野性の呼び声 (光文社古典新訳文庫 Aロ 2-1)

  • 光文社
3.86
  • (29)
  • (47)
  • (34)
  • (4)
  • (1)
本棚登録 : 523
感想 : 46
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334751388

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 素晴らしい作品。百年前に書かれた作品だが古さは感じられない。それはきっとこの小説のテーマが不変的なものだから。大自然の厳しさ。弱肉強食弱。敬慕。愛情。野生への回帰。なんの気をてらわずにとてもシンプルな事が書かれている。だけど現代の小説にこのシンプルを恥じらいもせず真っ直ぐに書くだけの素直さがあるだろうか。

  • 翻訳物であることが影響しているのか、あるいは原文のテイスト自体がそうなのか、壮大な物語である割には、あまりに淡々と進行していく感じがして、特にジョン・ソーントンと絆を深めていくくだりなんかはもっと紙幅を使って盛り上げに掛かればいいのに…などと思ってしまうが、執筆から120年近く経った今も決して色褪せぬどころか、輝きを増しているかのような創作世界の素晴らしさと凄みは充分過ぎる。
    動物好きであれば、だからこそ読んでいるのがしんどくなる苦境の描写もあるし、リアルな犬の能力を遥かに超えるブッ飛び展開もあったりするが、やはり必読の名著だろう。
    時折、シートンの「狼王ロボ」や高橋よしひろ氏の「銀牙」を思い出してしまった。

    都市部で暮らす現代の人間ですら、自然の中に一定期間以上身を置いて、一個の動物として過ごせば感覚は鋭敏になり、世代を超越して保存されているであろう遠い記憶が揺り起こされる気配を知るのだから、バックに自ずと共感し、憧憬を抱くのは道理に違いない。

  • 昔、読んだことがあったなぁ、と主人公の名前を見て気づいた。大型犬のバックが主人公。うろ覚えだったため、いつ野生に戻って大暴れするのかハラハラしながら読み進めた。少し勘違いしていた。大暴れは大好きなソーントンのためだった。犬と人間の絆が、変に擬人化せずに描かれていて、我が家に犬がいた頃の感情などを思い出した。
    北の国の厳しく美しい自然がすてき。また、ゴールドラッシュや犬橇、ネイティブ・アメリカンなどが普通に出てくると、こういう時代があったんだなぁ、と興味深く読んだ。

  • 過酷なアラスカの自然、そこで覚醒していくバックの「野生」。大変にマッチョで、なんだかヤクザものの漫画みたいな趣もあるといえばあるのだが、それが面白いんだなあ、と発見。

  • ジャックロンドンはすでに「白い牙」「火を熾す」(短編集)と読んできた。

    自然界の様子をリアルに、力強く簡潔に描かれているところは流石で、特に極北の冷たい雰囲気がよく伝わった。

    ジャックロンドンは、あえてなのかもしれないが、淡々と物語を進めるのでスラスラ読めるがここがイチオシといった名場面を探すのは難しいかもしれない。

  • 英語学習者向けとして読んだ物語の日本語訳版に触れてみた。この訳者の用いる日本語が最適なのか,原文の力強さがそのまま反映されているのかはよくわからないが,細かなシーンにぴったりの言葉の並びに感銘を受けた。野性味溢れた荒々しさとともに共存する美しさが純粋に表現されているのに加え,主人公の犬が擬人化されすぎていない。人間のような感性を動物に当てはめるのではなく,動物が持つ本能的な「悟り」が描かれており,主人公が動物のわりには,ただの動物好きが書いたり読んだりする小説ではないところが素晴らしいと思う。

    【ここからネタバレ注意】
    それに加えて,この物語は人間に対する危惧の意味も含まれていると感じる。動物をモノ扱いし金儲けに使う人々,人間の純粋な力では勝てない動物に対して文明が生み出した道具で制圧を加える人々… 物語の後半に登場する,愛犬に対する愛情に満ちた飼い主は,バックの以前の飼い主たちと相反していることによって,人間の愚かさを強調する役割を担っている。
    また,著者の経歴をたどってみると,彼の経験が少なからずこの物語に含まれているのだろうと読み取ることができる。自らの心に疼いた好奇心や野心とともに旅に出たが,帰宅すると大切なものを失っていた,というのは深く心に刺さるし考えさせられる。

    ひとつ,欲を言うならば,訳者のあとがきにあった「差別的な表現に対する配慮」について。私個人は,原文に人種差別や男性中心思想を含んでいたとしても,そのままに表現して欲しかったと思う。この物語が描かれた時代を克明に示す証拠になりうるだろうから。ますます原文を読んでみたくなった。

  • 100年以上前の作品ながら、ストーリー展開や戦いの描写に引き込まれて、登場人物(犬物)も魅力的で面白かった
    最強的わんこの物語
    ジャック・ロンドンのほかの書物も読みたいと思った

  • 伝説の狼王バックの数奇な運命を辿る小説の旅。
    余計なエピソードや描写が多く、またバックがあまりにもスーパー犬なのにはちょっと鼻白むところもあったが、ここまで犬視点で物語を構築した手腕はさすがです。

  • 【本の内容】
    ゴールドラッシュに沸くカナダ・アラスカ国境地帯。

    ここでは犬橇が開拓者の唯一の通信手段だった。

    大型犬バックは、数奇な運命のもと、この地で橇犬となる。

    大雪原を駆け抜け、力が支配する世界で闘い、生きのびていくうちに、やがてその血に眠っていたものが目覚めはじめるのだった。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    ゴールドラッシュ時代のアメリカで活躍するそり犬バックに焦点をあてた物語です。

    『もののけ姫』に出てきたあの白くて大きい犬を思い浮かべていただくとわかりやすいかもしれません。

    原書は1903年に出版されました。

    主犬公(?)バックの目から見た人間の愚かさや優しさ、当時の社会がうかがえる歴史小説としても読めます。

    1905年に発表された『吾輩は猫である』と比較しながら読むのも面白いかもしれません。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 児童文学のときには読む機会はなかったですが、
    大人になってから読むことができました。

    犬という生き物が使役として有用、という時代に
    「誘拐」されて使役されることとなったバックという犬。
    彼は、賢い頭脳と、勇敢な心を持っていました。

    持ち主が変わり、数々の苦難を味わうバック。
    時に、もう動けなくなるところまで
    いくときもあります。

    だけれども、彼はその精神で苦難を
    乗り越えます。
    そして、眠れる野性は、
    最後の主人の死によって解放されます。

    野性ってなんだろう。

全46件中 11 - 20件を表示

著者プロフィール

ジャック・ロンドン(Jack London):1876年、サンフランシスコ生まれ。1916年没。工場労働者、船員、ホーボーなどを経て、1903年に『野生の呼び声』で一躍人気作家に。「短篇の名手」として知られ、小説やルポルタージュなど多くの作品を残した。邦訳に『白い牙』『どん底の人びと』『マーティン・イーデン』『火を熾す』『犬物語』などがある。

「2024年 『ザ・ロード アメリカ放浪記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ジャック・ロンドンの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×