刺青殺人事件 新装版 (光文社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (552ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334739607

感想・レビュー・書評

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  • 「高木彬光」の長篇ミステリ作品『刺青殺人事件(しせいさつじんじけん) 新装版』を読みました。
    「高木彬光」の作品は、、少年の頃に読んだSF作品『ハスキル人』以来なので約40年振りですね。

    -----story-------------
    野村絹枝の背中に蠢く大蛇の刺青。
    艶美な姿に魅了された元軍医「松下研三」は、誘われるままに彼女の家に赴き、鍵の閉まった浴室で女の片腕を目にする。
    それは胴体のない密室殺人だった――。
    謎が謎を呼ぶ事件を解決するため、怜悧にして華麗なる名探偵「神津恭介」が立ち上がる! 
    「江戸川乱歩」が絶賛したデビュー作であると同時に、「神津恭介」の初登場作。
    満を持しての復刊!
    -----------------------

    『東西ミステリーベスト100』の日本編で第32位ランクインしている作品… 1947年(昭和22年)に「江戸川乱歩」に絶賛され、翌1948年(昭和23年)に刊行された「高木彬光」のデビュー作品『刺青殺人事件』に、デビューにいたるまでを綴ったエッセイや、最近発見された初期の未発表短編『闇に開く窓』を収録した一冊です。

     ■刺青殺人事件
      ・第一章 恐ろしきトルソ
      ・第二章 マダム・セルパン
      ・第三章 刺青競艶会の女王
      ・第四章 三すくみの呪い
      ・第五章 憑かれた人々
      ・第六章 胴体のない死体
      ・第七章 完全犯罪
      ・第八章 刺青の女をめぐる男たち
      ・第九章 詰むや詰まざるや
      ・第十章 大蛇丸と綱手姫
      ・第十一章 土蔵の中の死体
      ・第十二章 地雷也還る
      ・第十三章 皮を剥がれた死体
      ・第十四章 殺人事件覚書
      ・第十五章 神津恭介登場
      ・第十六章 蛞蝓の足跡
      ・第十七章 非ユークリッド幾何学
      ・第十八章 華麗なる寄せ
      ・第十九章 地獄の前のラブシーン
      ・第二十章 心理の密室
     ■岩谷選書版の後記より
     ■新稿の序
     ■カッパ・ノベルズ版あとがき
     ■探偵小説の作り方
     ■「探偵作家になるまで」より 第三章 占われ記
     ■闇に開く窓
     ■天空に描くラビリンス―高木彬光小論 芦辺拓
     ■解題―衝撃のデビュー作 山前譲

    1946年(昭和21年)8月20日、「松下研三」は、東亜医大の「早川博士」に誘われて江戸彫勇会の刺青競艶会を見学に来た… 「研三」は、そこで中学時代の先輩である「最上久」と再会する、、、

    その競艶会の場を圧倒したのは、背中に見事な大蛇丸の刺青を持つ「野村絹枝」で、土建屋をしている「久」の兄「竹蔵」の愛人であった… 「絹枝」の魅力に惹かれ、後日彼女を訪ねた「研三」は、背中の刺青の由来を聞かされる。

    彼女の父「彫安」は、大蛇丸・綱出姫・自雷也の三すくみを、彼女と双子の妹の「珠枝」、兄「常太郎」の3人に彫り分けたのだという… 三すくみを1人の体に彫ると、3匹が争いあって死んでしまうため、タブーとされているのだ、、、

    不安に感じる「絹枝」との約束で、下北沢の彼女の自宅を訪ねた「研三」は、たまたまやって来た「早川博士」とともに、内側から鍵のかかった浴室で彼女の死体を発見する… 死体は首と両手両足だけで、胴体はなかった。

    その後、「絹枝」の愛人の「最上竹蔵」も死体で発見される… 拳銃自殺のようにも見えるが、他殺の可能性も否定できない、、、

    捜査が難航する中、「絹枝」の兄「常太郎」を捜し当てた「研三」だが、事件の核心を知っているらしい「常太郎」の「しばらく自分に任せて欲しい」との言葉を信じて待っているうちに、彼も全身に彫った刺青を皮ごと剥がされて殺されてしまった… 責任を感じる「研三」の前に、一高時代の友人で、「「神津」の前に「神津」なく、「神津」ののちに「神津」なし」と激賞されるほどの天才「神津恭介」と再会し、彼に謎を解き明かすよう依頼する。


    面白かったー 終戦から間もない頃の昭和の雰囲気も好きですね、、、

    中盤までは、ややゆったりした展開ですが… 「神津恭介」が登場してからはスピード感が一気にアップして、終盤は一気に読めましたね。

    密室のトリックも愉しめましたが… 双子モノにはありがちな入れ替えトリックにも刺青を使うことで新鮮な工夫があったし、殺害場所を誤解させることで、胴体のない死体の理由やアリバイ崩しも合理的な理由が説明されていることも好感が持てました、、、

    第2、第3の殺害の理由やトリックも合理的だったしね… 機会があれば、他の作品も読んでみたいですね。


    以下、主な登場人物です。

    「松下研三」
     東大医学部法医学教室の研究員。

    「神津恭介(かみづ きょうすけ)」
     研三の一高時代の友人。一高時代に整数論の大論文を書き上げた天才。

    「最上久(もがみ ひさし)」
     研三の中学時代の先輩。

    「最上竹蔵(もがみ たけぞう)」
     久の兄。土建屋「最上組」の社長。

    「野村絹枝」
     竹蔵の愛人。大蛇丸の刺青を持つ。

    「彫安(ほりやす)」
     絹枝の父。刺青師。

    「野村常太郎」
     絹枝の兄。刺青師。

    「野村珠枝」
     絹枝の双子の妹。

    「稲沢義雄」
     「最上組」の支配人。

    「早川平四郎」
     東亜医大の医学博士。最上兄弟の叔父。刺青の研究家。

    「松下英一郎」
     研三の兄。警視庁捜査一課長。

  • 高木彬光 刺青殺人事件
    タカギアキミツ シセイサツジンジケン 
    彼の作品2冊目を読み終わりました。
    まだまだ知らない作品、知らない作家がいるのです。
    私の好きな作家ランキングに入りました。
    彼の作品は本屋で購入できるのでしょうか?

    後書き等により、残りの作品、あるいは他の作家、作品名を入手することも出来ました。
    まだまだ未知の作品を読まなければなりません。
    忙しい。

  • 未読だった古典的名作。江戸川乱歩に送りつけたことによってデビュー出来た高木彬光氏の処女作。大蛇丸の美しい刺青を入れた怪しい美女が浴室でバラバラで殺されており、胴体が持ち去られていた、、、というコッテリド本格。
    犯人はなんとなく分かるが、白眉なのはホワイダニット。箇条書きになった謎が、ある一点の仕掛けでドミノ的に解けていく快感があり。(特に、何故彫師は子供達三人に不吉な3すくみの刺青を彫ったのか?)三津田信三のあのシリーズにも影響与えているのかしら。横溝だけだと思ってたけど。

  • 指紋調べたら一発だったんじゃねえの?

  • 白昼の死角のほうがおもろいね。

  • これが、デビュー作ですか!?
    クオリティの高さは東西ミステリー32位にランクインしているだけのことはあります。
    未読の人は是非。

  • 高木彬光のデビュー作。大好きな神津恭介の初登場作品。
    書かれた時代を考えると画期的な密室トリックだと思う。最初から「殺されたのは野村絹代ではない」という事はわかるんだけど、じゃあ野村珠代なのかというと、浴室に残された両手、両足に刺青がないから違うとなる。最終的に、写真に残された珠代の刺青は書かれたものであり、肘下、膝下には刺青がないことがわかるのだが、前半部分の珠代の刺青に関する記述をみると、絹代のセリフでは「彫る」とあるのに、説明文では「描く」とあるのがうまいところ。密室のトリックはわからなかった。併録されている「闇に開く窓」のトリックは、「鉄線に滑車」って、大掛かり過ぎでしょ!

  • 神津恭介シリーズ、少し読んでみようと思って!
    なるほどおもしろい。戦後という時代も好きだし!
    現代となっては使い込まれたトリックなんだけど、この時代だったら新鮮だったろうなー。
    評価の高いヤツから(←このへんやらしい)読んでみるよー。

  • 図書館にて借りる。初高木彬光作品。

  • 東大医学部のうす暗い標本室に並ぶ、刺青をした胴体。不気味な色彩で浮かび上がる妖術師「大蛇丸」。この一枚の人皮から、恐ろしい惨劇が始まった。密室殺人と妖しく耽美な世界に神津恭介が挑む、戦後本格推理小説の礎となった処女長編。デビューにいたるまでを綴ったエッセイや、最近発見された初期の未発表短編「闇に開く窓」を収録。 (「BOOK」データベースより)

    本編を読み終わって、いくつか掲載されているあとがき的なものを読むまで、ずーっと「いれずみさつじんじけん」だと思っていました。
    正しくは「しせいさつじんじけん」でした(恥)。
    この作品は高木氏の処女作、氏自身、筆を取ったのさえ初めてというから驚きです。
    そのうえ、3週間ほどで書き上げたというからもう驚愕。
    ただし、初稿はこの半分ほどの枚数だったとのこと。

    書き始めた理由も、終戦に伴い技師としての職を失い、占い師に「小説を書きなさい、それもできるだけ長いものを」と言われたからというからスゴイ。
    そして時代もありなかなか出版することができなかったら、また占い師に「大家に送りなさい、そうすれば年内に認められ……」と言われ、何の面識もない江戸川乱歩氏に送りつけ、大晦日に返事をもらったという。
    でき過ぎだわ。

    私にも誰か言ってくれないかしら。
    あ、でも才能も一緒に授けてもらわないとダメだけどね。

    作者の意図したとおり、ミスリードされた私は模範的読者です(笑)。
    蛞蝓という漢字もこの作品で覚えました。

    江戸川乱歩氏が「探偵小説としては感心したが、小説としては上出来にあらず」と言ったそうですが、確かにところどころ引っかかるなあという箇所がありました。
    まあずぶの素人の私が言うのもアレですが。
    密室だったことを棚上げで進んでるけどいいの? え、もしかしてあれは内緒のまま? 嘘ついたまま? とかね。
    それとクライマックスがあまりに乱暴な気がしました。

    「映画化されるとの報もあり」とあとがきにあったので、ググってみましたが、監督・俳優さんが少し違っていました。
    話が進むうちに変更になったのでしょうね。

    あとがきにあった「写真には真を写すという、別の先入主があるのだった」という言葉が印象に残っています。

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著者プロフィール

1920年9月25日、青森県生まれ。本名・誠一。京都帝国大学工学部冶金科卒業。48年、失業中に書いた「刺青殺人事件」が江戸川乱歩の推薦で出版され作家デビューし、「能面殺人事件」(49-50)で第3回探偵作家クラブ賞長編賞
を受賞する。79年に脳梗塞で倒れるが過酷なリハビリ生活を経て再起、「仮面よ、さらば」(88)や「神津恭介への挑戦」(91)などの長編を発表。作家生活の総決算として「最後の神津恭介」を構想していたが、執筆途中の1995年9月9日に入院先の病院で死去。

「2020年 『帽子蒐集狂事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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