グレート・ギャッツビー (光文社古典新訳文庫 Aフ 6-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334751890

感想・レビュー・書評

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  • 映画『華麗なるギャツビー』を観に行こうかなあと思っていて、そのまえにおさらいとして開いてみた。

    内容よりも先に、恐ろしいほど村上春樹な環境設定と言い回しにあふれていて驚いた。中流から上のクラスで生きる人々と彼らの服装の描写や、少々持って回った比喩と、短くて浅めの男女のやりとり。たしか、『ノルウェイの森』にフィッツジェラルドを読む青年が出てきているくらいだから、影響としては大いに受けているわけだし…と納得しながらも、登場人物の名前を「ワタナベ」とか「青豆」に置き換えていったら、ハルキストかつ海外文学を読まない人は、春樹作品としてがっつり食いつくんではないだろうか?とぼんやり考えたりした。

    それよりも意外に感じたのは、主人公であるジェイ・ギャッツビーから受ける印象が非常に薄いこと。大豪邸で夏の夜毎に繰り広げられる大宴会や、高級だけど洒落ものを超えた下品さのある着こなしがきらきらと描かれるわりには、彼自身はなんだかぼんやりして見えてこない。「実はこんな男でした」とネタばらしされても、「そういうの、あの時代ならあるよね」とあっさり納得してしまうし、彼がたどる顛末も、「やっぱりそういう感じなんだな」で終わってしまった。

    それは彼の運命の女・デイジーにしても同じように感じた。当時流行りのフラッパーかと思って読み進めていっても、そんなことは全然なくて、ダム・ブロンド(金髪おバカちゃん女)っぽく描かれてはいるものの、ごくごく普通のWASPのお嬢さまだった。中野翠さんの映画エッセイで、「リムジンの中から外を眺める人生」という表現があった(ゴールディ・ホーン主演の『プライベート・ベンジャミン』への批評だったと思う)けれど、まさにそういう感じ。たまたま窓から見かけて、「あら、素敵な殿方」と心動かされた瞬間があっても、結局は運転手に「行きましょう」と言いつけて去っていける程度のイケメンがギャッツビーだったんだろう。

    少女マンガ的な甘さと美しさ、あざといまでの切なさも見せるわりには、「全般的に薄い感じのドラマだなあ」と思って読み終わった。でも、この独特の浅さがアメリカ文学でもあるし、たぶん、語り手であるニック・キャラウェイの立場と現実主義の明晰さがそういう描写をさせるんだとも思う。主役ふたりが薄いから、トムとジョージの取った行動が強烈に残るのかな、とも思った。個人的には、ゴルフの女王・ジョーダンの、現実離れしたスーパーガールでありつつ、自分の足でニューヨークを歩いて行く姿が素敵だった。

    読後感はわりとさっぱりしているものの、もの足りないというほどではないし、微妙な感触。訳者・小川高義さんの訳者あとがきが自分にない視点で面白かったので、合わせ技でこの☆の数かと。

  • 何読目かの今回、ギャツビーはアメリカそのものなのかなと思った。
    金は得たけれど、歴史や積み重ねた文化がないことを恥じ、自分の中で美化したヨーロッパに憧れ続ける。
    私の勝手な読み方だけれど、そう思うと一層ギャツビーの滑稽だけれど愛すべき憐れさが胸に沁みた。

    ところでギャツビーの訳といえば、のオールドスポート問題、春樹訳のカタカナは怠慢じゃないだろうかと私はなじったのだけど、この新訳が取った手法は何と「訳さない」。
    お…おう…。
    思い切ったね…。
    そこは私は訳して欲しかったので、小説自体ではなく翻訳に星4つ。
    それ以外の大胆な訳は割と好きなんだけど。

  • ギャッツビーは、ハンサムで、寡黙で、大金持ちで、一途なので、男性が思う「かっこいい男」のように思える。無論私もそう思う。(粘着質すぎるけど…)だからこそギャッツビーには人間らしさがない。説明こそあるが、ぽっと出の人物のようである。またイマイチ恋する理由も分からない。しかしながら、デイジー(ギャッツビーが思いを寄せる女性)と対話する時の彼の動揺っぷりは愛嬌たっぷりで、特に先走りすぎる会話をしてしまう彼の描写は、本当に良かった。
    ギャッツビーとやたら平凡な話者以外にまともな人がいないので、読了後はただただ頭に?が浮かんだが、時間が経つにつれもう一度読みたくなる不思議な感覚が湧く。多分ギャッツビーに対する思慕か同情だろう。感情が大変なことになる作品だった。恐らく、原書で読む方が翻訳作品特有の言い回しが理解できるのだろう。機会があれば是非読みたい。

  • ディカプリオの映画を見たすぐ後に読んだ。
    昔20代で読んだ時はこんなに面白く感じなかったはず。

    前半、ギャツビーが対岸にある緑のライトを見つめるシーンで、思わずぐっと来たのは映画を見てギャツビーのデイジーへの想いを知っていたから。きっと一度読んだだけでは、良さはわからないのかも。

  • アメリカンドリームに乗り遅れた男の話(乗り遅れたというより時代がすでに終わってた?)。乗り遅れたけど、とりあえず金持ちにはなれた。希望する形ではないだろうけど。
    初めて読んだので、まだ飲み込みきれてない。今まで読んだ海外文学の中では、一番オシャレな感じがする。訳の影響もあるだろけど。
    まるで関係ないんだけど、読んでいる最中、どうも頭の中に「アルジャーノンに花束を」がちらほらと浮かんでくる。理由は不明。あっちはSFだし。
    ほとぼりが冷めたらまた読もうと思う。

  • 古き良き時代のアメリカンドリームの悲哀をハードボイルドタッチで描いた粋な小説である。キザな男たちの人生が悲しくもあり、愛おしくもある。

  • 村上春樹訳で読んだことのある本を、別の訳者で読んでみるという試み。ギャッツビーの純粋さというものが、自分の中にあるならそれを離さずにいたい。「あいつら、腐りきってる」「あんた一人でも、あいつら全部引っくるめたのと、いい勝負だ」というセリフが好き。

  • 上昇志向の男が過去の女にこだわることによって起きる悲劇。事件後の周囲の冷ややかな態度が悲しいが、これぞ上流階級という感じを出している。

  • ディカプリオの映画をみて、原作を読もうと積ん読の本書をらひっばりだす。
    ちょっと飽きがくるけど、村上春樹もおススメなのだから、読みが足りないんだな、きっと。いずれ再読しよう。

  • 途中で読むのやめると人物わかんなくなった。事故からが面白かった。

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