アンナ・カレ-ニナ (2) (光文社古典新訳文庫 Aト 3-3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (514ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334751609

作品紹介・あらすじ

官僚としての体面と世間体を重んじる夫の冷酷な態度に苦しみながらも、アンナはヴロンスキーとの破滅的な愛に身を投じていく。愛するゆえに苦しみ悩んだ結論は…。一方、新しい農業経営の理想に燃えるリョーヴィンは、失意から立ち直ったキティと結婚生活を始めるのだった。

感想・レビュー・書評

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  • トルストイという作家が怖くなっている。
    どうしてここまで人間心理がわかっているのか。

    リョーヴィンの、キティと結婚したいのにそれが叶わないがゆえに、またそれを忘れたいがゆえに、自然や労働に精を出すところ。

    ヴロンスキーの、アンナに感情をもっていかれているにもかかわらず、功名心を大事にしたいという心情。

    アンナの、ヴロンスキーを愛していはいるが、息子を絶対的に尊重している、というより、息子をみずからの存在証明として利用しようとしている軽薄さ。

    カレーニン氏の、きわめて有能ではあるが、妻アンナを持てあまし、実はアンナなどどうでもいいのだが、みずからの社会的体面のためには、ある解決を求めなければならない、その、どことなく億劫そうな態度。

    鳥肌を立てながら読んでいる。

  • 3部が300ページ
    4部が200ページほどなんですが、
    3部は…
    リョービンの農業への思いと、草刈り、
    カレーニンの政治観ばかりで、まあちょっと大変だけれども、
    これがあるがゆえの、後半4部のおもしろさ、エンタメぶりと言ったら!200ページの中にてんこ盛りのエピソードたち。

    以下ネタバレ

    ・アンナ、あれほど約束したのに、家にブロンスキーを呼びつけ、カレーニンと鉢合わせ。
    ・カレーニン、いよいよ弁護士の所へ。
    ・カレーニン、早口でまくしたて、舌がもつれて「憔悴」を「そう……ひょう……そうすい」となってしまう
    ・ロシア一の伊達男(今は自分の口利きで、ボリショイバレエに入団させてやった、可愛いバレリーナちゃんにお熱)オブロンスキーのホームパーティーにおいて伏線の回収のごとく集められるキャラクターたち。え、キティちゃん来てたの?
    ・リョービンのキティ崇拝「これからはけっして人のことを悪く思わないように心がけますから!」
    ・眠らないリョービンと、彼の黒日記?
    ・さて、ブロンスキーはリストカットさながらのレボルバー自殺未遂。
    ・オブロンスキー、カレーニンを説き伏せたつもり?うまくやった。この出来事を謎掛けにしてまたパーティーで披露せねば✨
    ・ヴロンスキー、友人の計らいでタシケントへの勤務を用意されたのに、アンナに一目あっただけで、退役してしまう。

    など。
    狂乱の日々でした。
    私たちはいつになったらアンナの魅力に気づくことができるのかしら

  • とうとうヴロンスキーとの関係をカレーニンに打ち明けたアンナ。第2巻は離婚をめぐる双方の心の葛藤がえげつないほど緻密に描写されている。
    カレーニンがアンナを許せないという気持ち、いや許せないどころか不幸にさせたい、不幸のどん底に落としてやりたいと憎悪するのは当然の感情だよね。離婚してあげたら彼女はヴロンスキーとくっつく。だったら絶対に離婚しない。歪な夫婦関係だけど、いやそれはもう夫婦と呼べる関係ではないね。
    アンナもアンナで、カレーニンとは元々利害関係のみで結婚したようなものだったのを、ヴロンスキーと出会って愛してしまって一緒になりたい、でも息子のセリョージャは手放したくない。自分がどうしたいのか分からない、何も分からない、と身体ごと真っ二つに分裂してしまいそうな苦しみの渦中にいる。愛している、愛していない、そのことだけは明確であるはずなのに、それでも分からなくなってしまうんだ。不倫して間男の子を孕んだアンナは断じて被害者ではないけれど、「分からない」という言葉は紛れもなく悲鳴だった。
    そして生死をさまよう難産、からのカレーニンの赦し、それを知ったヴロンスキーの絶望&別れ。しかし復縁そして出奔。いやとんでもないよこの人たち……。アンナにとっての幸せってなんなんだろう。

    怒涛の展開を見せるアンナたちに比べて、リョーヴィンとキティのなんと可愛らしいことだろう。一度はリョーヴィンからの告白をすげなく断ったキティだったけれど、ドイツでの療養を経て彼のもつ魅力に気づくことができた。「ぼくには、何ひとつ、忘れることも、許すことも、ありません。ぼくは、ずっと、あなたが、好きでした」!!照れまくる二人にもうこっちがきゅんきゅんしちゃって赤面ものだよ。あーーリョーヴィンが喜んでて笑顔でいて幸せを手にしてくれたことがシンプルに嬉しい。

  • 第3部と第4部を収録。農業経営の理想に燃えるリョーヴィンと、妻の不貞行為に苦悩するカレーニンを描く。

    第3部はほぼリョーヴィン編。農業の労働の描写は新鮮。いっぽうかなりのページ数が割かれる経営の話は1861年の農奴解放という背景からくる難しい状況があり、巻末の読書ガイドに頼らないとわかりづらい。しかしここで、欠点も多いが魅力的なリョーヴィンという人物像が明確になり、第4部に続く彼の新しい人生展開の伏線ともなるので、軽く読み飛ばさないほうがいいだろう。

    第4部では妻に裏切られた夫カレーニンの、ある意味では当然とも思える反応に男性としては少し共感。さらに土壇場で、『戦争と平和』のアンドレイにも見られた、信仰と許しという至福の力による霊的な成長に感動。しかし、当時のロシア社会における「離婚」の難しさが事態を複雑にしており、ありえない展開に「これはひどい」と思わず声に出して言ってしまったところで2巻終了。どうなんねんこれ……。

  • 髭を蓄えた世捨て人のようなトルストイがここまで繊細で機微ある愛を描けることに感嘆。特に13章のキティとリョーヴィンとの愛が通じ合う瞬間は、これまでのリョーヴィンの葛藤や苦悩や自尊心を深く描いただけに、何とも言えない感動を覚える。一方で寛容が破滅を呼び崩壊が自由をもたらすアンナとカレーニンのさまは面子を重んじる帝政ロシアの貴族社会の世相を映し出しているように感じる。

  • どんな方にも、死ぬまでに一度は読んでいただきたい小説。

  • 言わずと知れた古典的名作、
    ロシアの貴族という遠く離れた世界の話でありながら、現代にも普遍的な共感を生む、名作だと実感します。
    2冊目で語られるのは、アンナとかレーニンの夫婦を中心にして描かれる不貞を抱えた夫婦と不自由な婚姻制度、そして労働者であるリョービンの仕事への真摯かつ現実的な悩みと喜び。
    登場人物が全て現実的であり、遠い世界の話と思えない。それは感情描写の巧みさにも起因するのでしょう。
    リョービンとアンナはこれまで違う軸で話が進められてきた感じでしたが、本冊の後半にきてお互いに急展開を迎える。決して読みやすい本ではないのですが、続きが気になって仕方ないです。

  • 官僚的な夫の態度に苦悩しつつ、アンナはヴロンスキーとの愛にますます傾倒していく・・・。

    むむむ?
    てっきり、ヴロンスキーとの恋に悩みつつ、高潔かつ清らかさを失わない人妻が描かれるものと思っていた私としては、この巻でのアンナの描かれ方が意外であった。
    アンナの心理がさっぱりわからないのである。彼女の場面場面の恐怖や戸惑い、自分の立場に悩む姿は非常に丁寧に描写してあって、そのときどきでは共感するのだが、いざ行動というときになると、なぜそうなったのかさっぱりわからない。臨場感がすごくあるのに、説明に納得いかないのである。

    なので、なぜそこまで彼女がムキになって、果てはあてつけとも取れる夫への怒りへと走るのか、読んでいてこちらが戸惑ってしまう。
    あまりにアンナの行動が唐突なので、彼女よりもむしろ彼女がなじる夫のカレーニンのほうに同情してしまう始末だ。

    しかし文章は相変わらず読みやすくて素晴らしい。
    アンナとヴロンスキーが、自分たちの状況に苦悩しながらも、その状況がにっちもさっちもいかないために、何か突然奇跡のようなことが起こって、自分たちをこの状況から解放してくれるのではないか・・・なんて考えているところなどは、読んでいて「うわー、わかる」と頷いていた。
    (なのにその心理がアンナの行動に繋がらない気がするから、変な気がしてしまうのだけど・・・)。

    アンナがこのまま行くとなると、ちょっと苦しいなぁ、と思いつつ読了。
    それにしても、リョーヴィンのプロポーズは可愛すぎて、読んでいるとき思わず顔が「ふふふ」と笑ってしまいましたよ。。

  • 23.2.14〜21

    リョーヴィンとキティ、最高。ラブ。黒板のゲームみたいところ、読みながら泣きそうになった。
    shut the fuck up when you hear love talkin'だと思った。それと、リョーヴィンの家のばあや。
    カレーニンの俗物性。

  • リョーヴィンの農業経営の話は正直理解できているかどうか自分でも怪しい。農業について興味がない人にはちょっと辛いかも。ただ、当時のロシア農民の労働の様子が爽やかに、生き生きと描かれていて読み心地が良かった。キティにプロポーズのOKをもらったリョーヴィンの浮かれ具合が微笑ましい。

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