昆虫探偵 (光文社文庫)

著者 :
  • 光文社
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本棚登録 : 98
感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (353ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334738778

作品紹介・あらすじ

ある朝目覚めるとゴキブリになっていた元人間のペリプラ葉古。無類のミステリ好きだった葉古は、昆虫界の名探偵、熊ん蜂シロコパκの助手となった。人の論理が通用しない異世界で巻き起こる複雑怪奇な難事件を、クロオオアリの刑事の力も借りて見事解決していく!書下ろし「ジョロウグモの拘」を収録。昆虫と本格ミステリについてのユニークな注釈を新たに付加。

感想・レビュー・書評

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  • 川瀬七緒さんの「法医昆虫学捜査官」の解説で知った。昆虫に詳しい探偵ではなく、探偵が昆虫。昆虫が昆虫の世界で起こった事件を調査する探偵ミステリーというぶっ飛んだ設定が気になる本。

    「変身」ばりに、目覚めるとヤマトゴキブリになっていたペリプラ葉古と、探偵事務所のボス熊ん蜂のシロコパκ。昆虫界の殺虫事件やら、密室事件やらに挑む。
    バカミスなんだろうけれど、次から次へと繰り出される昆虫のマニアックな生態に、あれ?私なんの本を読んでいるんだっけ?と惑う。
    うーん、ちょっと私にはマニアックすぎたなあ。

  • 昆虫の、昆虫による、昆虫のためのミステリ。昆虫好きにはたまりません。昆虫同士のやり取りとか、注釈とかいちいち面白いし、昆虫と先行作への愛がふんだんに感じられる。

  • なか抜けでざっと読んだ。発想はとっても面白い。

  • 面白いような・・・面白くないような・・・・・w

  • 『目が覚めるとゴキブリになっていた』

    カフカの「変身」を思わせる冒頭ですが、冴えない人間でいるよりゴキブリのほうが良い、と喜んでしまう葉古が笑えます。

    昆虫の世界での本格ミステリーで、謎も論理も倫理も昆虫世界に則っており、専門知識が必要な為推理は難しいです。
    しかし虫達の詳しい説明が興味深く、多彩な登場虫達も楽しいので飽きることなく一気に読めました。
    各編本格ミステリーの名作を意識しているのもおもしろい。

    笑える文章で虫達を勉強出来、生命の奥深さを感じます。
    作者の、昆虫と本格ミステリーへの愛情が溢れている楽しい1冊です。

    ネタバレ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・







    【蝶々殺蛾事件】ムクゲコノハはなぜ突然死んでしまったのか?捕食と殺虫は違うんですね。シロコパk氏が推理したように、とんでもない技を使う捕食者に捕まったんだろうと思っていましたが、それを見事にひっくり返されました。

    【哲学虫の密室】地中の育児室でダイコクコガネの幼虫がいなくなった。三重密室からの消失事件。
    3つの糞球のすり替えは推理出来ましたが…食べる音が聞こえた、小さな穴が開いていた、という謎にあんな虫が登場するとは。
    非常に論理的でおもしろいです。
    嫉妬や憎悪で殺虫などしない、という昆虫世界のほうが、人間の世界より合理的でミステリー向きです。

    【昼のセミ】これは壮大な物語でした。セミについてもとても勉強になります。しかし土の中で何年も木から水だけをもらって生きているセミって、なんて地味。孵化する周期の話もとってもおもしろいです。
    工場が原因であることは予想出来ますが、それが引き起こす現象というのはなんとも恐ろしい。
    真相に昆虫たちは気付かず、ペリプラ葉古だけが辿り着くことが出来たというのが人間の愚かさを感じさせます。ラストも怖いです。

    【吸血の池】アメンボが「手のひらを太陽に」の歌に文句を言っているのが笑えました。
    体液を吸い取られ浮かぶ死体というのが衝撃的で良いです。アメンボの食事が、食べるのではなくて体液を吸い取るというのも衝撃的でした。
    容疑虫がわんさかといながら次々と否定されていくのがおもしろく、意外な犯人です。

    【生けるアカハネの死】擬態についての説明を楽しく読みました。鳥って昆虫の視点から見ると恐ろしい生き物です。
    ゴキブリも家にいると嫌ですが、森で敵に怯えながら他の生き物と一緒に生きている様を思うと愛おしい。
    なぜ擬態が見破られるのか?擬態の特徴は何かという点からの推理が、捕食者が違うという結論になるのがおもしろいです。

    【ジョロウグモの拘】蜘蛛の巣が何度も壊される事件。姿の見えない犯人とは?
    巣の振動でそよ風や獲物が何かまで判断出来るという蜘蛛の特性が、容疑虫を絞っていくのがおもしろいです。
    数匹の容疑虫の中からの犯人探しも又、虫としての論理に基づいた
    もので論理的。この作品が一番好きです。

    【ハチの悲劇】これまでの話で昆虫の熾烈な生存競争や雄の悲哀は感じましたが、今作ではそれが全面に出ています。洗脳し巣を乗っ取るというトゲアリの行動には驚きました。
    アリの王国を守る為、様々な昆虫の力を借りてあの手この手で立ち向かうまさに昆虫大戦争。
    これまで昆虫は感情的な殺虫はしないというのがありましたが、冒頭から示されていた「変身」という特殊設定で思いがけない真相と物語になりました。

  • 人の論理が通用しない世界で起こるミステリーの数々。
    読んだ事あるタイトルの物語には笑わせてもらえ面白く読めたけど、自分が目が覚めたらゴキブリだったったら、悲しいなあ。
    あの有名な物語の出だしからは進んで行かないだろう世界へ。

    子供の頃は案外平気だった昆虫がどうも苦手になって来て、
    ハチは刺されてからどのタイプも嫌いだし、
    クモは元々大の苦手。
    姿を想像すると、
    ・・・・・・・・・。
    となってしまうんですがね。
    でも、殺(人)虫の方法は昆虫好きじゃないと確実に分からないな。

  • 偶然見つけて斬新な設定がユニークだったので読んでみました。
    読んでみると予想以上に面白かったです。昆虫の世界が舞台ということで、
    ミステリとか推理とか、最早そういうジャンルではなかったのですが、ミステリ好きで昆虫マニアの作家が書いた壮大な蘊蓄本として大いに楽しませてもらいました。
    昆虫は、特にゴキブリなんか鳥肌が立つほど苦手な人間に、彼らをなんとなくかわいらしく思わせるという驚異の小説です。もちろん気の迷いです。

  • お山に住んでいるので“むいむい”とのご縁は浅くありません。むいむい好きな人はもちろん 苦手な人も一読されると アラ不思議!! ミミズだってオケラだって〜♪みんなみんな生きているんだ 友達なんだぁ〜♪となれるかもしれない御本です。こんなに昆虫の生態が愉しく面白くわかりやすく書かれてる本を他に知らない!

  • 「ある朝目覚めるとゴキブリになっていた」という何処かで聞いたことのあるような前口上ではじまるお話は、昆虫の世界で起こる数々の殺虫事件を、ライバルの働き蟻の刑事と張り合いながらクマバチの探偵とゴキブリの助手が謎解きするという推理小説。意外にこれが本格推理小説です。そこで出くわす密室や真犯人は昆虫の生態から考えられたひどく真面目なもの。単に虫を擬人化したおちゃらけた小説とはひと味違いました。また、著者は大の推理小説マニアらしく、それぞれの短編が著名な推理小説のモチーフを使っています。第1話:蝶々殺蛾(さつじん)事件横溝正史『蝶々殺人事件』第2話:哲学虫(てつがくしゃ)の密室笠井潔『哲学者の密室』第3話:昼のセミ北村薫『夜の蝉』第4話:吸血の池二階堂黎人『吸血の家』第5話:生けるアカハネの死山口雅也『生ける屍の死』第6話:ジョロウグモの拘(こだわり) 京極夏彦『絡新婦の理』第7話:ハチの悲劇法月綸太郎『一の悲劇』残念ながらこの中で知っているのは数編のみ、その少ない知識からでも、これらの短編がタイトルのみをもじったものでないことは分かりました。ただひとつ注文をつけるなら、登場人(虫)物の固有名詞が長すぎる。数字やギリシャ文字は昆虫マニア以外にとっては邪魔なだけです!

  • 私はかなり楽しく読めた。そして
    子どもの頃、ファーブル昆虫記が好きだったのを思い出した。
    推理小説が好きで、なおかつ虫に興味があるか好きじゃないと、
    よく分からないと言われそうなマニアックな小説。
    借りた本だけど、買おうかな〜♪

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著者プロフィール

1960年福岡県生まれ。九州大学理学部卒業。2001年『中空』で第21回横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞しデビュー。主な著作に「観察者」シリーズ、「綾鹿市」シリーズなど。碇卯人名義でテレビドラマ「相棒」シリーズのノベライズも執筆。2016年『死と砂時計』で第16回本格ミステリ大賞【小説部門】を受賞。

「2021年 『指切りパズル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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