いつまでも白い羽根 (光文社文庫 ふ 23-1)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334765323

作品紹介・あらすじ

大学受験失敗と家庭の事情で不本意ながら看護学校へ進学した木崎瑠美。毎日を憂鬱に過ごす彼女だが、不器用だけど心優しい千夏との出会いや厳しい看護実習、そして医学生の拓海への淡い恋心など、積み重なっていく経験を頑なな心を少しずつ変えていく…。揺れ動く青春の機微を通じて、人間にとっての本当の強さと優しさの形を真っ向から描いた感動のデビュー作。

感想・レビュー・書評

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  • 著者4作品目。デビュー作との事ですが、完成度が高くワンクールを通してドラマの原作になりそうなくらいストーリーや登場人物達に魅力があります。
    著者が看護師という裏付けもあり、おそらくモデルとなった人物がいるだろうと想像するくらい設定に説得力があります。
    著者の文章は私の心に寄り添う距離感が絶妙で、常に優しく癒してくれます。
    どれくらい読み続けても疲れないからいつまでも読んでいられます。
    今更ながら、私にとって贔屓の作家さんの1人になりました。

    • ゆうじさん
      新川優愛さん主演でドラマありましたね。
      新川優愛さん主演でドラマありましたね。
      2024/01/19
    • 123daaahさん
      そうなんです。感想を投稿した後、Wikipediaで調べました。情報ありがとうございます。
      そうなんです。感想を投稿した後、Wikipediaで調べました。情報ありがとうございます。
      2024/01/22
  • 大学受験失敗と家庭の事情で不本意ながら看護学校へ進学した木崎瑠美。
    毎日を憂鬱に過ごす彼女だが、不器用だけど心優しい千夏との出会いや厳しい看護実習、
    そして医学生の拓海への淡い恋心など、
    積み重なっていく経験を頑なな心を少しずつ変えていく…。
    揺れ動く青春の機微を通じて、人間にとっての本当の強さと優しさの形を真っ向から描いた感動のデビュー作



    これが藤岡さんのデビュー作だったのですね。
    最初デビュー作と知らずに未読本を見付けたと読み始めましたが、
    とても読みやすい文章で物語の展開も良くって…
    やはり藤岡さんは最初からとても素晴らしい作家さんだったのだと痛感しました。

    看護学校の大変さとても良くわかりました。
    とても厳しい看護実習の実態も感じられました。
    これまで何度かの家族の入院で看護師さんに接する機会は何度かありました。
    びっくりする程、病院によって異なっていました。
    職場の雰囲気っていうのかな…看護師さんの資質の問題なのでしょうか
    優しい人ばかりの所…事務的な人ばかりの所…さまざまですね。
    でも皆さんの仕事ぶりを拝見してて、とても自分が出来るものではない。
    凄い仕事をされているなぁと感心するばかりでした。
    家族が入院したいくつかの病院はこちらでは大きな大きな総合病院って所ばかりなのですが、
    本当に駆け回っていますね。
    ナースステーションに置いている患者のモニターと繋がっているアラームは鳴り続けていました。
    あれで、緊急事態がわかるのか?と思い続けていましたが…。
    この本を読んで看護師さんになる為の学校や看護実習の大変さなんかを
    痛感させられたのに、何故か通ってみたくなりました。

    不器用だけと優しくて器の大きな千夏との友情が良かったなぁ。
    若い人々を描いてるから恋の話入っちゃうのわかるけどいらなかったかな

  • 大学受験を失敗して家庭の事情で不本意ながら看護学校へ進学した主人公、木崎瑠美の話。
    看護学校へ進学をしたものの、大学進学も諦められず、学校生活もどこか冷めていた。
    しかし、友達ができて親友になり、厳しい看護実習を重ねていくうちに頑なだった心が少しずつ変わっていく。

    少し恋愛も絡んでいて、看護学生、木崎瑠美の入学から卒業までの「青春ストーリー」という感じかな。
    主人公の瑠美が、ずっと冷静で強かったのが印象に残りました。

  • <本のあらすじ>
    大学受験失敗と家庭の事情で不本意ながら看護学校へ進学した木崎瑠美。毎日を憂鬱に過ごす彼女だが、不器用だけど心優しい千夏との出会いや厳しい看護実習、そして医学生の拓海への淡い恋心など、積み重なっていく経験が頑なな心を少しずつ変えていく……。揺れ動く青春の機微を通じて、人間にとっての本当の強さと優しさの形を真っ向から描いた感動のデビュー作。
    <感想>
    進路で看護師を目指す人はどんな人でしょうか。純粋に看護師という仕事に憧れる人、身内に医療関係者がいる人、一人で生きていく、お金に困らない資格を得たい人などさまざまでしょう。コロナ禍で改めて「エッセンシャルワーカー」の職種としても考える日々を過ごしました。感謝や敬意を表し、メディアもこれを広く取り上げられました。しかし、エッセンシャルワーカーの重要性が広く認識されると同時に、日本では人手不足が顕著な職種である実態が問題視されています。
    読んだきっかけは自分が看護師さんに患者として大変お世話になっている身だからかもしれません。
    主人公は大学受験失敗と家庭の事情で不本意ながら看護学校へ進学する。
    専門知識の習得はもちろん、実習や人間関係など、いのちと向き合う肉体的精神的にも大変な仕事だ。
    看護資格を取得した作家のデビュー作として、とても実体験に基づき、思いが込められた作品だと思った。
    瑠美と千夏。二人とも不器用で、「常識よりも大切な物」を抱く。「正しさのセンス」を持っている。
    病院という生と死が凝縮された場で、患者として思うのは、看護師が重くてつらいものだろうし、献身的な努力も求められたり、そして患者や家族にとって、医師にとってもありがたい存在だ。
    とはいえ、この物語を通して言えるのは、看護師としての在り方だけではなく、何のために生きているのか。何を根拠に人生を進むのか。私達が生きている限り、その意味を問いつづける事が人生なのだ。
    答辞の言葉より
    「白衣は白い色をしているが、その白は潔白の白さではないと。どんな色にでもなり得る白なのだと。
    (中略)この先、何色の白衣をまとっているかは、それぞれの生き方にかかっているのです」
    が物語っている。
    グレーになったり黒になったり、何色にも染まる白だからこそ『いつまでも白い羽根』を持つ気概を持っていけたら、そんな生き方ができたら。テーマは重たいけれど励まされた作品だった。

    +++++++++++++++++++++++++
    本文で気になった文章


    p224
    「お父さんな、鬱病だった時期があってな・・・・・・。おまえも気づいていたかもしれないが・・・毎日毎日、生きるのが本当に大変だった時があったんだ。一日をやり過ごすのが驚くほど大変で、一日がこんなに辛いんだったら、あとの人生の何十年、どんだけきついんだと思うとまた滅入ってしまってな。本当に苦しかった。そんな風に思ってしまう自分が情けなくて、何よりおまえや母さんに迷惑をかけていることが情けなくて・・・。死んでしまおうと何度も思った」
    「でも死ななかった。死のうと思うたびに、おまえのことが頭に浮かんだんだ。おまえが生まれた日のことを思い出すんだ。おまえが生まれた時、人はなぜ歳をとるのかという答えを、お父さんは見つけた。歳をとるのは、一日一日強くなっていくためなんだと。お父さんは、赤ん坊の顔を見ながら確信したんだ。自分は父となり、子どものおまえを守っていける強さを身につけようとその日強く思ったんだ。」
    「死にたいと思う今日の自分がいたとしても、明日また生きようと思えばいいじゃないかと考えられるようになった時、お父さんの鬱病は少しずつ良くなっていったんだ。これからはおまえや母さんや、自分を必要としてくれる人を信じて生きようと思う。瑠美のいうとおり、軌道修正はいつでも可能なんだ」
    p.251
    「ねえ瑠美、人の好き嫌いってなんだと思う?特別に自分に何かされたわけじゃないのに、どこかいけすかない人がいたり、逆に親切にされたわけじゃないのに好きだなと思う人がいたり。そういうのなんでだと思う?」
    (中略)
    「略 それはね、生きる姿勢なんだと思うんだ。その人の生きる姿勢が好きか嫌いか。それがその人を好きになるか嫌いになるかなんだよ」

    p.254
    死を目前にしながら、人に対して善意的に接することができるということが、自分には奇跡的に思える
    「人は、最期までその人らしく生きるんだね」
    p.296
    「仕事をしている人はその中で小さな喜びがあって、その繰り返しが生きていく上での楽しさでもあり幸せでもあるでしょ。それは育児や家事においても同じなのよ。嬉しいことがあったら聞いて欲しいし、そんな自分の喜びを知って欲しいの。自分に関心を払ってもらいたいとは言わないけれど、せめて子供たちには本気で目を向けて欲しいと思っていた。」

    p.340
    「感じた疑問を口にして、きちんと答えを求めるような人よ。おかしいことをおかしいと言える人。常識というのはその場にいる人間で作られるの。だから常識が正しいことだとは、限らない。その場の常識だとか雰囲気に流されないでいられる人は、とても貴重だと思う。」

    p.342
    「略) 看護師として働いても働かなくも、それはどちらでもいいの。でもね、一度入学したなら、卒業してみるものよ。良いも悪いも、全部やり遂げた人にしか語る権利はないんだから。今途中で投げ出してしまったら、一生、あの先生達や病棟の看護師さんと対等に話せなくなるわよ」
    p.362
    子をもつ大人にとって、子の存在は人生そのものにもなり得ることを、瑠美は実習を通して知った。病に伏す高齢者の患者が思うことは家族と過ごしたこれまでの日々、自分がいなくなってからの家族の幸せ。人はこれほどまでに家族を想っているのか、親は子を愛しているのか、支えられているのかと、瑠美は何度も思い知らされた。そしてまた逆に、独りきりで病と闘う辛さ、亡くなっていく哀しさ・・・。人はとてつもなく強く、そして弱いものだということを、自分は患者たちに教えてもらった。
    免許を手にして働き出すと、学生の間に感じたことを、日々忙殺される中で少しずつ剥がされていくのだろうか。剥がされて削られていくうちに、つるつるの何も感じない心の部分ができてくる。
    p.370
    どんなに高度な医療をもってしても治らない病気は世に溢れていて、そうした病を前には、医師も最新の医療機器も薬剤もただ無力な存在になるしかないのだった。
    でも、何もできないわけではないんだと、瑠美はおっもう。治らない病を抱えた人に対しては、看護師が最も力を発するのだと教えてくれたのはどの教員だったか。
    p.418 主人公の答辞より
    「私たちはこの三年間、学生という立場で医療の現場に立ち会い、その清さも濁りも、この目で見てきました。医療の現場は壮絶です。人の生き死にの場ですから、もちろんきれいごとではすみません。その中で、自分がどういう仕事をするかということは、看護師としてというよりも人として、という問いかけになってくると思います。同じように看護師を目指していた友人に言われたことがあります。白衣は白い色をしているが、その白は潔白の白さではないと。どんな色にでもなり得る白なのだと。
    (中略)
    この先、何色の白衣をまとっているかは、それぞれの生き方にかかっているのです」

  • 似た環境の人たちに囲まれていた高校生までとは違い
    年齢も生き方も様々な人がいる看護学校で
    成長していく主人公

    人生のどの時点でどのような人と出会うかはその時にならないと分からないけれど
    無駄な出会いはないと信じて
    出会いを大切にしていきたいと思わせてくれた話だった

  • 看護師の方々からは現実はもっと違うとの批判もあるのでしょうが、医療現場の厳しさが私には感じられる作品でした。人柄の良い大人は登場せず、涙もありませんでしたが、これがデビュー作かと思うくらい読み応えがありました。日本人らしくない瑠美さん、今のままで頑張って!

  • 看護学校で学ぶ4人の生徒の物語。
    それぞれキャラ分けがハッキリしてて
    良かったです。

    思った事を口にするが、恋愛下手な瑠美。
    不器用だが頑張り屋さんの千夏。
    家事と育児の傍ら、看護学校に通う佐伯。
    ある目的の為に男性遍歴を重ねる遠野。

    看護現場のリアルな様子に胸が痛く
    なったりも。

    佐伯を見送りに行った空港のシーンが
    よかったなあ。

    ドラマでも放送されてたので今、観ています。

  • 看護学生が看護師になるまで…のお話…と思って読み始めたが。

    家族、友情、恋愛、生き方、考え方…いくつものことが混ざり合って、目まぐるしい3年間を一緒に感じることができた。

    瑠美の視線で描かれているので、これはこれでいいのだが、拓海や駿也の心が単純過ぎるような気がした。

  • 藤岡陽子さんはそんなに存在感を出している訳ではないけれど、胸を打つ佳作を連発している作家さんで、僕の推している作家さんの一人であります。
    野球、バスケットボール、弁護士、そして医療。はたまた人情味あふれる老人と孫など幅広い作風となっています。
    本作はデビュー作で、その医療関係、看護師専門学校での物語となります。不本意ながら看護師を進路に選んだ少女が、仲間に揉まれ、看護師の奥深さを感じることによって、看護師への道を真っすぐに進んで行きます。
    そしてデビュー作から、ただの感動的なお仕事物語にならない辺りがほろ苦い。どんなに友情で繋がっていても、人生の大事な選択をするときには自分ひとりで決めなければいけないし、人の人生に関わる事が出来る限界がある。そんな風に考えさせられました。
    最初の作品から完成度高かったんですね。素晴らしいです。

  • 「これ読んでみ。きっと色々思い出して懐かしく思うんちゃうかな。」と、母からこの本を渡された。

    私は自分には向いていないと思いながら、看護師を続けていた。
    だから、この本を読む事に気分が乗らなかった。

    しかし瑠美の姿勢と千夏の人柄に随分と心が救われた。
    気分が落ち込み仕事に行きたくない日も、、私を持ち上げてくれた。

    何か不思議な力を感じる作品。

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著者プロフィール

藤岡 陽子(ふじおか ようこ)
1971年、京都市生まれの小説家。同志社大学文学部卒業後、報知新聞社にスポーツ記者としての勤務を経て、タンザニア・ダルエスサラーム大学に留学。帰国後に塾講師や法律事務所勤務をしつつ、大阪文学学校に通い、小説を書き始める。この時期、慈恵看護専門学校を卒業し、看護師資格も取得している。
2006年「結い言」で第40回北日本文学賞選奨を受賞。2009年『いつまでも白い羽根』でデビュー。看護学校を舞台にした代表作、『いつまでも白い羽根』は2018年にテレビドラマ化された。

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