偉業 (光文社古典新訳文庫)

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制作 : 貝澤 哉 
  • 光文社 (2016年10月12日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (435ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334753429

偉業 (光文社古典新訳文庫)の感想・レビュー・書評

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  • ナボコフ比較的初期の長編。ナボコフ自身を思わせる主人公マルティンは、夢見がちではあるけれど、スポーツもできるし、殴り合いの喧嘩もできるし、けして非モテでもなく、ただ経済的に切迫していないのでちょっとノーテンキだな程度の好人物。両親の離婚、母親の再婚、下宿先の娘ソーニャとの恋、ケンブリッジで出会ったダーウィンとの友情など、若者らしい悩みや葛藤は爽やかだし、ナボコフの他の小説に出てきがちな偏執的な人物もいないので、表面的には普通に青春小説として読めてしまう。ナボコフにあるまじき読み易さ(笑)しかし場面の切り替わりなどちょっとしたところに独特の技巧があり、細部はやっぱりナボコフらしい。

    時系列も基本的には順列で直線的、少年時代から青年になるまでマルティンの成長を追う展開はまっすぐで一見素直だけれど、実はロシアを脱出してロンドン、スイス、ベルリンなどさまざまな都市を転々としていく彼は常に移動していて、列車や旅という移動の線が、都市とその細部という点を繋いでゆき、最終的に彼は出発点であるロシアに戻ろうとする。つまり点は繋がれて円になり完結する。

    マルティンは内省的で夢見がちな冒険家であり、しかしその行動に意味がないのが特徴。とくに大きな不満もなさそうな人生、結局彼は何がしたかったんだろう?長年にわたってマルティンを振り回すソーニャという女性の魅力が同性からみて全くピンと来なかったのだけど、もし彼女の愛を得られていれば、マルティンは無謀な計画は立てなかっただろうか?

    マルティンのなしとげた偉業とは、つまり何もなしとげないこと、でしかなかった気がする。すごろくでいったら「ふりだしにもどる」で終わってしまったわけで、つまりスタートした意味がなかったような。マルティンがどうなったかわからないけど、2周目があったらいいな。

  • 流れる水みたいななめらかに伸び続ける文章が恐ろしく心地よい。外国文学がこうもぬらぬらと日本語になってるとつい意訳を疑いそうになる。苦笑
    この心地よさに乗せられて、細やかな違和感を放ったままにしたから、解説を読んであっとなった点がいくつもある。

    電車の中で降りる駅を気にしながら散漫に読んでも表層をなぞって楽しめるが、それでは著者に笑われそう。精読しながら、感度を保つことが大切。平易に見えるけど、読書姿勢を問われるような底の深さにちょっと恐ろしくなる。

  • 『自伝的要素が強い』と言われている長編。
    確かに要所要所に『記憶よ、語れ』と共通するエピソードやモチーフが見え隠れしている。内容も一見すると『ふつうの青春小説』だが、つい、『何処かに隠れている何か』を探しながら読んでしまうw

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