ビリ-・バッド (光文社古典新訳文庫 Aメ 1-1)

  • 光文社
3.48
  • (6)
  • (8)
  • (12)
  • (5)
  • (0)
本棚登録 : 177
感想 : 16
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334752637

作品紹介・あらすじ

18世紀末、商船から英国軍艦ベリポテント号に強制徴用された若きビリー・バッド。新米水兵ながら誰からも愛される存在だった彼を待ち受けていたのは、邪悪な謀略のような運命の罠だった…。アメリカ最大の作家メルヴィル(『白鯨』)の遺作にして最大の問題作が、鮮烈な新訳で甦る。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「神の天使に打たれて死んだのだ! それでも、天使は吊るし首にせねばならん」

    「中動態の世界」で触れられていて、読みたいと思っていた。
    どう受け止めていいか当惑する物語。
    解説で書かれていた曖昧さというのにはかなり納得するのだけど、納得し切れるわけでもなく、納得してしまってももったいないように思う。
    でも納得するしないの手前で、物語は面白い。
    また読もうー!

  • 伊藤亜紗『どもる体』で本作の主人公が吃音だと紹介されていたので、本棚に刺さっていたものを取り出して地元に向かう新幹線のなかで読み始めた。

    7/15土 p.24まで

    7/17月 p.46まで
    まだビリーを主人公とした本筋の話が始まらない! 当時の海軍への反乱や悪徳について、また軍艦の長の人物描写にページを費やしている。19世紀小説にありがちな冗長さ。ドストエフスキー『地下室の手記』第一部みたいなもんか。

    ビリーの吃音はいっしゅんだけ言及があった。


    7/31月 p.94まで
    めっちゃ難しい。意味わからん。
    哲学的というか宗教的というか…な議論めいたものが続く。物語はあんまり動かない。
    堕落、狂気、無垢 について
    ビリーが夜フォアチェインに呼ばれたとき吃音が出た。


    8/1火 p.116まで
    なんかカミュの異邦人みたいになってきたな
    世俗から一線を画した無垢な男主人公が偶然?に殺人を犯してしまい、裁判へ……という筋書きの古典中編小説


    8/7月 p.146まで


    8/8火 p.169まで
    処刑執行。ビリー・バッドめっちゃキリストになぞらえられてて草
    ビリー・バッドとバートルビー、無垢っぽいところは似ているが、従順さなどはわりと対極的か。あとは作品の文体、内容の難解さも対照的。

    読んだ!
    訳者の同僚による解説、うーん……


    ・投稿用短文感想
    伊藤亜紗『どもる体』にて、吃音者が主人公の小説として紹介されていたために驚いて、1年くらい前に古本で買っていたものを読んだ。 文章が難解すぎる! 哲学的・宗教的な議論か講釈めいたものがその多くを占めていて、今の自分の頭では、この読み易いらしい新訳でさえほとんど理解が出来なかった。世俗性が希薄で無垢な主人公がひょんなことから殺人を犯して裁かれる筋書きの古典的中編小説、ということでカミュ『異邦人』っぽさは感じた。『バートルビー』と共通する点もありつつ、かなり対照的な趣きの遺作だとも思った。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/742664

  • 誰からも憎まれぬ水兵だったビリー・バッドがなぜクラガートにだけ嫌われたのか?というクィア・リーディングのおすすめにされていたので読みたいメモしてあったのだと思われる本
    メルヴィルの饒舌な語り口(解説および訳者の言うシェイクスピア的な朗読劇調)が好き

  • 私が手にしたアメリカの小説は時代に関係なく、悲しみや苦しみ、喜び、悲喜こもごもの感動に浸る類のものは少なく、どちらかといえばあまり読後感は良くないと感じてきた。そして、これです。
    不条理なのか、公平でないのか、世界に背を向けてるわけでもなく、宗教に圧倒的な信頼を寄せるというよりはむしろ科学が発達した現代人みたいに無神論者のごとく物言いにも感じる。悲劇のような、世界に唾を吐きかけているのか、怒りなのか憐憫なのか。

    登場人物それぞれの中に曖昧というよりは決して少なくはない相反する性質、そして矛盾が錯綜していて、神の観念もないはずのビリー・バッドは「神のご加護」と発する。
    原書の文体はとても古めかしいものらしいけれど、ここに書かれている人の心と社会とは現代にもつながっていて、メルヴィルはそれを追求し続けた。

  • 面白いと言っていいのか。
    モヤモヤした感じが残る小説だ。

    水夫ビリー・バッドの人生。
    ビリーは美男子で、周りの人間から愛されるキャラクターだ。
    彼はある船で働いていたが、軍艦に徴用される。
    その船でも彼は愛されキャラクターになる。やがて、こっそり彼に話しかけてくる謎の人物、そして彼を嫌う上官。こんなキャラクターが配置され、いよいよ盛り上がるか、というところで盛り上がらない。いきなり終わってしまうのだ。
    これといったオチがあるわけではない、というか、オチはあるんだけどすっきりしない。突然始まって、突然終わってしまう感じだ。
    いわゆる冒険活劇などではなく、ある人物の人生の1部分を切り取った感じ。

    その中には、様々な人間が登場し、当時の時代背景などが説明される。
    エンターテイメントではなく時代の空気を切り取ることに腐心したような小説だ。

    浦沢直樹のコミックと関係があるのかは不明である。

  • 文学

  • メルヴィル 「 ビリーバッド 」著者の遺作 中編小説

    キリスト教道徳の寓話にも読めるし、共同体の中で 秩序と苦悩を描いた小説にも読める。著者の人生の総決算としての思想哲学 にも感じる。

    著者が描きたかったのは 多様で複雑で曖昧な現実の世界。そんな世界で どのように秩序を守るのかを 伝えたかった と捉えた

    船中という人種や身分が多様な共同体が舞台。一神教的な 善と悪の二項対立では 共同体の秩序は保たれない。善の象徴である主人公のビリーバッド、知性の象徴であるヴィア艦長。ヴィア艦長の苦悩と共同体の秩序を保つ姿が印象的

    キリスト教道徳の寓話
    *狡知に対して 経験、才覚に欠け〜なりふり構わず 身を守ろうという感覚もないことは無力→ 無垢な善では自分すら守れない

    ヴィア艦長の本の好み
    *内容より文体にひたるものではない
    *至上の秩序を備えた全ての真摯な精神〜が惹かれる
    *どんな時代でも 現実の人間と出来事を扱う
    *モンテーニュのように しきたりに囚われない

  • 國分功一郎の『中動態の世界』において、中動態の概念の事例として用いられていたことから興味を覚えた。中動態~の中であらすじは語られてしまっていたので、淡々と読み進めた感じだったが、國分の主張と含めて、人間の意志と決断、そして責任についてあたらためて考えるようになった。なにげにメルヴィルは初めてだったので、巻末のメルヴィル評が、一番集中できたところだった。最近注意が散漫。

    18.3.14

全16件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1819年-1891年。ニューヨークに生まれる。13歳の時に父親を亡くして学校を辞め、様々な職を経験。22歳の時に捕鯨船に乗り、4年ほど海を放浪。その間、マルケサス諸島でタイピー族に捕らわれるなど、その後の作品に影響を及ぼす体験をする。27歳で処女作『タイピー』を発表。以降、精力的に作品を発表するものの、生存中には評価を受けず、ニューヨークの税関で職を得ていた。享年72歳。生誕100年を期して再評価されるようになり、遺作『ビリー・バッド』を含む『メルヴィル著作集全16巻』が刊行され、アメリカ文学の巨匠として知られる存在となった。

「2012年 『タイピー 南海の愛すべき食人族たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ハーマン・メルヴィルの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
伊藤 計劃
ドストエフスキー
マーク・ピーター...
フランツ・カフカ
村上 春樹
三島由紀夫
ヘミングウェイ
三浦 しをん
三島由紀夫
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×