- Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334749125
作品紹介・あらすじ
江戸の小梅村で庄屋を務める家に生まれたおえいは気の強い母親と一家を切り盛りしていた。武家に嫁いだ妹は時折物やお金を無心に実家を訪れる。そんなちゃっかりした妹が許せないおえいは、ある日母親の不在を理由に妹の頼みを断る。やがて妹の婚家から届いた知らせは-。嫁ぎ先でいじめ抜かれた妹に手を差しのべられなかった姉の後悔を描く表題作など傑作全六編。
感想・レビュー・書評
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ひさしぶりに宇江佐作品を堪能した。信頼している友の夫と深い中になってしまうなんていう話「振り向かないで」は、現代のドラマだったらうんざり、と思うようなものだが、宇江佐さんの筆にかかると、どうしようもない人間の哀しみとなって描かれていて、しみじみ。表題作「彼岸花」も哀しかった。他人と所帯をもってしまうと、もう生きる道は全く異にしてしまうのだから、親兄弟でもその生き方に口出しはできないのだろうかと、歯がゆい思いをしてしまう。結局人間は孤独だなぁとため息が出るが、決して読後感は悪くないのだ
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解説に各話あらすじ
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喜びと悲しみは繰り返す。唇かみしめて、
涙こらえる日もあるさ…。ささやかな幸福を
求めて生きる江戸の庶民を描いた短編集。
嫁ぎ先でいじめ抜かれた妹に、手を
差しのべられなかった姉の後悔を描く表題作
ほか全6編収録。 -
小説宝石2007年〜2008年に掲載された6つの短編を2008年11月に光文社から刊行。2011年8月光文社時代小説文庫刊。哀しい話もありますが、楽しめるお話です。ただ、登場人物の女性の名前が、似かよっていて、読み辛かったところがありました。おいらのツケ:おむら、おさと、おかつ。彼岸花:おえい、おとく、おたか。野紺菊:おりよう、おさわ、おすま、おせつ、おせい。振り向かないで:おくら、おけい、おきみ、おれん。という名前ですが、「お」を意識しないで読むと良かったんですね。
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短編集で、どの作品も人間のマイナス面を描いている。
「つうさんの家」、もっと書きようがあるものを、と不満に思いつつも印象に残った。
「振り向かないで」、つまらない出だしなのに、最後は眼を離せなくなった。
あまり考えずに書き出し、それを着地させるのがうまい作家なのかもしれない。 -
今も昔も人の想いというのは変わらないのだと温かい気持ちになる.そして無意識に自分に欠けている部分や忘れている部分を探しているように思う.きっと自らが幸福であることを認識するのは,それが失われた時なのだろう.それを気付かせてくれる素敵な一冊でした.
以下あらすじ(巻末より)
江戸の小梅村で庄屋を務める家に生まれたおえいは気の強い母親と一家を切り盛りしていた。武家に嫁いだ妹は時折物やお金を無心に実家を訪れる。そんなちゃっかりした妹が許せないおえいは、ある日母親の不在を理由に妹の頼みを断る。やがて妹の婚家から届いた知らせは―。嫁ぎ先でいじめ抜かれた妹に手を差しのべられなかった姉の後悔を描く表題作など傑作全六編。 -
女性が主人公の江戸市井人情ものをこんだけ読める短編小説に書ける作家は稀有だと思う。乏しい俺の読書経験では宇江佐真理がダントツではないかと思うのだが。
現代であってもどこにでもいそうな女性が、恋や仕事や家族に悩み、それでも日々の生活を淡々と確実に送っていく。登場人物当人にとっては揺れ動く生活なんだろうけど、読み手からは観るとなんとなく優しく柔らかく思えてしまう日常描写。
この人たちが食っている、飯と汁と青菜と魚を食ってみたい。ここに出てくる居酒屋の隅っこの方で燗酒なんぞを舐めてみたい…。宇江佐さんの小説を読むといつも思う事だけど、この本では余計にそう感じてしまった