砂の城: 鬼貫警部事件簿 (光文社文庫 あ 2-52)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (373ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334747350

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  • 鳥取砂丘で見つかった女の他殺死体。容疑者探しは二転三転するものの、ひとりの画家が浮上する。その画家は、京都で起きた別の殺人事件にも関わっている可能性があることが判明するが、2つの事件のどちらにも鉄壁のアリバイがあった。鳥取県警の刑事、京都府警の刑事が警視庁の刑事と連携して、アリバイを崩すための地道な捜査を続けていくが、難航し、鬼貫警部にアリバイの再検討が託される。鬼貫警部が登場するのは、物語の4分の3が過ぎてからで、読んでいる最中は鬼貫警部シリーズだと思っていなかった。
    東京―鳥取間の移動に関するトリック、鞄の鍵と週刊誌によるアリバイトリックはいずれも魅力的であり、京都の殺人事件の動機に関する謎もあって、引き込まれる内容であったが、そのトリックの中身はどちらも抜け道のような手法であり、拍子抜けした。東京―鳥取間の移動に関するトリックに関しては、時刻表を読み解いて、答えを考えるべきものであったが、時刻表が離れたページにばらばらに載っていたこともあって、そのような気持ちが起こらなかった。
    話の膨らませ方、展開の仕方が上手で、読み物として、十分に楽しめる作品であった。

  • 時代背景がわかんなくていまいちぴんとこないとこもあったけど、ミステリとしてはおもしろかった。
    旅のお供にもってったんだけど、移動中ずっと読んでた。

  • 未読だった鬼貫警部もの。

    正統派時刻表ミステリの傑作。犯人がかなり周到な人物で、アリバイを二重三重に用意しているので、刑事との攻防が楽しい。崩せそうで崩せないいくつものアリバイがもどかしい。くくー。やっぱり鮎川哲也の時刻表ミステリはうまい。もう「鮮やか」の一言です。

    また寝台列車が頻繁に出てくるのも楽しい。
    最近の寝台列車は「旅情を楽しむ豪華寝台」路線だけれど、この頃は普通に長距離で利用されていたんだよなぁ、としみじみ。寝台列車はコドモの頃に「あけぼの」に数回乗っただけだけど、狭いB寝台でも楽しかったなぁ。今でもあのときのワクワクした気持ちが思い出せる(って、その「あけぼの」ももう定期運行されなくなっちゃったね・・・)。

    これだけネットが発達してしまうと、冊子の時刻表を手に取ったことのない人も大勢いるでしょうし、時刻表ミステリを新たに書く作家さんもいなくなってるのかな。このジャンルは風前の灯だろうか・・・でも時刻表を見て「あぁでもない、こうでもない」ってやるのはものすごく楽しいんだけどね。・・・って、なんだか寂しくなってきたな。

  • 正統派のアリバイトリック。時刻表がばんばん出てくるが、苦手な人でも楽しめる。

    手掛かりゼロの状態から、容疑者を絞り込むまでのプロセスが第一段階。ある偽作をめぐり、関係者宅を奔走する刑事たち。ただ話を聞くのではなくて、事件の本質に迫ろうとする姿勢にわくわくする。

    第二段階はアリバイ崩し。意外な展開が加わり、ますます容疑者が怪しくなる。もうこれ以上時間の壁を崩せない、という場面で満を持して(?)鬼貫警部登場。固定概念を捨て視点を変えてみる。何もなさそうな証言から手掛かりの糸を手繰り寄せる。そうしないと解決できない緻密なプロットを、さも当たり前のように披露する手腕は正に本格の鬼。

    今回は決め手のひとつがやや弱かったのが残念だが、馴染みある土地や駅名が出てきたので、なかなか興味深く読ませてもらった。質がいいと地味さも武器になるのだ。

  • 1963年発表

  • 鮎川哲也好きになって本を集め始めてから
    これはどうしても古本屋でみつけられなかったので
    光文社サマサマです。
    じっくり読みたいです。

  • 鬼貫警部シリーズ

    鳥取の砂丘でで発見された女性の遺体。被害者は教師の宗像秋子。捜査に当たる槇刑事。秋子の所持する贋作の絵に隠された秘密。東京での捜査で浮かび上がる容疑者・仲田。仲田のアリバイ。京都で殺害された女・弥生。捜査を引き継いだ鬼貫警部。

     2010年2月9日購入
     
     2010年6月28日読了

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著者プロフィール

鮎川哲也(あゆかわ・てつや)
本名・中川透。1919(大8)年、東京生まれ。終戦後はGHQ勤務の傍ら、様々な筆名を用いて雑誌へ短編を投稿し、50年には『宝石』100万円懸賞の長篇部門へ投稿した「ペトロフ事件」(中川透名義)が第一席で入選した。56年、講談社が公募していた「書下ろし長篇探偵小説全集」の第13巻「十三番目の椅子」へ応募した「黒いトランク」が入選し、本格的に作家活動を開始する。60年、「憎悪の化石」と「黒い白鳥」で第13回日本探偵作家クラブ賞長編賞を受賞。受賞後も安定したペースで本格推理小説を書き続け人気作家となる。執筆活動と並行して、アンソロジー編纂や新人作家の育成、忘れられた探偵作家の追跡調査など、さまざまな仕事をこなした。クラシックや唱歌にも造詣が深く、音楽関連のエッセイ集も複数冊ある。2001年、旧作発掘や新人育成への多大な貢献を評価され、第1回本格ミステリ大賞特別賞を受賞。2002(平14)年9月24日、83歳で死去。没後、第6回日本ミステリー文学大賞を贈られた。

「2020年 『幻の探偵作家を求めて【完全版】 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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