遠海事件: 佐藤誠はなぜ首を切断したのか? (光文社文庫 よ 19-2)

著者 :
  • 光文社
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感想 : 40
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  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334766955

感想・レビュー・書評

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  • ありふれた名前を利用した場当たり的アリバイトリックも面白いし、「案ずることなく死なせてあげるために子供を殺してあげた」というダミーの真相もかなり驚いたが、「殺しに見せかけるだの首切り」という発想にはさらに驚いた。
    佐藤誠は何百人もの人間を殺している。それ自体がミスディレクションとなり、読者に歪んだ先入観を植えつける。
    詠坂雄二さんは処女作があまり合わなかったのだが、これはかなり面白かった。

  • 書店の有能な雇われ店長・佐藤誠には裏の顔があった。
    彼は目的に応じて凶器を使い分け、
    様々な人を殺害した「不連続大量殺人犯」だった。
    死体の処理と証拠の隠滅を徹底的に行ったため、
    長らく告発されずに社会の片隅で静かに生きてきた彼は、
    突如、異なるパターンの事件を起こし、
    初めて警察にマークされた……。

    網羅された資料を元に作家が事件を小説風に再現し、
    犯罪学者が解説を付した本――

    という体裁のミステリで、
    映像作品で言うところのモキュメンタリーであり、
    ベッドタウンの寒々しい風景の中で
    無名の人々が加害者あるいは被害者になったという、
    徹底した「匿名性」の物語。
    極めて現代的であり、示唆に富んでいるとも言えるが、
    登場人物の誰にも感情移入できなかったので
    私にはサッパリ面白くなかった。

    小説が現実の後を追うように「ファスト風土化」していくとは
    侘しいことである。
    もっとも、殺人鬼に大義やら内面の葛藤やらを求める方が
    どうかしているのかもしれないが。

  • 29歳で逮捕、86件の殺人を認めた平成最悪の殺人者 佐藤誠。
    自白をもってなお立証できないほど周到な完全犯罪の数々の中で際立って異質な、遠海事件の顛末をルポルタージュの体裁で描く。

    佐藤誠にまつわる心惹かれる設定と人物像。
    自然体で人を殺しバラす彼だからこそ生まれた首切りに対する逆説的な推理。
    敢えて遠海事件にのみ焦点を絞り、佐藤誠逮捕に関する肝心なはずのエピソードをいくつか端折ってる事と
    推理が宙ぶらりんに切り離されて結末には影響を及ぼさない事で得られる奇妙なクセの味わいも良し。
    そして一つの物語の、余韻を含んだ見事なオチ。

  • なぜ首を切断したのか?ミステリ内では割とメジャーな首斬り。佐藤誠はなぜ首を切断したのか?というクエスチョンは読み進めると逆に深まっていくという不思議な感覚。
    「昨日の殺戮儀」がまんまとめちゃくちゃ読みたいじゃないかこの野郎。

  • 『偏見はあらゆる学問の敵だが、それらが人の感情に由来している以上(学問の存在そのものもまた人の好奇心という感情に由るため)、消し去ることはできず、付き合い、飼い慣らしてゆかねばならないものでもある。それに失敗すれば、すぐさま新たな偏見や無理解が際限なく生まれてしまう。

    善悪や物語などを抜きに語りづらい犯罪において、そうした傾向はより顕著だ。ゆきすぎた理想主義との誹りを受けながら犯罪学者が研究対象を善悪から切り離して捉えるのも、そうした偏見を回避しようとするがゆえである。』

    めちゃくちゃ面白い!圧倒的な世界観の構築能力。佐藤誠という稀有な犯罪者を見事に創り上げている。完璧に面白い。しかも、クビキリものなので、見事なミステリーに仕上がっている。伏線の回収が見事!

  • ノンフィクションのような、ドキュメンタリー犯罪小説。86件以上もの完全犯罪を自白した佐藤誠。そのうちの2件。どうして遺体を残し、首を切断したのか?

    佐藤誠の経歴、人物像をコラム形式という特殊な方法で紹介し、秀逸な構成でサクサクと、読み進める。

    真相については一部分に関しては、想像しやすいきらいがあるが、とてつもなく大掛かりなミスディレクションと、ひれくれた構造が大きな衝撃をあたえる。

    さらに今までに体感したことのないサプライズを、最後の一行、巻末資料、さらにその後(ここで大爆笑)意表をついて読者にもたらす。

    なんとも感慨深い気持ちになる(ある意味…)作品であり、本ミスファンでもこのような作品には出会えたことないのでは?というくらいおすすめできる一作。

  • ひねくれてるなぁ、というのが第一印象。で、ここまで嫌悪感を抱かないシリアルキラーも珍しい、というのが第二印象。
    ともするとミステリーであることを忘れてしまいそうな構成ですが、最終章で常に問いかけはあったんだと思い知らされました。用意された材料で、もっと普通の小説も書けたように思えますが、この構成は見事だと思います(万人受けはしないとも思いますが)。
    ていうか、「昨日の殺戮儀」読みたい!

  • タイトルだけ見た時は、実話だと思っていた。
    でも、本文もまるで実話であるかのように書かれていて、今まで読んだことがないタイプだったなぁ

    さすがにスッキリー!という終わりではないものの、なぜかオシャレなミステリーという印象。

  • キレイなwhyダニット

  • 首切りのホワイダニットに重点を置いた作品と聞いたので、期待して読んだら微妙だった…もっと盲点な理由があるのかと期待してしまった。

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著者プロフィール

1979年生まれ。2007年、カッパ・ノベルスの新人発掘プロジェクト「Kappa‐One」に選ばれ、『リロ・グラ・シスタthe little glass sister』でデビュー。クールな文体で構成される独特の世界観と、本格マインド溢れる謎解きがミステリ通の熱い支持を受けている。

「2022年 『君待秋ラは透きとおる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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