ヴェニスの商人 (光文社古典新訳文庫 Aシ 1-3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334751302

作品紹介・あらすじ

裕福な貴婦人ポーシャへの恋に悩む友人のため、貿易商アントニオはユダヤ人高利貸しのシャイロックから借金をしてしまう。担保は自身の肉1ポンド。商船が難破し全財産を失ったアントニオに、シャイロックはあくまでも証文どおりでの返済を迫るのだが…。

感想・レビュー・書評

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  • 『ヴェニスの商人』読み比べの4冊目。
    このようにひとつの作品を別の翻訳者で読み比べたなどというのは初めてのことだ。
    しかも4冊も。

    池井戸潤氏の『シャイロックの子供たち』の本文に一言も出てこなかった「シャイロック」って何?と、無知な私はその時点では知らなかった「シャイロック」。
    そこから発してこうなったわけだが、意外にどの『ヴェニスの商人』も面白かった。

    本書の訳者のシェイクスピアについての解説も興味深く読んだ。
    本作の元となる『マルタ島のユダヤ人』(クリストファー・マーロウ)という先行作があったとのこと。
    1990年に本書の翻訳者による訳・演出で『ヴェニスの商人』と『マルタ島のユダヤ人』をほぼ同じメンバーで昼夜交互に公演したとのこと。
    現在の私なら、絶対に両方観に行きたいところ。

    図書館で誰も他に借りる人がいないため、借りた5冊は延長もできて(他の書籍の合間に)やっと4冊読んだ。
    (5冊目は全シェイクスピア作品・全原文・全翻訳の電話帳並みの書籍なので無理→返却した)

    途中から、次に他のシェイクスピア作品も読みたくなってきたので、どの翻訳シリーズが良いか見極める目的もあって読み比べたが、どれも甲乙付け難い。
    1冊前のシリーズだけは文字が小さいので次はやめようと思うが、内容は悪くなかった。

    ただし、どのシリーズにも共通している作品は少ないので、とりあえず次は『リア王』かな。

    なお、本書では註釈に「ヤコブの母リベカが夫イサクを騙し、異母兄の長男エサウをさしおいて、自分の息子ヤコブを一族の長とした」とあるが、他のキリスト教の書籍では、確かに母はヤコブを贔屓していたが母は同じだしエサウとヤコブは双子だと書かれているものもある。

  • シャイロックに対する印象が180度変わった。"肉1ポンド"の小悪党のイメージが先行していたが、ただの現実主義的な社会的弱者に過ぎない。

    逆に、アントニオの正義の一方的な押し付けが不快。ある意味、彼こそキリスト教という偏見に取り憑かれた、哀れな男のように感じた。

  • 初めてのシェークスピア喜劇。

    想像以上に読みやすかった。
    友達の恋を助けるために、命をかけて借金するアントニオ。
    自らの知恵で、見事に鉛の箱を選ぶバサーニオ。
    血までは削いではいけないと機転を利かすポーシャ。
    (お嬢様なのに賢くて勇気があってポーシャが1番すごい)

    指輪をあげてしまってバサーニオが死ぬのかと思ったら、最後はハッピーエンドだった。
    読みやすいけど、あまり教訓はないお話。

  • 肉を切り取るところしか知らなかったけど、こんなに女性が活躍する話だったとは!裁判の進行がスカッとする。そして指輪よ。伏線を回収するっていうのは、シェイクスピアの時代からあったのね〜。

  • 【本の内容】
    裕福な貴婦人ポーシャへの恋に悩む友人のため、貿易商アントニオはユダヤ人高利貸しのシャイロックから借金をしてしまう。

    担保は自身の肉1ポンド。

    商船が難破し全財産を失ったアントニオに、シャイロックはあくまでも証文どおりでの返済を迫るのだが…。

    [ 目次 ]


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    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 舞台は中世イタリアのヴェネツィア共和国と架空の都市ベルモント。
    強欲な商売で知られるユダヤ人の金貸しシャイロックに対し、公平な商取引を目指す商人アントーニオ。友人の結婚を急きょ推し進めるため、アントーニオはシャイロックから自身の肉1ポンドを担保に金を借りるが、商船が難破し財産を失い返金できなくなる。アントーニオの友人達は彼を助けるためあらゆる手段を考えるが、シャイロックの正当な証文を前に打つ手がなくなる。そしてアントーニオの命運は法廷で判決が下されることとなる。

    それぞれの登場人物のキャラクターに個性があってすごく読みやすい。「ヴェニスの商人=アントーニオ」だけど、残念ながら一番印象に残らない。。それくらい他の人物が良い味出してます。

    さて、極悪非道の高利貸しとして登場するシャイロック。彼はユダヤ人という立場ゆえにアントーニオを始め様々な人物から心無い言葉を浴びせられ、心から愛した娘にも裏切られ・・・と、まさに踏んだり蹴ったり。自分本位な強引さと、アントーニオを憎み非道な形で命を奪おうとする面もあるが、決して根からの悪人としては見ることが出来なかった。
    喜劇として知られる作品だけれど立場を変えるとまさに悲劇。それぞれの登場人物が生き生きと描かれ、スピード感のある魅力的な作品だった。

    シェイクスピア初心者にお薦めできます。

  • この物語も抄訳本ではあるものの、子供時代に最初に出会いました。  当時の KiKi がしていた大きな勘違いが2つあって、その1つは「ヴェニスの商人」≒「高利貸しのシャイロック」と思い込んでいたんですよね。  そしてもう1つの大きな勘違い(というよりこれはシェイクスピア自身がそういう役回りを与えているという側面もある)が、シャイロックを文字通り「冷酷無比・極悪非道人」と思い込んでいたということがあげられます。

    そして大学生になってこの物語を全訳本で再読した際に初めて、最初の勘違い「ヴェニスの商人」≒「高利貸しのシャイロック」が間違いであったことに気が付きました。  タイトル・ロールはやたらと印象深いこの悪役ではなく、物語の中では自分の胸部の肉を担保に借金をしちゃったな~んていうショッキングな設定が与えられている割にはなぜか存在感の薄いアントニオだったんですよね~。

    物語のプロットとしてはこのアントニオ、あんなとんでもない契約をしたばっかりに、そして事業の失敗という運の悪さ(後、それが誤った情報であることが伝えられる)も手伝ってあわや・・・・という状況に陥るわけですが、逆に言えばそれだけの存在とも言えるわけであまりにも存在感のあるシャイロックと比較すると影が薄いとしか言いようがありません。  

    それに対して物語全体を動かしているのはシャイロックからアントニオが借りた金を又借りした格好になっているバッサーニオとその借金の原因とも言えるポーシャのコンビ、そして悪役のシャイロックであることは明白です。  にも関わらずこの物語、どうしてタイトルが「ヴェニスの商人」なんでしょうか??  実はコレ、KiKi の長年の疑問なんです(苦笑)

      

    冒頭でも書いたけれど、子供時代はものすご~く素直に抄訳本に書かれた文言そのままにシャイロックのことを「冷酷無比・極悪非道の金貸し」といとも簡単に思い込んでしまって、この物語を勧善懲悪の物語と認識していた KiKi。  まあこれには復讐のために証文をたてに人肉を要求するという醜悪さも大いに影響を与えていたわけですけど・・・・・。

    でも、大学生になってこの物語(全訳もの)を再読した際にはどちらかというとシャイロックの置かれている「ユダヤ人」という立場に妙に感情移入してしまいました。  「借金のかたに人肉を要求するのはさすがに行き過ぎではあるものの、アントニオだってかなり嫌なヤツじゃないか??(彼のユダヤ人迫害の様子はかなりエグイ)」 とか 「いやいやそれ以前にこのバッサーニオっていう男は何なんだ、外面を取り繕うために親友にあんな契約をさせてまでして借金するとは情けない。  そんな男に惚れるポーシャもポーシャだ!」とか感じちゃったのです。

    と同時にヨーロッパ社会における根深い「ユダヤ人迫害」の実態を知り、こういう物語(というより演劇)が娯楽の少なかった時代に一般大衆に与えていた心理的なインパクトがどんなものだったのか等々あれこれと考えてしまいました。  そういう意味ではシャイロックの語るセリフ

    「ユダヤ人には、目がないのか。  ユダヤ人には手がないのか。  胃も腸も、肝臓も腎臓もないというのか。  四肢五体も、感覚も、激情もないというのか。  同じ物を食い、同じ刃物で傷つき、同じ病いで苦しみ、同じ手当てで治り、夏は暑いと感じず、冬も寒さを覚えないとでもいうのか。  何もかにも、キリスト教徒とそっくり同じではないか。  針で突けば、わしらだって血が出るぞ。  くすぐられれば、笑いもする。  毒を盛られれば、死ぬではないか。  それならば、屈辱を加えられれば、どうして復讐をしないでいられる。  何であろうと、わしらがあんたらと同じであるなら、復讐することだって違いはない。  もし、ユダヤ人がキリスト教徒に辱めを加えたら、キリスト教徒は何をする?  右の頬を打たれたら、黙って左の頬を出したりするか?  いいや、復讐だ。  もし、キリスト教徒がユダヤ人に辱めを与えたら、ユダヤ人は何をする?  キリスト教徒の忍従の例に倣って、ただ黙って耐え忍ぶのか?  いいや、復讐だ。  悪いか?  だが、この悪いことを教えてくれたなぁ、ほかならぬ、あんたらじゃねえか。  わしはただ、その教えを実行するだけ。  見ておるがいい。  必ず、教えられた以上に、立派にやってのけてやるからな。」

    にはキリスト教の欺瞞を暴く、ある種の真実が含まれているにも関わらず、この物語を「喜劇」と位置付けた「時代の精神」みたいなものを感じずにはいられません。

    もちろんこの物語をホロコーストを経験したイマドキの感覚で読んじゃいけないと頭ではわかっている(つもり)んだけど、アントニオとその取り巻き連中の「キリスト教信者」であることをそのまま「正義」「差別する側」と位置付けているような傲慢さがどうにもこうにも気に入らないのも又事実です。  そして現代感覚丸出しの日本人の発言であることを百も承知の上で言うなら、最後の最後、あの大どんでん返しの裁判の後、「キリスト教への改宗」までもを余儀なくされちゃうというのはキリスト教の排他性の象徴としか感じられません。

    それにしてもシャイロックは「身から出た錆」と片付けるにはあまりにも気の毒だなぁ・・・・と。  財産没収(社会的な抹殺)、キリスト教徒への改宗(精神的な抹殺)、さらには最愛の娘の裏切り & キリスト教徒にもっていかれる・・・・・では命だけは助けてもらったにしろこの物語のあと、どうやって「誇り」とか「アイデンティティ」を保って生きていったんでしょうか??

    ま、てなことをつらつらと考えると尚更、この物語のタイトルが「ヴェニスの商人」であることがどうにもこうにも腑に落ちなくなってしまう KiKi なのです。

    それにしてもシャイロックの悲劇の元凶ともいうべきあの「証文(≒ 契約書)」ですけど、これってイマドキの感覚からすると「公序良俗に反する契約内容」以外のナニモノでもないよなぁ。  こんな証文を公証人が作ることができちゃうっていうのも、恐ろしい世界だなぁ・・・・と。  そういう意味ではいい時代に生まれたことを感謝しなくちゃいけないのかもしれません。  

    と同時に、法律っていうやつはどこかしらに抜け道があるのが当たり前なのかもしれないなぁ・・・・と。  

      

    ま、それはさておき、何年か前に KiKi はこんなハリウッド映画を観ました。  

    ヴェニスの商人
    ASIN: B000E5LIRK  監督:マイケル・ラドフォード  配役: アル・パチーノ、  ジェレミー・アイアンズ、 ジョセフ・ファインズ、 リン・コリンズ、 ズレイカ・ロビンソン

      
    1596年、貿易の中枢として栄える運河の街ヴェニス。  無一文の情熱家バッサーニオ(ジョセフ・ファインズ)は愛する人ポーシャ(リン・コリンズ)に求婚するため、友人アントーニオ(ジェレミー・アイアンズ)に資金援助を頼み込む。  手持ちがない彼は宿敵の高利貸シャイロック(アル・パチーノ)から自らの身体の肉1ポンドとひきかえに借金をするが、全財産を載せた船が難破し期日までに返済ができなくなり、裁判にかけられることに。  シャイロックは借金返済の違約金代わりとして証文通りアントーニオの心臓に近い肉1ポンドを要求するのだが・・・・・  (DVDケースより転載)


    この映画でもやっぱり光っていたのはアル・パチーノでした。  個人的にはジェレミー・アイアンズはか☆な☆り 好きな役者さんのはずなんだけど、ほとんど目が向かなかったなぁ・・・・・。

  • 肉1ポンド、血を流さずに切り分けられる方法があったら教えてください。

  • 2.5

  • 産経新聞にイスラエルガザ地区紛争の解説記事で、キリスト教徒のユダヤ人に対する見方がよく現れている文学という事で紹介されていたのをきっかけに読んでみた。

    描かれているのは、高利貸しのユダヤ人、シャイロック。キリスト教徒から悪どい金貸しとして疎ましく邪険に扱われる毎日を送っていた。ベニスの実業家のアントニオは友人の旅の資金の借金の保証人となり、払えなかった際の担保として自分の肉1ポンド差し出す事を契約書に記載する。事業に失敗したアントニオは借金を払うことができなくなり、シャイロックは積年の恨みをここで晴らすべく、契約書の履行、すなわちアントニオの死を執拗に求める事となる。大公や元老も慈悲を求めるが、日頃の恨みをここで晴らすために契約書の厳格な履行を求める裁判を起こす。

    ここで語られるのは、契約という法律の厳格な履行による法治と慈悲との対比であり、ビクトル・ユーゴーのレ・ミゼラブルで問うている正義とは何かという命題と同様の葛藤である。結局はその試みは、もう一人の重要人物である、ベルモントの大富豪の美しい娘、ポーシャのやや詭弁とも思える機知によって打ち砕かれ、更には財産を没収された上にキリスト教徒への改宗まで命じられるという、この物語での最大の敗者となってしまう。悪人として描かれるユダヤ人が、キリスト教徒による正義の鉄槌で裁かれるのである。

    物語の一面においてユダヤ人のシャルロックが無慈悲な復讐に突き進む姿が描かれている。復讐劇は日本や中国の文学では美談として描かれる事が多いが、欧米では復讐は決して称賛されるものではないという価値観も読み取れる。

    何百年も読みつがれる物語であるだけの深い話だった。次は演劇で見てみたいと思わせるストーリーである。

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著者プロフィール

イングランドの劇作家、詩人であり、イギリス・ルネサンス演劇を代表する人物。卓越した人間観察眼からなる内面の心理描写により、最も優れた英文学の作家とも言われている。また彼ののこした膨大な著作は、初期近代英語の実態を知る上での貴重な言語学的資料ともなっている。
出生地はストラトフォード・アポン・エイヴォンで、1585年前後にロンドンに進出し、1592年には新進の劇作家として活躍した。1612年ごろに引退するまでの約20年間に、四大悲劇「ハムレット」、「マクベス」、「オセロ」、「リア王」をはじめ、「ロミオとジュリエット」、「ヴェニスの商人」、「夏の夜の夢」、「ジュリアス・シーザー」など多くの傑作を残した。「ヴィーナスとアドーニス」のような物語詩もあり、特に「ソネット集」は今日でも最高の詩編の一つと見なされている。

「2016年 『マクベス MACBETH』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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