- Amazon.co.jp ・本 (514ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334751609
作品紹介・あらすじ
官僚としての体面と世間体を重んじる夫の冷酷な態度に苦しみながらも、アンナはヴロンスキーとの破滅的な愛に身を投じていく。愛するゆえに苦しみ悩んだ結論は…。一方、新しい農業経営の理想に燃えるリョーヴィンは、失意から立ち直ったキティと結婚生活を始めるのだった。
感想・レビュー・書評
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トルストイという作家が怖くなっている。
どうしてここまで人間心理がわかっているのか。
リョーヴィンの、キティと結婚したいのにそれが叶わないがゆえに、またそれを忘れたいがゆえに、自然や労働に精を出すところ。
ヴロンスキーの、アンナに感情をもっていかれているにもかかわらず、功名心を大事にしたいという心情。
アンナの、ヴロンスキーを愛していはいるが、息子を絶対的に尊重している、というより、息子をみずからの存在証明として利用しようとしている軽薄さ。
カレーニン氏の、きわめて有能ではあるが、妻アンナを持てあまし、実はアンナなどどうでもいいのだが、みずからの社会的体面のためには、ある解決を求めなければならない、その、どことなく億劫そうな態度。
鳥肌を立てながら読んでいる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
とうとうヴロンスキーとの関係をカレーニンに打ち明けたアンナ。第2巻は離婚をめぐる双方の心の葛藤がえげつないほど緻密に描写されている。
カレーニンがアンナを許せないという気持ち、いや許せないどころか不幸にさせたい、不幸のどん底に落としてやりたいと憎悪するのは当然の感情だよね。離婚してあげたら彼女はヴロンスキーとくっつく。だったら絶対に離婚しない。歪な夫婦関係だけど、いやそれはもう夫婦と呼べる関係ではないね。
アンナもアンナで、カレーニンとは元々利害関係のみで結婚したようなものだったのを、ヴロンスキーと出会って愛してしまって一緒になりたい、でも息子のセリョージャは手放したくない。自分がどうしたいのか分からない、何も分からない、と身体ごと真っ二つに分裂してしまいそうな苦しみの渦中にいる。愛している、愛していない、そのことだけは明確であるはずなのに、それでも分からなくなってしまうんだ。不倫して間男の子を孕んだアンナは断じて被害者ではないけれど、「分からない」という言葉は紛れもなく悲鳴だった。
そして生死をさまよう難産、からのカレーニンの赦し、それを知ったヴロンスキーの絶望&別れ。しかし復縁そして出奔。いやとんでもないよこの人たち……。アンナにとっての幸せってなんなんだろう。
怒涛の展開を見せるアンナたちに比べて、リョーヴィンとキティのなんと可愛らしいことだろう。一度はリョーヴィンからの告白をすげなく断ったキティだったけれど、ドイツでの療養を経て彼のもつ魅力に気づくことができた。「ぼくには、何ひとつ、忘れることも、許すことも、ありません。ぼくは、ずっと、あなたが、好きでした」!!照れまくる二人にもうこっちがきゅんきゅんしちゃって赤面ものだよ。あーーリョーヴィンが喜んでて笑顔でいて幸せを手にしてくれたことがシンプルに嬉しい。 -
第3部と第4部を収録。農業経営の理想に燃えるリョーヴィンと、妻の不貞行為に苦悩するカレーニンを描く。
第3部はほぼリョーヴィン編。農業の労働の描写は新鮮。いっぽうかなりのページ数が割かれる経営の話は1861年の農奴解放という背景からくる難しい状況があり、巻末の読書ガイドに頼らないとわかりづらい。しかしここで、欠点も多いが魅力的なリョーヴィンという人物像が明確になり、第4部に続く彼の新しい人生展開の伏線ともなるので、軽く読み飛ばさないほうがいいだろう。
第4部では妻に裏切られた夫カレーニンの、ある意味では当然とも思える反応に男性としては少し共感。さらに土壇場で、『戦争と平和』のアンドレイにも見られた、信仰と許しという至福の力による霊的な成長に感動。しかし、当時のロシア社会における「離婚」の難しさが事態を複雑にしており、ありえない展開に「これはひどい」と思わず声に出して言ってしまったところで2巻終了。どうなんねんこれ……。 -
髭を蓄えた世捨て人のようなトルストイがここまで繊細で機微ある愛を描けることに感嘆。特に13章のキティとリョーヴィンとの愛が通じ合う瞬間は、これまでのリョーヴィンの葛藤や苦悩や自尊心を深く描いただけに、何とも言えない感動を覚える。一方で寛容が破滅を呼び崩壊が自由をもたらすアンナとカレーニンのさまは面子を重んじる帝政ロシアの貴族社会の世相を映し出しているように感じる。
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どんな方にも、死ぬまでに一度は読んでいただきたい小説。
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官僚的な夫の態度に苦悩しつつ、アンナはヴロンスキーとの愛にますます傾倒していく・・・。
むむむ?
てっきり、ヴロンスキーとの恋に悩みつつ、高潔かつ清らかさを失わない人妻が描かれるものと思っていた私としては、この巻でのアンナの描かれ方が意外であった。
アンナの心理がさっぱりわからないのである。彼女の場面場面の恐怖や戸惑い、自分の立場に悩む姿は非常に丁寧に描写してあって、そのときどきでは共感するのだが、いざ行動というときになると、なぜそうなったのかさっぱりわからない。臨場感がすごくあるのに、説明に納得いかないのである。
なので、なぜそこまで彼女がムキになって、果てはあてつけとも取れる夫への怒りへと走るのか、読んでいてこちらが戸惑ってしまう。
あまりにアンナの行動が唐突なので、彼女よりもむしろ彼女がなじる夫のカレーニンのほうに同情してしまう始末だ。
しかし文章は相変わらず読みやすくて素晴らしい。
アンナとヴロンスキーが、自分たちの状況に苦悩しながらも、その状況がにっちもさっちもいかないために、何か突然奇跡のようなことが起こって、自分たちをこの状況から解放してくれるのではないか・・・なんて考えているところなどは、読んでいて「うわー、わかる」と頷いていた。
(なのにその心理がアンナの行動に繋がらない気がするから、変な気がしてしまうのだけど・・・)。
アンナがこのまま行くとなると、ちょっと苦しいなぁ、と思いつつ読了。
それにしても、リョーヴィンのプロポーズは可愛すぎて、読んでいるとき思わず顔が「ふふふ」と笑ってしまいましたよ。。 -
23.2.14〜21
リョーヴィンとキティ、最高。ラブ。黒板のゲームみたいところ、読みながら泣きそうになった。
shut the fuck up when you hear love talkin'だと思った。それと、リョーヴィンの家のばあや。
カレーニンの俗物性。 -
リョーヴィンの農業経営の話は正直理解できているかどうか自分でも怪しい。農業について興味がない人にはちょっと辛いかも。ただ、当時のロシア農民の労働の様子が爽やかに、生き生きと描かれていて読み心地が良かった。キティにプロポーズのOKをもらったリョーヴィンの浮かれ具合が微笑ましい。