- Amazon.co.jp ・本 (530ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334073244
感想・レビュー・書評
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厳密に推理小説と言える代物かは判らない。
取り立てて難解な謎が充満するわけでもなし、不在証明が解かれるわけでもない。
犯人探しがメインではなく、かと言って歴史小説とも言い難い。
ファンタジーになりきらない微妙な設定を置いた上で、『人間の意思が如何に遂行され、もしくは遺って解釈されうるか』に対する痛烈な問い掛け。
純粋推理の展開にSF要素を取り込んでしまうと、下手をすれば邪道で散漫な印象を与え兼ねないが、それを卑怯と思わせない部分が書き手の力量なのだろう。
歴史という巨大かつ膨大な荒波の中で、どこまでも個として生きざるを得ない人間の切なさ、いじらしさ。
人の手に御し難いものは、時間でも事実でも、確かにこの世にある。
それでも、埋没せずに足を踏ん張って在ろうとすることの、強さと逞しさが胸に沁みる。
過去を振り返り乗り越えることは大事である反面、過去を意図的に位置付ける危険性もきちんと示される。
題材の料理の仕方が巧み。
読み終えると、自分も頑張って生きなきゃな、としみじみ感じ入ってしまう(照)。 -
なかなかページを進められません。気持ちが乗らなくて…。
他の本を先に読み始めちゃってます。 -
やっぱり、面白い。
私は歴史が苦手だったので、歴史に関する本は避けがちだったのですが、この本はそういう本だとは知らずに手に取ってしまいました(笑)。
SF小説、というジャンルに入るのかもしれませんが、かなり、人間臭い物語になっています。
宮部みゆきさんの本らしい、人間らしさが溢れている本で、自分がその場所にいるかのような気持ちになりながら、読書を進めていきました。
今を生きる、ということについて深く考えさせられる本です。
1回読んでみる価値は絶対にあると思います。
厚さの割には、さらっと読めます。 -
文庫がなかったので新書で読んでみた。机で本を読まないわたしには、この新書はとても扱いにくくページを開く指が疲れた。内容についてはさすが宮部みゆき、中だるみがありつつも最後は感動の渦に巻き込まれる。ちょっと解せないのが、孝史が戻る時を選べるならばなぜにホテル火災後なのだろう。そんなことを言い出すと、この作品の良さは台無しだ(笑
タイムトラベルなのだから壮大なストーリーを描くのかと期待した。だが、ちんまりした印象をどうしても受ける。二・二六事件は歴史の分岐点になる事件なのだ。結局、歴史の大きな流れに逆らうことは出来ないと話は締めくくる。ふきからの手紙を読む孝史は何を感じたのだろう。 -
宮部みゆきにしては硬いかんじ。初期の作品なんですね。
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誰を基準に感想を書いたらいいのか悩ましい。結末さえ知っていれば何とでも言えるのは確か。まがい物の神よりも一個人としてしっかり生きようという結論でよいのかな。
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ラストシーンがいとおしい。
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この本と同時に、江原啓之氏の「傷つくあなたへ」を読んだのだが、その中に「蒲生邸事件」の内容とのちょっとした面白い偶然があった。
それは、「日本人が戦前に持っていた美しい心を、現代人は失っている」という主旨のことが書かれていたことだ。
この話は、タイムスリップというSFネタが扱われているけれど、タイムスリップネタというくくりにしてしまうには、味気ない。
私が読み取ったのは、そのミステリのからくりの面白さよりも、戦前の時代に生きる人を身近に見て、現代人が心の在り方を変えていく物語だった。
学歴のあるなしで苦労した団塊の世代とその次世代の受験に追われた子供たち。
物質至上主義になって、物にあふれ豊かになったはずの日本。
そこにかつてあって失われた、失われたことにすら気付かずに過ごしてきた精神を主人公はタイムスリップした世界で目の当たりにする。
これはただ、その時代の物語を書くだけでは伝えきれないものがある。寒さや不便さを描き、現代の物質社会の豊かさや恩恵を確認したり、逆に現代人が見失ってしまった心遣いや人としての在り方といったものを列挙するには、現代人の視点があった方がいい。現代人である主人公に、自らの体験として、こんなにも違うと明確に語らせた方がいい。
受験に失敗したら負けなのか・・・いや、そうではないでしょうと、著者はそんなメッセージをも具体的に伝えたかったのではないだろうか。
受験うんぬんは、2010年の今となっては少し古くさい話かもしれないが、勝ち負けや結果ではなく、自分の信念で生きよと・・簡単にまとめすぎたかもしれないが、そんな風に読者を励ましてくれているように思う。
ネタばれになってしまうかもしれないが、最後のほうで歴史について図書館で調べるようになる主人公の姿に、ここにも密かなメッセージを感じたのは私の勘ぐりすぎだろうか。
お仕着せの、年表や教科書で学ぶことが勉強・・つまり学びの本質ではないということ。
学校で学んだことは、学びたいことの道しるべであり、知識の枠組みというか地図を与えられているだけのことなのだ。歴史でいえば、歴史全体の大雑把な流れを学ぶのが学校であり、その大雑把な知識があるからこそ、2.26事件に興味を持ったときに、2.26事件を中心に据えて調べていくことが可能になる。
そして、本当の学びとは、知りたいこと、興味のあることを自ら調べていくことなのであって、それは言いかえれば、好奇心を満たすことであり、それこそが学びの本質なのだ。
主人公が自ら図書館に通ったように。
そしておそらく著者ご本人がまさに2.26事件に関して多くの書物を漁ったように。
感想はこの程度にして。
ミステリのトリックとしては、300頁を超えたあたりで、犯人はこの人以外にないでしょうと目星をつけたのだけれど、まんまと著者のミスリードに引っかかってしまいました。