雨のなまえ (光文社文庫)

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著者 : 窪美澄
  • 光文社 (2016年8月9日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334773304

雨のなまえ (光文社文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 女は小さな声で、マリモ、と言った…。家具ショップで働き、妊娠中の妻と何不自由のない生活を送る悠太郎。ある日店に訪れた女性客と二度目に会った時、彼は関係を持ち、その名を知る。妻の出産が迫るほど、現実から逃げるように、マリモとの情事に溺れていくが…。(「雨のなまえ」)答えのない「現代」を生きることの困難と希望。降りそそぐ雨のように心を穿つ五編の短編集。

  • 何となくの不穏さを感じながら読み進めていたら、突き落とされるようなラストに出くわす。
    5つの短編のうちの3つがそういう形で、1つが不穏なまま終わり、残る1つだけが少しの救いを感じた。
    読み終えたあと心がざわつく。良いとは言えない後味に戸惑う。でも現実にも、こういう理不尽な出来事は時に起こってしまう。そういう、自分の身にも降りかかるかもしれないという恐れを感じるような物語が並ぶ。

    様々な形で“雨”が登場する。
    出産を控えた妻に恐れを感じ始める男が主人公の表題作では、産まれてくる子どもに雨にまつわる名前を付けようと妻が言い出す場面があり、年下の男に一方的な恋をしてしまう主婦が出てくる「記録的短時間大雨情報」では、ゲリラ豪雨のように、ほんの短時間に激しく恋心を燃やしてしまう様が描かれる。
    その他の3つも合わせて、うまくいかない現実や理不尽な出来事、もがいたり、時に逃げ出したり、罪の意識に苛まれたりという人々の日々の物語が綴られている。
    1つだけ異質なのは「雷放電」というお話で、幻想的で、ミステリ的な要素もあって、怖面白かった。

    つまらない日常を捨てて逃げ出したい。決まりつつある未来に恐れを感じる。過去の過ちから逃れられずこの先罰が当たるような気がしてしまう。
    誰もが不意に抱えてしまうかもしれない感情たちは、とても現実的で、身近に感じた。
    ラストの「あたたかい雨の降水過程」は希望を感じる物語だったから、理不尽だらけの短編集でも、読後感は悪くなかった。
    そういう意味で、物語を並べる順番ってけっこう大事なのだと分かった。

  • 実際にありそうな物語でした。
    現実逃避や妄想、或いは覚醒...
    人の弱さ、残酷さ...
    とても味わい深い内容です。

  •  表題作の「雨のなまえ」の感覚がすごくよくわかるのだけど、相手に対してこれといった不満もないし、傍から見れば幸せなのはわかるけど、それが逆に不満というか、そういう完璧に近いようなものへの息苦しさの結果、相手を裏切る行為をしてしまう感覚って、ちょっとわかるな~という風に読んでいた。いろいろなしがらみから、解放されたいのだろうか、結果携帯をポイ捨て同然のごとく扱ったり。

     ほかの短編だと、「ゆきひら」の結末が少し衝撃を受けた。そんな終わり方って・・・という印象。窪さんの作品の印象にこのタイプの終わり方がなかったので面食らった。

     やっぱり窪さんの本は長編のほうが面白い。その都度打ちのめされたり、心が痛いけど長編のほうが好きだ。

  • 雨は止まってっていってもは降り続けていくもの.
    人の気持ちと似てて、残酷.雨がもたらすものは潤いだけじゃなくて、その人の暗部をゆっくりと滲みさせてしまうものなのかもしれない.

  • 2017.4.27(木)¥180+税。
    2017.4.28(金)。

  • 5編からなる短編集ですが、どの短編も息苦しいような、じっとりと湿っているような閉塞感があり、暗い。主人公たちは出口が見えないような状態で停滞し、倦んでいる。そんな状況での性欲には、厄介なものという印象しか持てない。最終話『あたたかい雨の降水過程』だけは、明るい兆しが見えるような気がするけど、それ以外の話は「ここで終わり?」というところで終わっていて、その後の彼らの人生は暗いものしか想像できない。窪さんは、本当に人間の嫌な部分の感情とそれに伴う性の問題を描くのが上手くて、上手いだけに物語に入り込むと気分が滅入る。

  • 窪さんが主人公に書く男は、どうしてこんなに、優しく、弱く、傷を負っている人が多いんだろう。
    ‪どうして私はそれに惹かれちゃうんだろう。‬
    窪さんの話に出てくる登場人物は、どの人もとても自分に近く感じるのは何故だろう。
    西加奈子さんの本を読むと、生きることに意欲がわくというか…前向きになれる。
    対して
    窪美澄さんの本を読むと、自分の足もとを見つめて、自分自身と対峙することができる気がする。
    どちらも自分には必要なこと。

  • 希望も夢もなく、ただ一日を費やし成果を求めない日々を送る人たちを描く五編の短編集。
    降り続く雨の季節のような鬱屈した気分になる。もどかしさややりきれなさが重くのしかかってくる。こんな感情を呼び起こすのも、窪美澄さんのテクニックのひとつだと思う。特に『ゆきひら』で一気に落ち込ませた後、最終話『あたたかい雨の降水過程』の意外なエンディングに至る過程は見事。

  • ‪5つの短編それぞれに雨が場面や状況のアクセントとして機能している。現代の家族や社会の問題を捉えつつ、物語の完成度が高いのでより身近なものとして迫ってくる。母親、働く女性側にいる作家として貴重な存在。‬

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