ルパンの消息: 長編推理小説 (光文社文庫 よ 14-2)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (441ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334745691

作品紹介・あらすじ

十五年前、自殺とされた女性教師の墜落死は実は殺人-。警視庁に入った一本のタレ込みで事件が息を吹き返す。当時、期末テスト奪取を計画した高校生三人が校舎内に忍び込んでいた。捜査陣が二つの事件の結び付きを辿っていくと、戦後最大の謎である三億円事件までもが絡んでくるのだった。時効まで二十四時間、事件は解明できるのか。

感想・レビュー・書評

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  • 15年前に起きた女教師飛び降り自殺が実は殺人だった。警視庁に入った一本の通報で事件の再捜査が始まる。事件当日、高校生3人が校舎内に忍び込んでいたタレコミと事件の結び付きを辿っていくと、戦後最大の未解決事件の3億円事件までもが絡んでくる。殺人事件の時効まで24時間。事件解明に迫る警察小説。

    横山秀夫2作品目。
    前読の『第三の時効』が良作だったこともあり、かつ私の大好物であるミステリと警察小説作品であることから、迷わず手に取った。

    まず、読後に本作が横山秀夫デビュー作であること、元新聞記者であったことを知り、驚きとある種の納得感を覚えた。

    文章・構成・展開の巧みさ、物語全体の秀逸さは、恐らく新聞記者時代で培った足で稼ぐ情報収集能力、紙面化する際の校正や制限の中で伝えるべきポイントの集約技法などの賜物なのではないかと推察。本作も夜通し一気読みしてしまうほど面白かった。

    物語は容疑がかけられた当時高校生だった喜多の現在の取調室の様子と、15年前の喜多たち3人の回想が交差するよう構成されている。

    前読作品同様、やはり登場人物に持たせるキャラクターが立っている。無意識のうちに特定の人物に愛着を感じていたりと、完全に著者の掌で転がされてしまった。

    多少事件を詰め込み過ぎな点や、ちょいちょいツッコミどころのある伏線模様は否めないものの、3億円事件をサブストーリー的に取り入れていたりと、処女作ながらチャレンジ精神が感じられる作品だ。

    また好きな著者が1名増えて困った。

    • akodamさん
      nikuさん、こんばんは^ ^
      小説読書デビューしてから1年半過ぎましたが、横山秀夫をノーマークだったことを後悔しております。
      しかし後悔は...
      nikuさん、こんばんは^ ^
      小説読書デビューしてから1年半過ぎましたが、横山秀夫をノーマークだったことを後悔しております。
      しかし後悔は先に立ちませんので、これからも追跡したいと思います♪

      デビュー作とは思えないクオリティーです。
      どうぞご堪能くださいね!

      そして資格試験合格への祝福のお言葉、ありがとうございます。゚(゚´Д`゚)゚。マダマダガンバリマス‼︎
      2022/05/08
    • tommy103starさん
      横山秀夫の作品で、一番良いと思います。
      横山秀夫の作品で、一番良いと思います。
      2022/05/15
    • akodamさん
      tommy103starさん、こんばんは。
      デビュー作が1番良いとのご意見、著者からすれば最高の感想でしょうね。しかし本当にデビュー作とは思...
      tommy103starさん、こんばんは。
      デビュー作が1番良いとのご意見、著者からすれば最高の感想でしょうね。しかし本当にデビュー作とは思えぬクオリティーで、納得の一冊でした。
      2022/05/15
  • 作者のデビュー作。
    ルパンと付いてるけど、あんまりアルセーヌルパンとかに関係はなさそう。
    警察関係での飲み会してる時に、いきなり15年前の自殺事件に関するタレコミが!(殺人や!)
    しかも時効が24時間やし。
    ほんまに、こんな短時間で、やり遂げなあかん事件解決を多くの人でやるのかには疑問はあるけど、その代わり、スリル感はたっぷりある。
    (個人的には飲み会優先してしまいそう^^;)
    ギリギリまで、容疑者に対する事情聴取。
    24時間しかないのもあるし、事情聴取中心で進む。
    でも、その自供が目に浮かぶような感じ。途中から、24時間という時間の中で進んでるのを忘れる。
    3億円事件も絡めてなかなか面白かった。
    面白かったけど、犯人はどんでん返しで、作者の意図通りに騙されるのは悔しい…Σ(-᷅_-᷄๑)

  • 時効までの24時間のお話とは思えない程ぎゅぎゅぎゅっと詰まっていて、面白かった。

    多少そんなに偶然が重なる事はないだろうってとこもあるけど、最後犯人がわかってからも、次から次へと謎が解かれていって、あーそれがまだだった。なるほどーって感じになった。

    髭を剃ってはどうかと言われて、「顔が殺風景なもんで」ていう返し、好きだなー。

  • 『ルパンの消息』横山秀夫 著

    1.購読動機
    64、第三の時効ほか含めて読了してきました。
    犯人、刑事そして記者という3つの立場から執筆できる作家の方はあまり知らなく、横山さんのこのスタイルが好きだからです。
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    2.ルパン
    巣鴨も喫茶店。
    名前はルパン。

    ここに、学校さぼり、たむろする高校生が三人。
    彼らが企だてたのは、高校卒業に必要なための点数稼ぎのウルトラC。
    それが、テストの答案を盗みだすこと。

    テストの答案を盗むに成功。
    いよいよラストの3日めの学校侵入に事件勃発。
    答案保管の金庫に女性の死体が、、、。
    ------------
    3.時間は流れ、、、
    事前から15年が経過。
    当日の事件は事故で処理されていた。

    当時の目撃者である高校生たち三人は、黙秘を続けそれぞれの人生を歩む。

    殺人ならば、翌日が時効となる日。
    警察に1本のたれこみ電話が、、、。
    「15年前の事件。
     殺人である。
     犯人は、当時の高校生 3人である。」
    ------------
    4.ルパンの消息
    事件勃発。
    あらかじめ、犯人が指定されて、物語が展開する。
    このアウトラインに、え?!という伏線がからんでくる。

    64ロクヨンらが、社会性を反映した事件に対して、ルパンの消息は、エンタメ系色あり。

    横山秀夫さん好きならば、ぜひ一読されてみては?

    ------------
    #横山秀夫さん好きとつながりたい。

  • 15年前の女教師自殺事案につき他殺の濃厚との有力情報あり。しかし時効まで24時間。本庁から来た溝呂木係長の部下の寺尾と所轄の徳丸が当時のワル高校生3人を取調べる。。。また、15年前時効になった3億円事件の容疑者との因縁がある溝呂木との対決もある。取調べでは、本庁の寺尾が徳丸と対抗意識を持ち次第に追い詰められ、冷静さを失くしていく様が面白い。(最初は寺尾の登場の仕方がカッコよく主人公かと思った)ネタバレは書きませんが、横山氏の初期作品ということで興味深く読みました。最後に著者の改稿後記があります。

  • さすが横山秀夫の隠し玉と言われている作品。どの場面もドラマを見ているように目に浮かぶ。内容もわかりやすく読みやすい。事件の真相を自分なりに推理しながら最後までいっき読み。

  • 実は満を持して『クライマーズ・ハイ』を読み始めたというのに、そちらは全然読み進められず放置中。
    片や後から読み始めた本書は一気に引き込まれて先に読み切ってしまった。

    現在の自分が読むから、「ディスコ」!のシーンで、もう舞子がどういう人だかわかったのだが、この話が最初に書かれた頃に読んでいたら私もたぶん気づかなかったと思う。
    それぐらい1990年と現在では社会は変化してきた。
    そういう意味では、あの頃にはまだ「セクハラ」という(行為はあったが)言葉も概念も無かったはずなので、本書に出てくる「セクハラ署長」という単語は2005年か2008年に加筆されたものだろう。

    時効がかかった最後の1日だけの勝負。
    しかも取り調べの供述だけから刑事達の戦いが進んでいく様子が書かれているのが見事。
    まあ、いくら自分史上の大事件だと言っても、喜多も竜見も15年前の細かいことまで覚えているという設定には無理があるけれども。
    (この「竜見」という文字、縦書きだと私は何度も「意見」と読み間違えしてしまい、難儀した。)

    しかし、だいたいこういう状況だと、取り調べに呼ばれた喜多が、冤罪でっち上げられそうなものだが、そうならなくて良かった。
    取り調べ担当刑事の寺尾は、活躍するかと思いきや、別室で取り調べ中の所轄のトクさんにライバル心むき出しで、どうしちゃったの?って感じだが、『64』の蔵前のような、私の好きなタイプの刑事達が他にいた。

    鑑識の簗瀬、橘を取り調べた曲輪、そして橘のことも鮎美のことも見つけ出してきて鮎美の取り調べも初めて任せてもらえた谷川。
    元刑事だというホームレスと接した時の谷川の描写や、谷川とペアを組んだ所轄の新米刑事の新田の成長ぶり、こういうところ、本当に好き。

    私は叙述ミステリーも、そうでないタイプもどちらも好きなのだが、横山氏の小説は、叙述ミステリーではない方の面白さ。

    一点、おかしな点と、他にも書き留めておきたいこの小説の肝の部分については、ネタバレになってはいけないので、メモの方に残しておこう。

  • 十五年前に自殺とされた女性教師の墜落死について、殺人の疑いが濃厚との情報が入り、時効成立まで二十四時間しかない中で、警視庁が事件の解明に挑む時間との戦いを描いた作品。

    当時、高校生であり、テスト奪取を計画して学校に忍び込んでいた男達の供述を軸にストーリーが進んでいく。
    全く予想できない展開で面白かった。序盤では真相に全く関係なさそうな話が続き、どう解決するのか全く見えなかったが、後半に入ってから、やや強引なところもあるものの怒涛の勢いで真相に迫っていく。そして、ラストで全ての複雑な伏線がつながる見事な終わり方だった。

    また、ストーリーだけではなく、取り調べに当たる刑事達の人間模様も面白い。
    個人的には、警察の末端人間の意見まで聞きつつ全般状況を冷静に整理して事件の解決を図ろうとする溝呂木係長の姿勢を心地よく感じた。
    一方で、主要人物を取り調べつつ、同僚に先を越されることにイライラを見せる人間臭い寺尾刑事は、警察側の緊張感の現れのようで、絶妙な存在だと思った。

    てんこ盛りの内容をうまくまとめていて、とても、著者の処女作とは思えなかった。横山秀夫恐るべし。

  • 横山秀夫さんのデビュー作です。面白かったです。様々な伏線が最後に見事に回収されていきます。
    あっという間に読み終えてしまいました。オススメ!

  • 自殺として処理されていた女性教師の変死が、実は殺人だったとの情報がもたらされた。しかし、時効までの時間はたったの1日。
    ストーリーとしては、現在と容疑者の供述という形で事件発生当時の15年前とを行ったり来たりする構成で進んでいく。次々と明らかになる予想外の事実に驚かされ、あっという間に読み終わった。
    最後の最後の一ひねりも面白かった。

    ただ時代背景がだいふ古いので、高校生同士の会話や呼び名なんかにはかなり違和感を覚えた。でも携帯電話なんてなかったこの時代だからこそのルパン作戦であり、この小説が成立しているんだな、とも思う。

    難しい言葉も少なく、奇想天外なトリックがあるわけでもないので非常に読みやすかった、

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著者プロフィール

1957年東京生まれ。新聞記者、フリーライターを経て、1998年「陰の季節」で松本清張賞を受賞し、デビュー。2000年、第2作「動機」で、日本推理作家協会賞を受賞。2002年、『半落ち』が各ベストテンの1位を獲得、ベストセラーとなる。その後、『顔』、『クライマーズ・ハイ』、『看守眼』『臨場』『深追い』など、立て続けに話題作を刊行。7年の空白を経て、2012年『64』を刊行し、「このミステリーがすごい!」「週刊文春」などミステリーベストテンの1位に。そして、英国推理作家協会賞インターナショナル・ダガー賞(翻訳部門)の最終候補5作に選出される。また、ドイツ・ミステリー大賞海外部門第1位にも選ばれ、国際的な評価も高い。他の著書に、『真相』『影踏み』『震度ゼロ』『ルパンの消息』『ノースライト』など多数。

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