海賊女王 下 (光文社文庫 み 16-4)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (587ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334772239

感想・レビュー・書評

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  • 面白かったです。熱量すごい。
    エリザベス1世より、グローニャのお話だったなぁ…海賊女王の生涯。
    グローニャがかっこよすぎて魅力たっぷり。情は深いけど頭が切れて強くて。60代でも船を指揮して、戦場にも乗り込んでいく。
    エリザベス1世は半分耄碌してかヒステリックだったし、愛人の機嫌取って…でもこの人もいきなり聡明になったりするのでさすが王。
    死んだと思った人が生きてたり、かと思えば死んだり…トイリー。。

    「幾つもの生が、触れあい、また離れていく。」まさにこれ。まざまざと。
    ラストシーンもしみじみ良かったです。

  • アランーグローニャ
    セシルーエリザベス女王一世
    対比されるふたりの女王を隔てるのは、何か。
    この問いが、単純な活劇を、テーマとして深めている。
    忠臣、家族。
    しかしここから外れるようにして、ナサニエル、オーランド、ロイといった「イレギュラー」が生じる。
    一番大事な存在のはずなのに、時勢、状況によって止むを得ず本流から外れざるを得なかった人……その怨恨と悲哀。
    活劇の裡に彼を抱き込み、それでいて脱輪することなく、グローニャおよびアランの物語に収斂させる、歴史ものだけあって、本書は筆者にとってもっとも力量が問われた作品ではなかったか。
    そして傑作に相違ない。

    冷静な眼、だったアランが、妻と子を持ってはじめて、熱くなる。参与する。
    アイルランドVSイングランドは、そのあたりから同じ遣り取りを繰り返し始めるが、アランやグローニャの「切実さ」が高まるために、飽きない。
    筆者の持ち味である幻想味は、エセックスの霧の森だけだったが、それ以外の骨太な描写および展開で、筆者の年齢を感じさせない大傑作となった。

    グローニャの男たち……、そう呼ばれた下っ端の男たちの、誇り。

  • 大河歴史ロマンとしてとても面白かったです。グローニャ10歳アラン17歳からスタートして、たっぷり50年以上、上下巻で1200頁くらいあったけど、それもまだ描き切れていないんだろうなというボリューム。正直、登場人物が多すぎて、あれ?伏線じゃなかったの?これで出番終わり?というキャラクターも数人いたけど(トイリーとか。エメールも中途半端だったなあ、神父との関係もだし、あっさり別の男と結婚して退場とか、アランの気持ちはなんだったんだっていう)それを全部追っていたら20冊分くらい書かないと足りなくなってしまうだろうから仕方ないか。生き別れた兄弟の再会およびその後もわりとあっさりしていたし、もっと大暴れ期待していた双子もそれほど活躍しないままフェイドアウト気味だったし。

    イングランド側の宮廷内の権力争いや陰謀も面白かったけど、本作の中で唯一ミステリーっぽい要素だったエリザベス女王の隠し子問題は、いまいちスッキリしなかった。シェイクスピアやマーロウが登場したのは興味深かったです。この時代の人だったんですね。

    女海賊グローニャは単純にかっこよくて好きだった。男以上に男前。ただ性的に奔放なのはまあ良しとしても、アランとはそういう関係持たないほうがストイックで良かったのになあと個人的には思いました。男女間の友情は成り立つか問題じゃないけど、強い信頼関係で結ばれた主従だけに、安易に肉体関係に持ち込んで欲しくなかったような。あとマクティーリャも憧れの人のままでいてほしかったかな。初恋の人って聖域のままだからこそ夢があるのに(笑)

    まあ細部はさておき、真の主役はグローニャでもアランでもエリザベスでもなく、アイルランドという国そのもの、今なお続くその独立への歴史だったような気がします。歴史のほうが主役なので、個人的に期待していた耽美寄りの人間関係の掘り下げが控え目だったのが少し残念だけど。

  • 16世紀後半のイギリス。イングランドのエリザベス女王と、アイルランドの海賊グラニュエル(グローニャ)・オマリー。同じ年に生まれた二人の女性を軸に、アイルランドの歴史が綴られる。イギリスの正式名称に北部アイルランドという言葉が含まれていることは知っていたが、それがどういう意味を持つのか、この本を読んだ後に、現在の地図を見て確認をした。ゲールという民族が住む、独自の文化圏だったアイルランドとプロテスタントに改宗させようとするイングランド。ゲール同士の争い。西洋史は苦手だが、グローニャの魅力で、長い物語を読み通した。血みどろの争いだけでなく、宮廷の陰謀などもあり面白かった。

  • 怒涛に次ぐ怒涛の展開で、地理と世界史が苦手な私もページをめくる手が止まらなかった(下巻は)(上巻は1ヶ月かかった)。彼らの生は鮮烈で過酷で、そしてどこまでも力強い。

    皆川作品を読むたびに感じることだが、皆川先生は彼らとともに大海原を駆け巡り、彼らの世界を見てきたとしか思えない。

  • イングランドとアイルランドの戦いを背景に、女海賊が颯爽と生き抜く様が描かれる。
    千ページを越す大作。

  • 時は16世紀。スコットランドに生まれたアランは17歳になった時、弟と共に戦士集団に加わりアイルランドに渡った。
    そこで出会ったのは、海賊を生業とするオマリーの氏族の猛々しい男たちと、赤い縮れ毛の首領の娘グラニュエル・オマリー(グローニャ)。
    アランはグローニャの従者となり、闘いと航海に明け暮れる波瀾の日々へと身を投じたー
    壮大なスケールで描く、実在の女海賊の凄まじき生涯!

    雇われ武人の筈だったアランが、賭けの結果グローニャの従者になり、彼女の生涯を隣に立ち綴った、という風な物語。
    本編であるグローニャの海賊の生涯も波瀾万丈で面白いんだけど。
    冒頭の英国王家・政治中枢部の陰謀渦巻く駆引きの方がワクワクしちゃった-
    劇作家達は他の色々な物語でスパイだったりするし。
    殺人事件が起こった時には“開かせていただき光栄です”を思ってしまった-
    本当に、このウォルシンガム配下のオーランドやナサニエルらスパイ達の物語が読みたいと思いました。

    グローニャ達海賊の歳を経ていく描写が面白い-髪が白化しなくなって行く様なんかが。
    世代交代して、続いていくのが凄い。
    グローニャ達世代が去り際を心得ているのが、鮮やかで。

    しかしカトリック・プロテスタントと目まぐるしく主流が入れ替わり、信教によって自身の立ち位置も有利不利(どころか生き死にに関わる)が振れる生活って…落ち着かなさすぎるよ-
    そこへ土着のケルトも混ざって複雑-
    身に染みてるものと、有利不利を吟味して付く側を選びとる…複雑-

    付属の地図が分かりにくいったらないよ-
    もっと詳細なのか、逆にもっと単純化したものの方が良かったかと。

  • 冒険と、争い、闘い、抵抗
    少女が老女になるまでのグローニャ!
    それに付き従うアラン!マクティーリャ!オシーン!
    たちが半世紀を駆け抜ける、少し苦しさ、
    物悲しさを帯びながらも大海のように爽快なゲールの物語。
    一方、女王を利用し自らのための権謀術数渦巻く
    イングランドはペスト禍のなかということもあり
    薄暗く重苦しく爛れた空気。
    どうやって二つの物語が結びつくのかと思っていたら
    まさかその人が、そのような背景で、という驚きで、
    それも単にそこで終わりのヒトネタではなく、
    二つの国、二人の女王の物語を一気に読まされた。
    史実に基づくイベントがベースにあるといっても、
    これだけの濃厚で力強い作品を描いたのが
    (知っていたけど・・・)
    グラニュエルの最晩年より年上の女性という!
    あっさり退場するひと、明かされなかった?謎
    分厚い上下巻だが、もっともっと読みたかった。
    Wikipedia Grace O'Malleyをスラスラよめたらなぁ~

  • イングランドによるアイルランド侵略とアイルランドの混沌とした状況が、20世紀のアイルランド独立闘争にまで繋がっていることを改めて認識させられる。

    女王エリザベス1世と、ほぼ同時期に生きた海賊女王グラニュエル・オマリーとの対比、侵略するものと侵略されるもの、一つの統治国家としてのイングランドと多数の氏族があり混沌とした政治状況のアイルランド、家臣や家族との関わり方、どちらが幸せだったのだろうか?

    この本で描かれるグラニュエルは魅力的。そして、この本で描かれる子供達も活発でかわいい。

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著者プロフィール

皆川博子(みながわ・ひろこ)
1930年旧朝鮮京城市生まれ。東京女子大学英文科中退。73年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁 旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞を、『恋紅』で第95回直木賞を、『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞を、『死の泉』で第32回吉川英治文学賞を、『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―』で第12回本格ミステリ大賞を受賞。2013年にはその功績を認められ、第16回日本ミステリー文学大賞に輝き、2015年には文化功労者に選出されるなど、第一線で活躍し続けている。

「2023年 『天涯図書館』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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