人それを情死と呼ぶ: 鬼貫警部事件簿 (光文社文庫 あ 2-33 鮎川哲也コレクション)

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  • Amazon.co.jp ・本 (359ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334731793

感想・レビュー・書評

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  • 鮎川哲也の長篇ミステリ小説『人それを情死と呼ぶ~鬼貫警部事件簿~』を読みました。
    アンソロジー作品『線路上の殺意 鉄道ミステリ傑作選〈昭和国鉄編〉』に収録されていた『早春に死す』を読んで、鮎川哲也の作品を読みたくなったんですよね。

    -----story-------------
    人は皆、警察までもが、河辺遼吉は浮気の果てに心中したと断定した。
    …しかし、ある点に注目した妻と妹だけは、偽装心中との疑念を抱いたのだった! 貝沼産業の販売部長だった遼吉は、A省の汚職事件に関与していたという。
    彼は口を封じられたのではないか? そして、彼が死んでほくそ笑んだ人物ならば二人いる。
    ―調べるほどに強固さを増すアリバイ。
    驚嘆のドンデン返し。
    美しい余韻を残す長編。
    -----------------------

    『週刊文春』の1961年(昭和36年)1月23日号から3月6日号に連載された中篇を長篇化したもので鬼貫警部シリーズの作品です。

     ■一 見知らぬ女
     ■二 山の宿
     ■三 失踪のはて
     ■四 論理の軌跡
     ■五 意外な発見
     ■六 庫裡(くり)の灯
     ■七 海の宿
     ■八 狩猟家は語る
     ■九 夜くる客
     ■十 疑惑の否定
     ■十一 夢をみた男
     ■十二 鏡の説話
     ■付録1●あとがき 鮎川哲也
     ■付録2●人それを情死と呼ぶ 鮎川哲也
     ■エッセイ●街角のイリュージョン―鮎川哲也小論 芦辺拓(作家)
     ■解説●鮎川哲也とセンチメンタリズム 山前譲(推理小説研究家)

    失踪したサラリーマンが箱根の山中で白骨死体で発見され、浮気相手との情死と思われたが、妻と妹は現場での違和感から偽装工作を疑い、夫が関与していた汚職事件を調べ始める… 読みながらどんどん物語に惹き込まれていき、ページを捲る手がとまりませんでした、、、

    面白かった! 二転三転する痛快なストーリ―展開やアリバイ崩しの面白さ、汚職事案とは無関係の意外な動機、そして結末の美しい余韻とタイトルが印象に残る素晴らしい作品。

    昭和30年代のノスタルジックたっぷりな雰囲気も大好きです… 犯人の告白による事件の全貌が描かれる哀愁感溢れる最終章が泣けますね。

  • 人それを情死と呼ぶ
     1 見知らぬ女
     2 山の宿
     3 失踪のはて
     4 論理の軌跡
     5 意外な発見
     6 庫裡の灯
     7 海の宿
     8 狩猟家は語る
     9 夜くる客
     10 疑惑の否定
     11 夢をみた男
     12 鏡の説話
    あとがき
    東都書房「東都ミステリー 人それを情死と呼ぶ」 1961年6月
    (原型 「人それを情死と呼ぶ」 週刊文春 1961年1月23日~3月6日)

    人それを情死と呼ぶ 鮎川哲也
    立風書房「鮎川哲也長編推理小説全集3 黒い白鳥」 1975年9月

    エッセイ 芦辺拓
    街角のイリュージョン 鮎川哲也小論

    解説 山前譲
    鮎川哲也とセンチメンタリズム

  • 鮎川さんの描く女性は健気で強い

  • お話としてはおもしろかったけど、ほんとなんでそんなことで殺した!って感じ。
    あと、このころの女の人ってほんとにこんなしゃべり方をしてたんだろうか。

  • 良い意味の昭和の小説。
    文章も重厚であるけれど、古臭くない。
    アリバイ工作に無理があると思うけど、どう崩すのかワクワクした。

  • 犯人は出て来た瞬間分かるし、トリックも他愛ない。しかし、『点と線』の本格版と考えれば、興味深い。

  • 鬼貫警部の「アリバイ崩し」モノです。
    犯人のアリバイトリックはリスクが大きのにも係わらず実行出来たのは首を傾げたくなりますが、それでも完璧に作り上げたアリバイを小さな嘘から少しずつ着実に暴かれていく展開は秀逸です。何気ない伏線が次々と真相に繋がる構成も素晴らしいです。
    お話自体はかなり地味ですが、印象的なラストと、二重の意味が込められたタイトルが深い余韻を残してくれます。あまり知られていないようですが、間違いなく代表作の一つに数えられると思います。

  • 人は皆、警察までもが、河辺遼吉は浮気の果てに心中したと断定した。……しかし、ある点に注目した妻と妹だけは、偽装心中との疑念を抱いたのだった! 貝沼産業の販売部長だった遼吉は、A省の汚職事件に関与していたという。彼は口を封じられたのではないか? そして、彼が死んでほくそ笑んだ人物ならば二人いる。――調べるほどに強固さを増すアリバイ。驚嘆のドンデン返し。美しい余韻を残す長編。

  • フーダニットとして読んでいった場合、他の犯人候補たちのアリバイはもうちょいゆるい方が好みだけれど、物語としてはこちらの方が良いのか。
    最後の章が肝、として、他の犯人候補のアリバイが強固であれば、追い詰められる絶望も深い。
    しかしながら、最近のアピールが派手な物語に触れている身としては、感情の起伏がもっと大きく、大味な方が自分には良いのかも。

    あと、なぜか食べ物に関する描写が妙におかしく感じるものが(笑)

    「人の世に移りかわりはあるけれども、今川焼の味はつねにおなじである」

  • 社会派、を思わせる問題もトリックに組みこみ本格推理に仕立ててしまうあたり、さすがと思った。

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著者プロフィール

鮎川哲也(あゆかわ・てつや)
本名・中川透。1919(大8)年、東京生まれ。終戦後はGHQ勤務の傍ら、様々な筆名を用いて雑誌へ短編を投稿し、50年には『宝石』100万円懸賞の長篇部門へ投稿した「ペトロフ事件」(中川透名義)が第一席で入選した。56年、講談社が公募していた「書下ろし長篇探偵小説全集」の第13巻「十三番目の椅子」へ応募した「黒いトランク」が入選し、本格的に作家活動を開始する。60年、「憎悪の化石」と「黒い白鳥」で第13回日本探偵作家クラブ賞長編賞を受賞。受賞後も安定したペースで本格推理小説を書き続け人気作家となる。執筆活動と並行して、アンソロジー編纂や新人作家の育成、忘れられた探偵作家の追跡調査など、さまざまな仕事をこなした。クラシックや唱歌にも造詣が深く、音楽関連のエッセイ集も複数冊ある。2001年、旧作発掘や新人育成への多大な貢献を評価され、第1回本格ミステリ大賞特別賞を受賞。2002(平14)年9月24日、83歳で死去。没後、第6回日本ミステリー文学大賞を贈られた。

「2020年 『幻の探偵作家を求めて【完全版】 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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