- Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334751647
作品紹介・あらすじ
「ヘエエエイ、マクベース!」荒野で三人の魔女から呼びかけられた闘将マクベス。やがては王になるとの予言どおり、ひたすら血塗られた裏切りと栄達への道を突き進む。王の座を手中におさめたマクベスの勝利はゆるがぬはずだった、バーナムの森が動かないかぎりは…。
感想・レビュー・書評
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マクベス、わる!!
勝手に、マクベスは立派な英雄だけど、謀略によって死ぬストーリーと思ってました……。
ぜ、全然違った。
この光文社版では、魔女の言葉は「晴々しいなら 禍々しい、禍々しいなら 晴々しい」となっている。
解説では「きれいは きたない、きたないは きれい」を、敢えて後で使われる、もう一つの禍々しいに合わせて前者としたとある。
個人的には「きれいは きたない」の方が好き。
晴々しいと禍々しいは、出来事を予感させるけど、きれいときたないは、それだけでなく、人の持つ業までを含んでいるように思う。
卜占や占星術など、古今東西、人は万象の力を借りて、自分自身の未来を知りたいと願ってきた。
占いは、目を逸らしたくなるような現実を緩和してくれる、そんな力があると思う。
でも、一方でマクベスは「予言」されたからこそ、破滅した。
地獄の女神ヘカテの言う「人間の油断」とは、何を指しているんだろう。
自分は王足りえる人物だと慢心することか。
自分の運命を知っていると勘違いすることか。
マクベスが抗える道は残されていただろうか。
私たちは、予言の魔力から脱することは出来ないのだろうか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
劇の文章を初めて読んだが、スルスル読めた。
予言を聞かなければ、悪い人にもならなかったのではと思わざるを得ない。
ただマクベスが悪人になるとは、知らなかったからビックリ。 -
シェイクスピアの4大悲劇の一つ。ワケあって2年前に角川文庫と岩波文庫で読み、光文社文庫もその後買ったけど読んでいなかったので、今読んでみた。
「きれいはきたない」の有名な台詞は「晴々しいなら禍々しい」と訳されていた。でも角川文庫のところで書いたけど、おれが見た演劇集団円というところのマクベスは「きれいはきたない」と言っていた気がする。というのも、調べてみると訳者の安西先生はこの演劇集団円の創設や演出に関わった、というから、何かあるんだろうか。
そしてその演劇集団円の代表、橋爪功が(橋爪功はテレビでしか見たことなかった)この本の翻訳作業中に亡くなった著者に関する思い出、ということで文章を書いているが、全然著者のことを知らないおれでもその人の雰囲気がよく分かる感じで、面白かった。あとは「安西サンが翻訳したせりふは声に出して読めばすぐに分るが、時として、もうこれしかないというリズム、音の高低、強弱が仕組まれている。」(p.229)ということで、河合先生も強調していたと思うが、シェイクスピアの翻訳というのは多かれ少なかれこういうことは考えるものなのか、と改めて思った。
2年前のおれの感想であと読んでない『リア王』を読みたい、と書いてあるが、まだ達成できていない。というかこの本を読み終わったのは今から12日前のことで、今やっとこれが書けたという状態。在宅ワークになって外出しないと、かえって延々と家で仕事をしてしまって、そして疲れ果てるという感じで、本当に本が読めていない。もともと休みだった3月&4月当初のバリバリ本を読んでた頃とのギャップが激しい…。(20/05/17) -
ヘエエエエイ、マクベース!
これが光文社安西訳。新潮福田訳だと、マクベス、ようもどられた!となる。(たしか)
翻訳という行為は、非常に不思議なものだなぁ。ということを初めて思ったかもしれない。読み比べとかしてみようかしら。英語なら原文も読めるかなぁ。
表現も面白く読み込みたい。 -
巻末の橋爪功の文がとても良い。
『マクベス』ではなく訳者の安西徹雄について、愛情いっぱいに書かれている。 -
すべての物語の根源はシェイクスピアにあり。
人が悪に染まっていく描写が大胆に、誇張されていて如何にもセリフ!って感じで面白かった。
悪の道にひとたび脚を踏み入れれば、己の正義を信じてさらに悪で周りを塗り固めていく。
マクベスの持つ弱さに反比例して肥大する悪。
私達の中にある弱さも血なまぐさい強さに変わりかねないのかなと思った。 -
魔女に唆されてスコットランド王を暗殺して王位を簒奪したマクベスの狂気と転落を戯曲化したシェークスピアの四大悲劇の一作。マクベスとともに魔女の預言を聞いたバンクォーも殺され、マクベスからいち早く離反した貴族のロスの妻子も殺され、そしてマクベスとともに暗殺に与したマクベス夫人も自ら命を絶つ。本来は勇猛な武人として、また王の一族として誉を受けるべきマクベスに襲いかかる悲劇が劇的に描かれている。