、野菜の生産量が多いほど自給率が小さくなる計算法である(p112)

    ・人口が増え始めるのは、狩猟採集・定住生活、に入ったことがきっかけであり、農耕生活になっていきなり人口が増えたわけではない(p115)

    ・最終氷期で予期せぬ出来事(トバ山大噴火、過去100万年で最大規模の巨大噴火)がおき、地球全体の平均気温を一気に3-6度低下させて、これば数年間以上続いた。その結果、生物相は驚くほど短期間に変化した。人は7年前に衣服を発明し、寒冷な気候に次第に順応していったが、それまでの主たる食料(昆虫、小動物:軟体動物、両生類、爬虫類)の激減に困った、そこで昆虫主体の採集生活から、哺乳類相手の狩猟生活へライフスタイルを変えざるを得なかった、なので、遊動から定住となった(p117)

    ・ヒトの新生児は体重3キロとほかの霊長類の新生児より格段に重く、新生児は先史時代のヒトが移動の際に持ち運ぶものとしては突出して重いものであった、また首は細くて筋力がないため頭を支えることができない。毛(獣毛)のないサルなので、体温が低下しやすく、特に新生児は体積に対する表面積の割合が大きく体温を失いやすく、母親が抱き続けて温める必要がある(p121)

    ・赤ん坊を腕に抱いて運ぶには、二足歩行が大前提となる、三キロの物体を上肢に抱いて、二足歩行で10キロ歩く能力のある母親がいたから、巨大な脳を持つヒトが絶滅しなかった、遊動生活と定住生活では、子供の育てやすさと安全さが全く異なる、移動生活に特有の新生児~乳児の死亡率の高さが定住生活によって解消されたので人口が増えた(p123)

    ・人口が増えた要因は、1)農耕開始により子供は育てる価値のある存在になった、2)ヤギの家畜化で、ヤギの乳で子育てできるようになり、複数の子供を同時に育てられるようになった、この過程で一夫一妻制が誕生した、農耕開始により、これは自分の子供及び育てている女で私が所有していると宣言する必要が生じた(p124)

    ・27億年前に、地球の中心核が内核と外核に分離して、地球全体が巨大な磁石として機能するようになると、磁力が太陽風を遮るバリアとなった、そのため、シアノバクテリアは海表面でも生存できるようになり、太陽光によりえたエネルギーにより分裂をはじめ、大量の酸素を排泄し始めた(p130)

    ・定住生活への移行は、遊動生活というリミッターを外し、農耕は、ヒト本来の食料で生きる、というリミッターを外した。産業革命は、自然界の生物から得られるエネルギーだけで生活する、リミッターを外し、近代・現代医学は、細菌・ウィルス、癌というリミッターの無効化に手を伸ばし、寿命というリミッターまで外そうとしている(p133)

    ・脳の進化計画書にある奇妙な指令は、1)古い部品・機能は絶対に取り外さない、2)新しい部品・機能を付け加える際、その部品や機能は常に「オン」の状態を保ち、「オフ」のスイッチはつけない(p140)

    ・海の誕生(熱放出の過程で、中心核とマントル・地殻に分かれ、熱放出が続いたことで水が分離)、海王星の移動(隕石群により多くの有機物が合成し海底に蓄積)、プレートテクトニクスの開始(アミノ酸等の有機物の生成、代謝系の誕生)がタイミングを合わせたかのように連続して起きたので、生命は誕生した(p144)

    ・10億年間、全く変化のなかった細菌は、メタン生成菌とαプロテオバクテリアの共生により、真核細胞という全く新しい生物に変身した、これは地球全歴史の中でただ一度しか起きなかった奇跡と考えられている、真核生物が誕生しなければ、そのあとの多細胞化もなかったことになる(p146、149)

    ・20億年前まで、酸素濃度は現在の100分の1程度であったので、この時点では多細胞化は不可能であった。27億年前にシアノバクテリアが暴走的に繁殖して光合成をして、大量の酸素を排泄して地球環境を激変させた。(p151)

    ・マルハナバチでは、受精卵からはメス、未受精卵からはオスが生まれる、ミツバチの受精卵からは、ほぼ同数のオスとメスが生まれるが、世話をするワーカーメスは、オスの幼虫だけ食べて、メスしか育たないように調節する(p167)

    ・ネアンデルタール人は、ホモ・ハビリス(ハンドアックスの発明者)の2倍以上の脳を持ちながら、ホモ・ハビリス以上の石器は作り出せなかった(p173)

    ・寒冷化によって動物が大型化したため、ヒトはそれまでの「採集」生活から、大型動物をターゲットとする、「狩猟」生活にライフスタイルを変えざるを得なかった、大型動物を倒すには多くの人手が必要となり、生活集団も大きくなっていった、そして4万五千年前、石器の3度目のフルモデルチェンジが行われる、15万年間同じ形を使い続けてきたホモサピエンスは、突如として新型石器(ナイフ、スクレイパー、ノミ、キリ、縫い針)を作り出した(p178)

    ・神経細胞は妊娠初期から活発に分裂して数を増やし、出生直前に140億個、脳重量は350グラムとなる、シナプスを増やして、ニューロンとシナプスをサポートする、グリア細胞が1000億個(神経細胞の10倍)、シナプスの数は500兆個となり、成人の脳は新生児の4倍(1.3キロ)となる、他の動物の脳と一線を画しているのは、1つ1つの神経細胞が1万個の神経細胞とシナプスをつくり、相互に情報のやり取りをする並列的演算処理が可能になったから(p181)

    ・恒温動物は内蔵や筋肉で熱を過剰に産出し、余分な熱を外部に放出することで体温を一定に保っている、この過剰な熱産生システムを維持するために基礎代謝の7割が失われている、そのためには大量の熱源を食料という形で常に取り込む必要が生じ、恒温動物は、同体重の変温動物の平均15倍近くの食料を摂取する(p196)

    ・自分たちの延長線上で先史時代人の行動を類推しがちだが、それが通用するのは5万年以降のみ、それ以前は全く異なる行動原理で日々を過ごしていた(p200)

    ・農耕民が収穫物を貯蔵するようになったのは、作物が過剰に採れたからではなく、いつ不作になるかわからないという不安から不作に備えて貯蔵せざるを得なかった(p208)

    ・ヒトの500万年史は食物の入手法で、3期に分けられる、1)500-5万年前の採集中心の生活、2)5-1万年前の狩猟中心生活、3)それ以降の農耕中心の生活(p211)

    ・アメリカでは、運動して低脂肪食を摂取するようになってから肥満者が増えた、運動で食欲が増して、高糖質・低脂肪食をより多く食べるようになったから(p214)

    ・糖質摂取をやめると汗をかかなくなる、生後6か月未満の乳児はほとんど寝汗をかかないが、離乳食(糖質メイン)が始まった途端に大量の寝汗をかくようになる。(p225)

    ・糖質、コカイン、ニコチン、アヘン、カフェイン、ヘロイン、モルヒネ(アヘンの成分)、覚せい剤(=エフェドリンは麻黄から抽出)は、依存症を起こす物質は全て直物由来の物質である、お酒も元来は穀物やブドウの糖質を発行させて作ったもので植物由来といえる、コカイン、ニコチン、アヘン、カフェイン、はアルカイド(窒素原子を含む塩基性有機物)を含み、動物に毒として作用する、理由は昆虫という捕食者が出現したから((p229)

    ・被子植物は、昆虫や鳥類による受粉の助けにより生息域を広げていった、これに対して大型草食恐竜は、裸子植物をターゲットに進化を遂げたので、裸子植物の分布域が狭まるにつれて次第に姿を消していった(p235)

    ・ピラミッド制作において、実際に働いていたのは奴隷ではなく一般庶民であった、労働報酬がビールであり、ビール飲みたさに毎日進んでピラミッド作りに参加した(p234)

    ・加熱デンプンとエチルアルコールだけが、早期から依存症患者を生み出せるのは、この2つは摂取が格段に容易であったから(p234)

    ・人が栽培しているもので摂取して身体にいいものは、わずか(豆類、葉物野菜、堅果類、キノコ類、海藻類)で、それ以外の圧倒的多数の栽培食物は、健康を損なうものである(p241)

    ・日本人男性の平均身長が、弥生時代に追いつくのは、じつに昭和30年代になってから。農耕開始により、人の身体状況は、低身長化・短命化・不健康化、である(p244)

    ・メソポタミア文明は、高度な文明を築いたが、地中海の偏西風が弱まったことで、水源地であるアナトリア高原に雨が降らなくなり凶作続き、レバノン杉の伐採により崩壊、エジプト文明は、ナイル川の水源地であるエチオピア高原がモンスーン降雨域からはずれて降雨不足により瓦解した(p250)

    ・糖質制限が普及すれば、歯周病と歯抜け病はこの世から消えて、歯科医のほとんどは失業する、ミュータンス菌は「虫歯菌」として忌み嫌われているが、彼らが歯周病等を発生させるのは、糖質摂取している場合のみ(p261)

    ・苦味(直物アルカロイドなどの毒の味)、酸味(腐敗した肉の味)は、避けるべき味と判断している、甘いものは食べていいものと判断している(p265)

    ・生物の生息環境としての地球の特徴は、「液体の水、気体の酸素」に要約できる、液体の水は、大気温が0-100℃の範囲にあればいいので、宇宙には液体の水を持つ惑星は少なくないと思われるが、気体の酸素は難しい、酸素を発生するシステムが休むことなく連続稼働している必要がある。初期の地球では、シアノバクテリアがその役割をしたが、数段階の変異を経て誕生したと考えられる、これがほかの惑星でも起こるとは考えにくい(p286)

    2018年2月25日作成

  • ふむ

  • 炭水化物が人類にとって悪影響を及ぼすことを記した本の続編。

    例によって後半は人類と糖質の歴史で、そっちの方が面白かった。

  • そこまで遡るのか!という驚きがあった。途中は冗長なところもあったが、要は糖質制限で人類は救われるということ。

  • なんだかなぁ、
    確かに糖質オフによって体調の改善が見られてるのは体感して分かったけれど、色々とあとがきの通り仮説を堂々とそれが間違ってないかのように描く威圧的な雰囲気が、とてもとても苦手だった。
    だからといって狩猟採集と農耕民族たちが和解できるとかも不可能だとは思うけど、なんだかその罠にこの作者も嵌められてる感じというか、ね。
    まあ、でも天と地がひっくり返るようなことをたくさん教えてもらったー
    狩猟民は本当に寿命が長かったの?調べても調べてもそんなデータが見つからないよ、

  • 話が広がり、読み物としては大変楽しく堪能させて頂けましたが、あれ?糖質制限はどうなったんだっけ?(笑)

  • 著者の「炭水化物が人類を滅ぼす」という仮説は、明快で分かり易い。信じてしまいそうになる。

  • ■インスリンは脂肪調達係
    ・野生動物や先史時代の人で「血糖値は下がることはあっても上がることがなかった」のであれば,「血糖値を上げるホルモンが5種類なのに下げるホルモンは1種類(インスリン)だけ」というのは不思議でもなんでもなくなる。それどころか血糖降下専用ホルモンは生物には全く必要なかった。
    ・インスリンの本来の機能は何か。
    ・インスリンの作用。
    ①グルコース輸送(筋細胞や脂肪細胞でのグルコースの取り込み促進)
    ②糖代謝(グリコーゲン合成・解糖促進,糖新生抑制)
    ③脂質代謝(脂肪合成促進,分解抑制)
    ④成長促進(タンパク質合成促進,分解抑制)
    ・要するにインスリンは「タンパク質合成とそれに必要なエネルギー源(脂肪)を蓄積するためのホルモン」である。
    ・これまでインスリンの中心的機能と考えられてきた①は「③中性脂肪に転換できる物質(=ブドウ糖)があれば中性脂肪に転換して脂肪細胞に取り込ませる」機能だった。もちろんインスリンがこの機能を果たせばブドウ糖は中性脂肪に変身するので血糖値は低下するが,これはあくまで「結果的におまけとして血糖が下がった」だけのこと。
    ■ヒトは一日に必要なエネルギーの6割前後を基礎代謝(活動せずに生きているだけで消費されるエネルギー)が占めているが,この基礎代謝のうち7割は内臓や筋肉での熱産生で消費されている。この膨大なエネルギーは脂肪蓄積/分解システムでなければ供給不可能である。
    ■肉食動物は非連続的にしか得られない獲物でいくつもの連続稼働系を動かし続けるという無理難題に直面してしまった。このような現実に対応するためには捕食者は絶食を前提にしたシステムを磨き上げるしかない。野生のトラは7~10日間の絶食は珍しくなく長い絶食期間でも生きていける能力があるからこそ肉食動物であり続けられた。それを可能にしたのはもちろん「脂肪蓄積/分解システム」
    ■「和食は健康に良い長寿食」と取り上げられることが多い。
    ・「一汁三菜」を基本とする日本の食事スタイルは理想的な栄養バランスと言われているが,一汁三菜とはコメを中心とした食事様式であり「コメを食べるために工夫された食べ方」に過ぎず「コメなしの一汁三菜」は食事として成立しない。
    ・つまり和食とは「多くの糖質を食べさせる食事」であり食後に血糖の急上昇をきたして大量のインスリンを分泌させるという意味で「時代遅れの不健康な食事」である。
    ■和食は世界的に「ヘルシーな長寿食」としてもてはやされている。日本人の平均寿命が世界トップクラスを長らく維持していて多くの日本人が和食を食べているからだ。しかし,これは正しいのだろうか。「和食を食べている」から「長寿」なのだろうか。
    ・他国の紛争中の国や内戦下の国,経済的に困窮している途上国では平均寿命が短く,国情が安定している途上国ではそれより長く,先進国では最も長い。紛争中の国,内戦下の国では兵士である青壮年から先に死んでいくため平均寿命は短くなる。紛争がなくGdpが高ければ社会インフラや医療制度を整備・維持できるようになり,結果として乳幼児期死亡率は低下して長寿者が増えてくる。これは食事や食料にも反映される。
    ・和食が日本人の長寿化に関与していないことは「社会インフラも医療制度もないが和食を食べている」状態で長寿が維持できるかと思考実験してみればわかる。要するに和食を食べていても寿命は短くも長くもなる。
    ・「和食」は長寿食ではなく「先進国(=長寿国)日本の食文化」と考えるべき。
    ・「日本は和食を食べているから長寿国」と言うのは要するに単なる疑似相関に過ぎない。疑似相関とは無関係なもの同士にあたかも関連があるように見せかけるトリックであり,「日本人はお餅を食べているから長寿国」「日本には新幹線が走っているから長寿国」「「日本は大人が電車でマンガを読んでいるから長寿国」という結論も統計データ付きで導き出せる。
    ■「脂肪だけ」では太らない。「脂肪+糖質」だと太る。
    ■食品中の脂肪は皮下脂肪にもない脂肪にもならない。つまり脂身たっぷりの豚バラ肉を心ゆくまで食べても,オリーブ油を飲んでもその脂肪は皮下脂肪にならない。
    ■肥満とは要するに脂肪細胞中の中性脂肪が増え脂肪細胞が肥大することにより起こる現象。
    ・脂肪細胞に中性脂肪の蓄積を促すホルモンの代表格はインスリンであり,インスリン分泌を促す糖質が肥満の唯一の原因。
    ・脂肪を摂取してもインスリン分泌は起こらないので肥満にはならない。肥満の原因はあくまでも摂取すると必ずインスリンを分泌させる糖質だけ。
    ■食事中の脂肪は小腸から吸収されるが吸収されるかどうかは血中の遊離脂肪酸濃度によりコントロールされている。
    ・血中遊離脂肪酸濃度が低ければ脂肪は吸収されるが,正常値に達すると腸管からの脂肪吸収はストップする。
    ・経口摂取した脂肪と肥満とは本来無関係であり脂肪にしてみれば「無実の罪」を着せられたようなもの。
    ・ところがここに糖質が絡んでくると話が違ってくる。「資質と糖質の同時摂取」→「糖質によるインスリン分泌」→「血中の遊離脂肪酸濃度低下」→「腸管からの脂肪吸収再開」→「インスリンの作用で脂肪細胞に中性脂肪蓄積」となる。
    ■日本以外の国では食料自給率は生産額ベースで計算しているのに対し日本だけはカロリーベースで計算している。
    ・2014年の自給率をカロリーベースで計算すると39%で生産額ベースでは64%となる。
    ・農水省にとっては自給率は低い方が農業保護政策の重要性が増すため都合がいいことは明らか。
    ■人口増加は農耕開始以前からゆっくりと起きており農耕開始が人口増加をもたらしたとする従来の説明は正しくない。
    ・ヒト誕生~4万年前(旧石器時代)までは人口は数十万人を超えることはなかった。
    ・4万年前~1万年前(新石器時代)までは人口増加率は年率0.1%以下だった(人口倍増期間は8000~9000年)。
    ・農耕開始以降(1万年前以降),成長率は0.4%となり西暦元年頃には人口は数百万~2億5000万人に増えた。
    ・食料とは無関係に人口が増え始めた。
    ・4万年前に何が起きたか。答えは「定住化」。
    ■ヒトは4万年前からゆっくりと人口を増やしていったが,実はそれよりさらに3万年前に人の人口は世界全体で数千人程度にまで激減したことが分かっている。7万4000年前に始まった最終氷期に,7万3000年前のスマトラ島の鳥羽山の巨大噴火が加わって急激な気候の変化が起きた。「トバ・カタストロフ理論」
    ■冒険家遺伝子
    ・カギを握るのはDRD4-7遺伝子
    ・ドーパミン受容体は様々な組織に存在し人手は5種類の受容体が確認されている。(D1~D5)
    ・このうちDRD4はD4受容体の形成にかかわる遺伝子でDRD4-7遺伝子はDRD4の変位型であり全人口の2割がこの変異遺伝子を持っていることが分かっている。
    ・DRD4-7Rの別名は「冒険家遺伝子」。
    ・DRD4-7を持つ人の特徴は「新もの好き」であり,リスクを恐れず挑戦心が強く当たらしい場所・食べ物・考え方にチャレンジするのを好む傾向がありDRD4-7Rを持たない人はその逆。
    ■「2:6:2の法則」の背景
    ・DRD4-7R遺伝子の頻度(=人口の2割),DRD4-7R遺伝子を持つ人の特徴と持たない人の特徴は,まさに「2:6:2の法則」の上位2割と下位2割の特徴そのものといえる。
    ・社会の構造やシステムが安定しているときには非冒険家タイプで前例踏襲型にして慎重派の方が社会に適合しやすい。
    ・冒険家タイプが能力を発揮するのは,環境が変化してそれまでの常識が通用しなくなった時。
    ・集団には「無謀・冒険派」と「慎重派」の両方が必要であり,その割合は「2:8」がベストだろう。
    ■血糖の急激な上昇は全身の血管で炎症反応を起こす極めて危険な状態であるが血糖を下げる手段は今も昔もインスリン1種類しかない。1万年の穀物職にもかかわらずインスリン以外の血糖降下ホルモンが分泌できるようになったわけではない。
    ■インスリンは過剰なブドウ糖を中性脂肪に転換することで血糖を下げるが1万年間の穀物食にもかかわらず,これ以外の血糖下降手段は人体には備わっていない。また,中性脂肪の行き先は脂肪細胞か肝細胞しかない。その結果として発症するのが脂肪肝と肥満。
    ■食後血糖上昇に100%例外なく反応するのが中脳のA10神経。
    ・A10神経は大量のドーパミンを分泌し報酬系を刺激する。
    ・ドーパミンを受け取った報酬系は幸福感を生み出し更なる快感を求めてまた穀物を摂取したくなる。これが糖質依存症。
    ・依存症から離脱するための手段はただ一つ。摂取をやめることしかない。
    ■アフリカでは数十万年ごとに新種のヒトが誕生したが基本的な生活パターンに変化はなかったと思われる。これがヒトの歴史500万年の99%を占めていた。
    ■先史時代のヒトの脳の基本仕様は「努力しない,頑張らない,困ったら逃げる」であり,ヒトの脳が「努力する,頑張る,困難に立ち向かう」仕様になるのは今から5万年前以降のことで,ヒトの歴史500万年からすると,つい最近の変化である。

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著者プロフィール

夏井 睦(ナツイ マコト)
医師、練馬光が丘病院傷の治療センター科長
1957年秋田県生まれ、東北大学医学部卒、形成外科医。現在は練馬光が丘病院傷の治療センター科長。従来の創傷治療の正反対とも言える画期的な「湿潤療法」の創始者。湿潤療法に関する著書を数々刊行し、また2001年からは自らのウェブサイト「新しい創傷治療」で、常識(傷は消毒するもの)を覆す治療法の効果と合理性を発信し続けて傷治療の現場を変えつつある。傷を消毒しない、乾かさないという湿潤療法は臨床現場で新しい常識となりつつあり、若い医療関係者を中心に急速に普及している。また、一般家庭用にも湿潤療法の創傷被覆材が販売されるなど、新しい傷治療は確実に社会へと浸透してきている。他方、いまだに一部の頑迷な学会の抵抗があるため、不合理な治療法の矛盾を訴え、湿潤療法の科学的な合理性を説きながら戦っている。また、医学史的な視点に立ち、現在の医学界にはびこる非科学的な常識の変革を目指して、積極的な主張を展開している。

「2013年 『医療の巨大転換(パラダイム・シフト)を加速する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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