妃は船を沈める (光文社文庫 あ 42-3)

著者 :
  • 光文社
3.46
  • (22)
  • (87)
  • (118)
  • (11)
  • (4)
本棚登録 : 1049
感想 : 75
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334764043

作品紹介・あらすじ

「妃」と呼ばれ、若い男たちに囲まれ暮らしていた魅惑的な女性・妃沙子には、不幸な事件がつきまとった。友人の夫が車ごと海に転落、取り巻きの一人は射殺された。妃沙子が所有する、三つの願いをかなえてくれる猿の手は、厄災をももたらすという。事件は祈りを捧げた報いなのだろうか。哀歌の調べに乗せ、臨床犯罪学者・火村英生が背後に渦巻く「欲望」をあぶり出す。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 連作中編2作品収録
    ふたつの事件ともトリックが凝ってるなと感じました
    謎解きとしては難しいなと感じて読んでました
    火村英生、有栖川有栖の説明で事件の謎は理解できました

  • 同じ人物が登場する2つの中編作。
    もちろんひとつずつでも読めるように独立した推理物として書かれている。
    一作目はとても計画的な犯行で火村先生もなかなか糸口が見つからない程苦戦していた。
    いつも迷推理のアリスが意外なヒントをもたらしてくれて無事解決!
    だけどなかなか歯痒い結末でもあった。

    二作目はコマチさんが初登場。
    はっきりした性格で好きだなぁ。
    今回はイレギュラーがあったからこそ犯人が特定できたけれど、犯人の機転がきく頭の良さには感服する。
    最後猿の手でまとめるのところも好き。

  • 有栖川作品
    2作品独立しているが 続きもの
    猿の手 と言う呪いがキーワードでした。
    さらっと読めるが 有栖川さんの 推理は余り出てこない。

  • 『赤ん坊だって地震は容赦しないからな。この国は、残酷な揺り籠みたいなもんだ。』

    「地震」でここまで考えられるのが面白い。

    日テレのドラマもそこそこ良い。

  • 作家アリスシリーズ、コマチさん初登場の作品。

    火村シリーズの犯人は、結構賢い人が多くて、犯行後の自分のミスにも気づいて挽回させようと試行錯誤するのに、結局それが仇となって追い詰められてしまう。
    かといってもっといいやり方はあったのかというとどうしようもなくて結局詰んでる…

  • 猿の手論議が楽しかった!有栖川先生の解釈が火村と一緒なのがおもしろい。
    「狂気」って表現が何度も出てくるんだけど、いまいちピンとこなかったのが残念…火村がロジック、アリスが犯人の心理を暴く、ていうのも、「朱色」みたいにこう、響いてこなくて。
    たぶん、淡々としてて、過剰に表現してないからなのかなーと思う。だから読みやすいんだけど。苦しくならないで読めるんだけど。

  • 単行本を既読。事件の内容をまったく覚えていなかったが、7年も経てばそんなこともあるだろう。ただ、火村先生とアリスの猿の手のディスカッションについてはおぼろげながら記憶があって、火村先生のエキセントリックな考察が有栖川先生の解釈をもとにしているというのが興味深い。こんなにロジカルな解釈は無理だったが、わたしもゾンビではなくきれいな息子が帰ってきたのを想像した。なぜそうおもったのか、わからないのだけれど。ひさしぶりではあったが、初読時より数倍はおもしろく読んだ気がする。魅力的な謎が数えきれないほどあったから。

  • 中編集。
    2005年に「猿の左手」、2007年に「残酷な揺り籠」が中編として発表されたものを、間に「幕間」をいれて長編として発売されたもの。
    ウィリアム・W・ジャイコブズ「猿の手」に描かれた物語が事件の重要な鍵となっている。
    「猿の手」とは、ある家族が願い事を三つだけかなえてくれると言われている「猿の手」を手に入れたところから物語が始まる。
    願いはかなうけれど、必ずそれ相応の対価を支払うはめになる。
    等価交換といったところだろうか。
    家族は試しに家の支払代金として200ポンドを願ってみる。
    いきなり目の前に200ポンドが現れるわけもなく、そのときは何も起こらない。
    けれど、翌日に夫婦の元に息子が事故で亡くなったと連絡が入る。
    会社が見舞金として持参したのは200ポンドだった。
    ちょっとゾワッとするような展開がこの後も待っている。
    願い事が三つかなう猿の手。
    もしも手にすることが出来たら、いったい何を願うだろう。
    迷いに迷って結局何も願わないか、それともすぐに何かを願ってしまうのか。
    対価を支払わなければならなくても、それでもかなえたい願いがあれば別なのだろうが・・・。
    「猿の手」は、海に沈んだ車から発見された男が発見されたことから始まる物語だ。
    目撃者も多数いて、海にダイブする直前に車から逃げ出した人間はいたとは考えられない。
    商売が上手くいかずに借金の返済の目処もつかない男。
    事業は順調なのに夫の借金のために返済に追われる妻。
    そして、友人のために男に金を貸していた女。
    遊んでいたお金を友人のために用立てただけだと言う女・妃沙子。
    若い男の世話をやくのが好きだと平然と語る妃沙子と、養子である潤一の関係は一種異様な雰囲気がある。
    いったい誰が男に睡眠薬を飲ませ殺害したのか。
    運転も泳ぎも出来、動機もあるが確固たるアリバイのある妻。
    運転は出来るが水恐怖症で泳ぐことが出来ない潤一。
    泳ぐことは出来るが運転が出来ない妃沙子。
    火村は思いもかけない過去の事件から解決への糸口を掴む。
    そして2年が過ぎ、火村と妃沙子は事件絡みで再び出会うことになる。
    ワインに仕込まれた睡眠薬。
    密室で銃殺されていた男。
    そして、割られた窓。
    火村によって暴かれる真相は、歪んだ思い込みで凶行に走る者と必死に何かを守ろうとする者の哀しい対決をさらけ出していく。
    過去は変えることが出来ない。
    そして、変えられない過去の責任から逃れることも出来ない。
    火村シリーズが好きな人は楽しめる物語だと思う。

    余談だが、作中に登場する服役中の暴力団員の名前が梶井功安という。
    「梶井功安。江戸時代の医者みたいな名前やな」という台詞が出てきて、ちょっと笑ってしまった。
    偶然だが、ドラマで有栖を演じている窪田くんが以前緒方洪庵の若い頃を演じていたことを思い出したからだ。
    ドラマで登場している小町も、この物語で登場する。
    「コマチでも私はオーケーです」
    ドラマの小町はこの呼び名を嫌がっていたが、物語では逆にこの呼び方を喜んでいるような印象を持った。

  • もともと別だった中編二本をまとめて一本にした作品。
    この人、男性は魅力的な人物像を描くのに、女性はそうでもないんだよなー。特徴ある素敵な女性もいるけど印象が薄い。
    トリック自体もロジカルで本格派。得意分野なんだろうけど、最初から長編だったらもっとまとまったんじゃないかなーと言う印象。
    新定番キャラなるか?のあの方が今後のお楽しみかな。

  • 願いを3つ叶えてくれる猿の手。
    妃が原因で結局3回も事件が起こっておりなかなか大変。

    北部地震を思い起こしながら。

全75件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1959年大阪生まれ。同志社大学法学部卒業。89年「月光ゲーム」でデビュー。「マレー鉄道の謎」で日本推理作家協会賞を受賞。「本格ミステリ作家クラブ」初代会長。著書に「暗い宿」「ジュリエットの悲鳴」「朱色の研究」「絶叫城殺人事件」など多数。

「2023年 『濱地健三郎の幽たる事件簿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

有栖川有栖の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×