鬼がつくった国・日本(にっぽん)―歴史を動かしてきた「闇」の力とは (光文社文庫 こ 16-1 NONFICTION)
- 光文社 (1991年11月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334714345
感想・レビュー・書評
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小松和彦(文化人類学・民俗学)と内藤正敏(写真家)との対談集。
口絵 鬼とは何か
プロローグ
Ⅰ 魔境―京都
Ⅱ もう一つの「日本」・奥州
Ⅲ 鬼を操り、鬼となった人びと
Ⅳ 鬼の王国の放浪者
Ⅴ 鬼の王国の破壊者は誰か
あとがき
解説 夢獏獏
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人類学・民俗学の研究者として知られる小松和彦と、東北地方を中心に民俗学的なテーマを扱う写真家の内藤正敏の対談です。日本の歴史の底流を形作っている「闇」の精神史に分け入り、その魅力を語っています。
小松の一般の読書家に向けて書かれた著作には、著者の情熱を感じられるものも少なくないのですが、本書はやはり対談形式ということもあってか、両者がこの世界の魅力に引き込まれていることが情熱的な言葉で語られているように感じました。 -
日本の歴史と、それを闇の側から支えてきた「鬼」の事を小松和彦氏と内藤正敏氏が語り合った対談集です。「鬼」と言っても、伝承的な鬼から、総称的な鬼~権力の外にいた、まつろわぬ民~に関して。対談は多方面に渡るので、この本から単語を拾って興味分野を掘り下げる導入として最適です。
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著者の民俗学にはまったキッカケの本で、私が買ったのはカッパ・サイエンスでしたね。鬼の外部性の話はとても説得力があって面白かったですよ。
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歴史とは権力者=勝利者から見たものである。なぜなら権力に屈した者や排除されてきた者=敗者は歴史を残すことができないからだ。そのような敗者は歴史の中で「鬼」と呼ばれてきた。本書では,民俗学者と写真家のふたりが対談を通じて,そのような「鬼」たちこそが実は日本の文化を生み出し歴史を築き上げてきたのだと論じている。
本書では幾つかの側面から鬼について語られている。鬼とは何なのか,そして鬼は社会の中でどのような役割を果たしてきたのか。権力者に敵対し敗れた者たちは社会の周辺に排除され,やがて鬼と呼ばれるようになる。主流をはずれた彼らは独自のネットワークを築き,商工業などで力を蓄えていく。一方で権力者たちは,鬼のネットワークを利用すべく彼らとさまざまにかかわってもいく。
本書では,著者のふたりが上述のような議論を進めていく中で多くのエピソードを紹介しているのだが,それらは(今までにあまり知らなかったせいもあって)非常に興味深かった。また,本文の対談だけでなく,カラーページに収められた写真を眺めるのも面白い。ワラ人形や写真に五寸釘が打たれている写真を見たときには多少なりともゾクっとした。
しかしながら,対談集という性質上,内容にあまりまとまりがない感じがあるのは否めない。話の脱線などによって本筋が分りにくくなっている箇所や,説明が不十分に感じられる箇所も多々ある。本書の内容に関心を持った読者は,本書が扱う風俗や歴史をもう少し体系的に解説してある本へと読み進めるのが良いのかもしれない。その意味では(著者の著作目録ではなく)参考文献などが上がっていれば良かったように思う。 -
今日買ったばかりですが、そのまま帰り道で読みながら帰ってきました。まぁ、対談集なので軽く読めます。小松さん大好きなので。こう、深いところというのじゃなく、取りかかりを話してくれている感じで、分かりやすくて面白かったです。ちょっと物足りない気もするけど、そんなのは専門書を読めばいい話ですから(笑)