戦国おんな絵巻 (光文社文庫)

著者 :
  • 光文社
3.35
  • (1)
  • (6)
  • (12)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 67
感想 : 11
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334737832

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 分水嶺お市

  • 女のしたたかさ、強さを改めて実感しました。

  • 女性史を書くならやはり女性だよね、という感想になる作品。細やかな女性から女性を見た視点と、資料や当時の常識や風俗による考察のバランスが良く、読みやすい。
    また、主題の女性(お市の方やその三姉妹等)ごとに細分化されているので、ショート形式のため、ちょっとした空き時間に読めるのも良い。

  •  関ヶ原の合戦を挟んだ、約百年間の女性史を紐解く、人物絵巻物。
     「歴史よもやま話」と称してはいるが、雑然とした印象はなく、様々な文献を取り上げながらも著者流の観点で女性達の位置付けを見直した、読み応えのある評論集。
     何でもかんでも女性の功績に結び付けるような強引さがないのが、文筆家としての誠実さの現れだと思う。
     永井氏が再三述べている、政略結婚に赴く女性=女性外交官という概念が、ここで改めて解説される。
     奥向きを采配し、攪乱される情報を嗅ぎ分け、婚家とのバランスを取りながら実家の利益に貢献する、『同格結婚』の認識がそろそろ世間にも定着してほしいところ。
     今著作は、分水嶺たるお市に始まり、プライド高き教育ママ・淀殿、京極家中興の祖・お初、巧まず弄さずの勝利者・お江へと流れる血脈を追い、虚々実々の伝説を纏った女性達(築山殿、千姫、春日局)の実態をも浮かび上がらせる。
     そこに徳川三代の女性経営学を絡め、家康の巧緻な組織づくり、凡庸の仮面を被った凄腕政治家・秀忠と、彼の子供達を巡る権謀術数、乳母と側近の派閥闘争、伏魔殿・大奥のセックスコントロールなど、『政治と女』の側面から眺めた戦国~江戸史の面白さを抽出している。
     個人的には従来、歴史小説や映像作品においては、政治や外交、時代の精神性を中心に描けなければ駄目だと思っていたが、男女の縁の巡り合わせの妙も大事かもしれないと考えるようになった。
     例えば、豊臣秀吉の側室がお初かお江だったら…、京極高次の妻になっていたのがお茶々なら…、徳川秀忠に嫁いだのがお初だったら…etc.。
     作中に挙げられたように、確かに婚家の命運は変わっていたのではないか。
     女性一人を持ち上げ過ぎるような論調に傾くのは論外だけれど、女史の語る、“男女の組み合わせ次第で、歴史は変わる”ということも真理の一つと言える気がする。

  •  昔の女性にスポットを当てた本は珍しいので、興味深かった。戦国時代の女性の系図が書かれていて、わかりやすかった。戦国時代は同族結婚が行われていて、婚家と実家の外交官のような役割を果たしていたという内容など、なるほどと思った。
     また、後継ぎを生むために女性は重要な存在だったけど、江戸時代家光以降は権力分散のために、子供を生むのもコントロールされていて、自分の代わりに別の女性を差し出したりすることが行われていたと知って驚いた。

  • 2011年大河ドラマのためにお江を復習。
    永井路子の描く女性像は自分にとって新しくて真実味があって面白い。女性とは時代に合わせて活きているのだなと思う。現代人も見習うべき。

  • お市からその子(三姉妹)、そして江戸幕府の大奥までの女性について考察されています。

    信長の妹のお市は浅井長政そして柴田勝家に嫁ぎますが、作者は可哀想な女性としてではなく、強気なお市像を描いています。
    そしてお市と浅井長政の子ども達はそれぞれ豊臣、京極、徳川家に嫁ぐのですが、それからの姉妹の全く異なる人生模様は面白いところです。
    徳川家に嫁いだ三姉妹の末っ子お江は秀忠との間に三代将軍家光をもうけます。ということは、家光の祖母はお市で、祖父は長政なわけです。そう考えると不思議です。徳川の将軍は織田とその敵浅井の血を引いているんですね〜。

    女性の立場や役割の変化もお市から大奥までのたった百年間ほどの間に大きく変化しているという点も面白いところです。関が原の戦いは、女性のあり方に変化を及ぼしただけではなく、今の会社の構造にもあらわれているのです。これも面白いところです。

    江戸幕府の体制をいかに長く保つか、その工夫も面白い。公家、大名、商人、これらに対する幕府の扱いかたが見事です。(お世継ぎ問題、男色、セックスコントロール等々)家康、秀忠が凄いのは、それぞれの代で幕府の体制をしっかりと築いたってことです!「社長がいなくても回る会社」、本当に江戸幕府はその言葉通りですね。

    (お福さまは出てこなかった; ”秀吉の寵愛した女性”として、出てくると期待してたのにな〜)

  • 女性を幹として、戦国〜江戸時代を見直す。資料を提示した上で明かされる、新たな解釈が面白い。

全11件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

(ながい・みちこ)1925~。東京生まれ。東京女子大学国語専攻部卒業。小学館勤務を経て文筆業に入る。1964年、『炎環』で第52回直木賞受賞。1982年、『氷輪』で第21回女流文学賞受賞。1984年、第32回菊池寛賞受賞。1988年、『雲と風と』で第22回吉川英治文学賞受賞。1996年、「永井路子歴史小説全集」が完結。作品は、NHK大河ドラマ「草燃える」、「毛利元就」に原作として使用されている。著書に、『北条政子』、『王者の妻』、『朱なる十字架』、『乱紋』、『流星』、『歴史をさわがせた女たち』、『噂の皇子』、『裸足の皇女』、『異議あり日本史』、『山霧』、『王朝序曲』などがある。

「2021年 『小説集 北条義時』 で使われていた紹介文から引用しています。」

永井路子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
恩田 陸
冲方 丁
永井 路子
三浦 しをん
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×