彼岸花 (光文社文庫 う 15-3 光文社時代小説文庫)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334749125

作品紹介・あらすじ

江戸の小梅村で庄屋を務める家に生まれたおえいは気の強い母親と一家を切り盛りしていた。武家に嫁いだ妹は時折物やお金を無心に実家を訪れる。そんなちゃっかりした妹が許せないおえいは、ある日母親の不在を理由に妹の頼みを断る。やがて妹の婚家から届いた知らせは-。嫁ぎ先でいじめ抜かれた妹に手を差しのべられなかった姉の後悔を描く表題作など傑作全六編。

感想・レビュー・書評

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  • ひさしぶりに宇江佐作品を堪能した。信頼している友の夫と深い中になってしまうなんていう話「振り向かないで」は、現代のドラマだったらうんざり、と思うようなものだが、宇江佐さんの筆にかかると、どうしようもない人間の哀しみとなって描かれていて、しみじみ。表題作「彼岸花」も哀しかった。他人と所帯をもってしまうと、もう生きる道は全く異にしてしまうのだから、親兄弟でもその生き方に口出しはできないのだろうかと、歯がゆい思いをしてしまう。結局人間は孤独だなぁとため息が出るが、決して読後感は悪くないのだ

  •  宇江佐真理「彼岸花」、2008.11刊行、2011.8文庫、独立短編6話。堪能しました。味わい深く、そして考えさせられ、ふむふむと納得の6話です。特に「つうさんの家」と「野紺菊」は白眉でした。山の中での武家の娘、薙刀の名手だった老婆のつうさんと(孫の)おたえ15歳が一緒に過ごしたわずかな日々。金で買えないものはこの世に山ほどある。健康、幸せ・・・。ボケが始まったおすまを介護するおりよと義姉のおさわ、秋から冬に咲く青紫色の野紺菊の美しさが。「おいらのツケ」と「あんがと」もなかなかでした。

  • 祖母の家に宇江佐真理さんの本が大量にあり、そのうちの一冊として読んでみた。
    江戸時代のお話短編が6編が集録されていた。

    どのお話も個人単位程度の転機が訪れる。そして酸いも甘いも経験し、全てが良好というわけではないけど幸せを感じて生きていく。
    取り分け特別な人生ではない、けど平凡な人生をありがたく生きていく感じが心地よい。

  • 解説に各話あらすじ

  • 喜びと悲しみは繰り返す。唇かみしめて、
    涙こらえる日もあるさ…。ささやかな幸福を
    求めて生きる江戸の庶民を描いた短編集。
    嫁ぎ先でいじめ抜かれた妹に、手を
    差しのべられなかった姉の後悔を描く表題作
    ほか全6編収録。

  • 小説宝石2007年〜2008年に掲載された6つの短編を2008年11月に光文社から刊行。2011年8月光文社時代小説文庫刊。哀しい話もありますが、楽しめるお話です。ただ、登場人物の女性の名前が、似かよっていて、読み辛かったところがありました。おいらのツケ:おむら、おさと、おかつ。彼岸花:おえい、おとく、おたか。野紺菊:おりよう、おさわ、おすま、おせつ、おせい。振り向かないで:おくら、おけい、おきみ、おれん。という名前ですが、「お」を意識しないで読むと良かったんですね。

  • 短編集で、どの作品も人間のマイナス面を描いている。
    「つうさんの家」、もっと書きようがあるものを、と不満に思いつつも印象に残った。
    「振り向かないで」、つまらない出だしなのに、最後は眼を離せなくなった。
    あまり考えずに書き出し、それを着地させるのがうまい作家なのかもしれない。

  • 今も昔も人の想いというのは変わらないのだと温かい気持ちになる.そして無意識に自分に欠けている部分や忘れている部分を探しているように思う.きっと自らが幸福であることを認識するのは,それが失われた時なのだろう.それを気付かせてくれる素敵な一冊でした.
    以下あらすじ(巻末より)
    江戸の小梅村で庄屋を務める家に生まれたおえいは気の強い母親と一家を切り盛りしていた。武家に嫁いだ妹は時折物やお金を無心に実家を訪れる。そんなちゃっかりした妹が許せないおえいは、ある日母親の不在を理由に妹の頼みを断る。やがて妹の婚家から届いた知らせは―。嫁ぎ先でいじめ抜かれた妹に手を差しのべられなかった姉の後悔を描く表題作など傑作全六編。

  • 江戸人情物六つの短編集。《つうさんの家》父留吉が営む「美濃屋」の不振で店をたたみ、一家は大坂の叔父の家へ身を寄せることになった、娘のおたえだけが途中の山奥にあるつうさんという老女に預けられることになるが…おたえは不満で我儘に振舞うが…。《おいらのツケ》父親の病気がうつるのを避けるため三吉は、幼い頃から隣家の夫婦に面倒を見てもらっていた。大工見習いになった今も隣に住む実母よりも、養家の夫婦のほうが実の親のようなものだったが…養父が亡くなり上方で修行している養家の息子が嫁を連れて戻ると居場所が…。

    《あんがと》血は繋がっていなくとも、家族以上に助け合って生きる4人の尼僧、その尼僧院の境内に置き去りにされた幼い女の子おと。尼僧たちは困惑しながらも幼子を慈しみ育てるそれがやがて尼僧たちの日常のはりとなるが、やがて伯母夫婦がひきとりにやってくる…。《彼岸花》庄屋の総領娘として生まれたおえいは家のため恋もあきらめ婿を取り、跡取りとして慌しい日々を送っているが、今だに家内で権勢を振るう気の強い実母と、武家に嫁いだことを鼻にかけながら実家に度々無心にくる妹に頭をいためている、ある日母親の不在を理由に妹の頼みを断る。やがて嫁ぎ先から届いた知らせは…実は妹は…。ほか、《野紺菊》《振り向かないで》

    なぜか、表題作《彼岸花》より《あんがと》が心に残る。核家族となった現在では考えられないような、家・家族の力が強かった時代、血の繋がりの有る無しにかかわらず、共に暮らした年月の人と人との繋がりをほろりとさせ考えさせられる作品。宇江佐さんの筆力が冴える。良い作品を譲って頂いたかおりさんに感謝。

  • 女性が主人公の江戸市井人情ものをこんだけ読める短編小説に書ける作家は稀有だと思う。乏しい俺の読書経験では宇江佐真理がダントツではないかと思うのだが。

    現代であってもどこにでもいそうな女性が、恋や仕事や家族に悩み、それでも日々の生活を淡々と確実に送っていく。登場人物当人にとっては揺れ動く生活なんだろうけど、読み手からは観るとなんとなく優しく柔らかく思えてしまう日常描写。

    この人たちが食っている、飯と汁と青菜と魚を食ってみたい。ここに出てくる居酒屋の隅っこの方で燗酒なんぞを舐めてみたい…。宇江佐さんの小説を読むといつも思う事だけど、この本では余計にそう感じてしまった

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著者プロフィール

1949年函館生まれ。95年、「幻の声」で第75回オール讀物新人賞を受賞しデビュー。2000年に『深川恋物語』で第21回吉川英治文学新人賞、翌01年には『余寒の雪』で第7回中山義秀文学賞を受賞。江戸の市井人情を細やかに描いて人気を博す。著書に『十日えびす』 『ほら吹き茂平』『高砂』(すべて祥伝社文庫)他多数。15年11月逝去。

「2023年 『おぅねぇすてぃ <新装版>』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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