ドリアン・グレイの肖像 (光文社古典新訳文庫)

  • 光文社
3.85
  • (82)
  • (107)
  • (100)
  • (13)
  • (0)
本棚登録 : 1028
感想 : 117
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (447ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334751180

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 意外とホラー/サスペンスなんだね。オチもちゃんとある。
    新訳で読みやすかったけど、ウィットききすぎてわけわかんないところも多々。

  • 罪に対する罰とは、正義の勝利や罪の歯止めという意味だけでなく、罪人に対する救済という意味も持つ。
    ヘンリー卿の比喩や警句が空虚な言葉遊びにしか思えなかったのは私が未熟なんだろうか。

  • 前情報で、同性愛、しかも男同士のという要素があるぞ。と分かっていたので、ちょっと大丈夫かなと、おそるおそる思って読み始めましたが、大丈夫でした。
    女の子同士の依存のような友情っぽいなあと。

    ヘンリー卿が反発するように言う思想がとても印象に残っています。
    よくもまあそれだけの事を・・・と、思うほどに、揶揄が恐ろしく秀逸で、特に、女性を定義してみてください。という言葉に対し、秘密なきスィンクスと答えた時、少し固まって考えてしまいました。すごい。
    こういう不思議な事がぽんっ、と放り投げられたような本好きです。

    若さ、若さこそが全て!若さを見くびるな馬鹿もの!というような本。
    これを読んでいると、将来への不安がある。社会的な不安もあるなかで、肉体的不安も持って今を生きろ。という、ちょっと残酷ではあるけれど、若さとはお金ですら買えないかけがえのない財産なのだと訴えかけられたように思えます。

  • ――じゃあきっと幻想だ。人が完全に確信していることというのは決して真実ではない。これが『信仰』の致命的な欠陥であり、『ロマンス』の教訓なのだ。

    柳広司「ロマンス」で清彬が万里子に言ったセリフは、この中のヘンリー卿のセリフの引用だったんだな。

  • 会話文が非常に魅力的。特に、ヘンリー卿の哲学じみた台詞は読んでいて興味深いものがあった。オスカー・ワイルドの思想が全て詰め込まれているかのようだった。

  • とても美しい小説だった。

    ヘンリー卿の説く快楽への考えが、なんとも狡猾で、思わず納得してしまう。少し言葉は違うが、道徳観に惑わされて若さを無駄遣いしてはいけないと。若い時にしか快楽におぼれることはできないし、自堕落になることはできない。それこそ若者の特権なのかもしれない。

    しかし、全ての行為は自分の身に跳ね返ってくる。「30過ぎたら自分の顔に責任を持て」とよく言われる。悪い行為をすれば悪い顔に、自堕落な生活をすればだらしない顔に、幸せであれば幸せな顔になっていくというのだ。

    ドリアンは、悪徳を重ねるが、それは彼の顔に表れない。全ては肖像画が受け止めてくれる。そのためか、ドリアンは自分の行為の恐ろしさを直視することなくさらに悪徳を重ねていく。もし、倫理的悪といわれることが、自分の身になんらかの形で跳ね返ってこないのであれば、人間は悪を行ってしまうのだろうか?つまり、人間は、利己的な理由のみで悪行をくいとめているのだろうか?それが人間の本性なのだろうか?

    読みながら、谷崎の作品を思い出したけれど、後で調べると、やはり、オスカーワイルドは、谷崎潤一郎や芥川龍之介なんかに多大なる影響を及ぼしている。そして、想像通り、ゲイだったよ。(男性から男性に対する思いの描写が美しすぎるので)

    ところで・・・余談だけれど、「快楽主義」を実践して・・・と本のカバーにも書かれている。でも、この本で使われている「快楽主義」とは、いわゆる快楽主義(エピクロス) とは異なる。エピクロスの説く快楽とは、短絡的な肉体的快楽のことではない。精神的に幸福な状態に導くような行為をすべきであるということで、それは、肉体的な快楽をむさぼることではない。健全な生活と正しい行いが快楽をもたらすということだったはず。詳しく知っているわけではないので、えらそうなことは言えないけれど、快楽主義という言葉があまりにも間違って使われているので、気になる・・・。ウェブでも、快楽主義と検索すると、セックス、酒、薬やり放題みたいな使われ方ばっかりだなぁ・・・。

  • 「理想の世界」そのものである。神様の遊び心が隠された作品。

  • 講談社版より、話し言葉になっているせいか、読みやすいバージョンのドリアン・グレイ。初めて読んでみようと思う方はこちらがいいのではないかと思います。

  • そうだよねーって事言うんだけど、シニカルすぎて鬱になる。だから☆四つ。

  • 村上春樹の『スプートニクの恋人』を思わせるような、ドリアン=グレイとヘンリー卿の出会い。唐突で、そして衝撃的。それを契機にドリアンは”堕落”していく。

    ヘンリー卿は捉えようのない人である。彼の言動は一つ一つが優雅であるけれど、だからといって僕には一貫性があるようには思えなかった。しかし、それでも彼は十分に魅力的で、そしてそれはとりわけドリアンを引きつけた。そして、その価値観には、恐らく多分に作者ワイルドの価値観が反映されている(フェミニストや”正しい”価値観を持つ人からは大いに反感を買うであろうが)。それだけでなく、19世紀末のイギリスの状況も反映されているのだろう。

    最後の場面で、ドリアンがなぜ死んでしまったのか、を考えるのは非常に面白いと個人的に思う。裁きが下されたのか。だとしたらそこには、ワイルドの無意識的な恐れといったものもあるのではないか。

    総括として非常に面白い作品である。機知に富み、そしてエレガントな文体と台詞。色濃く反映されるワイルドの世界観。何度も読み返したいと思える作品である。

全117件中 61 - 70件を表示

ワイルドの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×