死体を買う男 (光文社文庫)

  • 61人登録
  • 3.08評価
    • (2)
    • (4)
    • (14)
    • (2)
    • (2)
  • 4レビュー
著者 : 歌野晶午
  • 光文社 (1995年2月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334720049

死体を買う男 (光文社文庫)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 探偵信濃譲二を擁した「家」シリーズを書いていた歌野氏がいきなり書いたノンシリーズがこれ。とはいえ、本作の前に『ガラス張りの誘拐』という作品も出しているのだが、読んだ順番に沿って書くことにした。

    さて本作では今までとガラリと作風を変えている。なんと主人公は江戸川乱歩と萩原朔太郎と実在の人物である。そして内容は乱歩が南紀白浜で出くわした首吊り事件の真相に二人が挑むという物だが、それだけではなく、それが実は乱歩の未発表原稿『白骨鬼』という作品であり、それが本物かどうかを探るという入れ子細工の作品になっている。

    さて新本格世代でこのような作中作の意匠を凝らした作品といえば既に綾辻氏の『迷路館の殺人』があったが、歌野氏はこの趣向に乱歩の未発表原稿というさらなるハードルを設けている。単に作中の作品がミステリだけではなく、あたかも乱歩が書いた推理小説でなければならないのだ。今まで新本格デビュー作家1期生の中でも、技術の未熟さ、飛びぬけた作品がないことから、軽んじて見られていた傾向のある彼がいきなりこのような冒険に出たことは当時驚きであった。そしてその試みは成功していると断じていい。実際刊行当時、本書は世の書評家からも絶賛を受けた。なんせあの辛口推理作家佐野洋でさえ、本作を認める発言をしているくらいだ。これではすわ歌野氏もブレイクか!と期待が掛かったが、結局その年の『このミス』や週刊文春の年末ベストランキングには引っかからず仕舞いという結果に終る。

    同時期にデビューした他の作家3人が『このミス』を筆頭に、年末の各種ランキング本に選出されるのに対し、歌野氏の作品はデビューして15年後、ようやく『葉桜の季節に君を想うということ』でいきなり『このミス』、週刊文春で1位を獲得し、ランクインする。その後も毎年とは云わないまでも数回ランクインしており、やっとミステリ作家として世間に認知されたような感がある。
    前にも触れたが、他の3人に比べるといささか毛色の異なるこの作家がそれまで冷遇されていたように私は感じていたが、どうもそれは作者自身も感じていたようだ。そのようなコメントを『葉桜~』の頃のインタビューで触れている。そして本作は当時歌野氏がかなりの自信を持って世に問うた作品であったようで、これがダメならばミステリ作家を辞めるとまで思っていたらしい。実際彼はこの次の『さらわれたい女』という作品を出した後、長い沈黙に入る。

    本書は歌野氏の夢破れた作品という位置づけであるが、上に述べたようにミステリ好きには堪らない趣向が詰まった作品である。ぜひ一度読んでもらいたいものだ。

    そして読んだ人は私に教えて欲しい。本書の題名の意味するところを。

  •  あの江戸川乱歩の未発表作品だという『白骨鬼』が雑誌に連載されだした。『白骨鬼』の中では、江戸川乱歩と萩原朔太郎が、月恋病やある青年の自殺に関して調べ、見事な推理を披露している。なぜこんな小説が存在しているのか。作家・細見辰時は『白骨鬼』を発行している青風社に問い合わせた・・・。

     作中作という形で書かれているこの作品。『白骨鬼』の中での江戸川乱歩と萩原朔太郎のやりとりはおもしろいし(朔太郎のキャラが最高!)、トリックも「なるほど」と。これだけでも楽しめるのに、さらにその外側にもトリックがある二重構造。1冊で2度楽しめる、そんな本。おもしろかった。著作権をよくクリアしたなぁ。ただ、タイトルがどうして『死体を買う男』になったのかは疑問。

全4件中 1 - 4件を表示

歌野晶午の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
宮部 みゆき
東野 圭吾
有効な右矢印 無効な右矢印

死体を買う男 (光文社文庫)はこんな本です

死体を買う男 (光文社文庫)を本棚に「読みたい」で登録しているひと

死体を買う男 (光文社文庫)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

死体を買う男 (光文社文庫)の新書

死体を買う男 (光文社文庫)のKindle版

死体を買う男 (光文社文庫)の文庫

ツイートする