ドリアン・グレイの肖像 (光文社古典新訳文庫)

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著者 : ワイルド
制作 : 仁木 めぐみ 
  • 光文社 (2006年12月7日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (447ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334751180

ドリアン・グレイの肖像 (光文社古典新訳文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 19世紀アイルランド出身の作家・劇作家、
    童話も名高いオスカー・ワイルドの小説。

    高校生の頃、旧訳を古本屋で買って
    積読しっ放しだったことを思い出しつつ、
    あまりに有名なため、
    読まずしてオチを知ってしまっていたので避けていたが(笑)
    まあまあ気に入っている光文社古典新訳文庫にて
    第2刷が出たのを機に購入。
    予想を遥かに上回る面白さに驚いた。
    老若・美醜の問題に囚われるあまり
    言動が常軌を逸していく主人公の混乱っぷりは他人事でもなく、
    意外に感情移入して世界観にとっぷりハマることが出来た。
    男性三人が同性愛の関係にあるのは明白なのだが、
    それが罰せられる世の中だったため、
    極めて婉曲かつ控え目に描かれているところが
    個人的に好ましく思えるのだった。
    この新訳は現代的な言い回しで綴られ、
    読みやすく、お薦めしやすいが、
    解説で紹介されている1950年発表の平井呈一訳の冒頭部分が
    うっとりするほど色香が匂い立つような文体なので、
    機会があったら読んでみたい。

    尚、本書第10章以降で言及される、
    ドリアン・グレイがヘンリー卿から贈られて耽読する
    「悪書」はユイスマンス『さかしま』である。

    [備忘]
    岩田美喜「世紀末の夜の子供たち――『ドラキュラ』におけるアブジェクシオンの作用」
    (東北大学英語文化比較研究会機関誌《川内レビュー》№3〈2004年〉)
    ワイルドと同時代の同郷人ブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』と
    『ドリアン・グレイの肖像』のテーマ、モチーフの近似性を論じている。

  • 「ゴミみたいな美青年と、コミュ障の画家と、鬱陶しいホモの三角関係ね、要約すると」
    それだけ言うと、紅子はバージニアエスに火を点けた。ゆっくりと煙を吸い、満足げに吐き出す。
    「……始まる前から終わってそうなメンツですね、それ」
    葉月はつい先ほど紅子に勧められた本を両手に持ち、その表紙をまじまじと見ていた。
    「あー、そんな感じ。でも終わりは終わりでちゃんと終わってるから、ダブル終わりって感じだよね。意味分からないけど」
    「何言ってんですか」
    本を裏返し、裏表紙の紹介文に目を通す。
    「ワイルドっていうと、サロメ的な萌えが最初に浮かぶんですけど」
    「ああ、感覚は近いかも。退廃と不道徳は、破滅までまとめてパッケージングされて初めて、美意識と呼べる的な?」
    「私はどっちかというと、幸福の王子のようなシンプルなハッピーエンドが本質で、そのパッケージはちょっとばかし捻くれた裏返しのような気もするんですけどね」
    とりあえずこれは借りていきます、と、葉月は本を鞄に入れた。

  • 純真無垢なはずだった美青年ドリアンと、生真面目だか仄暗い自意識を抱える画家ホールワード、詭弁を弄する快楽主義者ヘンリー卿が互いに与えあう影響力の循環と矛盾の描写が興味深かった作品。
    そして、悪行と年齢を重ねてもなお外見的には少年のように若く美しいドリアンとは対照的に、ホールワードが「自分を注ぎ込みすぎ」て描いたドリアンの肖像画が代わりに彼の行為と内面を投影して醜く老いさらばえていくというファンタジー的な要素。
    他者にはドリアンの内面が見られないのに、肖像画の所有者であるドリアンだけが自身の醜さを突きつけられることで、「(だれよりそれに固執し)美と若さを体現しているようで実は誰より醜い」という自身の秘密を常に胸の片隅に住まわせ、一層狂気に駆り立てられ最後の悲劇に至るという設定も破滅的な嗜虐性に満ちていてワイルド的です。

    そして、この小説にはストーリーで重要かどうかに関わらずワイルドの美意識がぎゅうぎゅうと詰め込まれています。(それを罪とみなしていた時代に書かれた作品なので)直接的な描写はなくても3人が実は同性愛的な位置づけにあるのはなんとなく想像がつくという点でも。

  • ある意味、この歳まで読まなくてよかったと思います。若い時分に読めば間違いなく、ヘンリー卿のエゴイスティックな快楽主義、耽美主義に傾倒し、その後の人生がどうなっていたか。(まあ、私はドリアン・グレイのような美男子ではありませんが...)

    私の中での、文学上のヒーローはこれまでドストエフスキー「悪霊」のスタヴローギンでしたが、ドリアンとヘンリー卿は彼に勝るとも劣らない強烈な魅力があります。どうも私はインテリな悪のカリスマを崇拝する傾向があるようです(笑)。

    本書の至る所でヘンリー卿の口を借りて展開されるワイルド節は、世間一般の道徳に基盤をおいた価値観を一蹴し、グレイでなくても惹きこまれる悪魔的魅力に満ち溢れています。確かに、道徳というものは共同体における個人の行動を一定の価値観の強要によって規制することで、共同体全体の秩序を保つための道具であり、美徳というものは常に相手や第三者との関係によって成り立っている、ある意味、個人を抑えることを本質にしていると思います。そう考えると、芸術とは凡人による平均的なアクティビティに対して、独創的な特出した価値であり、強い個性あってこそ高い芸術性が生まれるのであって、確かに芸術と道徳は相反するものかもしれませんね。うーむ、人付き合いと芸術とどちらを採るかといったところでしょうか?

    ヘンリー卿にかぶれて快楽と頽廃に溺れていくドリアン。まさに金持ちが暇を持て余しているがための為せる業であり、毎日をあくせく生きることに精一杯な私の目にはまさに憧れの生活です。私が今の状況で真似をすると、単に人生をあきらめ、投げ出してしまったと、グレイの場合とは対極的な陰惨な物語になってしまいますが...

    ところで、読んでいてバジル、ドリアン、ヘンリー卿にホモセクシャルな雰囲気を感じて、しまいましたが、ワイルドさんも家族がいるのに同性愛者だったのですね...芸術家って、何故か多いですね。ゲイ術家...
    (※ このレビューはまだLGBTが今日程一般でない時分に書いたものですが、記録として訂正せずそのまま載せました。気分を害された方がいたら申し訳ございません)

    いずれにせよ、本書は私に非常なインパクトを与えてくれました。原文を読んでみようかな。英語だし。

  • あらためてオスカー・ワイルド半端ないと思った。筋は戯曲・舞台調で陳腐と言えば陳腐でドラマチックと言えばドラマチックでとにかく飽きさせない。しかし一番の見どころ(読みどころは)ヘンリー卿とドリアンやその他貴族との洒落た軽妙な会話の数々。頭に浮かぶアイテムをつなぎ合わせたら「サロメ」のにおいぷんぷんなんですが、小説だけの言葉、戯曲だけの言葉の使い分けが徹底的だから筋が舞台調でも読み手がしらけずにいられるんだろうなぁ。セリフだけ書き出してトイレにでも貼っておきたい。

  • 大学で絵画を専攻しているのですが、人物画のモデルには、知り合いか他人かに関わらず、特別な感情が湧きます。
    私はモデル本人に打ち明けたことはありませんが、ドリアン・グレイの画家がドリアンに打ち明けたのはすごい事だなと思い、それが印象深かったです。

    制作中は実際会ってる時と違う気持ちにもなり、長く描いてると、絵の中のモデルとの付き合いが長くなり、妙な親密さを持ち、「私の知っている絵の中のモデルとは」を考えることがあります。
    それは自分の見たかったモデルの姿とか、理想像であったり、一瞬の人間らしさを感じるたたずまいなどです。

    だから自分が描いた絵画の中のドリアンが変貌していくなんて知ったら、とても悲しむことだなと感じます。

    結構人物画は、モデルの一瞬の美しさを絵の中に閉じ込めたいから描くイメージだったのが、これを読んで少し変化したように思います。ドリアン・グレイの肖像を読んだら人物画を描きたくなりました。

  • 何も知らないということは、
    人間が失ってしまった
    全てのものを持っている
    ということだ。
    これには本当に納得した。
    何も知らない、無垢な状態とは
    知恵の実を食べてしまう前の
    楽園のイブだ。
    ヘビであるヘンリー卿がそそのかし、
    ドリアンは罪を知ってしまった。
    この時点でドリアンは
    神から見放され、
    人生を追放されたのだと思う。
    また、バジルの描いた絵も、
    美しくありながら、
    怪しいヘビであったのではないかと
    感じた。
    ドリアンの美しさを崇拝しながら
    一方では、彼の美しさを
    自覚させてしまうエゴに悩む。
    だからバジルはあんなに苦しみ
    絵に罪を感じていたのではないか。
    けれど罪というものは美しく
    魅力的だ。
    絵が老いていき、
    代わりにドリアン自体が美しき
    罪になった。
    秘密、支配、誘惑、抵抗
    このワードに印をつけた。

    結末で、全ての罪が戻り
    死んだことで、
    ドリアンはどんな感覚を得たのか。
    それにより魂は浄化されたのか?

    また、この時代は、同性愛について
    描くのが難しかったということで
    もしオスカーが現代に生きていたら
    描写はまた変わるのか気になった。

    美しきドリアンを崇拝する
    Mなバジル。
    美しきドリアンを
    支配することで快楽を覚える
    Sなヘンリー。

    人は、持っているものが
    貴重であるほど、
    エゴイストになる。

  • 素晴らしい。
    ワイルドの哲学がハリーの詭弁がドリアンの美貌が狂気があらゆる芸術が心の奥に根を張って一瞬で虜にされた。
    そもそも物語が単純に面白い。世界中で愛される理由がよく分かる。

    この小説そのものが完成された芸術作品!
    そして、“芸術とはみな、きわめて役に立たないものだ。(序文より)”
    完璧過ぎる作品。
    死ぬまでに必ず原文を読む。

  • 名著中の名著ですね、この作品。
    とにかくヘンリー卿の名ゼリフのオンパレードです。
    名ゼリフすぎて、この著者どれだけ世間に恨みつらみ持ってんだよ、と思ってしまいます。
    で、実際に著者オスカー・ワイルドさんの事を調べたらなるほど納得という感じでした、気になる方はぜひ読んでみて下さい。
    僕の中でのヘンリー卿名ゼリフベスト5を残しておきます(ベスト5では全然足りない)。

    第5位
    若さが消え去れば、一緒に美も失われる。
    そして君は自分にはもうなんの勝利も残されていないことを知るんだ。
    あるいは過去の記憶と比べれば、敗北よりも惨めになるようなつまらない勝利で自分を満足させなければならなくなったのをね。

    第4位
    アメリカの女性たちは親を隠すのが得意です。ちょうどイギリス女性たちが過去を隠すのがうまいみたいに。

    第3位
    何の関心もない相手には、人はいつも優しくなれるものだから。

    第2位
    そもそも結婚などやめておけ、ドリアン。
    男は疲れたから結婚する。女は好奇心から結婚する。そして両方ともがっかりするんだ。

    第1位
    若さを取り戻すためなら、この世でできることはなんでもするよ。
    運動とか早起きとか、きちんとした生活をするとかいうこと以外ならね。

  • THE NOVEMBERSの小林祐介さんが勧める小説と見かけたので読んでみた。第19章で私の人生を揺るがすような素晴らしい言葉を見つけた。指針になるかもしれない。そしてヘンリー卿の言葉に深い意味などないのかもしれないが、突き刺す言葉だらけで頭と心が揺れ動き続けた。

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ドリアン・グレイの肖像 (光文社古典新訳文庫)の作品紹介

美貌の青年ドリアンと彼に魅了される画家バジル。そしてドリアンを自分の色に染めようとする快楽主義者のヘンリー卿。卿に感化され、快楽に耽り堕落していくドリアンは、その肖像画だけが醜く変貌し、本人は美貌と若さを失うことはなかったが…。

ドリアン・グレイの肖像 (光文社古典新訳文庫)のKindle版

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