天国からの銃弾 (光文社文庫 し 5-26)

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  • 光文社
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (341ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334721213

感想・レビュー・書評

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  • 短編集。
    作者の主義主張がかなり透けて見える。

  • ストーリー発想の奇抜さ、奇抜なだけで終わらない構成力、最後まで読者を飽きさせない登りつめるような収束力。島田荘司さんの作品は私に本を読む楽しさを教えてくれる。ミステリの醍醐味が主人公と一緒になって謎解きをする面白さだとすれば、三作品からなるこの『天国からの銃弾』はミステリの王道だと思う。また島田作品を読みたい。

  • ノン・シリーズの中編を三編収録。いずれも著者らしい「奇抜な着想」が魅力的で、一体どんな解決になるのか、つい先が気になってしまいます。
    トリックというよりもストーリーテリングの妙で巧く纏めている印象です。ミステリーとしてはやや物足りない感じがしますが、物語自体はとても面白かったです。
    ベストは【ドアX】。ぐにゃりとした世界が徐々に整っていくさまが好きです。

  • 御手洗シリーズ以外の島田作品を初めて読みました。ミステリは、いわゆる本格物が好きなので、こういう生臭い感じのものはちょっと苦手かもしれません。因果応報、謎があって犯人がいて探偵(刑事でも可)がいて知恵比べ的な最終的にすっきり解決する話が好きなのです。こういう系統が好きな人には面白いのかもしれませんが。
    『ドアX』時差は分かりましたが、ジオラマとは…妄想かと思いましたよ。(あ、似たようなものか…)あふれるほどの才能があっても(最初、これも妄想かと思いました)、成功するとは限らないですからねー。痛いばかりかと思ったら、ラストの落ち着きどころにほっとしました。

    『首都高速の亡霊』ある意味ホラーですね。これはまあ、因果応報といえないことも。ただ、彼女はほんとについてないですね、て感じです。まあ、当たったのが死人にしろ、植木鉢を落としたことは事実なので、それが露見しなかっただけでも労働には見合うかと。

    『天国からの銃弾』一番謎解きっぽい感じのお話。でも本格物ではないので、真相への道筋ははしょられてます。…というか、これ絶対分からない気がします。でもメインはラストの天国からの銃弾なので、これはこれでいいかと。

  • 話の先がなかなか読めないミステリ短編集。謎解き以前に、物語がどう展開していくのかがまるで予想外。どこまでも騙されてます。
    お気に入りは「首都高速の亡霊」。倒叙ものなのだけれど、普通の倒叙じゃない! どこがどう繋がっていくのか、間抜けなことにほとんど最後まで読みきれていませんでした。当然、驚かされましたよ。そして皮肉なラストも個人的に大好きです。

  • 『ドアX』歌野晶午の『葉桜の季節に君を想うということ』に似てるね(笑)「Xのドア」のオチは良かった(笑) 『首都高速の亡霊』2つの物語から構成されていて面白かった(笑) 『天国からの銃弾』目が光る自由の女神から息子の死。真相は若干唐突な気もする(笑)でも面白かった(笑)

  • 中編集とでも言うべきか、しかしなかなか濃い話が入っている。長編は時間が取れない、なんて人におすすめ。

  • 島田氏の短編集としては珍しく吉敷も御手洗も出てこないノンシリーズ物ばかりだった。短編集とは云え、一番短いのが冒頭の「ドアX」の70ページでその他2編はどれも100ページを超える作品で、どちらかと云えば中編集といった方が正しいだろう。

    ハリウッド女優を夢見る女性のあまりに出来すぎた世界が語られる「ドアX」はその明かされた真相からして長編『眩暈』の変調のような味わいがある。最後に志賀直哉氏の短編「出来事」を髣髴させるところは作者の手腕だが、「ドアX」の正体が途中で判るのが災いして却って蛇足になった感がある。

    次の「首都高速の亡霊」はタランティーノの映画に触発されたような内容で、ある一点から語られる凶事がそれぞれ登場人物の視点、立場で語られることでからくり仕掛けのおもちゃを見ているようで結末の恐ろしさが強調されるというより物語進行のユニークさが印象に残った。最後の死体が首都高速の外灯に持たれるように偶然腰掛けるような姿勢になるというのがどうしても想像できず、これさえもっと簡潔であればすっきりした好編になったのだが。

    最後の「天国からの銃弾」は島田的ロス・マクドナルド調綺譚といった感じで、結構好きな一編。
    定年退職した老人の富士山を撮り続ける趣味を発端として息子のソープランドの屋上での首吊り死が起き、その事件の真相を調べていくうちに息子夫婦の知られざる暗黒が次第に明かされていく。
    しかしこれには一点、大きく物語のリアリティに欠ける部分がある。主人公の老人がプロ級の射撃を持つ、その事ではない。毎週射撃の練習を神奈川県のど真ん中でやる、これも瑕疵ではない。それは息子夫婦が常に覚醒剤の常習犯になっていたこと、しかも結婚する前からだという事だ。もしこれが本当ならば彼ら2人の子供に何か障害があって然るべきだ。文中にもし「孫は不幸なことにどちらかと云えば周りの子達よりもいささか知恵遅れのようだが、老衰の身になってみればそれさえも可愛さを倍増するだけなのだ」などという一文があれば、最後の彼ら家族の暗黒はもっと現実味を帯びていただろう。

    以上3編、どれも佳作だがそれぞれに弱点や瑕疵を備えているので今回は3ツ星とする。

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著者プロフィール

1948年広島県福山市生まれ。武蔵野美術大学卒。1981年『占星術殺人事件』で衝撃のデビューを果たして以来、『斜め屋敷の犯罪』『異邦の騎士』など50作以上に登場する探偵・御手洗潔シリーズや、『奇想、天を動かす』などの刑事・吉敷竹史シリーズで圧倒的な人気を博す。2008年、日本ミステリー文学大賞を受賞。また「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」や「本格ミステリー『ベテラン新人』発掘プロジェクト」、台湾にて中国語による「金車・島田荘司推理小説賞」の選考委員を務めるなど、国境を越えた新しい才能の発掘と育成に尽力。日本の本格ミステリーの海外への翻訳や紹介にも積極的に取り組んでいる。

「2023年 『ローズマリーのあまき香り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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