嫌な女 (光文社文庫 か 55-1)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (476ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334765767

感想・レビュー・書評

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  • 多くの読者が感じたであろう、長い。

    前半は確かにそんな感覚を持ちながら読み進めました。

    しかし、次第に男を喰いモノにする詐欺師である遠縁の夏子と本作の語り部的存在である弁護士の徹子が歳を重ねながら進んでいく物語(人生)にいつの間にか引き込まれていました。

    本作の主人公は徹子?いや、決して表舞台には登場しませんが、夏子という存在があってはじめて本作は成立します。

    という事は、徹子と夏子のW主演という事でいいと思います。

    決して好きになれない夏子。

    でも、不思議なんですよね、何故か次は何処で何をし、徹子にどう依頼をしてくるのか、そして、いかにして徹子がそこに向き合うのかを楽しんでいました。

    私自身、人付き合いは得意な方ではありません。

    完全に徹子寄りです。

    だからこそ、真逆をいく夏子に対して嫉妬と嫌悪を覚えながらも、どこかで羨ましいと思っていたのかも知れませんね。

    説明
    内容(「BOOK」データベースより)
    初対面の相手でも、たちまちするりとその懐に入ってしまう。小谷夏子は男をその気にさせる天才だ。彼女との未来を夢見た男は、いつの間にか自らお金を出してしまうのだ。そんな生来の詐欺師を遠縁に持つ弁護士・石田徹子は、夏子がトラブルを起こすたび、解決に引っぱり出されるのだが…。対照的な二人の女性の人生を鮮やかに描き出し、豊かな感動をよぶ傑作長編。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    桂/望実
    1965年東京生まれ。大妻女子大学卒業。会社員、フリーライターを経て、2003年『死日記』で「作家への道!」優秀賞を受賞しデビュー。’05年『県庁の星』が映画化され、ベストセラーになる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • 全然嫌な女では無かった。
    本の中に出てくる色々なフレーズが、弱っている自分の心に突き刺さってきました。
    いくつか、付箋を付けて読み返したいと思うくらい。
    ほんのりうるうるっときて、ずっと和やかな気持ちで読める本でした。

    ドロドロを期待して購入した本で、思いっきり期待を裏切られたのに、後味もいい感じです(*^^*)

  • 桂望実さんの本は初めて読みました。
    【嫌な女】という、何とも興味をそそるタイトル~(笑)

    小谷夏子は生来の詐欺師。
    絶世の美女というわけではないのに、人を惹きつけてやまぬ魅力がある。
    そんな彼女の遠縁にあたる石田徹子。
    夏子と徹子は同い年。
    弁護士になったばかりの徹子24歳の時、17年ぶりに夏子から「助けてほしい」との依頼が舞い込む。
    何とか問題を解決した徹子。
    その5年後再び、夏子から連絡。
    そんなことを繰り返すうち、二人は71歳に。

    物語は徹子の口から語られるだけ。
    徹子から見た夏子だけが登場する。
    徹子のダメっぷりにほんと「嫌な女」だと思いつつ読み進めた前半。
    夏子の問題を解決する徹子にも、色々なことが起こり…
    後半はどんどん徹子に感情移入していく。
    どんどん面白さが増して、後半は一気読みでした。

    桂望実さんの本、もっと読んでみたい!

  •  愛おしい人。

    ページをめくるたびに感じました。

    素敵な作品ですね。

  • 評価は5.


    内容(BOOKデーターベース)
    初対面の相手でも、たちまちするりとその懐に入ってしまう。小谷夏子は男をその気にさせる天才だ。彼女との未来を夢見た男は、いつの間にか自らお金を出してしまうのだ。そんな生来の詐欺師を遠縁に持つ弁護士・石田徹子は、夏子がトラブルを起こすたび、解決に引っぱり出されるのだが…。対照的な二人の女性の人生を鮮やかに描き出し、豊かな感動をよぶ傑作長編。

    弁護士徹子の20代~70代までの人生を主に遠縁夏子との腐れ縁を中心に描いた作品。
    この夏子!人間性は徹子を通じてしか描かれないが、とことんまで嫌な女ある(笑)
    逆に徹子を囲む周囲の人たちは、互いに多くを語らず思いやり続ける良い人ばかりで・・・。
    みゆきさんの言葉には思わず落涙。

  • *生来の詐欺師・夏子は男をその気にさせる天才。口癖は「これで終わるような女じゃない」。 がむしゃらに勉強だけをして弁護士となった徹子は、いつも虚しさを感じている。同い年で遠戚、たびたび夏子のトラブルの始末をさせられる徹子。したたかな女と不器用な女が向き合い嚙み締める人生を描く、桂望実、2年ぶりの長編! *

    これは、色々な意味で読み応えたっぷりな一冊。夏子と徹子の長い人生を一緒になって生きたような・・・どっぷりと嵌りながら読み終えた。誰でもその一面だけではなく、時には短所も長所になる。題名とは裏腹に「嫌な女」で終わらない爽快さ。脇を固める人々も魅力的で、後半は滂沱の涙。またいつか、しみじみとじっくり読み返してみたい。

  • NHK-BSのドラマになった時から少し気になっていたのだけれど、ここに来て手にする。映画化に合わせて吉田羊と木村佳乃が表紙のカバーになってしまい、手にしてレジに行くのがためらわれたが、仕方がない。
    弁護士の徹子と、その遠い親戚の夏子。
    男好きがして男を手玉に取る術に長ける夏子が何年かおきにトラブルを発生し、その都度、徹子がお尻を拭くことになる。
    24歳から71歳まで描かれる長い年月の流れの中で、二人の女性の変わらない本質と変わっていく生き様がつぶさに描かれる。
    自由奔放に年老いてまで可愛い女として生き続ける夏子と人生に虚しさを抱えながらも弁護士としてのキャリアを積んでいく徹子。
    後半は、特に、夏子が何をしでかしたかということよりも、そこに巻き込まれた人々と徹子とのやり取りを通じ、泣き笑いが出るような達観が示される。

    生きるということについて、、、
    “多くの人が満ち足りない想いを抱えているって、知らなかったのよ”
    “自分で気付くしかないのだ。願った通りの人生を送れていなくても、うまくいかないことが多くても、その現実と上手く折り合いをつけていくしかないということは”
    “受け入れるのは、悪いことではないのかも”
    “丸ごと受け止めておしまいなさい。気に入らないことも、哀しいことも。そうすれば、きっと生き易くなるわよ”
    “「幸せか」と尋ねられて、「そう言えば、そうだ」と気付くくらいがちょうどいいようだった”
    “苦しくても、虚しくても、明日を迎えて生きる。そういうもんなんだとわかったら、呼吸をするのが楽になったの”

    老いるということについて、、、
    “もう充分生きたって思える人なんて、いないの”
    “私もちゃんと人生の閉じ方とやらを考えなくてはいけない年齢だ。どうやって閉じたらいいのだろう。したいことが浮かばず、私は愕然とする。”
    “ずっと変わらずにいることは、出来ませんよね。そうわかっていても、願ってしまいますね”

    仕事についても、、、
    “弁護士の仕事って、やりがいを求めてはいけない領域のものだと思ってる。…感謝されることを目的にしてはいけないし、期待してはいけないと思ってる。ただ、ベストを尽くすだけ”

    人生における楽しかったランキングというのを考える時、私には何が楽しかったのだろう?
    妻のこと、子供のこと、親兄弟のこと、仕事のこと、趣味のこと、小さかった頃のこと、学生時代のこと、会社に入ってからのこと、、、何を楽しみに今まで生きてきたのだろうと、今更ながらに戸惑ってしまう。
    宝くじで100万円当たったら、何に使うだろう。今時100万円では夢も語れないように思うけど、だったら幾らなら夢が語れるのか?
    つまらない人生、平凡な人生、だけどもかけがえのない人生…。
    生きること、働くことに対する悶々とした思いに対し、確かな励ましを伝えてくれる物語であった。

  • 詐欺し紛いのようなことをしている夏子。ほとんど登場せず関係者の口からその言動が語られてるだけなのに圧倒的な存在感を放っている。
    夏子ほど極めてなくても、こういうヒト、いるなぁとちょっとザワザワした気持ちになりながら読んだ。
    弁護士という仕事についての主人公の想いが深い。

  • タイトルに惹かれて買いました。
    だって『嫌な女』って、なんか相当インパクトあり、じゃないですか。

    『嫌な女』って、自分の周りに一人は必ずいる存在だったりしませんか?
    このタイトル見て、頭に思い浮かぶ身近な人っていますよね。「あ、あいつのことだ」みたいな。

    だから、そんな、私自身が、頭に浮かんだ『嫌な女』に受けた被害の数々のようなことが描かれてあるのかなー。なんて、ちょっと怖い物見たさ。というか、嫌な女見たさ。というか、そんな感じで買ってみたんです。

    でもね。全然違ってたんですよ。これが。
    なんか、すごく、ジーンとしちゃった。

    詐欺師の夏子と、弁護士の徹子。
    『遠縁』にあたる二人の半生が描かれた物語なのですが、私、思うんですけど、女性の人生って、この夏子の生き方と徹子の生き方の、二つに分かれてると思うんです。

    今、この「現状」というものに、抗って、歯向かって、立ち向かって行こうとする人と、受け止めて、受け入れて、流されるままでいようとする人の二つに。
    もちろん、前者が夏子で、後者が徹子。
    私は、多分、後者。かな。

    だけど人生時には、抗ったり歯向かったり立ち向かったりしないといけない時が、きっとどこかであるわけで、時代にも年齢にも、なにもかにも抗おうとする夏子が、なんだかだんだんと、うらやましくなってきたりそうでなかったり。という、まさに徹子の思いが私に乗り移ってきた。というそんな感じでした。

    でもなー。私はやっぱり、夏子にはなれないんだよな。
    だから、虚しくても苦しくても、徹子のように受け止めて受け入れる人生を、この先もきっと歩いていくんだろうな。なんてことをしみじみと思ったのです。

  • どう生きるかを考えさせられる箇所がいくつかありました。遺言を残すシーンでは遺族じゃなくてお世話になった人や自分の人生に関わってくれた大切な人にメッセージを残す、それも素敵だなと思います。死までの準備期間がある、ある意味では幸せなことなんだろうなとも思いました。
    そして夏子の自由奔放ぶりを読んでいるうちに次はなんだろう?と夢中になりました(笑)夏子の生き方が少し羨ましいです。
    全体的に読みやすくあっという間に読み終えました。

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著者プロフィール

一九六五年東京都生まれ。大妻女子大学卒業後、会社員、フリーライターを経て、二〇〇三年『死日記』で「作家への道!」優秀賞を受賞し、デビュー。著書に『県庁の星』『嫌な女』『ハタラクオトメ』『頼むから、ほっといてくれ』『残された人が編む物語』『息をつめて』など。

「2023年 『じゃない方の渡辺』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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