変身,掟の前で 他2編 (光文社古典新訳文庫 Aカ 1-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (180ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334751364

作品紹介・あらすじ

家族の物語を虫の視点で描いた「変身」。もっともカフカ的な「掟の前で」。カフカがひと晩で書きあげ、カフカがカフカになった「判決」。そしてサルが「アカデミーで報告する」。カフカの傑作4編を、もっとも新しい"史的批判版"にもとづいた翻訳で贈る。

感想・レビュー・書評

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  • 変身 読了。
    サラリーマンのザムザが虫になった。
    仕事、家族、
    虫になっても心は人間。
    虫になっても電車に遅れることを考えている。
    妹との関係、家庭の話。
    虫になったグレゴリーのことをだれも疑わない。

    短い間にぎゅっとつまった話。

  • 「変身」は訳を変えながら3回目だけれど、一番面白く読めた。はじめて読んだときは暗くてじめじめした話に感じたのに、こんなにコミカルな話だったとはびっくり。特に、グレーゴルが虫の身体を使いこなせるようになってから、部屋の中を縦横無尽に這いまわって、その跡がねとねとになるところが好き。吉田戦車ぽくないですか。吉田戦車がカフカぽいのか。

    再読は読書会で「判決」を読む必要があったのがきっかけ。「判決」もそうなのだけれど、父親に対する恐怖、他者にとって自分は煩わしい存在ではないのかという恐怖を、奇妙なユーモアにくるんで書いている点が共通している。そういう主人公を、可哀想なだけではなくて、鈍感なウザキャラに設定しているところが乾いていてうまいなあと思う。

    ところで、丘沢さんが訳者あとがきで白水社版に上品に文句をつけていてにやにやした。改行の数があまりに違うのはたしかにいただけない。でもどの訳が一番原文の空気を伝えているのかは簡単に言えないなとも感じていて、それは読書会で出てきた読み方がかなりばらけていたから。訳者の人たちは(おおむね)みんな、自分のカフカを真摯に日本語で再現しようとしていたんだろうなと思う。カフカおもしろいよカフカ。

  • カフカさんというとても有名な人のいちばん有名な小説ですね。
    カフカさんとかカミュさんとか、この辺の方々は、読むべき高校生~大学生時代になんとなく敬遠してしまって読んでいませんでした。
    最近なんとなく、こういうものを読んでみたいなあ、という気持ちが出てきました。
    光文社古典新訳文庫さん、という存在も大きいです。
    とにかく、「無駄に日本語がムツカシクなっていない」という信頼を持てるだけでも嬉しいですね。パチパチ。

    カフカさんってチェコスロバキアの人だったんですね。民族的にはユダヤ人さん。ドイツで勉強したり働いたりしてたみたいですが。
    プラハ生まれだそうです。1883-1924。40歳で亡くなっています。
    アドルフ・ヒットラーさんより、6歳年上になります。
    ちなみに第一次世界大戦が1914-1918ですね。
    1923年が、ヒットラーさんが政権を握ろうとクーデターを起こして失敗したミュンヘン一揆。
    カフカさんが死んだ1924年は、ヒットラーさんは獄中で(と言っても特別待遇だったそうですが)「我が闘争」を口述筆記中だったそうですね。

    裁判所の下っ端。保険会社の外交、つまりセールスマン。労働者保険組合での事務、つまり団体職員。
    そういった仕事をしながらの、兼業作家さんだったそうです。
    つまり、生前はさほど有名ではなかった。っていうことです。

    死んでから、マックス・ブロートという名前のお友達が、遺稿を整理して、未発表だった長編を出版。
    おまけに、ブロートさんなりにラストを書いちゃったりあちこち変更したりしたそうです。
    そして、ユダヤ教なりキリスト教との絡みの作家であるという視点から営業したそうです。
    そしたら、売れちゃったそうですね。1930年代くらいから、ドイツやフランスで名声が高まったそうです。
    ちなみに1933年にはヒットラー内閣が誕生しています。
    そう考えると、1930年代っていうのも尽きせぬ興味ですね。

    1970年代くらいになって、
    「俺たちが読んでるカフカは、どうやらブロートが手を加えちゃってるものらしいぞ」
    ということが研究界でも分かってきたそうです。なんで、最近はやっと、直筆原稿に基づく本が出て、その日本語訳も出てきてるそう。
    この光文社古典新訳文庫版は、そういった直筆版だそうですね。

    この文庫本には「判決」「変身」「アカデミーで報告する」「掟の前で」の四編が入ってます。
    まあ、圧巻なのは「変身」ですね。
    グレーゴル・ザムザ。しがないセールスマン。朝おきたら虫になってますねえ。すごいですねえ。強烈です。
    大まかに言うと、家族が困ってしまって。泣き暮らして。徐々に阻害されて。という話なんですね。
    解説にも書いてますけど、どうにかこうにか「隠された本意」を探して解釈したくなる小説ですね。
    でも、そんなことよりとにかく面白い。オモシロイ。ちょっと怖いし気持ち悪いですけど。
    でも怖いのは、虫だからじゃないんだな、って思いました。それに反応するヒトの心が怖いんですねえ。

    面白いのは、カフカさんは20代の頃に保険会社に入ってセールスマンをやってます。
    これが、どうやら今で言うところのブラック企業。ノルマとかきつくて、心が風邪気味になってしまう。
    これはアカン、ということで転職してるんですね。
    だからってワケでもないんですけど、この「変身」ものすごく現代的だなあ、と。
    僕はこれは、「介護の問題」でもあるなあ、とか。「ゴミ屋敷」とか「ひきこもり」でもあるなあ、とか。
    いろいろな意味でコワク面白かったです。
    手塚治虫さんの短編で「ザムザ復活」というタイトルの作品があったはずで、タイトルまんまなんですけど、これも面白かった。
    というか、手塚治虫さんの何割かは確実にカフカだなあ、と。
    たしか、「ザムザ復活」では最後、虫が羽化して飛び去るんですよね。自由に向かって。いやあ、手塚さんすごい。

    という訳で短編だし、すぐ読めます。
    で、「判決」「アカデミーで報告する」も面白かったです。
    判決は、父と子がいて、少なくともどっちかは、健常者的に言うとイッチャッテルんですけど、どっちがどうなのか分からない掌編。
    で、「アカデミーで報告する」は、おサルさんです。おサルさんが、俺はこうやってニンゲンの知恵を得たぜ、ということをアカデミーで報告します。
    この2篇もいいけど、ちょっと僕的には、消化不良。

    で、実は「掟の前で」。これぁ、すごかったです。おもしれえ・・・という感じです。文庫本で4ページくらいなんですけど。
    寓話っていうのか。
    掟という門の前で、門番に通してくれ、と、請う。
    「だーめ」と言われる。
    強行突破したら、まずいよなあ、と。できそうだけど。
    遠慮する。ひたすらお願いし続け、お金を送り、それは取られるんだけど、でも断られ続け、野垂れ死ぬ人の話なんですけどね。
    この掟という門は、考えようによっては、「人生」そのものなのかなあ、と。
    誰も来ないなあ、掟に従わなきゃなあ、とうじうじしてたら、もう、のたれ死に。
    その寸前に「誰もこの門に来ないけど、なぜ?」「だってお前専用の門だもん」。
    うーん なんかすごいぞ。面白かったです。

    カフカさん、ちょっと怖いけど面白いです。翻訳も、素直に読めます。
    少なくとも、
    「お前らが読んでる本はムツカシイ哲学的な本なんだから、スラスラ読めるなんて思うなよ」
    的な、プライドと意地で武装された日本語ではありません(笑)。

    光文社古典新訳文庫さんだったら、また読んでみたいなあ、と思いました。


    ※ちなみに、多分この本で、2013年、コミックを除いて読了100冊目。
     1冊1冊の内容とか厚さによるから、さしたる意味はないんですが、一応ひとつの目安だったんで、正直ちょっとウレシかったりします(笑)

  • グレーゴルが起きたら虫になってた。
    家族とも言葉は通じず、話を聞く耳がある。

    返信したことに気づいて世話する妹。
    受け入れきれていないが、気にかける母
    強気の父。
    グレーゴルの変身により、家族も成長にも似た変身をする。
    最後、グレーゴルは死ぬが、
    虫に変身した時点で諦めは着いていたし、死に向かうだけだったのかもしれない。

    虫に変身する事は何を意味しているのか
    みたいなそんな深い話ではないと思う。
    ただ、家族が変身したらそう崩壊していくよなっていう
    シュールな物語やと思う。

  • チェコに行くことになった!ので手に取った、はじめてのカフカ。

    どうしてこんな発想ができるのかしら、と思う。
    「アカデミーで報告する」なんて現代のSFのよう。猿の惑星を思い出す。
    「変身」では、次第に虫としての行動を取り始める主人公、当初は虫となった兄を気遣うものの、最終的には一緒には暮らしていけないと明言する妹など、登場人物の心境の移り変わりが、悲劇的でも批判的でもなく、当然のことのように描かれる。
    そしてところどころのワンセンテンスの中にさりげなくユーモアが交えられる。

    カフカは取っ付きにくい印象があるものの、楽しく読めたので、原文からかなり意訳されてるのかなあと思っていたところ、役者あとがきでそうではないこともわかりなんだかうれしかった。
    むしろあとがきも本編と同じくらい面白かった。
    丘沢静也さんの他の訳書も読んでみようと思わされました。

  • 再読。家族の悲哀というか面白さがある。

  • 初カフカ
    独特な言い回し、繰り返しが多くて面白かった。
    「答えが質問に衝突したのだ」とか
    読みやすいが、一瞬で解釈できる文が多いかというと実はそうではない。
    『掟の前で』の寓話感


  • 見た目がまったく大きく変わったグレーゴルと、それに劣らず変わっていく家族の関係。

    淡々とした文体なのに心にくるものがあった。

  • ここに入っている全ての話が面白かった

  • 好きな曲がこの作品をテーマにしたものだったので手にとってみた。
    何にせよ私たちは与えられたものを受け止めて生きていくしかない。顔にしろ声にしろ。体が虫になることですらも。
    そんなことを考えると生きるって大変だなぁと薄い感想しか出てこなかったが、これでいいのかなとも思う。
    何かに変身してしまう作品はいくつかあるけれど、虎にも虫にも私はなりたくないと強く思った。

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著者プロフィール

ツイッターやインスタグラムで恋に悩む女性にむけて優しく背中を押す言葉を投稿している。著書に『だから、そばにいて』(ワニブックス)、『好きでいて』(セブン&アイ出版)、『何度も諦めようと思ったけど、やっぱり好きなんだ』(KADOKAWA)などがある。ツイッター @kafuka_monchi インスタグラム @kafuka022

「2020年 『だから、そばにいて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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