海に住む少女 (光文社古典新訳文庫)

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制作 : 永田 千奈 
  • 光文社 (2006年10月12日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334751111

海に住む少女 (光文社古典新訳文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 「表題作の、海の上に浮かぶ町に住む少女の話、天上で暮らす灰色の影達の話、お椀に入った牛乳を運ぶ青年の話、など10本の短編集」

    「面白い/面白くない話だ」ではなく、とにかく「美しい文章だ」というのが1番大きな感想。

    全ての出来事と全てのセリフがミュージカルでも見ているようで、小説というよりは詩に近い感じかなぁ。と思ったら、作者の本業は詩人で、戯曲も手がけていたらしい。なるほど。

    大人向けと言うには、無機物にも意識やセリフがあったりしてファンタジーで、
    子供向けと言うには、死の匂いが強くて嫉妬や暴力があって人間の残酷な面が描かれている。

    不思議なバランスと魅力の詰まった作品だ。好きな人はめちゃめちゃハマると思う。私はこの中だと「空のふたり」が1番好き。

  • 一見、童話のような感じを受けるのですが、そんなにかわいらしいものではありません。
    孤独や悪意や理不尽がそのままの形で書かれていて、おもりを乗せられたようにずどんと気持ちが沈みこむときがありました。
    それに、たった一行で物語ががらりと色を変えてしまうときもしばしばあり、まったく油断ができません。
    幻想的な雰囲気を持ちながらも、怖さと寂しさの入り混じったリアルな痛みをしっかりと残していく物語集でした。

    「牛乳のお椀」が特に印象に残っています。
    最後のページをめくった直後、一瞬何が起こったのかわからずにうろたえてしまいました。
    現実的な質感をともなった余韻にしばし動揺。

  • とある人が薦めてくれた本だった。
    それからかれこれ一年ぐらい温めてしまった一冊である。
    すてきな寓話集である。大人向けで、なんとも言いがたい悲哀がこもっている。


    作者はジュール・シュペルヴィエル、何とも日本人には覚えずづらい名前で、私はほとんど予備知識のなかった作家である。
    フランスの詩人兼作家で、幻想作家に分類されるらしい。
    確かに独特の世界を持つが、私には大人のための童話を書く作家のように思えた。
    『飼葉桶を囲む牛とロバ』、『ラニ」、『ノアの箱舟』が好きだった。
    『飼葉桶を囲む牛とロバ』の表現に見たような愛らしさ、そして『ラニ』の表現で見たような残酷ともとれるえぐさ、『ノア』に見るユーモラスナな文体。
    ただの神秘に落ち着かぬ独特の世界観と地に足の着いた洞察力を持っているように私には思えた。思ったよりも昔の人なのに現代人に繋がる孤独感をうまく描き出している。
    とは言え年代的にはかなり先駆的な存在だったのだろうと思う。


    童話集というのに最近無意識に当たる事があるな。
    短編集はこういう構成のものが読みやすいな。
    『ひとさらい』もいつか読んでみたい。

  • 密やかで透徹した、けれど底知れぬ深い孤独と、哀しい優しさが感じられる短編集。『飼葉桶を囲む牛とロバ』に泣きました。『空のふたり』とっても好き!こんな事が本当に起こったら、なんて素敵だろう、と思わせてくれました。

  • 綺麗な言葉だった。
    テーマの重さと物語の美しさのギャップが好き。

  • モノクロの無声映画みたいな印象の、言葉にできない物悲しさや寂しさが常につきまとう短編集でした。私なりに考えてみると、どの作品にも人間的というか、肉体や我欲に縛られた些細な望みが叶うのだけど、それと引き換えに大きな喪失感が後に残る。そういう要素が強いからなのかな。と思います。巻末の解説によると、作者・シュペルヴィエルは物心つく前に両親を亡くし、幼少の時点で育ての親が本当の父母ではない事に気づいてしまっていたそうです。もしかしたら、満たされなかった思いがどこかにあってそれが作品に反映されているのかもしれません。

  • 「時代が変わり、国が違っても、ひとの寂しさは変わらない。」
    という裏表紙の文章に惹かれて手に取った一冊でした。
    訳者の方はフランス版宮沢賢治、とシュペルヴィエルのことを解説しています。

    大海原に浮かんでは消える町に住む一人の少女の物語。
    幻想的な風景で綴られる、美しく寂しい風景。
    ぽっかりと心に穴が開いたような、ノスタルジックな気持ちに。

    堀口大學の翻訳版では「沖の小娘」というタイトルになっています。
    また少し雰囲気が違っているので、気になった方はそちらもぜひ。

  • 大人向け童話のようで、動物が人のように考えたり行動したりするところはポール・ギャリコ風。でも単にシンプルでやさしい物語を期待していると足元をすくわれてしまう。初めのうちはわくわく感に満ちていたりユーモア満載だったり、無邪気に楽しませてくれるのに、終わりには圧倒的な孤独や喪失感が待っているのだ。なんで楽しいままで終わらせてくれないのか、どこか残酷さまで感じる短編集だった。

    誰もいない町に一人で住む女の子を描いた表題作と、イエス誕生に対する動物たちのリアクションが可笑しい「飼葉桶を囲む牛とロバ」に特に引き込まれた。「ノアの箱舟」の軽業師一家のエピソードも楽し悲しくて忘れられない。

  • 短編集。表題作は、最初のうちはありがちな設定(死んだ女の子が自分が死んだことに気づいてないのかな?幽霊みたいなもの?それとも夢オチ?)かと思いながら読み進めたのですが、最後の4行で、どんでん返し(?)なオチがあってビックリ。人によってはガッカリって思う人もいるかもだけど、私は衝撃的というか、想像するとかなり怖かったです。もし自分の妄想や想像が、どこかパラレルワールドみたいなところで現実になっていたらイヤだなあって考えたことがあったので、ちょっとゾッとしました。

    他に好きだったのは「セーヌ河の名なし娘」。この娘さん、実は死体なんですが、セーヌ河を流れて海へ流れつき、海底にある死者の国みたいなとこまで行っちゃいます。「空のふたり」は対象的に、海底ではなく空の上に死者の国(天国とかそういんじゃない感じ)があったりして、死者、死後の世界にまつわる作品が多いなという印象。「バイオリンの声の少女」は、タイトル通り、バイオリンの声の少女が登場するのですが、少女がその声を失う理由が、ベタなんだけれど少女(全般)の巫女的な聖性を象徴しているようで、印象に残りました。

  • …でも、大西洋にはあいかわらず何の気配もなく、少女のもとを訪れたのは、いくつかの流れ星だけでした…
    淋しさは、薄い水色をしているのかな。そんな風に思ってしまう。海を漂うのは、水の中深く彷徨うのは、生まれる前のことかしら。多くの詩人に影響を与えたフランス詩人の、詩的なイメージで綴られた短編集。 海辺の旅に読むと臨場感があってちょっとホラーでぴったり。訳者はフランス版宮沢賢治と言われているけど、その通りかも。

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