ジャンプ (光文社文庫)

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著者 : 佐藤正午
  • 光文社 (2002年10月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334733865

ジャンプ (光文社文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 肩透かし食らった気分でエンドマーク。失踪した女性に全然魅力を感じなかった。もっとミステリアスな女性だったら違ったのかも。あっけらかんとしすぎてる。

  • 明日の朝食に食べるリンゴを買いに、「5分で戻るわ」と出かけた彼女は、それっきり帰ってこなかった。

    物語はそんな推理小説風の導入で幕を開ける。
    やがて現れる彼女の姉だという人物とコンビを組んで、主人公による探偵ばりの探索行がはじまる。彼らはあちこちと聞き込みを行い、しだいに彼女の足取りが明らかになっていく、かに見える。
    しかしある時から、一緒に彼女を探していたはずの(彼女の)姉や友人たちが彼を避けるようになる。問いかけても話をはぐらかされるばかり。ちょうどアイリッシュの「消えた花嫁」の主人公のように、彼以外の全員が答えを知っていて彼だけが蚊帳の外に置かれているみたいに。

    そのまま事態は迷宮入りし、5年の月日が過ぎる。そして、答えはある日思いもかけないところでやってくる。思いもかけないかたちで。
    それは、それまでの物語の意味を一瞬にして変えてしまう真実だった。まるでクリスティのミステリーで、犯人は語り手の主人公その人だった、とわかったときみたいに読者は思わずページを繰り、過去の記述を読み返さずにはいられないだろう。主人公とともに。

    だが、そののち真実はしずかに心に着床しはじめる。
    5年の歳月が、別の意味をもって彼の心に降りてくる。

    それにしても、その答えを主人公は聞くべきだったのだろうか。
    彼の人生を一変させてしまうその答えを。

    「知らなければ、知ろうとしなければそれですんだのに」と人は思うかもしれない。
    そう言えば、同じ作者の小説「Y」でも、主人公は何かに衝き動かされるように突き進んだ結果、意外な真相を知る。やはり彼にとっての世界がひっくり返るような事実を。
    だが、いずれの主人公もたぶんそのことを後悔はしていない。彼らは真相を知り、その意味を悟ったとき、それでもそこから新しくはじまる世界を引き受ける決心をする。

    彼らはきっと長い夢を見ていたのだ。
    長い夢のあと人はふたたび目を醒まし、本当の人生を歩きはじめる。それは容赦ない真夏の光の降りそそぐ場所かもしれないが、それでも彼らはそこから歩きはじめる。

    この物語の中でもっとも印象的なのは、小道具として登場するリンゴだ。
    それはまるで主人公の分身であるかのように、物語の冒頭で彼の前から失踪し、物語の途中で消息を現したかと思うと、ラストシーンでまた忽然と現れる。
    あたかも主人公のあてどない探索行の道標であるかのように、それは物語の要所要所に登場する。
    しかし、まるで彼が探していた答えのように、それはずっと彼の近くにあったのだ。思いもかけないかたちで。幸福の青い鳥の物語のように、失われた彼のリンゴは、ずっと毎朝彼の冷蔵庫の中に入っていた。誰かの手によって。

    物語の終幕はこんな風に描かれる。

    「...蝉の声は途絶えることがない。何種類かの鳴き声が折り重なってひとつにまとまり鼓膜を震わせる。僕は片手にリンゴを握りしめたまま待った。真夏の光の降りそそぐ小さな駅の、人影のないプラットホームのベンチに腰かけて、いつやってくるともわからない上り電車を待ち続けた...」

    http://book1216.blogspot.jp/2009/11/blog-post.html

  • 「リンゴを買って五分で戻ってくるわ」と言い残して失踪した彼女。行方を追い始めるが、奇妙な出来事と彼女の関係者に翻弄される「僕」。そして、主人公の「僕」にも彼女に隠している真実があり・・・。
    失踪が自らの意思なのか、それとも事件に巻き込まれたのか?真相が判るまで主人公以上にドキドキする。リンゴなど小道具の使い方も巧みで、小説の真髄を味わえる。

  • リンゴを買いに行ったまま失踪してしまった彼女を捜索するお話。
    恋愛に重要なのは「タイミング」「フィーリング」「ハプニング」だとよく言われるが、本作はその「タイミング」に関しての要素が強いかな。

    佐藤正午作品はこの一作のみしか読んでいないが、いま小説を書かせたらNo.1の実力と言っても過言ではないと思う。女性視点で読むと違和感が残るような気もするが、男の心理描写は抜群に上手い。
    読んでていちいちイライラさせる主人公の優柔不断な部分は、きっと同族嫌悪なのだろう。終始、痛いところを突かれたような感じを抱えながらも、読了。

  • 不思議な感じです。
    最後は"こう落としちゃうの"と不満が残ったのですが、途中までは読ませてくれました。
    くどいほどの書き込み、ミステリーぽい構成。どちらもさほど好きではないはずなのですが
    登場人物の奇妙さかも知れません。まともそうに書き込んであるのですが、全員が普通では無い。そこらの不条理がこの作品の魅力だったのかも知れません。それが作者の意図なのかどうか。
    佐藤正午さんは初めてです。もう一冊読んで評価を決めることにしましょう。

  • 過去のもしも系(?)に弱い私としてはかなりぐさりときた。主人公がずっと抱えるもやもや感でぐいぐいひきこまれ、読了後は他者との分かり合えない感で切ない。

  • 自分にも関わることなのにどこか他人事。
    まわりから見たら冷たく見える。
    仕事優先ってわけじゃないけど、
    頭で何かしら楽観的かつ冷静に考える。

    主人公の性格がすごく嫌なのに、
    似たところがある気がする。
    と思いながら読んだたらればの話。

  •  ある日突然大切な人がいなくなったら、その時どうするだろう?その喪失感から、どうやって立ち直るのだろう?そんなことを思いながら、ぐいぐい読み進めた数年前。主人公と共に失踪した彼女を追い求めた読後は、ただただ切なかった。
     今回、何気なしに再読してみて、今度は失踪した側の気持ちに共感した。同じ状況だったら、私も失踪する。そして後悔しないと思う。
    次に読む時は、どちらの気持ちになるんだろうな。

  • 会話なのか、文体なのか、どこか伊坂幸太郎に似ている気がする。と書くのは、キャリアからして作者に失礼か。

    独特の軽さを持った文体で、深刻な場面でも暗さを感じさせない。

    読者の感情移入の対象は、作者の上手な誘導によって、いつの間に主人公から相手の女性に変わっていく。
    読み終えてどちらに共感するかは、読者次第だ。

    いわゆる「日常のミステリー」派の本書だが、結末を予想外のどんでん返しと感じるか、禁じ手と見るかも読者次第だろう。

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