毒猿: 新宿鮫2 (光文社文庫 お 21-6)

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  • Amazon.co.jp ・本 (462ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334726560

感想・レビュー・書評

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  • シリーズ第一作の前作を読んで、ハードボイルドって思ったよりソフトなのね~って思ったけど、今作は暴力シーン、惨殺シーンも多くて、イメージ通りのハードボイルド。
    というのも、主人公である鮫島は今回脇役に徹していて、ストーリーの軸は3人の台湾人。

    台湾の暗黒部分を牛耳る男。彼に雇われていたが手ひどく裏切られた殺し屋。若かりし頃殺し屋とは親友だった台湾警察の刑事。
    殺されたくない男。復讐を遂げるためだけに生きている男。殺し屋を生きて逮捕したいと願う男。

    日本のやくざでないのがミソ。
    台湾のやくざが日本のやくざに匿われるのだけれども、日本のやくざは命のやり取りに対する覚悟がどうにも甘い。
    技術より知力より情緒で動く日本のやくざたちは、手もなく殺し屋・毒猿の餌食になっていく。

    鮫島は、たまたま知り合うことになった台湾の刑事とともに、事件を拡大させないために奔走する。

    物語はその鮫島の視点と、毒猿によって事件に巻きこまれていく奈美の視点で書かれている。
    毒猿がなにを考えているのかは最後まで明かされないが、それでも彼がどんな思いで復讐に向かっているか、淡々とした行動の奥にどれだけ熱い心を持っているかが痛いほど伝わってくる。

    熱く交差する台湾の人たちの思いを知りながら行動する鮫島の、ひたむきで誠実な行動が読んでいて心地よい。
    鮫島は危機に際して恐怖を感じることもなく前に進んでいくわけじゃあない。怖くて、動けなくなりそうで、そんな自分を鼓舞しながら前に踏み出そうとする。
    ごく当たり前の感情を持ちながら新宿を舞台にした闇に飛び込んでいく。そこがいい。

  • 毒猿と呼ばれる暗殺者の存在感が半端ない!
    主人公よりも毒猿がどうなるのか? 気になった。
    警察小説ですからかなり、ハードボイルドな展開です。

  • 大沢在昌による新宿鮫シリーズ第2弾。
    台湾ヤクザの手足として働いていた殺人鬼、毒猿がその雇い主の裏切りにより愛人を殺されたことに逆上し、雇い主を殺そうと追い詰めようとする。一方、その雇い主は自らの命を守るために協力関係にある日本のヤクザを頼って日本に逃げていた。殺人鬼を追う台湾の警官、殺人鬼により引き起こされた殺人の捜査をする日本の警察などが入り乱れて物語は展開する。
    中国残留孤児の問題やその子供たちが日本で馴染めずに苦労する、といった問題もからめ、特に東アジア情勢の課題をちりばめながらも新宿という限られたエリアで展開するストーリーは緊迫感に満ち、かつスピード感に溢れ、先が気になる展開とともに読む手を止まらなくさせる。
    台湾人警官の郭さんも相当強いが、殺人鬼・毒猿が滅法強い。ところどころリアルすぎて気持ち悪くなるような描写も含め、鮫島が本当に追い詰めることができるのかと心配になる程だ。それでも、やはり単独行動をとらざるを得ない鮫島がある意味哀れだが、カッコよくもある。
    課長の桃井もいい味を出していて、今後の作品での活躍に期待が持てる。

  • 新宿鮫に劣らず面白い!
    しっかり展開していく上に緊迫感もある。
    そして人物描写の上手さは相変わらずで、1人1人の魅力がたっぷり。特に郭と楊にはなぜか惹かれるものがある。
    鮫島が脇役に回りつつ、それが功を奏しているのは間違いない。

  • 久々に再読。
    新宿鮫シリーズは出版されると同時に読んでいて、ワクワクしていたシリーズの1つでした。
    また読みたいなぁ~と思っていたのが、このシリーズ2作目にあたる「毒猿」。
    よかった~~!涙がでましたよん。
    やっぱりこのシリーズの中では一番いいよなぁ。
    歌舞伎町を舞台に中国マフィアなどを絡めた作品は、今でこそ馳星周が有名というか、そのノワールな世界を広めていますよね。
    それはそれで馳氏の作品は好きです。現代的だしね。
    でも、同じ土俵にたった作品ですが、大沢氏の世界には救いがあるんですよん。
    読んだあとホっとするというか。
    なにもハッピーエンドばかりがいいとは言いませんが、やっぱ最期には、この世はそう悪くないよ~という気持ちで終わりたいなぁ~と私は思うんです。
    本書では復讐をするために台湾から乗り込んできた殺人マシーンならぬ殺し屋やそれを追ってきた台湾の特殊警官などなどが絡み合い、流れが早くスリリングな仕上がりになっています。
    ラストはウルルンもの!!
    シリーズですが、1作目を読まなくても大丈夫ですよん。本書はオススメ!

  • 常設賭場摘発のために監視されたマンション。背景に見える、台湾やくざ。そんな折、新宿署刑事・鮫島は、台湾から潜入してきた「毒猿」と呼ばれる殺し屋の存在を知る。 毒猿の目的は、その標的は・・・鮫島が挑む。 「新宿鮫」シリーズ第二弾。

    ミステリー、それでいてハードボイルド! 毒猿の正体はあっさりと見抜けてしまうものの、スピード感があって楽しめる。 台湾から来た刑事・郭、台湾マフィアのボス葉威、そして毒猿。それぞれに敵対する三人に鮫島が加わり、スリリングな戦いが始まる。ラストの戦闘シーンは迫力です。

  • 現代社会とはややギャップのある設定ではあるが、緊密な背景・人物描写が疾走感のある文体と相まって、文章がそのまま頭の中で映像化して流れていくハードボール小説。先へ先へとページを進めたくなる。

    ただ、ハードボイルを追求しすぎたが故か郭・栄民(グオ・ヨンミン)と独猿こと劉・鎮生(リュウ・ツェンシェン)が死ぬであろうことは想像できてしまった。

    しかも、毒猿は腹膜炎で死んじゃうのかい。。。とややあっさりとして結末に拍子抜けした。

    毒猿がシャブを嫌い、狙った獲物は確実に始末する完璧な能力をもっている悪役ヒーローのような存在に感じるが、一方で、警察官を躊躇なく殺戮する冷酷な描写があることにより、完全に心酔できない。ゆかりを殺さなかったのだから、警官も殺さず、ヤクザのみ倒すという描写にしていれば、もう少し違った終わり方があったのでは無いかと感じた。
    悪役ヒーローにもなりきれなかった為、あんな終わり方になってしまったのかな。。と。

    しかし、単純に面白い事は間違いない!!

  • はらはらどきどきの傑作。文体や構成も見事。思わずページをめくるのが煩わしくなる。

  • 新宿鮫第二弾。
    今読むと少し古い感じがするけど、面白いのは間違いない。
    第三弾も読まねば。

  • 再読。
    新宿鮫シリーズ第2弾。シリーズ最高傑作とも言われる作品。
    台湾から来た殺し屋「毒猿」と郭刑事、毒猿に魅せられた奈美の織り成す物語。鮫島はむしろ脇役。
    毒猿も郭も鮫島も、鮫島の上司の桃井も格好良過ぎて切ない。
    (図書館)

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著者プロフィール

1956年愛知県名古屋市生まれ。慶応義塾大学中退。1979年に小説推理新人賞を「感傷の街角」で受賞しデビュー。1986年「深夜曲馬団」で日本冒険小説協会大賞最優秀短編賞、1991年『新宿鮫』で吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞長編部門受賞。1994年には『無間人形 新宿鮫IV』直木賞を受賞した。2001年『心では重すぎる』で日本冒険小説協会大賞、2002年『闇先案内人』で日本冒険小説協会大賞を連続受賞。2004年『パンドラ・アイランド』で柴田錬三郎賞受賞。2010年には日本ミステリー文学大賞受賞。2014年『海と月の迷路』で吉川英治文学賞を受賞、2022年には紫綬褒章を受章した。


「2023年 『悪魔には悪魔を』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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