日本が知らないもうひとつのヨーロッパ 下 (カッパ・サイエンス 栗本慎一郎自由大学講義録 3)
- 光文社 (1995年7月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334060992
感想・レビュー・書評
-
KS2f
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「栗本慎一郎自由大学講義録」の第3弾下巻です。
樺山紘一の「「近親憎悪」としてのイスラムとユダヤ」では、ヨーロッパのイスラム観が、ヨーロッパ自身のネガティヴな「鏡」の役割を果たしていることが指摘されています。
合田正人の「「境界」がユダヤを生んだ」は、ユダヤ思想と「境界」についての哲学的思索をリンクさせつつ、さまざまな話題を紹介しています。理性の限界を説いたカント哲学に対して、微分的な「内包」の理論によって異議申し立てをおこなったユダヤ人の思想家として、ザロモン・マイモンとヘルマン・コーエンが紹介されます。他方、カントの『単なる理性の限界内における宗教』の宗教論に対して、ジンメルの「生の哲学」が、『永遠平和のために』の政治思想に対して、アレントやマルクスが、それぞれ「境界」を揺るがすような思索を展開していたことが論じられ、現代にまでつながるユダヤ人をめぐる問題の複雑さを垣間見ることができます。
今福龍太の「「民族離散」があらたな世界を創る」では、ユダヤ人のディアスポラの歴史を簡潔にたどり、その中でサンタ・テレサやオットー・ヴァイニンガーのように、近代ヨーロッパの国家と市民の概念を揺るがすような思想が生まれてきたことが解説されています。 -
教科書的なヨーロッパ史では学べないいくつかの側面を垣間見た感じだ。私たち日本人が、いかにヨーロッパ人の目を通して西洋史や世界史を見てきたか。ユダヤやイスラムとの関係はもっともっと知りたいと思う。