失われた時を求めて (2(第1篇)) (光文社古典新訳文庫 Aフ 4-3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (624ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334752392

作品紹介・あらすじ

パリ上流社交界の寵児スワンは、高級娼婦オデットを恋人にする。ところが強力な恋敵が現れ、スワンの心は嫉妬に引き裂かれていく。苦悶の果てにスワンが見出したものは…。恋愛心理を鋭く描いた第二部「スワンの恋」。第三部「土地の名・名」も収録。

感想・レビュー・書評

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  • 世界最長と言われるこの小説の中で、この「スワンの恋」が一番筋書きらしきものがあって、唯一、「私」視点でない三人称記述の特別な章らしいが、正直言って読むのが苦痛だった。残りを読むかは時間を置いてから考えようかな。。

    内容は、ひたすらスワンの恋愛感情の記述。相手が「高級娼婦」(ココット)とあっては、嫉妬とか、悩みの種は尽きない。

  • ~P475「スワンの恋」、P476~「土地の名・名」という475頁まで語り手の私ではなくスワン(と高級娼婦オデット)の恋が綴られている。

    スワンの恋情のすべてが綴られている、恋に落ち、夢中になり、嫉妬し、そして唐突に心が変わる。人の気持ちだけで475頁!普段読んでいる小説だと考えられないボリューム。スワンがあるグループから冷遇されるぐらいで(少し「浮気してる?」っぽい描写はあるものの)大きな出来事は起こらないのにこれだけ書けるってプルーストすごいなぁ。恋情すべてを書くとこの頁数になるのか…。

    次のパートは語り手(私)の恋。スワンが大人の恋、こちらは青年の恋で躍動感に溢れている。自分からじゃなくジルベルトに「告白してくれたらいいのに」なんて期待するところが思春期真っ盛り。

  • 小説の中の恋愛というと、ロマンティックでドラマティックで…という先入観にも似たイメージがあり、実際そうした小説も多い。フランス小説となればなおさら。けれど、この『失われた時を求めて』第二部「スワンの恋」で描写されるスワン氏の恋愛は、とことんリアルである。恋の始まり、思いが通じて盛り上がる蜜月期間、相手の心が遠ざかるにつれ深まる苦悩。それらの経過すべてが、幻想を相手にした思い込み、独り相撲のような空回りとして淡々と描かれ、容赦のないその筆致は可笑しくも残酷なほど。
    特別な思いを持っていなかった時にふと感じた、好んでいた絵画の人物像に似た一瞬の印象。そして当然会えると思っていた時に会えなかったことで戸惑い、その苦しみをもたらした相手が唯一無二の存在となる。出会った瞬間に相手に魅了されたというような運命の恋ではなく、相手の中に自分好みの部分を見出したことで相手全体に感じる魅力が高まり、また、自分を苦しめた特別さが後付けの理由となって、始まってゆく恋。所有の感覚が生む喪失への恐れから相手に対する欲求は深まり、絶え間ない欲求と嫉妬が燃料となって恋情は燃え続けるものの、相手を強く求める方が求められる方より弱い立場となる恋の摂理によって、相手の態度は男の恋情の深まりに反比例して冷めてゆく。そして男もまた、突然に相手が「とくに好きでもない、ぼくの趣味に合わない」女であることを思い出し、幻想から解き放たれ、恋が終わる。
    だが、プルーストの手で徹底的に解剖された「恋」という一種の熱病の有様は、その身も蓋もない愚かしさにも関わらず、むしろそれゆえに、理性ではどうにもならない恋というもの、落ちてしまったら最後自分でも抜け出せない不思議な感情の罠がもたらす、めくるめく幸福や胸を締め付ける切なさを、臨場感たっぷりに伝えてくる。恋人が世界の中心となり、恋人との関わりの有無によってあらゆるものの価値が決まり、共に過ごす時間が幸福であるほど離れている時間が辛くなる。ふんわりしたロマンとしての恋愛ではなく、身を投じて傷だらけになりながら勝ち取るリアルな経験としての恋愛が、そこにある。また一方で、カトレアの花やヴァントゥイユの小楽節などの小道具が生む確かにロマンティックな空気も、プルーストの詩情あふれる表現と共にとても豊かな読後感を残す。
    続いて収録されている第三部「土地の名・名」は、再び第一部の語り手の世界に戻り、コンブレーで見かけたスワンの娘・ジルベルトとパリで出会う経緯が語られる。地名、人名、その名の持ち主に対する憧れや強い思いが、その「名」に意味を持たせる。語り手が憧れの「ヴェネツィア」や「ジルベルト」という「名」に感じる輝きは、それこそ思い込みによる幻想とも言えるもので、スワンの恋と響き合うものがある。「名」の持ち主との関係が遠いからこその少年の憧れが生んだそれらの幻想は、続く第二篇以降、現実の関係が近づくにつれ、変容していくこととなる。

  • 再読のせいか、ぼくの意識の変化のせいか、訳がよかったせいか、とても楽しく集中して読めたスワンの恋。前読んだ時はうっとうしくて、くどくどしていて、読み飛ばしたくなる衝動に駆られたけれども、今回は一文一文含蓄深くてうんうん納得で読みました。高遠さんの翻訳、注もよかったです。

  • スワンがもうドン引きするくらい必死なのが痛ましくてでも気持ち悪くてぞぞっとするし周りの人たちの会話とか性格もトンチンカンというかアホらしいのが呆れる内容なんだけどたぶん皮肉なんだろうなって思ったら余計面白くなっちゃったフランスの漱石じゃん
    1巻よりだいぶ読み慣れてきた感じがする
    1巻は読むのに必死で内容が右から左だったから今巻巻の場面索引読んでてそういえばこんなこともあったなってなった(特に、語り手の「私」がパリの叔父さんのとこでオデットに会ったシーン)
    高遠さんの注釈がめちゃくちゃ細かくて凄いなって思う

  • 2011-12-8

  • 言葉の選び方が見事。
    原作もそうなのだろうし、またこの訳の素晴らしさと来たら…!
    もー全部暗記したいくらい。
    また、3.11を経た訳者あとがきに訳者としての、文学者としての、そして人としての覚悟を見た思い。
    この文章を読めて良かった。

    「天地開闢以来、人びとは、結局は自らの価値を下げるだけの、苦しまぎれの機転や虚栄心からつく嘘をふんだんにばらまいてきたが、その大部分は自分より下位の者たちに向けて発せられたものである。」

  • ジュンク堂池袋、¥1160.

  • スワンが高級娼婦のオデットにひたすら振り回されたあげく、通っていたサロンからも村八分にあうという悲惨な巻。

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