はむ・はたる: 連作時代小説 (光文社文庫 さ 27-2 光文社時代小説文庫)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334763800

作品紹介・あらすじ

掏摸やかっぱらいで食いつなぐ暮らしを改めて、まっとうな商売を始めた、勝平をはじめとする十五人の孤児たち。彼らは周囲の小さな事件を解決しながら、自分たちの居場所を拓こうとする。厳しくも温かい長谷部家の人々や、口の悪い金貸しお吟らの助けも借りながら、子供たちは事件解決に奮闘する。笑いと涙が交錯する傑作に、特別書下ろし短編「登美の花婿」も収録。連作時代小説。

感想・レビュー・書評

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  • 掏摸やかっぱらいでなんとか生きてきた十五人の孤児たち。

    捕まったことをきっかけにまっとうな仕事を始めた兄貴分の勝平と子供たち。

    彼らの周囲には悪意や偏見に満ちた目がある。それをはねのけて生きていく彼らの元に届く小さな謎。

    それを解きながら成長する彼ら。そして彼らの身元引受をしてくれている武家の長谷川家の次男、柾が戻ってきて……。

    懸命に生きていく子供たちが何よりも魅力的な一冊です。

    こういう話は『お蔦さんの神楽坂日記』に通じるものがあって、厳しいけれども生きていくためには必要なんだよねと思わされます。

    こちらも楽しかったです♪

  • 小説宝石2007年11月号あやめ長屋の長治、2008年6月号猫神さま、8月号百両の壺、10月号子持稲荷、12月号花童、2009年2月号はむはたる、書き下ろし登美の花婿、の7つの連作短編を2009年8月光文社から刊刊。2012年3月光文社文庫化。シリーズ2作目。前作で登場した子供たちがそれぞれ主人公となっての7話の人情話が楽しい。「花童」だけアンソロジーで読んでいたが、7作みんなが読めて良かった。

  • 「読んだ瞬間分かる、好きなやつやん!」
    というのは、やや大げさかもしれないけど、数ページで登場人物たちに心つかまれたのは事実。実はこの作品は『烏金』という作品が先にあって、この『はむ・はたる』は、その登場人物たちのその後を描いた作品でもあるみたいです。自分は『烏金』は未読だったのですがそれでも特に気にならなかったから、それだけ魅力的なのだと思います。

    時代小説らしい粋のいい子どもたちのやりとりから始まり、その子どもたちの恵まれない生い立ちと、悪行から手を洗いまっとうな商いに精を出す現在の姿。そして、そんな子どもたちの回りの大人たちと、いずれの描写も小気味よく、そして血が通っていることを感じます。こういう情の描き方が本当に良かった。。

    そんな子どもたちの周囲で起こる不可思議な事件の数々。それに対し子どもたちは、なにやら訳ありの優しい侍と一緒に挑みます。このあたりは少年探偵団の雰囲気もあって、時代小説版少年探偵団の事件簿としても楽しめます。

    子どもたちの個性が豊かなのも読んでいて楽しい。連作短編となっている本なのですが、各短編で語り手となる子どもが変わるのもいい構成です。おかげで様々な子の活躍が読めます。

    西條奈加さんの作品は数年前に『千年鬼』を読んだときも好印象だったのですが、ずいぶん間が空いてこれでようやく二冊目……とりあえず次の『烏金』は押さえておかないと……

  • 西條奈加の人情物はいい。ちょっぴりはらはらするが、最後は温かい気持ちで読み終えることができる。連作短編だが、最後の「はむ・はたる」で一応の解決がある。最初「はむ・はたる」っていったい何のことだ?と思ったが、そうかあ、美術用語だったのだ。勝平や玄太、三治、天平、登美ら子供たち、長谷部の婆さま、その息子の柾たち、出てくる登場人物は皆、味があるんだよなあ。ちゃんと生きて血が通っている感じがする。一つ一つの話ごとに主人公が違っていて、それぞれにちょっとした謎解きのようなものがる。どれもいい。

    • goya626さん
      Macomi55さん
      確かに染みますね。西條奈加は、しんみりする話、ほっこりする話、設定に驚いてそのうちすかっとする話など、みんな気持ちの...
      Macomi55さん
      確かに染みますね。西條奈加は、しんみりする話、ほっこりする話、設定に驚いてそのうちすかっとする話など、みんな気持ちのいい物語です。SFぽいのもあって、驚きますよ。
      2021/12/05
    • Macomi55さん
      goya626さん
      SFっぽいのもあるのですか。時代ものを良く書かれているのかと思ってました。「心淋し川」は江戸の中での心町(うらまち)と...
      goya626さん
      SFっぽいのもあるのですか。時代ものを良く書かれているのかと思ってました。「心淋し川」は江戸の中での心町(うらまち)という異空間のような集落という設定が良かったです。フィクションでなくても、私の感じた東京は坂が多くて、「坂の向こうはどんな町なのだろう」という想像を湧き立てる場所です。何度かしか行ったことないですが。
      2021/12/05
    • goya626さん
      Macomi55さん
      「刑罰0号」というのがSFですねえ。西條奈加さんにしては毛色の変わったものかもしれません。坂の町、東京かあ。昔の小説...
      Macomi55さん
      「刑罰0号」というのがSFですねえ。西條奈加さんにしては毛色の変わったものかもしれません。坂の町、東京かあ。昔の小説やエッセイを読むと東京の坂のことがよく出てきました。坂も郷愁を誘うものですね。また、いつか東京に行きたいです。
      2021/12/05
  • 烏金を読んでから読むという、2度目の、続編とは知らずにいたのが勿体無い。あの子供達が生きる道を見つけて、15人の子供達だけで生きていくのがいい、子供達の自尊心も傷付けないで、導いてくれる人々がいてね。それぞれ辛い生い立ちから今の生活を主人公の側にいる目で描いたのが上手だなあ、長屋の生活する話ってなんだか好きなんだよなあ、江戸時代が魅力的なのかと

  • 武家の長谷部家のもと、手内職の稲荷鮨を売りながら生きる十五人の孤児たち。
    江戸に生きる子どもたちが逞しい。
    小さいながらも大きな後悔や責任を背負って生きている勝平。勝平ら十五人の孤児たちに目をかける長谷部家の次男 征さま。
    降りかかる小さな事件を解決に導くため奮闘する短編集だが、最終話がちょっとしっくり来なくて全体としてはちょっと物足りなさを感じた。

    書き下ろし短編の「登美の花婿」は良かった。
    時代は違えど現代に通じる部分があってクスッとなった。

  • 【収録作品】あやめ長屋の長治/猫神さま/百両の壺/子持稲荷/花童/はむ・はたる/登美の花婿
     単行本で既読だが、『わらべうた』を読んで、もう一度読みたくなり、再読。
     「登美の花婿」は文庫化のおまけのような小品。
     江戸の下町で力を合わせて生きる子どもたちと、彼らを助ける大人たちの話。子どもなりにと簡単には言えないほど厳しい経験をしてきた子どもたちを、一度はずれた道から引き戻し、まっとうに生きられるように力を貸す(甘やかすのではなく、厳しくすることで)大人たちの姿は見習いたい。
     道を外れるのは簡単なことで、誰にでもありうること。戻りたいと思った時に戻れるほうが本人にとっても社会にとってもプラスのはず。

  • 烏金から引き続き。
    勝平たち子供たちが主役。

    それぞれの個性がどんどん出てて面白かった。烏金を読んだ後だから彼らがこんなふうに生活できてほのぼのするシーンもあれば、心苦しくなる話もあり。

    ハチが少しずつ元気?になっていくのがよかった。伊根には悪いけど、花の賢さが現れてくるのも好き。
    でも浅吉に続き柾さまが去ってしまうのは勝平たちにとって大きな喪失だったろうな。はむ・はたる、まさにお蘭は柾にとっても勝平たちにとってもその呼び名に相応しかったのでは。

  • 江戸の町を舞台に孤児たちが大人に見守られながらも自分たちの才覚で生きてゆく物語。
    この時代だからこそ成立する人情物語で、子供だからこその限界と折り合いをつけながら奮闘する様子が清々しい。はむって食べるのことか?と頭の中にクエスチョンマークを持ちながら読んでいたら、そういう意味だったのですね。作品は文句なしですが、このタイトルだけは少し凝り過ぎの印象でした。

  • 短編集「わらべうた」で出会って、探して読みました。

    シャーロック・ホームズのイレギュラーのような江戸の子どもたち。
    それぞれ持ち味があり、思いがあり、つらい過去があり、そして逞しさがまぶしいです。

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著者プロフィール

1964年北海道生まれ。2005年『金春屋ゴメス』で第17回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、デビュー。12年『涅槃の雪』で第18回中山義秀文学賞、15年『まるまるの毬』で第36回吉川英治文学新人賞、21年『心淋し川』で第164回直木賞を受賞。著書に『九十九藤』『ごんたくれ』『猫の傀儡』『銀杏手ならい』『無暁の鈴』『曲亭の家』『秋葉原先留交番ゆうれい付き』『隠居すごろく』など多数。

「2023年 『隠居おてだま』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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