- Amazon.co.jp ・本 (347ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334751654
作品紹介・あらすじ
お金を盗んだ美少年バジーニが、同級生に罰としていじめられている。傍観していたテルレスは、ある日突然、性的衝動に襲われる…。寄宿学校を舞台に、言葉ではうまく表わしきれない思春期の少年たちの、心理と意識の揺れを描いた、『特性のない男』ムージルの処女作。
感想・レビュー・書評
-
先日読んだ「愛の完成」とはまた違って、訳者あとがきにもあるが物語としての体裁をなしているので、かなり読みやすかった。が、やはり大抵目を留めずに、あるいは表現しきれないから通り過ぎてしまう意識や思考の流れを、テルレス君はいちいち立ち止まって考えるので、その部分になるとよくわからなかったり、「あの瞬間」と出てきても、「どこだっけ?」となってしまったので、またいつか再読したい。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
おおお混乱してんな。乱暴にいえば厨ニ病(そういえばタイトルもラノベっぽ略)。題名のとおり寄宿生テルレスが混乱する話。特に後半。ものすごい。
大人から見たら「そんなの」って鼻で笑われるようなことが、僕らにとっては世界そのものだったのです――とでも言うべきか。
♪ちょっと違うかもしれないが「Aoi(サカナクション)」が合う。気がする。疾走する思考的な。
P.S.:よくよく考えると、寄宿学校(クローズした空間)を舞台に繰り広げられるいじめいびりと同性愛……これなんてじゃぱにーーーず。 -
これすごく雑に言ったら厨二病の一種なんだろうが、その孤独も戸惑いも恥ずかしさも全てが常に身近で、この混乱は生きているという状態なんだなぁ、と。哲学って大混乱の汚泥の中からわずかに滲み出る一滴なんだろうな。今回印象深かった箇所。「テルレスを苦しめていたのは、言葉が機能しないことだった。」の一文とその前後。「謎なんて知らないよ。なんでも起きる。それが、知恵のすべてだ」それから解説の一文「なにかを物語に回収することによって、それ以外の大切なものが見過ごされたり、捨てられたりするのではないか。」辺り。良かった。
-
2021年 16冊目
もう、無邪気に小動物をいたぶり殺す子供ではない。物の分別と残酷さへの憧れの境界線にいる少年たち。性衝動の嫌悪、憧れ。少年の心理発達を真横で鑑賞しているような気持ちになりました。 -
バジーニへのいじめのシーンは途中で本を置けなかった。少年たちと先生たちの生きている世界は違う。お互いの会話は噛み合わないし理解できないからこそ、子供時代は残酷だったことを思い出させてくれた。「ことば」の限界は体験でわかっているのに、それでもなお「ことば」を使って説明し、わかってもらったと思う大人。この先未完の『特性のない男』に手を出そうか悩んでいる。
-
人とは不安に陥りやすい生き物でして、きちんととその正体と向き合えればいいのだけれど、全然違う対象に攻撃をしかけてしまいがちです。その対象になりやすいのが、思春期の若者が今何を考え、将来をどう思っているのか、ということが一つあると思います。「白と黒どっちがいいの?嫌ならグレーにすればいいわ」などと解ったつもりで立ち向かうのですが、「わかってないなあ。今は何かを選ぶなんて気分じゃないのに、なぜ解ろうとしないのかなあ」というテルレス君のぶれない感じがとても現実的で、作者の目線が素晴らしい。
-
挫折