純粋理性批判 7 (光文社古典新訳文庫 Bカ 1-8)

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  • Amazon.co.jp ・本 (361ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334752439

感想・レビュー・書評

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  • ようやく、読み終わったが、いよいよこれからが本番である。わかりやすいという評判の本訳であるが、いわゆる定番の訳語を当てはめていないことによって、かえってわかりづらい部分も多い。また、丁寧に訳者が解説していることは、細かすぎて全体が見えづらく、巻数も多くなっていることも含めて、やや「おなか一杯」という感じである。他の解説書や他の訳本も読んでみたい。どちらにしても難解である。なんとなくわかった部分はまだ多くないので、再読しながら、理解できる部分を増やしていきたい。

  • 純粋理性批判をようやく読み終えた^_^

    数学は定義から仕事を始めるが、哲学は定義することによって仕事を終える。

    第7巻で理念に関する論争について考察される。現代において神の存在や死後の世界については公開討論が行われることはなくなった。しかし超能力などについては論争がしばしば行われる。こういった論争をどう眺めるのかについての視点を与えてくれたのが本書だった。

    出生に関する問題として、神の性質を持った人間が、(少子化のような)政治的、社会的な問題と言った極めて世俗的な事柄に影響されたりクズばかりが子供を生むことの不合理さが挙げられる。これについて、理性は明確な回答を指し示すことはできないものの、仮説を提示することはできる。しかしこのような仮説は論敵を論破することには役立つが、真理の証明に関してはそれほど役に立たないことを指摘しておく必要がある。

    ともかく、純粋理性批判を読破して、本当の意味で賢くなったのは確かだ。

  • この巻は、理性をいかに鍛錬するかとか、「道徳」の構築に向けた思考の動きとか、本書の「応用編」的な部分となっている。つまりカントは既に、次の「実践理性批判」へ向けて、カントは動き出しているのである。
    やっと光文社新訳文庫版『純粋理性批判』全7巻を読み終えたわけだが、カントのこの著作とは、結局何だったか。
    それまでの経験主義としてくくられる著作家たちを「独断論」として批判し、緻密な思考を展開して見せたこの書物は、18世紀「近代」を切り開いた、やはり革命的だったと思われるし、現在読んでみてもその思想はじゅうぶんに刺激的で、挑発的である。
    しかしカントの思考の枠組みが、せいぜい18世紀までの範疇に限定されて見えることも否めない。
    なんでも分類する事が大好きなカントは、人間精神の活動を「感性」「知性(旧訳では悟性)」「理性」に分けるのだが、現在の我々のパースペクティヴから見ると、このような分け方は便宜的なものではあっても、それ自体リアリティを欠くし、さほど意味がない。
    こんにち的な位置から見ると、私たちは脳をさらに細かく「分ける」こともできるが、人間が思考するとき、それらの各部が複雑に作用し合っていることを理解できるし、また、人間の心的な営みが「脳」という局所にだけ孤立的に限定されているというより、人間存在全体として考えているのだ、という風にも考えられる。
    「感性」「知性」「理性」といった「カテゴライズ」は、西洋の言語体系のなかでは便宜的に成立し・活用される概念ではあるが、そうそう截然と区分けされるわけもなく、我々は意識と、意識外(無意識)、あるいは神経伝達物質、シナプス、あるいは身体すべて、といった全要素が複雑に絡み合った「全体」=ゲシュタルトとして、思考活動を行っているのだ、と思う。
    だから「感性」も「知性」も「理性」も、人間の心性のちょっとした一面(特性)を示す用語ではあっても、それ自体として「存在するもの」ではないのに、それらを「主語」とし、あたかも独立して機能しうる何者かであるように記述するのは、明らかに「近代の誤謬」に過ぎないと私は思う。
    この点で、カントの哲学もまた、「批判」されるべきであった。
    しかし緻密な「批判」なる知的営為を確立したカントの「革命」の価値が損なわれることはないだろう。

著者プロフィール

1724-1804年。ドイツの哲学者。主な著書に、本書(1795年)のほか、『純粋理性批判』(1781年)、『実践理性批判』(1788年)、『判断力批判』(1790年)ほか。

「2022年 『永遠の平和のために』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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