羊飼いの指輪――ファンタジーの練習帳 (光文社古典新訳文庫 Aロ 1-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334752385

作品紹介・あらすじ

誰もが知っているグリム童話やロシア民話、ピノッキオなどが、ロダーリ流の現代的なセンスとユーモアやアイロニーでよみがえる。表題作ほか「魔法の小太鼓」「哀れな幽霊たち」「星へ向かうタクシー」「旅する猫」など。

感想・レビュー・書評

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  • 物語の結末は1つじゃない。
    自由にイマジネーションを広げて、結末を作ってみよう!
    著者自身が子供たちと話し合いながら、物語の結末を考えたというラジオ番組が下敷きになっている本書。
    20の物語が収められていますが、それぞれの物語につき3つの結末が提示されています。
    1つの物語が結末によってまったく違う色を帯びてくるわくわく感がたまりません。
    好みの結末を選んでみるもよし、自分で新たな結末を考えてみるもよし。
    まさに「ファンタジーの練習帳」。

    あとがきによると、イタリアでは学校でこんな授業をやっているそうです。
    「みんなちがってみんないい」を体感できる授業になりそうだ!

    シニカルな結末を選びがちな自分のひねくれさも実感しつつも、楽しい気分で読了。

  • 童話や寓話のパロディのような20の掌編に、それぞれ3パターンの結末が用意されている実験的な構成で、オチのつけかたによって、前向きにもなれば悲観的にもなり、教訓的だったり不条理だったりする。どれも気に入らなければ自分で続きを考えても良いわけで、サブタイトルが「ファンタジーの練習帳」というのも成程、と思って読んだのですが。

    解説を読むと、もともとラジオ番組の企画で、3つのオチは子供たちと一緒に考えたものも含まれているとのこと。なるほど、「変わった読み物」として書かれたわけではなく、子供たちの創造力を伸ばす目的で一緒に作られたものだと思うと、読み方も変わってきますね。どういう結末を考えるかによって、ちょっとした精神分析みたいになっちゃうのも面白い。

  • 大人が読んでも楽しい童話集。
    結末が3つ用意されているところがまた面白い。子どもと接してきたロダーリだからこそ、未来に期待する気持ちが大きいのかもしれない。

  • 物語の結末を創造する。
    学校の授業で是非受けたかった。
    作者の3様の終わりのパターンを分析するだけでも、自分の想像の殻を破る助けになりそうだ。

  • 全20編の短い物語にそれぞれ3つの結末。どの結末が気に入るか。どれも気に入らないか。自分の好みがよくわかる。最後に作者が選んだ結末とその理由もあり、物語の届け先を考えた真摯な姿勢に尊敬の念が深まる。私は、基本的にハッピーエンドや道義にかなう結末が好きだけど、ピノッキオの話だけは、被雇用者の存在が気になって結果的に必要悪を容認した。間違っている。そう断言する作者に、その通りだなと反省する。

  • 物語が20個あり、それぞれ結末が三種類用意してある。いわゆる子供のファンタジー力を鍛えるためのテキスト集のような。構成は良いと思うが余りにコンパクトすぎて。もっと膨らませてくれようー。と思ったが、それは各自でやることになっている。なんだか、ツリーは用意したので、飾りはそれぞれ各自で作るんだよ、と言われたようでね、それをタノシイーと思うか、メンドクッセと思うか。ワシャー昔から七夕の飾り付けとか嫌いじゃった、そういや。や、普通に面白いよ。火星の幽霊の話とか好きだ。けど。

  • 実験的なもの。読み物としては完結してたほうが楽しい。

  • とてもいい本です。
    結末が3つに分かれていて、読者がどれも気に入らなければ自分で作ってみよう、という形式の本。
    結末が別れていても物語は楽しめるし自分で考える楽しみがあって、ロダーリの本の中でもかなり面白い方。
    解説にあった受け手と送り手では物語のコードの受け取り方が違う、という話は目からウロコだった。
    本編もそうだが解説で引用してある「ファンタジーの文法」を読むと創作をしてみたくなる。想像力が大切であるとロダーリは語っていたようだ。
    私も本を読むばかりではなく昔のように少しは書いてみようかと思う。

  • ゆっくりと丁寧に語りかける感じ。児童文学のテイスト。寓話的。それでいて結末が幾つかある。そうすると描かれていたことの意味合いに違いが生まれるなどを体感できる。自分なりにあれこれ考えられる余白と選択肢のある作品。

  • ユーモア。ファンタジアの力。
    三つの結末が示された作品群。作者の結末の選択が末尾に記されているが、中にはないものも。
    この本の使い方として冒頭でロダーニは言う、「好きな結末が見つからなければ、みなさん自身で作り、文章や絵で表現してみることもできるでしょう。では、さっそく物語の世界で遊びましょう」。
    ピノッキオや魔法の太鼓、ハーメルンの笛吹き、大きな蕪‥‥様々にでてくる有名な話のパロディは、作者が好きな結末を考えたものだろう。それどころか、設定あれこれの入れ替えは、もっと面白くなるにはと考えたものだろう、それがファンタジアなのだ。遊びましょう、と言われているのに作者が選んだ結末と、自分がいいと思った結末と合っていないとなんだか不正解な気になってしまう日本人気質(訳者あとがきでいう《ファンタジー》ゼロに等しい教育結果)なのかしらと苦く思いました。もっと自由に、有名な作家と違う結末を選んだって、正しいとか、正しくないとかではない、「自分が」楽しい結末を、「自分で」選ぶ、獲得する。この自由を身につけたい。と思いました。
    もっともっと。ファンタジアを練習したい。

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著者プロフィール

1920年生まれ、1980年没。イタリアの作家、詩人、教育者。1970年、国際アンデルセン賞を受賞。20世紀イタリアで最も重要な児童文学者、国民的作家とされている。『チポリーノの冒険』『青(あお)矢号(やごう) おもちゃの夜行列車』『空にうかんだ大きなケーキ』『羊飼いの指輪 ファンタジーの練習帳』『猫とともに去りぬ』『ランベルト男爵は二度生きる サン・ジュリオ島の奇想天外な物語』『パパの電話を待ちながら』『緑の髪のパオリーノ』『クジオのさかな会計士』などがある。

「2022年 『うそつき王国とジェルソミーノ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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