- Amazon.co.jp ・本 (504ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334751784
作品紹介・あらすじ
犬の血を4分の1引いて、北米の原野に生まれた狼「ホワイト・ファング(白い牙)」。親や兄弟が次々と死んでいく"自然"のなかで、強く、狡く生きていく。だが、あるとき人間に飼われることになり、人間の残虐さや愛情に触れることで、心のなかにさまざまな葛藤が生まれるのだった。
感想・レビュー・書評
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「野性の呼び声」と対をなす長編。バックが飼い犬から野性に帰る物語だったのに対して、こちらは北米の原野で生まれた1/4犬であとは狼であるホワイト・ファング(白い牙)が主人公。厳しい自然を生き抜くも、人間たちの残虐な扱いから、相当偏屈になってしまったホワイト・ファング。孤高でぶっきらぼうなホワイト・ファングを変えたのは優しいスコット。一途にスコットを慕うさまは、恋してるの?と思うほど。でも犬を飼ったことのある人ならこれが大袈裟ではないとわかる。誰にでも尻尾をふるわけではないのにご主人様の命を救うためなら命をかける。
動物が擬人化されているわけではないのがよかった。子ども向けに訳されたものが昔あったらしいが、深町眞理子訳で完訳のジャック・ロンドンの長編2冊おすすめ(^^)柴田元幸訳の短編集「火を熾す」もドライで印象的な作品です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「犬の血を4分の1引いて、北米の原野に生まれた狼「ホワイト・ファング(白い牙)」。親や兄弟が次々と死んでいく“自然”のなかで、強く、狡く生きていく。だが、あるとき人間に飼われることになり、人間の残虐さや愛情に触れることで、心のなかにさまざまな葛藤が生まれるのだった。」
「子どもの頃の私は、ホワイト・ファングの気持ちになって、この本にのめりこんだ。犬の話ではなく、冒険の話として読んだのだ。はじめて自分で狩りをして、雷鳥の雛を食べる場面では、柔らかい肉と口の中にあふれる生暖かい血を思い描き、それを本当に「おいしそうだ」と思った。現実世界では、わたしはかなり大人しい、無口な女の子だった。運動はなにをやらせてもダメで、男の子たちにもしょっちゅう苛められていたけれど、この本を読んでいる間、わたしは一頭の狼犬になった。自分を苛めようとするものには一瞬でとびかかり、のど笛に歯を立て、だれにも心を許さない狼犬。それが、わたしだった。」(近藤史恵『10歳までに読んだ本』) -
「野性の呼び声」の呼び声を楽しく読めたのなら、「白い牙」もまず間違いなく楽しめるだろう。
人間社会に馴染んでいた犬がやがて野生へと還っていく「野性の呼び声」に対し、「白い牙」はそれと真逆の筋書きを取っている。
主人となる人間たちとの出会いと別れや、命を取り合う宿敵の犬が出現する展開はほとんど同じで、話の進み方が逆なだけなので、VTRを巻き戻しで見るような感覚になる。
しかしだからといって単なる焼き直しや二番煎じを見せられているという感じはない。
本作の主人公ホワイト・ファングを「野生の呼び声」の主人公バックの生まれ変わりのようにみなして、アナザーストーリー的に筋を追うのは心地よい体験だと思う。
バックが熊を殺すほど筋骨たくましくなり、かつての飼い犬としての愛らしさを捨て、ついに人間社会と決別する様はどこか喪失感を覚えたが、ホワイト・ファングが人間社会に戻ってきて安住の地を見出すという結末には、正直ほっとした気持ちになった。
仕える主人たちが、道具として重宝はされるが愛はない先住民族のグレイ・ビーヴァーからはじまり、残忍なビューティ・スミス、そして愛のある主人スコット判事へとうつり変わっていくのだが、
この過程でホワイト・ファングは愛と人間社会のくびきを受け入れ、平穏な一生を送ることが暗示される。
これは犬という生き物が手に負えない野生の動物などではなく、やはり人間という主人なくして暮らせない従順なパートナーなのだ、ということが再確認できた安心感なのではないだろうか。
人間の庇護と愛をみずから切り離し、凛と去っていくバックに対しては、もはや取り戻せない恋人のようなあきらめの境地があるのだが、
ホワイト・ファングは人間と犬の、べたべたな愛の確認作業を提供してくれる。
物語の完成度としては結論をいうと「野性の呼び声」のほうが上。
解説で訳者が指摘しているが、ジャック・ロンドンには長編小説の構成力がないのだろう。
風呂敷をいっきに広げて読者を食いつかせるテクニックには優れるが、たたみ方は粗末で、全体としては竜頭蛇尾だ。
とくに冒頭、ソリ犬たちが一頭ずつ喰われて減っていく第一章は、そこだけで一つのサスペンス短編として成り立つほど巧みな展開だが、読み終わったときに「あれはいったい何だったんだ?」と首を傾げるくらいあとの章に関連性がない。
最終章の強盗が侵入してきて退治するシーンも、まさにとってつけたような結末。
この頭とおしりの章が無くても、正直いってお話が成立してしまう。
半狼半犬の雌チキーは、雄犬を次々と毒牙にかけていきミステリアスな魅力を放つものの、それも最初だけで、最後は記憶力のない平凡な母犬になって舞台から姿を消す。
動物の生き様としてはそんなものなのかもしれないし、人間の前で従順な飼い犬の本能を思い出したからそうなったのだ、という整合性を取れなくもないが、ロンドンがあえてそう配慮したような跡は見いだせない。
長編を書き進める中でキャラクターイメージを貫徹して保持しきれず、ぶれてしまったからのように思える。
いつか再読するならやはり「野性の呼び声」に軍配があがるだろうな。 -
B933.7-ロン
時が経ってから無性に読み返したくなる本が、この「白い牙(White Fang)」です。この作品は、作者となるジャック・ロンドンが1906年(110年前)に発表し、動物文学の世界的傑作といわれています。
物語は金採掘が盛んだったゴールドラッシュ時代の19世紀末の極寒の北米を舞台にしています。主役となる狼犬が野生の本能を残しつつも、共存関係を築くためのルールを学び、主人から受ける優しさから愛情という感情を知ります。時代背景は古いものの、毎回新鮮な気持ちで読み進めることができ、読み終わった後に心穏やかで爽快感を味わえる1冊です。 -
昔から大好きな小説でしたが、新訳という事で新たに読んでみました。
確かに、昔の訳より格段にとっつきやすくなっています。
所々以前と違う訳がありますが、どちらが正しいかは原文を読まないと解らないですね(笑)
動物描写は確かに凄いのですが、人間描写になると作者の人種差別や階級差別が感じられてしまいます。が、作者の時代だと仕方ないのかも…と割り切って読みました。1番目の飼主と3番目の飼主の設定が逆転していたら、もっと素直に読めた気がします。
しかし、それを差し引いても、ホワイトファングがかわいくてかわいくてかわいくてかわいくて仕方ないです。モフモフしたい!確実に噛み裂かれますが。 -
昔、読んだはずだがストーリーはすっかり忘れていた。
健気なホワイト・ファングに心を奪われます。
こんな犬を飼ってみたいです。 -
2010.01.17. p.179 第3部 荒野の神々・第1章 火をつくるもの まで読了。病院の待合いや、病院の待合いでばかり読んだので、しんどい印象が大きい。返却期限がきたので、やむなく返却。先に「野生の呼び声」を借りて読んだ方が良かったかな。
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人間のことを神扱いするのがうっとうしい。