プロタゴラス: あるソフィストとの対話 (光文社古典新訳文庫 Bフ 2-1)

  • 光文社
3.86
  • (21)
  • (35)
  • (20)
  • (3)
  • (2)
本棚登録 : 329
感想 : 44
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334752217

作品紹介・あらすじ

「人間の徳(アレテー)は、教えられるものなのか?」「ソフィストとは、そもそも何者か?」。若くて血気盛んなソクラテスは、アテネを訪問中のプロタゴラスのもとにおもむき、徳をめぐる対話を始める。しかし、議論は二転三転。次第に哲学的色彩を強めながら、やがて意外な結末を迎えることになる。プラトン対話篇、最良の入門書。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • しっかりと研究を積んできた訳者による新訳は、すごく読みやすいし、解説なども行き届いています。これはおもしろい。しかし、この本だけで終わっていてはもったいない。また別でレビューしますが、この訳者が書いている『ソクラテスとフィロソフィア』に、プロタゴラスの解説があるんですが、それを読むと、目からウロコがぼろぼろでて、理解もものすごく進みます。プラトンは、奥が深い。【2022年9月19日読了】

  • 若いな!と感じるのは先に年代が明かされていたせいか?

  • やや毛色の違うプラトン対話篇。
    他の対話篇とあわせて読むことで面白さが増すと思う。


    大抵のプラトン対話篇では、劇中のソクラテスの言葉が執筆時のプラトンの思考に近いものとして受け取って読まれる。
    だが、この『プロタゴラス』でもそうだとは単純には言えない。

    「快は、その帰結などを考慮しなければ、それ自体としては善いものである」
    「善い快と悪い快の区別はない」
    「快苦の大小を現時点からの遠近などで惑わされず(いわば幾何学的に)計算する技術としての知識」
    他の対話篇での記述と整合させるには一手間かけないといけないような、これらの記述があるからだ。

    しかも、これらは「大衆が同意してくれるか」という点で見解の妥当性が問われている。
    いつもの劇中ソクラテスなら対話者と同意が得られるかどうかを問題にするだろうに。


    他のプラトンの対話篇との整合性はおくとしても、当時の知識人たちの知的な遊戯を味あわせてくれる。

  • なんにしても、ソクラテスは本当に性格が悪いw プロタゴラスとの対話で見事に論破したにもかかわらず、自身がアポリアに陥っていることを示してちゃっかりおべっかを使い、その実、自身の立場はソフィストの教えていることは知識に過ぎないというものなのだから、アポリアに陥ったことも織り込み済みだったわけである。はあ。

    この前にテアイテトスも読んでみたけれど、そちらと同じで、本当に議論して欲しいところには決して立ち入らず、瑣末な論理の問題に拘泥して本質の周辺を旋回し続けている印象を受ける。プラトンは合わないのかもしれない。
    ただ、解説は素晴らしく、わかりやすく論旨をまとめるに留まることなく、あらゆる角度から本書の魅力を伝えようという意気込みが感じられた。

  • ソフィストのプロタゴラスと対話する若きソクラテスという設定で、「徳は教えられるのか」「正義や節度・敬虔や勇気などは一つの徳(アレテー)なのか、それとも一つの徳の一部分なのか」という二つの話題が中心になっている対話篇。

    プラトンは「ソクラテスの弁明」しかまだ読んだことがないから分からないけど、若いソクラテスという設定ゆえなのか?ソクラテスが優位に対話を進めるという感じではない。
    前半ではプロタゴラスの方が周りの支持も得ているし、説得力を感じる。ソクラテスは長い話は苦手だと言って話を逸らすが、そのあと詩の解釈でさらに長い話を自分でするのはどうなんだ(笑)。後半もソクラテスのやり方は揚げ足取りのように感じられて、あまりスマートとは思えなかった。「反対のものは一つしかない」などの前提がそもそもおかしいというか、プロタゴラスを罠にはめるための装置としか思えなかったからだ。
    結局最後にはお互い主張があべこべになってしまい、もう一度議論をやり直したいが時間切れ、というところで終わってしまう。読者がこの対話を続けてくれ、ということなのだろう。私は前述のような理由でこの議論自体にもあまり魅力は感じられなかったので、あまり気乗りはしないけれど。もうちょっと別の作品を読んでみようと思う。

  • ソクラテスのチェスのような議論が読んでいて面白かった

  • ・人間というものは、お互いに相手がいろいろな欠点を持つと考えているものだ。だが、欠点が生まれつきや偶然に由来する場合には、そうした欠点を持つ人たちに腹をたてたり、忠告したり、あるいは教育したり、罰を与えたりして、その欠点を矯正しようとする人は誰もいない。むしろ、たんに彼らを憐れむだけだ。たとえば醜い人や、小さな人や、虚弱な人に対して、いま言ったようなことをしようとする愚か者がどこにいよう? わたしが思うに、人々は、人間がこのような美点や欠点を持つのは、生まれつきや偶然によるのだとわかっているのだ。

    ・たとえば、自分の母親や父親や祖国、あるいは何かそれに類するものと反りが合わなくなることが、人間にはしばしば起こります。悪い人たちであれば、何かそのようなことが起こると、まるで親や祖国の欠点を見るのが楽しいことであるかのように、文句を言いながら欠点をあげつらい、とがめだてます。彼らは親や祖国をないがしろにしているものだから、そのことで世間の人たちの非難や叱責にさらされないようにと、そんなことをするのです。そして、その結果、彼らはよりいっそう親や祖国に文句を言うようになり、もとの避けがたい憎しみに、自分から生み出した憎しみを積み重ねていくことになります。

  • 三十代のソクラテスと六十代のソフィスト、プロタゴラスの言葉によるタイマン。
    後半はソクラテスの追及に胃が痛くなりそうに笑
    議論自体は最初の議題から外れてしまい、自分はいつのまにか迷子に。後半の論理展開もついていけなかった。
    詭弁めいたテクニックも使ってプロタゴラスに迫るソクラテスに、若さを感じる。
    少し置いてからまた読み直して頭を整理したい。

  • 難しかったけど、読めなくはなかった。
    対話形式でアレテーについて深めていく内容で、ソクラテスの論理的な思考が物凄いなと思った。仮説を立てて証明を行なっていく様がとても面白かったし、物事を深く考えるのって楽しいんだなと思った。


  • 日々の中で対話不足を感じたため。
    短く話せのソクラテスに共感
    友達に欲しい。
    アレテーが顔の部分とかはわからない。

  • (Mixiより, 2011年)
    僕は、「知識」という言葉がけっこう好きです。自分が何か出来ない時、失敗してしまった時、つい「だって知らなかったもん!」とよく言いたくなります。こういうとずいぶんわがままなようにも聞こえるけど、これって案外真っ当だなーと感じるとこで、自分に"できない"ということを"知識の不足"に帰着させる、というのは解決策を生み出しやすく、また、失敗を活かそう!っていう前向きな意識に繋げてくれると思うんです。
    中学生くらいの時は、数学の計算法が"知識"だなんて考えたことがなかったけど(理系分野っていうのは"覚えなくてなんぼ"だと思っていた)、だんだんそれは違うって気づかされてくる。この本では「勇気」さえも「知識」だとソクラテスは言っています。単なる説明で書かれた論説文ならきっと挫折したような内容だけど、知識人同士の会話を通すと、それらはずいぶんと躍動しはじめる。紀元前の作品が、こんなにも新鮮だとは!驚きました。

  •  2011年5月23日(月)に阪大生協書籍部豊中店にて科研費で購入。同日読み始め、25日(水)に読み終える。

     訳文も読みやすいし解説もすばらしい。これは訳者というよりも光文社翻訳編集部に対する意見だが、たしかに訳者もあとがきで書いているようにプラトンの『プロタゴラス』は藤沢令夫訳が出てからすでに50年以上経っており、「光文社古典新訳文庫」が謳う「いま、息をしている言葉」ではなくなってきているのかもしれない。だとしても、誰でも手軽に読める文庫で新訳を出すのなら、『ニコマコス倫理学』とかもっと優先度が高いものがほかにもあるような気がする。

     今度から藤沢訳と交互に読みたい。

  • <b>[高橋一生が演じているかのような生き生きとした鼻持ちならないアリストテレス]</b>

    ソクラテスの対話編を読むのははじめて。それ以上に古代ギリシャ哲学について書かれた本を読むのもはじめて。
    しかし神業のような翻訳によって、まるで脚本 宮藤官九郎、ソクラテス 高橋一生というようなイメージで一気に読んだ。

    いきなり冒頭から、最近自分が入れあげている美少年についてのろけるソクラテス(35歳)に大笑いする。
    とにかくうざい高橋一生版ソクラテス。

    ・揚げ足とり
    ・はい、論破ー

    新進気鋭のネット番長、ソクラテス35歳が著名作家プロタゴラス(60歳)に粘着リプライを繰り返す話。

    物語のコアは、人間の徳(プラトー)は教育によって教える事が出来るのか?という点。

    これって、今の学校教育でも言える。

    多くの大衆は思う。「学校で教わる事など人生で役に立たない。知識、知恵を活かすよりも、人は小隊不明の非論理的衝動にかられて行動してしまう」


    衝動とはなにか?
    衝動と徳(アレトー)は異なるものなのか?
    徳(アレトー)は教えられるものなのか?


    これは哲学問答なので、答えは提示されない。
    でも、これこそが今の学校教育に不足している事なのかもしれない。
    教えるのではなくて、問う事。


    そして、いい加減、高橋一生が「夕べの美少年良かったわぁ」としたり顔をする幻覚から肺胞されたい。

  • 訳:中澤務、原題名:ΠΡΩΤΒΓΟΡΑΣ(ΠΛΑΤΩΝ)

  • ・哲学者プラトンが書いた初期対話篇です。
    この書を読めば、如何にソクラテスが「知」というものを重視し、また自分は何を分かっており、何を分かっていないのかの線引きをハッキリさせる事に真剣だったかが理解出来ます。

    新訳なのでスラスラ読めました。おすすめです。

  • プラトンが、ソクラテスとプロタゴラスの対話を描いた本。
    大いに繁栄していた紀元前5世紀のアテネ。これだけ抽象的、哲学的な対話がされていたというのは流石だなぁと、今更ながら思いました。

    対話のテーマは、人間としての「徳(アレテー)」とは、人に教えることができるものなのか?というもの。
    ソクラテスは「教えることはできない」立場、プロタゴラスは「教えることはできる」立場で対話が始まって、徳(アレテー)の性質について論じていたのですが…、最後は確かに意外な結末で終わってしまったなぁと感じました。読者にバトンを渡したってコトなのでしょうか。
    文章は新訳のおかげで意外なほど読みやすく、ストレスに感じる箇所はほぼありませんでした。

    個人的には、哲学者って一本筋が通っていて、どれだけ対話をしていても考え方がその中で変わることは無いものだと思っていたのですが、言葉の定義を定めようとする中で主張が変化していく様を読んでいくと、これが本当に哲学的で本質に迫る議論だったのかなぁ…と釈然としない気持ちになりました。
    大学時代に哲学をカケラほども齧らなかったので、もう少し素養と教養があれば深い読み方ができたのかもしれません。いつか再読してみたい本。

  • 徳(アレテー)について。ソフィストのプロタゴラスとの対話。アレテーとは何か。アレテーは人に教えることができるのか。哲学とは、生きるとは対話(ディアレクティーク)。プラトンに貫かれている真理だと思う。

    17.12.17

  • 徳(アレテー)とは知識である。

  •  ソクラテスは、知者として高名なプロタゴラスに対して最大限の敬意を払い、持ち上げると見せて、彼の演説の中の、一見些細なことにも思える問題点を指摘する。はじめは余裕で応じていたプロタゴラスも、ソクラテスから次々と繰り出される質問に次第に追い詰められ、最後は自分の発言の誤りを認めざるを得なくなる。そんなプロタゴラスの様子と、ソクラテスの鮮やかなやり口に、昔見た米国のテレビドラマ「刑事コロンボ」が想い起こされた。プラトンの著作の中でも、読み物としての面白さが特に際立つ作品となっている。
     「徳は生まれつき備わっているものではなく、教えられて身につくものである」というプロタゴラスの主張には、納得できる部分もあるように思う。だが「徳は知識である」というソクラテスの主張についてはどうか。作中のプロタゴラス同様、違和感を抱かざるをえない。だが知識でないなら、なぜ教えることができるのだろうか。
     一方、プロタゴラスの主張に反対していたソクラテスも、プロタゴラスとの問答の末に、徳は知識であり、したがって教えられるものであることを証明する結果となってしまう。二人とも自己矛盾に陥った格好だ。
     ソクラテスが言うように、議論のどこかに誤りがあるのか。あるとしたら、それはどこなのか。答えは読者に委ねられる。哲学するきっかけを読者に与えるという点でも、本書は優れた哲学入門書といえる。

  • 対話というか、揚げ足取りというか。

全44件中 1 - 20件を表示

著者プロフィール

山口大学教授
1961年 大阪府生まれ
1991年 京都大学大学院文学研究科博士課程研究指導認定退学
2010年 山口大学講師、助教授を経て現職

主な著訳書
『イリソスのほとり──藤澤令夫先生献呈論文集』(共著、世界思想社)
マーク・L・マックフェラン『ソクラテスの宗教』(共訳、法政大学出版局)
アルビノス他『プラトン哲学入門』(共訳、京都大学学術出版会)

「2018年 『パイドロス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

プラトンの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×