- Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334740191
感想・レビュー・書評
-
佐野洋の連作ミステリ短篇集『蝉の誤解』を読みました。
佐野洋の作品は、『ミステリー傑作選・特別編〈5〉自選ショート・ミステリー』に収録されていた『若いオバアチャマ』以来なので、約1年振りですね。
-----story-------------
息子に届いた絵葉書には、怪獣のように大きな蝉の抜け殻が写っていた。
パソコンを使い、巧妙に作られた合成写真―その夜、私は悪夢にうなされた。
なぜ、蝉の抜け殻などに恐怖を覚えるのか?
私は、心の奥底に封じ込まれていた、ある記憶を辿り始める…(表題作)。
昆虫に題材を取り、紡ぎ出された男女の多様なドラマ九編。
-----------------------
光文社が発行している小説誌『小説宝石』に2000年(平成12年)から2002年(平成14年)に掲載された、昆虫の生態に材を取った連作小説9篇が収録された作品です。
■蟻のおしゃべり
■カマキリの本音
■ミドリシジミの知恵
■蝉の誤解
■飼われた蜻蛉
■蓑虫の計算
■玉虫の意志
■蝿の美学
■蚊の証言
■解説・勝目梓
読みやすくて、切れ味が鮮やかな作品が多かったですね… そんな中でも、男女の関係・愛欲に昆虫の存在を織り込んだ『蟻のおしゃべり』、『ミドリシジミの知恵』、『飼われた蜻蛉』、『蓑虫の計算』が印象に残りました、、、
カマキリという共通したキーワードを絡めつつ夫と妻と子が別々な夢想をする『カマキリの本音』や、心理の深層に眠る記憶が、過去の不幸な出来事を明らかにする『蝉の誤解』も面白かったですね。
愛憎や欲望に根ざす計算、策略… 人間の営みの断面を鮮やかに切り取った連作ミステリでした。詳細をみるコメント0件をすべて表示