二進法の犬

著者 :
  • 光文社
3.98
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本棚登録 : 265
感想 : 24
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  • Amazon.co.jp ・本 (1099ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334732752

感想・レビュー・書評

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  • 文庫本で1000ページを超えるボリュームだが、あっという間とは言えないが、じっくりとその世界観に浸りながら読んだ。読んでいる時は本当に面白く、終わりに近づくと、まだこのまま読んでいたい。この登場人物たちを見ていたいと願うようになった。
    皆月もそうだが、この頃の花村萬月は本当に凄い。花村萬月というと、その物語を性と暴力と簡単に表現する人もいるが、決してそんな安直なものではないと、読めば絶対にわかるはず。確かにそういった描写はかなり多いが、それは、この登場人物がこの行動の後はこうなるだろうと、必然であると思えてくる。
    それにしても、この作者は人間の根底にある狡さであったり、弱さであったりの心理描写が実に上手い。そして本当に魅力的な人物を描く。この物語の主人公は、おそらくは京都大を卒業し、大手出版社を退職した家庭教師の鷲津。おそらくというのは、このタイトルが表すのは鷲津の恋人の父親であるヤクザの乾ではないかと思うからだ。鷲津は乾や、乾の娘の倫子と出会い、今まで過ごしてきた道を大きく踏み外した人生を送っていくのだが、全然カッコつけたところがない。実に人間の脆さや狡さを素直に表現するというか、自分は狡く、情けない人間であると認めている。それはある意味潔い。まあ、私は鷲津ではなく乾の部下の中嶋であったり倫子の人間性に惚れたのだが。
    こんなに長いレビューを書くつもりはなかったが、文句なしの作品だった。

  • 人間を読んだ。
    そんな気分。

  • 著者の芥川賞受賞後の第一作ということで、文庫本で1000頁を越えるヴォリュームに、著者らしいエロスとヴァイオレンスの濃密な雰囲気が横溢する小説世界を堪能できる作品です。

    大学卒業後に出版社に務めるも退職し、家庭教師として働いている27歳の鷲津兵輔という男は、暴力団乾組の組長の娘である乾倫子の勉強を見ることになります。彼は、組長の乾十郎の住んでいる世界を垣間見ることになり、その世界をつらぬいている掟に心を惹きつけられながらも、堅気の世界にとどまりつづけます。しかし、倫子から好意を寄せられ、やがて関係をもつにいたって、鷲津はしだいに乾たちの世界に入り込んでいくことになります。

    登場人物たちの会話がやや平板に響いてしまう感があるものの、これだけの分量があるにもかかわらず、スピード感をもって読み通すことのできるエンターテインメント性をそなえた作品で、サスペンス小説としては秀逸だと感じました。

  • -108

  • 読みごたえあり。極端な人しか出てこない。そこが良い。

  • まとまった物語の中のヒリヒリした空気感がとても好きです。

  • 薀蓄が多くて疲れた。

  • えぐいシーンが強烈すぎて辛いんだけど、結局、泣かされた。小説で泣かされるのは滅多にないから、ものすっごい揺さぶられたんだなと思う。が、辛すぎる……。シーンごとに読み返したくなるところも沢山あるけど。中嶋、中嶋愛しいよーー!!!

  • かなり面白い
    ヤクザがよく出てくる話。
    男の仁義がよく書かれていて、賭博のシーンも男なら熱くなって読んでしまう。
    そして、中盤にかけてのヌルい恋愛小説が入ったと思ったら....
    終盤は衝撃の連続
    全体的に生臭い。そこが痺れる

  • ちょっとエロが多いのが個人的には嫌なのですが、博徒の勝負の緊張感ですとか倫子が倒れてからの緊張感・スピード感は凄いです。読書苦手な私が読む手止まらず徹夜して読破してしまいました。今でもたまに読み直している、とても好きな作品です。

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著者プロフィール

1955年東京都生まれ。89年『ゴッド・ブレイス物語』で第2回小説すばる新人賞を受賞してデビュー。98年『皆月』で第19回吉川英治文学新人賞、「ゲルマニウムの夜」で第119回芥川賞、2017年『日蝕えつきる』で第30回柴田錬三郎賞を受賞。その他の著書に『ブルース』『笑う山崎』『二進法の犬』「武蔵」シリーズ、『浄夜』『ワルツ』『裂』『弾正星』『信長私記』『太閤私記』『対になる人』など。

「2021年 『夜半獣』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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