- Amazon.co.jp ・本 (632ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334731212
感想・レビュー・書評
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重厚な短編集だった。どの話も沼が深い。どんでん返しが多くありきたりな着地を見ない。
どんでん返しが凄まじく、最後になんとも言えない絶望が残る【厨子家の悪霊】、幕閉じでまさかのカラクリが発動する【笛を吹く犯罪】、友人のやりきれない最期と哀れな運命が哀しい【墓掘人】、そして、人間荘というアパートを舞台に繰り広げられるドロドロの人間劇をのぞきみる中編【誰にでも出来る殺人】が特に印象的だった。
それ以外の短編もどれも個性が強くおもしろかった。
山田風太郎自身医学を学んでいたからか、登場人物に医学生が多かった。またほとんどの話で、女性が事件の中心にいる。その女性は聖女であったり魔性であったりそれぞれだが、彼女の色香で破滅へと踊らされる男たちの物語が多かった。
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山田風太郎のミステリー集全10巻。
第1巻は本格推理小説。人間心理による殺人動機やトリックで、その人に訪れた一瞬による運命の転換というタネが秀逸。
シリーズの中でも一番小説らしい巻かも。「凄愴編」「戦争編」「サスペンス編」などはかなり人の心理を抉ってくるので読むのがつらくなることも。それでも山田風太郎の、戦時中に青春時代をすごしたため、いっそうのこと荒唐無稽な世界を創作しないと生きるのが苦しかった、という感覚にはとても惹かれる。やはり本を書くのってそういうことだと思う。自分がそれをしないと生きていられないという熱情を作品に昇華させるという行為。
また山田風太郎は、荒唐無稽時代物もかなりあるけれど、根本が史実だったりして、嘘ばっかりでないところが偉大なところ。 -
「誰にも出来る殺人」
これは、すごく面白かった。六つの短編でもあり一つの中編でもある。人間荘という下宿屋で起こる、恐ろしくも悲しい人間ドラマ。
一つ一つの主人公は違うが下宿屋の住人はほとんど変わらず、その作品ごとによって住人のイメージが違うのもまた面白い。えー、あの住人が!?と思うことがたくさんあった。
一つ一つの話でももちろん楽しめるが、ラスト「淫らな死神」を読んだ後には、いろんな繋がりが出てきて、また続けて読み返したくなる。
それが作者の思う壺とわかっているのだけど、楽しくて嬉しくてならない。 -
「本書収録の九短篇のうち、「眼中の悪魔」と「厨子家の悪霊」を除く七篇を収めたこの桃源社版『虚像淫楽』の高水準には、凄まじいものがある。掛け値なしに、日本で出版されたミステリ短篇集のベストテンに入る、超高密度傑作集といっていいだろう」日下三蔵による解題より
そーなんだー
冗談はともかく
ミステリ教信者でないので良く分からないが確かにみな水準作以上
だが書かれた年代によるかもだが驚きの傑作はない感じ
作者らしくはある
特に今読む意義を感じない -
【眼中の悪魔】【虚像淫楽】【厨子家の悪霊】【笛を吹く犯罪】【死者の呼び声】【墓掘人】【恋罪】【黄色い下宿人】【司祭館の殺人】【誰にも出来る殺人】収録。
本格ミステリー短編9篇と、「連鎖式」の長編【誰にも出来る殺人】を収録した傑作選。探偵作家クラブ賞を受賞した【眼中の悪魔】と【虚像淫楽】、ホームズのパスティーシュで意外な事実がラストで明らかになる【黄色い下宿人】、逆転に次ぐ逆転の【厨子家の悪霊】など、いずれも良く出来た作品ばかりです。
私的ベストは【誰にも出来る殺人】。短編一つ一つに意外なオチが用意されているので独立して読めますが、最後まで通して読んだときに全く別の構図が現れるところが秀逸です。 -
2015年7月30日読了。山田風太郎の初期短編集を収録。戦後・昭和の雰囲気を色濃く残す感じは現代的ではないが、あふれるサービス精神と巧みな構成は今読んでも新鮮で面白い。サドマゾ・殺人教唆・聖女が犯す殺人・二転三転する真相、などの風太郎氏が好む要素が炸裂しており、どの作品も最終ページであっと驚かされるのはすごい。収録短編の中では「厨子家の悪霊」の畳み掛ける構成がベストと思うが、「司祭館の殺人」のような設定を考え出し、それをトリッキーな短編に仕上げただけでもこの人はすごいと思う。
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著者デビューから10年くらいの探偵小説。誰にも出来る殺人が一番面白いかな。枚数に収めるためか説明不足な感じがする。しかしどれも面白い。
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収録作品)厨子家の悪霊/虚像淫楽/眼中の悪魔 (探偵作家クラブ賞(1949/2回))/笛を吹く犯罪/死者の呼び声/墓掘人(探偵作家クラブ賞候補(1954/7回))/恋罪/黄色い下宿人/司祭館の殺人/誰にも出来る殺人